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オリオン写真館 [文学 日本 安房直子 あ行]


見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/04/01
  • メディア: 単行本



この『安房直子コレクション2 見知らぬ町ふしぎな村』でしか読めない作品。

オリオン星座がさえざえとまたたく冬の晩、高い高い山で、生まれた猿のオリオン。
山での暮らしにあきあきし、人間の村へやってきて、ある写真館で見習いとして働くことに。
「そのうち、りっぱな写真師にしたててやるから・・・・・・」という主人の言葉を信じて3年間働くが、一度も写真機に触らせてもらえない。

おかしいと思ったオリオンは独立を決意し、主人から写真機を一台もらい、村へ繰り出す。
ちょうど小学校の入学式がある日で、たくさんの人から依頼を受け写真を撮る。夜、現像しようと写真機を開けてみると、なんと中にフィルムが入っていない・・・。

こまったオリオンはとなりまちへ逃げることを決意し、そこで新しいオリオン写真館を開く。
それなりに繁盛していたある日、夜遅くに女の子が写真を撮ってくださいとやってくる。
撮ってあげて現像すると星しか写っていない。しかも届け先もわからない。

結局オリオンは、星をさがし高い高い山を登っていき星を撮る写真家になる。

最後は、写真を撮ってものの現像してあげられなくて騙すような形になってしまった人々に、星の写真を送る。

自分の生まれ故郷に戻り、自分の過去を精算する、少し痛々しくも美しく優しい話。
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おしゃべりなカーテン [文学 日本 安房直子 あ行]


おしゃべりなカーテン (文学の扉)

おしゃべりなカーテン (文学の扉)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/06/22
  • メディア: 単行本



安房直子の『おしゃべるなカーテン』を再読。次男と寝る前に一章ずつ読んでいった。

洋服屋さんを営んでいたおばあさんが、ふと思い立ちカーテン屋を始める。それを孫のはる子が手伝う話。一番初めに、店にかけるカーテンを作るのだが、そのカーテンが言葉を話しはじめる。お客さんから依頼されたカーテンを作る際に、そのカーテンが色々と助言を与えるという話。カーテンを縫うときに歌う歌があり、それがリズムよく楽しい歌詞で、子供たちも口ずさんでいた。

1. カーテン屋さんのカーテン
◎梅雨時期
おばあさんがはじめて作ったカーテンをまどにかけると、カーテンが話し出す。次の日からずっと雨が降り続きお客さんは来ない。しばらくして、カーテンが「あけて、あけて、外を見て」と話し出す。窓を開けてみると雨が上がっていて空には虹!!!。

2. 海の色のカーテン
◎夏
ある日海で生まれ、海で育ったものの、都会に仕事に来ているお客さんが、海を思い出したいと海色のカーテンを作ってくれ、と頼みに来る。話をする白いカーテンの勧めで、薄いレースを5枚重ねた海色のカーテンが完成する。

3. 月夜のカーテン
◎十五夜?
はる子が野原を歩いていると、ふと声が聞こえる。探すとそこには小さな蝶々。夏の愛だ飛びすぎて疲れているが、日の光、月の光がまぶしすぎて眠れないという。そこで蝶々ように、小さな夜のカーテンを作ってあげる。

4. 秋のカーテン
◎秋
台風がやってきてお客さんは来ない。仕事もする気にならないおばあさんだが、白いカーテンが作りだめしておくことを勧める。一日で55枚も作り、「秋色カーテンできました」と看板を出す。

5. ねこの家のカーテン
◎きんもくせいの香る季節
ある日いい陽気でおばあさんがウトウトしていると、塀の上のねこたちの話し声が聞こえる。色々話しているうちに、リボン模様のカーテンを作って彼らの家に届けてあげることになる。最後に猫から、お土産に半月型の小さなワッフルをもらう。

6. 歌声のきこえるカーテン
◎晩秋
枯葉の季節、なんとなく忙しくイライラしているおばあさん。それに対して白いカーテンが、「かれ葉は散るとき歌をうたうのよ」というが、おばあさんは取り合わない。そんなおばあさんに
「けんかをしているときはだめですね。いそがしすぎるときもだめですね。心がおたがいにすなおで静かなときでないときこえません。」という。そうしているうちにおばあさんは病気に。静かに眠ろうとすると自然の声が聞こえる。

