つきよに [文学 日本 安房直子]
たんぽぽ色のリボン [文学 日本 安房直子]
安房直子作品をあいうえお順に読んでおり、次男と再読。
「たんぽぽ堂」という文房具屋を営むおじいさんのお話。
町の小さな文房具屋を営んでいたおじいさん。はじめは店の周りにはあたり一面のたんぽぽ畑だったのが、段々と家が立ち、大きな文房具屋が近くに出来、店は売れなくなっていく。
そんなある日、黄色い服に身を包んだ女のコがやってくる。店の商品に黄色いリボンをつけて売ろうという彼女の提案により、店は再び盛り返す。
しばらくして、その女の子がやってきて、リボンを縄跳びにつけて飛び始める。おじいさんも一緒にとんでいたところ、男の子がやってきて黄色いクレヨンを買って、たんぽぽの花をスケッチブックにいっぱい書く。その後おじいさんと女の子と男の子で幸せな時を持つ。
たんぽぽ堂は、なんとか店を続けていたものの、おじいさんも段々と年をとりもう店をとじようかと思っていたとき。
あの女の子とそっくりの女の子たちが大勢でやってきて、縄跳びに誘う。飛んでいるうちに体が軽くなったおじいさんは・・・。
自然の大切さをそっと教えてくれる心暖まる作品。
日暮れの海の物語 [文学 日本 安房直子]
1977年7月25日に角川書店から初版が出版された安房直子の『日暮れの海の物語』をAmazonの中古で手に入れた。私が収集した様々な本の中にも未収録の作品が5作品あった。
①冬の娘
②カスタネット
③西風放送局
④赤い魚
⑤夏の夢
①白菜を売りに行く荷馬車に乗った、冬の娘(妖精のようなもの?)と馬車を引く馬の物語。冬の娘の持つ洋服などを欲しがる馬の話。冬の娘から色々なものを強引に奪い取った結果、自分が苦しむはめに・・・。というような話。若干教訓譚めいた感じ。
②安房直子お得意の、自然の精などの美しいが恐ろしい存在に魅せられた、人間や動物たちの話。今回は最終的に意志の強い妻に助けられるが、その代償として足が動かなくなってしまう。結構おそろしい 話。
③は微笑ましい。3人のねずみがコーラスグループを結成し、タキシードを人間に作ってもらい、ラジオ番組に出演するまでを描いた話。ほのぼのとして暖かい。
④は傑作だ。食に出されそうになった、赤い魚を助けた女の子は、そのお返しに3つの願いを叶えてあげると言われる。美しい髪と瞳を手に入れた彼女が最後に望んだものは・・・。人間の欲望を美しく描いた悲しい作品。
⑤も安房直子らしい作品。昔一度あった美しい女の子の思い出が、自然の中で美しく蘇る話。
全体的に怖い話が多く、収録作品もかぶっている『夢の果て』に似たような雰囲気の作品集だった。
こうした作品が絶版なのはいつも書くが残念だ。
月へ行くはしご [文学 日本 安房直子]
ブックオフオンラインで別の作家の別の本を探していたら偶然見つけて思わず購入してしまった本。
誕生日に、おばあちゃんにうさぎさんをもらったけい子。おばあちゃんに、満月の夜はうさぎは月にのぼっていってしまうから気をつけるよう言われる。
秋の満月の夜、おばあちゃんの言ったとおりうさぎは窓から逃げて月へ向かっていた。それを追いかけるけい子。コスモスの花たちに、銀のはしごでうさぎが月へ登っているのを教えてもらい、銀のはしごのところへ向かい登っていく。
途中、「パーン」という音がなり、登っていたはずのうさぎたちが消える。振り返ると、銃を手にした猟師の男がウサギを手に持っている。話を聞くと「うさぎ鍋」を作るためのうさぎを取っているとのこと。猟師には二人の娘がおり、二人に一羽ずつうさぎを食べさせたいのでもう一羽必要とのこと。違う場所で、鍋を調理している二人の娘にも合う。
このままでは自分のうさぎを殺されてしまうと思い必死で自分のうさぎを探すけい子。そこへ、黄色い月見草の花たちが話しかけ、「自分たちを摘んでハンカチでもんで、黄色いハンカチにして、それをうさぎの目にかぶせ目隠しすれば大丈夫」という。
はじめは躊躇したけい子だが、月見草の花たちに強く促され実行する。無事自分のうさぎを捕まえ家に連れ帰る。
人間は自然と共に生き、自然の恵みをいただきながら生きていることを優しく知らせてくれる本。地味だが良本だと言える。
ただ、絵が少し残念な感じ。絵を書き直して再販すればそれなりに人気になるのではないだろうか。
安房直子コレクション4 まよいこんだ異界の話 [文学 日本 安房直子]
安房直子コレクションの購入しておいた全作品を読み終わった。
安房直子コレクション1、6、7に収録されている作品は、ほぼ文庫や単行本に収録されている。2,3,4,5には、手に入りづらい作品がそれなりに収録されているので購入しておいた。
この四巻は特に、彼女には珍しい中・長編作品が四篇収められている。
1.「ハンカチの上の花畑」
