人質の朗読会 [文学 日本 小川洋子]
単行本で出たときから気になっており、文庫化されていたのは知っていたが、なかなか買わずにいた作品。
ある国で武装集団に人質として捕らえられてしまった日本人8人が、捉えられている場所で、それぞれの思い出話を紙に書いて発表しあう、という設定。
なかなか発想として面白い。書評などを見ると、ただ8つの短編に、無理やり上記のような設定をつけただけ、というようなものもあったが、それぞれが何らかの形で「死」と結び付けられており、「死」を覚悟せざるをえない状況で自分の過去を振り返り、その思い出を語るとこのようなものになるのでは、という作者の意図は感じられる。
小川洋子特有の、ひっそりと目立たないものに向けるやさしい視点、あまり顧みられることのない繰り返し行われるなんでもない仕事に対する温かい視点、など、「死」をテーマにしているが心があたたまる物語がそろっている。とはいえ、彼女のほか作品に比べるともう一歩の感があった。
2016-05-14 07:09
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