7. ピエロのカーテン
◎クリスマス
町にサーカスがやってきて、ピエロが手品に使うカーテンを求めてやってくる。黒いビロードのカーテンを作ってあげると、ピエロはそれを広げて飛び立ち、星を捕まえに行く。

8. お正月のカーテン
◎お正月
家を綺麗にしてお正月を迎えようと、おばあさんは家中を綺麗に。やっと終わったと思ったら白いカーテンが自分も洗って、と頼む。しかも手洗い。はじめは躊躇したおばあさんも、はる子と一緒に洗ってあげる。新鮮な気持ちでお正月を迎える。

9. 雪の日の小さなカーテン
◎冬
雪の日、カーテン屋さんにおばあさんねずみがやってくる。昔結婚式の時に身につけたベールをカーテンにして欲しいと頼まれる。人間のおばあさんとねずみのおばあさんが協力してベールを作り上げ、最後にお礼としてまほうの針さしをもらう。

10. 春風のカーテン
◎春
ある日、妊婦の若い女性が、あかちゃんの部屋に飾るカーテンを頼みに来る。白いカーテンに進められ若草色の素敵なカーテンを仕上げる。10日後、若い男性がカーテンを取りに来る。前回来た女性の夫で新しく生まれた男の子のお父さん。

最後は風が白いカーテンを揺らし、春の匂いを感じさせて終わる。

一年間の流れに合わせ、小さいエピソードをはさみながら物語を紡いでいくこの話。派手な感じではないが、なんとなく心が温かくなる作品集となっている。あんびるやすこさんは、安房直子さんに影響を受けているのでは?とおもわせる作品集。次男も「これの続きの本はないの?」と読み終わったあとに尋ねてくるくらい楽しい作品だったようだ。
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奥さまの耳飾り [文学 日本 安房直子 あ行]


夢の果て: 安房直子十七の物語

夢の果て: 安房直子十七の物語

  • 出版社/メーカー: 瑞雲舎
  • 発売日: 2005/12/10
  • メディア: 単行本



日暮れの海の物語

日暮れの海の物語

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2023/01/31
  • メディア: 単行本



小夜は、お金持ちの奥さまのもとで働く女中。
その奥さまが耳飾りを落とされたという。奥さまはひどく悲しんでおり、女中総出で耳飾りを探す。

夕暮れ、庭の黒い土の上に、その耳飾りがあるのを小夜は見つける。「身につけてみたい」という欲望に負けて耳飾りをつけると、海の音が聞こえてきて、おいでおいでと呼ぶ声が聞こえてくる。

いつのまにか海へ出ていた小夜。そこでくじらと出会う。実はその耳飾りはくじらが魔法をかけて奥さまにおくったもので、その耳飾りを両方つけると彼女はくじらに会うことができる。しかし片一方つけると魔法は解けてなくなってしまう。

くじらによってお屋敷に戻された小夜。それから幾日も経たないうちに、お屋敷はつぶれてしまう。

人間の小さな欲望を描いた、悲しく切ない話。
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丘の上の小さな家 [文学 日本 安房直子 あ行]


まよいこんだ異界の話 (安房直子コレクション)

まよいこんだ異界の話 (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



お裁縫が大好きな女の子の話。そんな女のコが、クモから素晴らしい編み物を教えてあげると言われて・・・。
こちらも日本の昔話「浦島太郎」を彷彿とさせる作品。彼女が自分の家に戻ったあと、彼女を助けるお母さんにお世話になっていた猫がとても愛らしいし、安房直子さんの作品らしい。
最後の場面で、彼女がレース編みを習うために家を飛び出してしまった時と同じ年齢の女の子がやってきて「レース編み」を教えて欲しいといって、彼女との交流が始まる場面はとても暖かで、どこか切ない。