戦争により丸焼けになり、人もいなくなり、酒倉が一つ残っているだけの「きく屋」に、郵便が届く。それを届けにきた郵便屋。誰もいないはずのその酒倉に、郵便を届けに行くと、中からおばあさんが現れる。郵便屋は、そのおばあさんから、酒が勝手に出来るつぼを預かることに。そのつぼのおかげで、人生が好転した郵便屋さん。しかし、誠実で真面目だった郵便屋さんも色々な誘惑に負けて・・・。
日本の昔話と西洋のおとぎ話をミックスさせたような、不思議なちょっと怖い世界観を持った話。かなりドキドキしながら読みすすめた。
2.「ライラック通りの帽子屋」
この話は前に単行本を借りたかなんかして読んだ事があった。真面目に仕事をする帽子職人が、ある羊との出会いにより思いがけない世界へと誘われる。この世で真面目に働くことの意味、初心に変えることの大切さ、愛情の大切さなどを教えてくれる名品。
3.「丘の上の小さな家」
お裁縫が大好きな女の子の話。そんな女のコが、クモから素晴らしい編み物を教えてあげると言われて・・・。
こちらも日本の昔話「浦島太郎」を彷彿とさせる作品。しかし、安房直子さんが違うのが、遊びほうけているわけではなく、異界で一生懸命技を身に付けようと努力をするところ。色々な仕掛けがなされていて、読後も色々と考えています。まさにブレヒトの異化効果のようなものがある気がする。
4.「三日月村の黒猫」
「丘の上の小さな家」と似た世界観を持った話。しかし、修行を終えたあと元の世界に戻ると、そんなに時間は立っていないので、少し安心して読み終えられる。しかし、近代化に伴う様々な世の中の弊害を我々に示しているような作品。
どれも素晴らしい世界観を持った作品。やはり安房直子は天才だと思う。
すずをならすのはだれ [文学 日本 安房直子]
わるくちのすきな女の子 [文学 日本 安房直子]
安房直子作、『わるくちのすきな女の子』を図書館で借り読んだ。
ポプラ社から1989年に出版されたもので、もう絶版。中古などもほとんど市場に出回っていない。
いつも悪口ばかり言っている女のコが、魔女によって鳥に姿を変えられてしまい、色々な苦難を経た後に、何とか人間に戻るという話。最後は親のもとに帰ってめでたしめでたし、とはならず、自分の家からずっと遠いところで、小さな宿に連れて行ってもらってそこでミルクをもらって終わるあたりが、安房直子作品らしい。
様々な昔話や聖書の題材などが巧みに編みこまれており結構楽しかった。安房直子にしては結構の長さの作品である。教訓めいた作品というのも、彼女には珍しい。
ポプラ社から1989年に出版されたもので、もう絶版。中古などもほとんど市場に出回っていない。
いつも悪口ばかり言っている女のコが、魔女によって鳥に姿を変えられてしまい、色々な苦難を経た後に、何とか人間に戻るという話。最後は親のもとに帰ってめでたしめでたし、とはならず、自分の家からずっと遠いところで、小さな宿に連れて行ってもらってそこでミルクをもらって終わるあたりが、安房直子作品らしい。
様々な昔話や聖書の題材などが巧みに編みこまれており結構楽しかった。安房直子にしては結構の長さの作品である。教訓めいた作品というのも、彼女には珍しい。
つきよに [文学 日本 安房直子]
安房直子さんの作品に、南塚直子さんが絵を描いた作品集。
1. つきよに
2. やさしいたんぽぽ
3. 青い花
4. きつねの窓
5. ひぐれのお客
2は、一冊の絵本でも所有している。3~5は他の作品集で読んだ事があった。やはり4の「きつねの窓」は名作だと思う。お母さんを失った子ぎつねと主人公の微妙な距離感がとても良い。そして誰もが持つ喪失感、そして自然のものを殺すことをどのように考えるのか、ということを何気なく問いかけているのがとても良い。
1の「つきよに」は非常に短いが、ねずみの家族のとても心暖まる話。どんなに小さなものからでも幸せは見つけられるということがわかる。
良作を集めた素晴らしい作品集だと思う。
ゆめみるトランク 再読 [文学 日本 安房直子]
ゆめみるトランク―北の町のかばん屋さんの話 (わくわくライブラリー)
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2021/06/06
- メディア: 単行本
前に図書館から借りて読んだ『ゆめみるトランク』を、ネットで古本を購入し再読。
真面目で世間なれしていない、カバン職人の上原一郎さんが、自分で作ったしゃべるトランクのおかげで、お客がいっぱいくるかばんやになり、奥さんまで見つける話。
1. かばんの中にかばんをいれて
2. 夕空色のかばん
3. 夜空のハンドバッグ
4. ねことトランク
5. はりねずみのランドセル
6. 魔術師のかばん
7. 鹿のかばん
8. 小さい小さい絵本
9. はりねずみのお礼
10. 春風のポシェット
1で、しゃべるトランクに促され、お店にたくさんある在庫かばんをたくさん大きなトランクに詰め、南の町にカバンを売りに行く一郎さん。そこで一気にカバンは売れる。
2で、小学校の先生ゆき子さんに、子どもの作文やノートをたくさん入れられるカバンを作って欲しいと頼まれ作ってあげる。そのあと、残った生地で財布を作り彼女にプレゼント。
3では、その後仲良くなったゆき子さんに勧められ、夜空色のバッグを作り、これが大ヒット。その後二人は結婚。
4では、ゆき子さんが結婚ともに連れてきたねことトランクの交流を描く。
5では、背中にある針のせいで、うまくランドセルが背負えないはりねずみにランドセルの注文を受け、皆でアイデアを出し合う話。
6では、カバンに穴を開けてしまった魔術師からかばんの修理を頼まれる。
7では、「自分が死んだらその皮でカバンを作って欲しい」と頼まれる話。何だか『スーホの白い馬』を彷彿とさせる話だった。
8では、6で頼まれたハリネズミに、妻のゆき子さんが小さい絵本を作ってあげる話。本の中の本となっていて、面白い。
9では、ハリネズミがランドセルを取りに来て
10では、春一番の風が、自分のシューズを入れるバッグを注文。後に来る他の風達のためにウインドウに飾っていたっところ、町の女の子たちの目にとまり、こちらも大ヒット。
真面目で不器用な男の人が素敵な女性を見つけ、自然と交流し、成功する話。この手のストーリーを欠かせると本当に素晴らしい。
おしゃべりなカーテン [文学 日本 安房直子]
安房直子の『おしゃべるなカーテン』を読み終わった。
洋服屋さんを営んでいたおばあさんが、ふと思い立ちカーテン屋を始める。それを孫のはる子が手伝う話。一番初めに、店にかけるカーテンを作るのだが、そのカーテンが言葉を話しはじめる。お客さんから依頼されたカーテンを作る際に、そのカーテンが色々と助言を与えるという話。
1. カーテン屋さんのカーテン
2. 海の色のカーテン
3. 月夜のカーテン
4. 秋のカーテン
5. ねこの家のカーテン
6. 歌声のきこえるカーテン
7. ピエロのカーテン
8. お正月のカーテン
9. 雪の日の小さなカーテン
10. 春風のカーテン
1は恐らく春の様子
2はおそらく梅雨
3はおそらく夏
4はそのまま秋
一年間の流れに合わせ、小さいエピソードをはさみながら物語を紡いでいくこの話。派手な感じではないが、なんとなく心が温かくなる作品集となっている。
今や絶版のこの本。また売り出されないのだろうか。
みどりのスキップ [文学 日本 安房直子]
『安房直子コレクション7』のはじめに収録されている作品で、初めて読んだとき正直あまりよくわからなかった。今回、改めて絵本化されたものを読んでみて、何となく安房直子さんの伝えようとしていたことがわかった。絵本というにはかなり絵が少ない本ではあるが、やはり絵の力はすごいな、と感じた。
桜林で、一面に桜の花が咲く。そこに暮らしているみみずくは、そんなある日桜の精である綺麗な女の子に出会う。その子は桜が咲いている間しか生きられない。そこで、みみずくは来る日も来る日も、雨風などが、桜の葉を散らさないように見張りを続ける。
しかし最後には、世界をすべて深い緑にしてしまう、「緑のスキップ」がやってくる。
「トット トット トット トット」
という表現が、宮沢賢治の『風の又三郎』の冒頭部分を思い出させる。
物悲しさと暖かさが入り混じる不思議な余韻を残す話だ。
安房直子コレクション2 見知らぬ町ふしぎな村 [文学 日本 安房直子]
絶版になっているこの本。結局中古で購入。
既読作品がほとんどだったが、全部再読。一度読んだ事があってもワクワク感をもって読めるのが素晴らしい。
10 オリオン写真館
13 海の口笛
14 南の島の魔法の話
以上三作は、私が所有している安房直子さんの他の本には収録されていない作品。
10は、このコレクションでしか読めない作品らしい。写真屋さんに弟子入りしたオリオンという猿が、いつまでも経っても写真を撮る仕事をさせてくれない親方に腹を立て、ひとり立ちする話。失敗もあるが、最後は自然と調和して仕事をするようになる結末が余韻があって良い。
13は、少し怖い話。「知恵がおくれている」女の子と父親の話。こういう結末なのね、という安房直子さん特有の何とも言えない、結末が美しい。
14は、不思議な話。ビアトリクス・ポターの「グロスターの仕立て屋」と宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」を組み合わせたような、珠玉の作品。夢と希望に溢れた最高のファンタジーだと思う。
何故、こうした本が品切れ重版未定状態なのか不思議だ。
ひめりんごの木の下で [文学 日本 安房直子]
みどりのはしご [文学 日本 安房直子]