色々と考えさせられる良作。国語の教科書などでも取り上げられても良い作品だと思う。
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エプロンをかけためんどり [文学 日本 安房直子 あ行]


遠い野ばらの村 (偕成社文庫)

遠い野ばらの村 (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2011/03/17
  • メディア: 単行本



安房直子さんの作品にしては珍しく登場人物たちに名前が付いた作品。

三人の子どもがいる、お百姓の三十郎。
一番上の初美 5つ
二番目の志津 3つ
政吉     赤んぼう

一番下の子が生まれると、おかみさんは病気でなくなってしまい、三十郎は泣いて過ごし、子どもたちはお腹を空かせ家は荒れ放題に・・・。

そんな時、「エプロンをかけためんどり」がやってくる。このめんどりはかつておかみさんが可愛がっていてめんどりで、太陽へ向かって飛び立ってしまっためんどりだった。

このめんどりが魔法の道具を使って、お料理、お洗濯、お掃除、寝かしつけまで家のことは何でもやってくれる。一番上の初美はこのめんどりになつき、夜皆が寝静まったあと、押入れの中に入りふろしきを広げ夢のような世界を見せてもらう。

しばらくこのめんどりに世話になりっぱなしだった三十郎。慣れてくると子どもがこのめんどりになついていることが気に入らなくなってくる。そんなある日三十郎に再婚話が持ち出され再婚することに。

結婚式の日、めんどりは殺され鳥料理になる。
そのことを知り泣きわめく初美。新しいお母さんにやさしくされなんとか落ち着く初美。

新しいお母さんはひよこを三匹連れてきて、三人の子供は大事に育てる。
数ヶ月経ったある日、三十郎が、外でにわとりの声が聞こえたので、表へ出てみるとにわとりが太陽へ向かって飛んでいくところだった。

喜んだ初美。
p220
「また来ておくれよう。エプロンかけて、魔法の道具持って、いつかきっと、来ておくれよう。」
 初美は、このときはっきりと思ったのです。
 いつか、いつか、あのにわとりたちは、もどってくくれると。自分がこまったときには、~中略~新しい白いエプロンかけて、きっときっとたすけにきてくれると。」

人間の勝手さと欲望を描きながらも、子どもの心の優しさ、そして希望を持ったエンディング、素晴らしい作品だ。
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海の雪 [文学 日本 安房直子 あ行]


きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/01/02
  • メディア: 単行本



ある雪の日、海沿いの道に停まったバスからある少年が傘もささずに降りてくる。
小さい時に別れた母親に会いにはるばるやってきたのだ。「海岸通り四丁目」「みなと屋」旅館という住所と旅館の名前だけを頼りに探すが、歩けど歩けど見つからない。雪も体にどんどん積もりうもれてしまいそうになったとき、ふと傘が差し出される。母親に似たその子の差してくれた傘の模様は、もくれんの花のようにも、美しい鳥のようにも見える。傘を差しながら母親の住むという旅館を訪ねると、海岸通りは三丁目までしかなく、みなと屋などという旅館も聞いたことがないという。次第に彼は眠くなってくる。そんな中、少女が傘を閉じると、傘がふわりと少年の頭を覆い、いつのまにか二人は白いテントの中に座っていた。そしてふたりは笑って語り合っていた・・・。

その日の夕暮れ、ある少年が海沿いで助け出される。彼が歩いた道には、鳥の足跡も残されていた。

アンデルセンの「マッチ売りの少女」を若干イメージさせる、悲しさと切なさと温かさの入り混じった素敵な作品。
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海の口笛 [文学 日本 安房直子 あ行]


見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/04/01
  • メディア: 単行本



ある港街に、かけはぎ屋(洋服の虫食い穴やたばこのこげ穴を元通りに修繕する仕事屋)を営む人がいた。この男には娘が一人いたが、彼女は知的発達障害があり、ものをしゃべらなかった。

ある日、びしょ濡れの若い男が、真ん中にポツンと豆粒ほどの穴があいている絹のスカートを持ち込む。お礼には指輪をあげましょうと言って、口笛を吹きながら帰っていく。

いよいよ修繕しようとして穴を覗き込むと中には海が見える。さらにそれを見た娘は男が吹いていた口笛のメロディを奏でている。その後数日感、その海の美しさに見とれて仕事が進まない男。口笛を吹き続ける娘。