復刊ドットコムから復刊された安房直子作『みどりのはしご』を読んだ。
はじまりがとにかく良い。
近所の人に
「おばあさん、あんな き、きっておしまいなさいよ。」
と言われたおばあさんは、
「いえいえ、そんな かわいそうな ことは できません。
わたしは、あの きが とても すきなんです。」
と答える。
近代化が進み緑をどんどん失っていく現代社会において、はじめの部分だけでも素晴らしいメッセージになっている。
その後、その木のそばに赤かぶを植えたおばあさんは、一生懸命面倒を見て、遂に赤カブが十本なる。
しかし、ある朝、一本足りないことに気がつく。持っていったのは・・・。
自然と人間が普段は感じ取れないものに暖かい目を向けるこの作品。
本当に心が温かくなる話だ。
読み終わったあと長男が一言。
「良い話だったね」
この感想が全てだと思う。
うぐいす [文学 日本 安房直子]
こころが織りなすファンタジー 安房直子の領域 [文学 日本 安房直子]
こころが織りなすファンタジー―安房直子の領域 (てらいんくの評論)
- 作者: 藤澤 成光
- 出版社/メーカー: てらいんく
- 発売日: 2004/06/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
読めば読むほど、はまっていく安房直子の作品。
その秘密はどこにあるのか、と思い、この『こころが織りなすファンタジー 安房直子の領域』を図書館で借りて読んだ。文字がびっしり詰まっており、全作品から様々な観点でデータを収集し論じている。
この本を読んで感じた、安房直子作品の魅力は、
①人間の持つ悪、人間が避けざるを得ない死、というものにしっかりと目を向けながらも、それをふんわりと描いている点
②誰もが対等ではなく、生き物すべてに、それぞれの行き方があるということをしっかりと描いている点
③その世界観が最終的に「やさしい」という点に集約される点
私の好きな作家、小川洋子、安房直子の両者に共通する点は、結局メイン・ストリームから外れた存在に対して、そのことを肯定しつつ暖かい眼差しを向ける点。
道徳的に悪い、と捉えられることに対して「悪い」と糾弾することなく、人間の持つ本性としてしっかりと描ききっている点。
なかなか簡単に書けないが、私以外にも安房直子の世界に完全にはまってしまっている人がたくさんいることがわかった。
よくここまで分析しているなあ、と感心させられる本だった。
安房直子コレクション3 ものいう動物たちのすみか [文学 日本 安房直子]
『安房直子コレクション』の3巻を読み終わった。
この巻は、題名通り動物たちのお話。全部で15作品入っているがメインは3作品。
①きつねの夕食会
②ねこじゃらしの野原 とうふ家さんの話
③山の童話 風のローラースケート
①は独立した作品「きつねの夕食会」
コーヒーセットを買ってもらったきつねの娘はお茶会をしたくてしょうがない。そこで、お父さんに頼んで、人間にお客になってもらうことに・・・。なかなかお客は見つからないのですが、ふとしたことでお客さんがみつかって。最後はたくさんお客が来たけれど・・・。
とっても和やかな最後にくすっとなる話。
②は6つの短編でなっている。
1. すずめのおくりもの
2. ねずみの福引き
3. きつね山の赤い花
4. 星のこおる夜
5. ひぐれのラッパ
6. ねこじゃらしの野原
このうちの何作品かは、福音館から出ている『ひぐれのラッパ』で既読。
谷あいの町の住むとうふ家さんの夫婦とそのこどもたちが、動物たちと触れ合う作品。
1は、すずめが、新入学のすずめの子供たちのために、ご馳走を作ってあげようと、豆腐屋さんに油揚げを作ってもらう話。
2は、ねずみが開く福引大会に、とうふ家さんが呼ばれる話。福引大会に参加する代わりに持っていった豆腐が大評判。最後の線香花火の描写がとても綺麗。
3は、とうふ家さんの娘ゆみ子と子ぎつねの心暖まる交流を描いた作品。
4は、『雪女』のような少しぞっとする話。
5も、昔山崩れでなくなってしまった村の亡霊が出てくる、こちらもぞっとする話。
6は、タイトル作品。昔飼っていた猫が、いつの間にか猫向けのとうふ家を営んでいた話。
ほっと心暖かくなる作品から、少し背筋が凍るような作品まで、楽しめる。とにかく、とうふ家さんの心が温かくて良い。
③は全部で8作品からなる。
1. 風のローラースケート
2. 月夜のテーブルかけ
3. 小さなつづら
4. ふろふき大根のゆうべ
5. 谷間の宿
6. 花びらづくし
7. よもぎが原の風
8. てんぐのくれためんこ
こちらは、峠に住む家族たちの話。基本は茂平茶屋という茶屋を営む家族が主人公の話。
1は、ベーコンを作ってみたところ、それがイタチに取られてしまい、大変な目にあう話。結構ドキドキする話。最後は楽しく終わる。
2は、たぬきが経営するホテルに家族で誘われる話。自分も行ってごちそうしてもらいたくなってしまう。
3は、お土産屋さんを営む老夫婦の話。「つるのおんがえし」のような話で、風邪を直してもらった猿に助けられる老夫婦の優しい心がとても良い。最後の一文が心に残る。
「おばあさんは、いちばんはじめに、猿が持ってきてくれた見本のつづらを、だいじにしています。これだけは、けっして売らないでおこうと心に決めているのです。」
4は、いのししのふろふき大根パーティに、茂平さんが呼ばれてご馳走になるはなし。
5は、狭い宿で虫に囲まれる男のはなし。これはかなり怖いし気持ち悪い。
6は、年に一度やってくる、桜の精による、お祭りに誘われてた婦人たちの話。最後は少し教訓めいていて怖い。
7は、こどもが遊んでいるうちにいつのまにかうさぎになってしまっている話。安房直子さんは同じ様な話しを違う形で何回か書いている。あまんきみこさんなどもそうなのだが、結構児童文学になわとびをモチーフにして話を膨らませることがよくある。
8は、傑作。絵本にもなっている。めんこの弱い男の子が天狗にもらっためんこで、きつねたちと勝負するうちに力を付ける話。「セロ弾きのゴーシュ」のような動物たちによって力をつける人間の姿がとてもほのぼのとしていて良い。
どれもおもしろい作品だった。
たんぽぽ色のリボン [文学 日本 安房直子]
「たんぽぽ堂」という文房具屋を営むおじいさんのお話。
町の小さな文房具屋を営んでいたおじいさん。はじめは店の周りにはあたり一面のたんぽぽ畑だったのが、段々と家が立ち、大きな文房具屋が近くに出来、店は売れなくなっていく。
そんなある日、黄色い服に身を包んだ女のコがやってくる。彼女の提案により、店は再び盛り返す。
そして、またまた月日は経ち、最後は・・・。
バージニア・リー・バートンの書いた『ちいさいおうち』にテーマは似ていると思う。
しかし、安房直子さんのこの本の方が、現実にしっかりと向き合い、最後はありのままを受け入れている感じがはるかに良い。
これもなかなか味わい深い作品だった。
グラタンおばあさんとまほうのアヒル [文学 日本 安房直子]
グラタンおばあさんとまほうのアヒル (どうわのひろばセレクション)
- 出版社/メーカー: 小峰書店
- 発売日: 2009/03/01
- メディア: 単行本
安房直子さんの『グラタンおばあさんとまほうのアヒル』を読み終わった。次男と一緒に読もうと思っていたのだが、あまり次男は興味を示さなかったので、とりあえず一人で読んだ。長男は結構安房直子さんの作品が好きなのだが、次男はそうでもないらしい。年齢的にまだ難しいのかもしれない。
グラタンが大好きで毎日のようにグラタンを作っているおばあさん。彼女が毎日使うグラタン皿には一羽のアヒルが、描かれていた。ある日おばあさんが病気になり、買い物に行けず食材が買いに行けないおばあさんのために、アヒルはほうれん草を出してあげる。その後も色々な食材を出してあげていたら、それにすっかり慣れてしまったあばあさんは全然自分で買い物に行かなくなる。そのことに頭にきたアヒルは家出をする。
その後、アヒルは、若い奥さんや子供、風船売りのおじさんに出会ったアヒルは、最終的に・・・。
他作品に比べると、ヒリヒリした緊張感や、ほんわりした暖かさがすごくある、という作品ではないが、穏やかなタッチがホッとする作品ではある。
いせひでこさんの絵がとても良かった。
やさしいたんぽぽ [文学 日本 安房直子]
うさぎのくれたバレエシューズ [文学 日本 安房直子]
最近、安房直子さんの絵本が、市場から消えてしまう前に手に入れておこうと思い、手に入れられる絵本を購入している。
この『うさぎのくれたバレエシューズ』は、前に図書館で借りて読んだ事があった。その時はそんなに面白いと思わなかったので、買わなかったが、改めて購入して読んでみると結構深く、よい話だった。
宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ』に似た様なテーマ性を感じた。
やはり何かが上手くなりたいとなった時、かなりの時間と労力をかけて努力する必要がある。しかしなかなかその一歩は踏み出せない。「セロ弾きのゴーシュ」の「うさぎのくれたバレエシューズ」も動物たちの力を借り、自然に、自分では努力しているという意識なく努力し、いつのまにかうまくなっているという部分が共通している。
とてもこころ暖まる、重要なことを優しく伝えてくれる作品だと思う。
うさぎ座の夜 [文学 日本 安房直子]
安房直子さんが最晩年に書いた作品と言われる。名作『花豆の煮えるまで』の続編的な作品らしく、偕成社から出版されていた『安房直子コレクション7』では、「花豆の煮えるまで」の後に収録されており、このコレクションを最後を飾る作品だった。