海を見るのは最後にしようと思って穴を見ていたところそこから魚が一匹飛び出てくる。その魚を食べるととっても美味しい。その味にはまってしまい来る日も来る日もその絹のスカートの穴から出る魚を食べ続ける。するとどんどん若返り、髪もつやつやに。

あまりの美味しさに魚をもっと沢山一気に捕ろうと考えた男は網を作って穴に入れるが、ついに穴が破れてしまい、そこから水が溢れ出す。さらに娘は補修を頼んだ男と一緒に海の底へと行ってしまう。

男は自分の欲望のためにボロボロになってしまったが、素直で一途な娘は幸せになる読後感がとても良い話。
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海の館のひらめ [文学 日本 安房直子 あ行]


遠い野ばらの村 (偕成社文庫)

遠い野ばらの村 (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2011/03/17
  • メディア: 単行本



見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/04/01
  • メディア: 単行本



島田しまおという、真面目で若い青年がレストランアカシヤという店で下働きとして働いている。もう5~6年働いているのに、下働きばかりやらされている。料理長や同僚から色々言われ、もうやめようと思っていたところ、流しの下の氷の上に寝ているひらめに「わたしが力になってあげますから、もすこし、ここで、しんぼうしなさい。」と言われる。

ひらめの骨を家に持ち帰り、塩水につけてあげるとひらめは色々とアドバイスをくれる。
まずは売りに出されていたレストランを借金をして買い、ひらめに様々な料理をならう。寝る間も惜しんで正直に頑張り、最後は教わった料理を習得する。最後はいい奥さんを見つけなさいと言われ、喫茶店でピアノを弾いていた「あい」という娘に、自家製の美味しいパイを持って行って仲良くなり、最終的には婚約する。

ここまで来るとひらめは「わたしの仕事も、これでおわりました」といい死んだ魚のようになってしまう。しまおとあいは、結婚式をあげ、ひらめの骨を海へと返してやる。

(安房直子 偕成社コレクション2巻)
p.225
「いつまでたっても下働きなのは、たぶん、〈料理学校の卒業証書〉を持っていなかったからでしょう。それから、ばか正直で、ゆうずうがきかなくて、人のきげんをとるのがとてもへただったからかもしれません。」

p.233
「わたしは、さっき、調理場の氷の上で、あなたの働きぶりを見ていましてね、すっかり気に入ったんです。正直で、まじめなところが、なによりです。そんな人間が、そんばかりしているのが、わたしには、がまんできませんでねえ・・・・・・。」

この二つの言葉にこの話のすべてが詰まっている。真面目に生きることの大切さ、まじめに生き、美しい心を持った相手と生活を築くことができるすばらしさを教えてくれるこの作品。素晴らしい。
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海からの電話 [文学 日本 安房直子 あ行]


春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫)

春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/11/04
  • メディア: 文庫



日暮れの海の物語

日暮れの海の物語

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2022/08/19
  • メディア: 単行本



ある音楽学校の学生が、自分のギターを海辺の砂の上において、少しウトウトしてしまう。起きてみると弦がすべて切れている。「だれだ!こんなことをしたのは」と叫ぶと、「ごめんなさい」と名乗り出たのはカニ達。自分で音を鳴らしてみたかったが結果的に弦をすべて切ってしまったという。

カニたちは、ギターを預かって弦を張り替えたいと願い出る。終わったらカニのやり方で電話するという。そしてお詫びの印だかわからないが、3時のお茶を飲んでいってくださいと、お茶とクッキーが出され、食べてみるととても美味しい。

一週間ほどして、カニから荷物が届き中には貝殻が入っている。耳に当ててみるとギターの音が。しかし音がイマイチなので、そう告げると一週間後また電話するという。

一週間後、再び電話が来て、今度は歌を歌っている。ギターの音も歌のハーモニーもイマイチで、それを告げると、カニたちも一生懸命努力しているんだ、と訴えてくる。そこで学生はしばらくギターを貸してくれるということになる。