現在、この『うさぎ座の夜』と『安房直子コレクション7』は絶版になっており、図書館で物語を読み、そんなに心に残る作品ではなかったのだが、やはり手元に置いておきたくなって、アマゾンの古本市場で購入した。
『花豆の煮えるまで』と同じく、味戸ケイコさんが絵を描いており、安房直子さんの作品にはぴったりあう画風の人だと思う。
やまんばの娘小夜(さよ)が、川のほとりで遊んでいると、メッセージの書かれた紅葉の葉が流れてくる。それは、「うさぎ座」という人形劇団の公演の招待状だった。おばあちゃんに相談したり、いろいろ迷ったっりした挙句、小夜は公演に出向く。劇自体はそんなに面白くなかったが、劇の途中で自分が手袋をなくしてしまったことに気がつき、しかもその手袋が・・・。
という内容。人間の抜けている部分と、自然をうまく結びつけており、一回目に読んだ時より、結構心に残った。今回は絵がついていたということで、イメージも膨らんだのかもしれない。
なんにせよ、安房直子さんの素晴らしい作品群の多くが、品切重版未定状態なのが残念でならない。
ひめねずみとガラスのストーブ [文学 日本 安房直子]
安房直子さんの絵本を購入して読んだ。
彼女の本をふとした事から読み始め、その作品に惹きつけられるにつれいろいろなさらに読みたくなり、色々と探すうち、彼女の本は一度出版され市場に出ても、結構すぐに品切重版未定状態になってしまうことがわかった。彼女が『安房直子コレクション』の何巻かのエッセイで書いていたが、じっくりと読むことでその良さがわかる本がどんどん市場から消えていってしまう。刺激の強い、その場だけ楽しければ良いという本ばかりがこの世に形として残り、じっくり後まで心に残るような本は物としてこの世に残らなくなってきている。彼女が言うには、宮口しづえ、という作家もそんなじっくり読まれるべき作家らしいのだが、私にはちょっと理解しきれなかったが・・・。
前置きが長くなったが、小学館から出ているこの『ひめねずみとガラスのストーブ」も絶版になってしまっては手遅れだと思い、購入して子供と読んだ。
風の子なのにさむがりのフーが、ガラスのストーブを購入し、みんなにバカにされるのが嫌で森の奥で静かに一人で温まっていると、一匹のひめねずみがやってきて、そこで一緒に暖まり、段々と心通わせるようになり、一緒に生活するようになる。そこへ、北国から風の子オーロラがやってくる。彼女と一緒に旅に出たフーは、すぐに帰れると思っていたが、帰るまでにかなり長い時間が経ってしまっていた。そして元の森へようやく帰ってみると・・・。
表紙には「こころがポッとあたたかくなる」と書かれているが、ラストは結構悲しい感じになっている。安房直子さんの作品は、厳しく・さみしい中に暖かさがある素敵な作品だ。
この作品も非常に色々と考えさせられる良書だと思う。
山のタンタラばあさん [文学 日本 安房直子]
小学館で、安房直子さんの絵本『くまの楽器店」を買ったところ、背表紙の裏にこの本が載っていて、調べたところ品切重版未定状態だったので、中古で購入した。
まずは、出久根育さんの絵がとても良い。特に動物たちがとても本物っぽいのに優しさに満ちていて素晴らしい。優しい物語がさらに優しさを増している。
始まり方が昔話っぽくて、そこも心がほっこりする。
「さ、タンタラばあさんの話をしようね。」
物語は全部で4つあり、話がつながりながら展開されていく。
①タンタラばあさんは魔法つかい
②タンタラばあさん空を飛ぶ
③タンタラばあさんカラスのうちへ
④タンタラばあさんのしゃぼん玉
①でしもやけになってしまったうさぎの耳を治してあげて、
②では、口笛が吹けないモミの木の先生として、ヒバリを連れてきてあげて
③では、カラスのうちで、カステラとお茶をご馳走になり
④では、しゃぼん玉をたぬきの子どものために、大きくふくらませて飛ばしてあげる。
出久根さんの絵では、タンタラばあさんは動物たちよりもかなり小さいものとして描かれている。おそらく森の妖精のような扱いなのだろうと思う。
いつも思うが、本当に安房直子さんの物語は心が暖かくなる。私の愛読書宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」と近いものを感じた。
春の窓 [文学 日本 安房直子]
『安房直子コレクション』第五巻で、「あるジャム屋の話」を読み、ぜひ手元に置いておきたいと思ったのだが、もう絶版になっていて、いろいろ調べていたら、この『春の窓』に収録されているとしり購入した一冊。結構多くの作品が既読だった。
1. 「黄色いスカーフ」
『花のにおう町』で既読。おばあさんが、黄色いスカーフによって、新たな自分に出会う話。
2. 「あるジャム屋の話」
一流企業をやめて、一人でジャム屋をはじめるがうまくいかなかったところを、鹿に助けられ、その鹿と結婚する話。最高に美しい話だ。
3. 「北風のわすれたハンカチ」
こちらは同名文庫に収録されている作品。北風の娘と悲しみに沈む熊が心通わせる話。これも大好きな作品だ。
4. 「日暮れの海の物語」
この本で初めて読んだ物語。カメに、「愛する人を助けてあげるお礼に、結婚すること」を約束させられた女の子の話。助けてあげた人は別の人と結婚してしまい、カメと結婚したくなくて、逃げ回り、最後は縫い物やのおばあさんのところに逃げ込み静かに暮らしていたが・・・。最後の結末がハッピーではないのだが、何となく心落ち着くのはなぜだろうか。
5. 「だれにも見えないベランダ」
『夢の果て』収録作品。これも大好きな作品。動物たちに愛される女性に、ベランダを作ってあげる大工さんの話。最後はとても素敵なハッピーエンド。
6. 「小さい金の針」
これもこの本で初めて読んだ物語。おばあさんとねずみが、金の針によって心通わす様子を描いた作品。ねずみによっておばあさんが、心を開放していく様子がとても良い。前向きになれる作品。
7. 「ほしのおはじき」
いじめを受け、ほんの出来心で悪い行為をしてしまった子が、柳の木によって心を取り戻す作品。黒さの中に、明るい光が指しているこれも美しい作品。
8. 「海からの電話」
ギターをカニに壊されてしまった男の人が、カニにそれを直してもらう物語。壊れたといっても弦を切られただけなので、ただ単に弦を取り替えれば良いだけな気もするのだ。悪い話ではないのだが、その変が気になってしまい、あまり物語に入り込めなかった。
9. 「天窓のある家」
こちらも『夢の果て』収録作品。自然な木の養分をもらうことによって、悩んでいた若者が心を取り戻し、前向きに生きられるようになる作品。どこか暗さがさすが、心暖かくなる最高の作品。
10. 「海からの贈り物」
『まほうをかけられた舌』収録作品。海ばあさんたちが怖くて、あまりいい気分になれないのでちょっと残念な作品
11.「春の窓」
『ひぐれのラッパ』収録作品。猫と画家の心の交流を描いた作品。猫によって、妻も見つけるとってもハッピーな作品。とても面白い。
12. 「ゆきひらのはなし」
こちらは未読作品だった。偕成社から絵本化されている作品。表紙の絵があまり魅力的ではないので読まなかったが、読んでみるととても良い話だった。「ゆきひら」は「おなべ」。お鍋によって心身共に疲れていたおばあさんが、前向きに生きられるようになる話。
全体的に前向きに終わる、ハッピーエンド作品が多く、既読作品が大半だったが、結構その多くがお気に入りの作品だったので、かなり楽しめた。
くまの楽器店 [文学 日本 安房直子]
図書館で安房直子の作品を探していたら偶然であった作品。あまりにも良い話なので、こちらも子供にクリスマス・プレゼントとして送った。
くまが営む楽器店に、それぞれの問題を、ある楽器を提案しうることで解決してあげる。
1. ふしぎなトランペット 雨の日で退屈していた男の子 トランペット
2. 月夜のハーモニカ 育てているブドウを甘くしたいぶどう園の主人 ハーモニカ
3. 野原のカスタネット お腹をすかせたねずみの子 カスタネット
4. さむがりうさぎのすてきなたいこ さむがりのうさぎ たいこ
それぞれがそれぞれの問題を抱えており、それを楽器を通して、つまり音楽を通して解決してあげ、前向きに生きていくよう促すくま。
心が優しく前向きになれる本当に素晴らしい本である。
まほうのあめだま [文学 日本 安房直子]
安房直子の絵本、『まほうのあめだま』をクリスマスに子供にプレゼントした。読んだ感想をブルグにあげるのを忘れていた。
新しい場所に引っ越すことになり、買っていたねこ、チロー、を連れて行くことができなくなってしまった主人公、みほこちゃん。チローを可愛がってくれそうな、近くのお菓子やさんのおばあさんにもらってもらうことに。そこで幸せに暮らしていたチローだが、やっぱり寂しくなって・・・。
高校の英語の入試問題で出題されそうな感じのストーリー。ふたりを結びつける「まほうのあめだま」という発送も可愛いし、いもとようこの絵もとても柔らかくてこの本の雰囲気にとても合っている。
心がほっこりする良い話だった。
コンタロウのひみつのでんわ [文学 日本 安房直子]
『コンタロウのひみつのでんわ』を読み終わった。この本は秋書房という出版社から出ていたらしいのだが、絶版になっていたらしい。それが、復刊ドットコムによって復刊されたらしい。復刊ドットコムから復刊されたということは、多くの人が復刊を望んでいたということであり、それだけ名作なのであろうということで、早速アマゾンで購入し、読んでみた。