自然と人間の交流を描いた、これもけっこう印象的で素敵な話。
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海からのおくりもの [文学 日本 安房直子 あ行]


春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫)

春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/11/04
  • メディア: 文庫



まほうをかけられた舌 (フォア文庫)

まほうをかけられた舌 (フォア文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1979/10/01
  • メディア: 新書



海の町に住むかなこは、おかあさんと二人暮らし。そんなおかあさんも病気がちなためとても貧乏な暮らしをしている。

夏が終わって海水浴のお客がみんな帰ったあと、その町ではお祭りが行われる。その日、お母さんは五十円玉を二つお小遣いとしてくれた。かなこは、五十円は自分のおみやげ、五十円はお母さんへのおみやげと決めてお祭りへと向かう。

50円で変えるものはあまりなく、どうしようかと迷いながら商店の中を歩いていると、海の色とそっくりの青いネッカチーフをかぶったおばあさんが貝殻を売っている。迷った末に、50円でひと袋買う。その袋をポケットに入れて歩いていると、貝殻が歌いだし海へ行くよう促す。

海へ言ってみると、青いネッカチーフをかぶったおばあさんたちが、貝殻を使っておはじき遊びをしている。自分の買った貝殻でそのおはじき遊びに参加するかなこ。しかし全く勝てず、すべてを失ってしまう。

もういっかい遊びに参加しようと、もうひと袋買いに行くが、もうすでにおばあさんの店はなくなっている。となりの店のおじさんに聞くと、「そりゃ、海ばあさんだ」「祭りの晩によくやってきて、妙なものを売って、子供のこづかいをまきあげるのさ」と言われる。

走って浜にたどり着くと、あばあさんたちがおはじき遊びをしていた場所に、貝殻が残されている。拾い上げてみると、細い糸でつながれて、二本のすばらしい首飾りになっていた。

彼女はそれを持って家に帰り、お母さんと自分へのお土産とする。

初めは心が痛む話なのかと思ったが、最後はハッピーエンドで終わりとても心が暖かくなった。
けっこう印象的な素敵なお話。
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うさぎ屋のひみつ [文学 日本 安房直子 あ行]


うさぎ屋のひみつ (現代の創作児童文学4)

うさぎ屋のひみつ (現代の創作児童文学4)

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1988/02/22
  • メディア: ハードカバー



ひぐれのラッパ (福音館創作童話シリーズ)

ひぐれのラッパ (福音館創作童話シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 2010/09/20
  • メディア: 単行本



見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/04/01
  • メディア: 単行本



キャベツ畑のとなりの小さな家に、若い奥さんが住んでいる。彼女はとてもかわいらしく気立てがよいが、なまけもの。家事はほとんどやらない。

ある日「今夜のおかずは、なににしよう・・・・・・」と考えていると
エプロン姿のうさぎがやってきて、「今夜の夕食、おとどけしますよ」という。
毎月一回、アクセサリーを渡せば、一ヶ月分の夕食を届けてくれるという会員制らしい。

さっそく会員になった若い奥さん。
その日から夕食が届くのだが、これがすごく美味しくさらに毎日違う料理が届く。
二ヶ月目になり、契約更新の日。ガラスの腕輪を渡そうとすると、首にかけていた金の首飾りを要求される。渋々渡した若奥さん。三ヶ月目には、金の結婚指輪を持っていかれる。

これはまずいと夫に相談し、うさぎの家を突き止めた夫婦。
うさぎ屋の美味しさの秘密は、30種類のスパイスだとわかる。

結局その30種類のスパイスを盗むだし、夜逃げのようにマンションの12階に引っ越す。
それから奥さんは働き者になり、料理もスパイスを使ってしっかりとするようになり、家にはたくさんのお客さんが来るようになる。

うさぎはそれ以来家に鍵をかけるようになりました。


結構ひどい話ではあるのだが、何故かほのぼのとした感じが漂う良い話。これも「セロ弾きのゴーシュ」と同じような感じで、動物のおかけでじぶんの弱い部分を克服した人の話なのかもしれない。
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うさぎのくれたバレエシューズ [文学 日本 安房直子 あ行]


うさぎのくれたバレエシューズ (えほん・こどもとともに)

うさぎのくれたバレエシューズ (えほん・こどもとともに)

  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 1989/10/01
  • メディア: 大型本



バレエ教室に通い始めて5年も経つのにいっこうに上手くならない女の子。たんじょうびにも、たなばたさまにも、月にも星にも「どうか、おどりがじょうずになりますように」と頼み続ける。

そんなある日。彼女のもとにふしぎなこづつみがとどく。開けてみるとバレエシューズが。履いてみるとからだが軽くなって、足もひとりでに跳ね上がって。すると遠い風の音が聞こえ、山の方へと向かう。

大きな桜の木の中には、うさぎの靴屋がある。そこで主人のうさぎと一緒にたくさんのバレエ・シューズを作る。できたバレエ・シューズを取りに来たうさぎたちと一緒に、女の子はバレエを踊り続ける。

ふと気がつくと草むらに彼女はひとり。ボロボロのバレエ・シューズと共に家に帰った女の子。その後もずっと彼女はこのバレエ・シューズを大切にし続ける。


やはり何かが上手くなりたいとなった時、かなりの時間と労力をかけて努力する必要がある。しかしなかなかその一歩は踏み出せない。宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」と似た作品。動物たちの力を借り、自然に、自分では努力しているという意識なく努力し、いつのまにかうまくなっているという部分が共通している。

やさしい絵とやさしい文章がとても素晴らしい本。
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うぐいす [文学 日本 安房直子 あ行]


うぐいす (絵童話・しぜんのいのち)

うぐいす (絵童話・しぜんのいのち)

  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 1995/10/01
  • メディア: 単行本



安房直子さんが、死の直前に書いた作品らしく、死後出版された遺作らしい。

年老いた医者と、その奥さんの看護師の話。

二人は年をとり、仕事も大変になって来て、看護師を募集するのだが、集まらない。

そんなある日、ある細い女性がやってきた。彼女は、二人が昔助けたうぐいす。看護婦さんになりたいといい、森から薬草を持ってきて、体の弱っていた奥さんに飲ませ元気にしてあげる。そしてしばらくそこで楽しく朗らかに働いていた。

が、あるときから悲しげな様子になる。森から聞こえてくるうぐいすの声にうぐいすの声で答えるようになる。最終的には、このオスのウグイスの元に行き結婚する。

彼女が去ってしまい悲しい思いをしていたお医者さんと奥さんのもとに3日後手紙が届く。

「いろいろごめいわくかけました。
 わたし、やっぱり、けっこんしました。
 もう、かんごふさんにもどることはできません。
 でも、もうすこし、まってください。
 らいねんあたり、きっとおやくに
 たてるとおもいます。」

そして一年後、5人の美しい娘たちが「看護婦さんになりたい」とやってくる。

「鶴の恩返し」をさらにハッピーエンドにしたような素敵な作品。
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ある雪の夜のはなし [文学 日本 安房直子 あ行]


夢の果て: 安房直子十七の物語

夢の果て: 安房直子十七の物語

  • 出版社/メーカー: 瑞雲舎
  • 発売日: 2005/12/10
  • メディア: 単行本



非常に幻想的で美しい始まり。安房直子作品の中でも出色の書き出しなのではないだろうか。

p.178
「雪の野原に、夕日がしずみました。
 遠い地平線は、ほのかなばら色から、うすむらさきに変わり、モミの木の真上に、星がひとつ光りました。星は、ふるえるようにまたたきながら、みわたすかぎりの白い野原を、じっと見おろしていました。」