子供たちもみんな独立し、奥さんにも先立たれた、布団屋のおじいさんの話。ある日少年がやってきて、布団を注文する。実はその少年はコンタロウというキツネの子供で、そこからコンタロウとおじいさんの交流が始まる。花を使用したひみつのでんわで、おじいさんとコンタロウは連絡を取り合い、暖かい交流を続ける。最後は、場所的に離れていても、心理的につながっていればお互いのことがわかる、という最高の結末となっている。ネット環境を使った遠隔コミュニケーションが主流の今、花と風を使用したコミュニケーションをテーマにしたこの物語。素敵すぎる。
相変わらず心暖まる話だった。
銀のくじゃく [文学 日本 安房直子]
偕成社文庫から出ている、安房直子の童話集をすべて読み終わった。
1.銀のくじゃく
2.緑の蝶
3.熊の火
4.秋の風鈴
5.火影の夢
6.あざみ野
7.青い糸
2は比較的短い作品で、イマイチよくわからない作品。安房直子作品としてはもう一歩な感じか。
他の作品は、短編ではあるが、全体的に若干長めの作品。
1は、本のタイトルにもなっているだけありかなり面白い。
真面目で腕の良い若い機織り職人の話。あるお客にお願いされ、森で「緑のくじゃく」を織り込んだ旗を作って欲しいと頼まれる。数日一心不乱にそれを作っていると、頼んだ人とは別の人が仕事場にやってきて、「銀のくじゃく」の旗が欲しいと言われる。元々頼んだ人は「緑」以外で絶対に織ってはいけない、と頼んでいたのでかなり悩んでしまう。悩んだ末、どちらにもわからないように、表は緑、裏は銀で旗を編み上げる。そのうちに、その若い機織りは・・・
ひとつのことに熱中することで、その物自体と一体化してしまう、決してないのだが、ないとは言い切れない情景を描いた、非常に幻想的で美しい作品。
3、4も傑作。3は、『安房直子コレクション5」で既読だったが、やはり面白かった。山で遭難した男が、熊と結婚し子供までもうけるのだが、ふとしたことで人間の世界に戻ってしまう話。熊として、理想郷のような世界で生きるのか、少し辛いことがあっても人間として生きるのか、読む人にそのようなことを問うている作品とも言える。
4は、『夢の果て』で既読。こちらも美しい作品。「風鈴がうるさい」と差出人不明の手紙が来るのだが、不気味に思っていたが、結局はそれは野に咲くコスモスだったという話。人間的視点ではなく、自然的視点で世界を捉えている点で非常に優れた作品と言える。
5は、超傑作。ストーブに閉じ込められてしまった異国の少女を中心に、優しい心を持つことなく生きてきたおじいさんが、このストーブ・少女との出会いから、優しい心を取り戻し、かの世界で生きていく話。ディケンズの『クリスマス・キャロル』にも通じる世界観をもった本当に素晴らしい話だ。
6も怖いが考えさせられる話。獣の皮を売って生きる男が、井戸の精に呼び止められ、そのことによって、自分が今まで売ってきた皮の動物たちと対面せざるを得なくなり、革を売る商売をやめる話。怖い話なのだが、優しさに満ちているのはなぜなのだろう・・・。
7も、超傑作。孤児の女の子が、自分の中で作り上げた恋人にマフラーを編んでいるうちに、鳥になってしまい、数十年後、同じ場所に来た若い男も、鳥になった彼女に連れられ一緒に鳥になってしまう話。「盗み」「母の再婚」「親しいものの死」など非常に暗いテーマばかりが取り上げられている作品なのに、希望と暖かさに満ちているのはなぜなのだろうか。
安房直子は本当に天才だと思わせる素晴らしい作品集だ。
うさぎ屋のひみつ [文学 日本 安房直子]
ブックオフで偶然この絶版になってしまった本を見つけ、思わず買ってしまった。収録作品は4作品。
1. うさぎ屋のひみつ
2. 春の窓
3. 星のおはじき
4. サフランの物語
1~3は他の本にも収録されており既読作品だったが、再読。
1は怠け者の奥さんに美味しい夕御飯をデリバリーしてくれるうさぎさんのお話。うさぎは若干あくどい部分もなくはないが、そんなにひどいこともしていないので、結末がうさぎにはちょっとかわいそうな気がした。だが、当のうさぎは前向きな感じになっているのでいい気がする。
2は、貧乏な画家が猫に助けられ、絵が売れるようになり、奥さんまで手に入れることに。この間読んだヒラメの話と重なるテーマではあるがやはり面白かった。
3は、いじめられ、泥棒めいたことをしてしまう少女の物語。これも暗い話だが、最後は希望を持って終わる。
唯一の未読作だった4だが、もう一歩だった。お母さんとまりで一緒に遊んでいるうちに、まりが飛んでいってしまい、それを追いかけているうちにサフラン畑に行き着き、そこであったあ婆さんに鳥に変えられてしまう少女の話。最後は親の愛が勝つ、という話。
絶版になっている本はどうしても欲しくなってしまう。とはいえ、重なる作品が多かったので少し残念な気がする本だった。