一面の誰もいない雪景色の中を、一台のトラックが通っていく。トラックの幌の中からりんごがひとつころがり落ちる。

落ちたりんごが一人でいるのを寂しがっていると、どこかから声が。
その声の主はお星さまだった。

りんごはお星さまに自分の身の上話をする。

りんごは丘の上の一軒家の大きなりんごの木のりんごだった。ここに住む一家は貧しかったため、りんごの木を、ある果樹園に安く買い叩かれてしまう。豊作だろうが不作だろうが毎年同じ値段しか払ってもらえず、木に出来ているものは絶対にとってはならないと言われてしまう。

木にできているりんごたちは、この家に住む貧しい子どもたちがかわいそうに思い

「風さん、風さん、ゆすってちょうだい
 風さん、風さん、おとしてちょうだい
 落ちたりんごは、だれのもの」

と歌い、風に木からりんごを落としてもらい、落ちたりんごを子どもたちに食べてもらう。
しかし、熟しておらず、最後まで落ちることができず、果樹園のトラックに積み込まれたのがこのりんご。結局トラックからも落ちてしまい、誰にも食べられることなく腐ってしまうのを嘆いて眠ってしまう。

優しい声で目覚めるとそこには一人の少年が立っている。その少年は人間に姿を変えたお星さまだった。少年にたべてもらったりんご。残った種と少年は、一緒に空へと歩いていく。

とても幻想的で優しく素敵な話。
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あるジャム屋の話 [文学 日本 安房直子 あ行]


春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫)

春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/11/04
  • メディア: 文庫




ものいう動物たちのすみか (安房直子コレクション)

ものいう動物たちのすみか (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



人付き合いの下手な、森野一郎は、大学を卒業して一流企業に就職するが、ほんの一年で辞めてしまう。

実家でブラブラしていると、親に家の庭でたくさん実ったあんずを見ながら、「このあんずみんな売ってこい」と言われる。そこでふと閃いて、ジャム屋を始めることにする。

森の中に小さな小屋を建て、ビンを買って、中古車を買って、ジャム屋をはじめるが、初めは全く相手にされない。そんなある日、営業から帰ってくると家のランプがついている。中に入ると牝鹿がジャムでお茶を飲んでいるところだった。

ジャムもらったお礼に、ジャムが売れるようになる方法を考えると帰っていく。次の日再びやってきた牝鹿は「レッテル」を変えると売れるといい、美しい「レッテル」を何枚も描いてくれる。

それを貼って町へ持っていったところどんどん売れる。店は繁盛し、さらに店を大きくするようジャムの種類を増やそうと、牝鹿に言われる。次の日、誰も踏み入れたことがないブルーベリーがたくさんなっている場所でブルーベリーを集めていたところ、牝鹿の父鹿が現れる。そして娘が人間になるまで待っていて欲しいと言われる。

レッテルを描いてくれる鹿がいなくなり困っていたところ、丁度印刷屋を営む弟が現れ、鹿が描いたレッテルを印刷してくれ、何とかそれで何年かを凌ぐ。

ひとりさみしくジャム屋を繁盛させていた彼のもとに、ある月夜の晩、誰かがドアを叩く。「どなたですか」と尋ねると、「あたし、あたし」とドアの外で答える。ドアを開けると人間の姿になった牝鹿がたっていた。こうして二人は結婚し、仲良くジャム屋を営む。

素晴らしすぎる作品。安房直子作品の中でも、かなり上位に来る物語。純愛、森の中の静かな生活、多くを望まない心、私の愛する様子がいっぱい詰まった作品だ。
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あまつぶさんとやさしい女の子 [文学 日本 安房直子 あ行]


風と木の歌―童話集 (偕成社文庫)

風と木の歌―童話集 (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2006/07/01
  • メディア: 単行本



林の中に、銀色の髪をした親子の雨の精が住んでいて、「あまつぶかあさん」と「あまつぶさん」と言った。

あまつぶかあさんは、村の百姓たちと親しくしており、日照りが続いたときは雨を少し降らせて、お礼として色々なものをもらっていた。

ある日「おさとう」をもらって「あまつぶさん」に食べさせたところ、あまりにも美味しくておさとうばかりを欲しがり、他の物を食べなくなってしまう。

あまりにもやせ衰えてしまった「あまつぶさん」を心配して、「あまつぶかあさん」はある百姓の家に行く。そこのおかみさんに「おさとう」を少し分けて欲しいとお願いしたところ、ひと夏サトウキビ畑で働(雨を降らす)いたら、おさとうをわけてもらえることとなる。

日照り続きでダメになりそうなサトウキビ畑に一生懸命雨を降らせた「あまつぶかあさん」は疲れきって虹となって消えてしまう。

いつまで待っても帰ってこないかあさんを心配した「あまつぶさん」は百姓の家に行くと、かあさんは死んでしまったことを知る。恨みを抱いた「あまつぶさん」は大人になって「家も畑もみーんな流してやる」と誓う。

数年後、「あまつぶかあさん」を騙したおかみさんは死にそうになる。死ぬ直前孫娘のちいさい女の子に、「あまつぶ」さんに「おさとう」をあげるよう言い残す。その後今まで経験したことのない大雨となり、本当に家も畑も流されそうになる。おばあさんの話を思い出した女の子が、さとうの壺を持って外に飛び出すと雨は止むが女の子は帰ってこない。

そんなある日、道に迷った人が、その女の子に会ったという。その女の子は男の子と一緒にいて、甘い水をくれたということであった。


人間の意地悪な心を描いた作品で、悲劇的な作品なのかと思っていたが、確かに多くの人は死んでいくのだが、最後は心暖まる話だった。ほっこりした気分になった。
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あざみ野 [文学 日本 安房直子 あ行]


銀のくじゃく (偕成社文庫)

銀のくじゃく (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2017/01/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



父親と死に別れ、病弱の母と、おおぜいの弟妹をやしなうために、しかたなく従事している毛皮商人の男、清作。

山の猟師の元から街へ戻る帰り道、喉の乾いた清作は水を飲もうと井戸に立ち寄る。そこには一人の女の子。彼女は自分を、井戸の精、地下水の精と名乗る。水をあげる代わりに、毛皮を一枚渡せ、と言ってくる。無視していると、その日一番の高級品、銀ギツネの革をよこせ、と言う。断ると銀ギツネの革を本物の銀ギツネにして、自分のもとへ呼び寄せてしまう。

彼女は突然、「あんたには、この商売むかないから、もっとべつのことをするといい」と言ってくる。「革細工 (職人)」がいいと言われるが、「それでは、くらしていけない」と言う。

すると彼女は一輪のあざみ野を摘み、歌を歌うと、一面あざみ野の花畑に。しかしあざみ野は刺があり、彼女の足は傷だらけ。そこで清作に革で長靴を作ってくれるように頼む。早速作ってあげると、今日は一日、ここに泊まって長靴をできるだけたくさん作るよう言われる。

キツネと一緒に楽しそうに去っていった精を見送り、精作はその日帰るのを諦め、長靴をたくさん作る。朝起きると一面あざみ野だらけ。

どんどん進んでいくと、あざみ野の中から、背中に鉄砲の玉の跡があるたぬきが現れる。そのたぬきはかつて精作が殺し、その革を売ったたぬき。そのたぬきに長靴をあげると、つぎからつぎへとかつて革にして売った動物たちが現れ長靴を求める。結局自分の長靴以外は、すべての長靴がなくなり、最後は自分の家へたどり着く。

その後、精作は革商人の仕事をやめる。

かなり悲しい余韻が残る不思議な話。
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秋の風鈴 [文学 日本 安房直子 あ行]


銀のくじゃく (偕成社文庫)

銀のくじゃく (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2017/01/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




夢の果て: 安房直子十七の物語

夢の果て: 安房直子十七の物語

  • 出版社/メーカー: 瑞雲舎
  • 発売日: 2005/12/10
  • メディア: 単行本



ひとり暮らしの売れない絵かきが、自分の部屋に風鈴を飾って静かに生活していたところ次のような手紙が舞い込む。

「おたくの風鈴がうるさくて 夜ねむれません。あたしたちは、もう長いあいだ寝不足なのです。」

山の村で過ごしたひと月の間に知り合った12歳の少女からもらった風鈴で、それを飾るようになってから、絵かきは仕事もかなり順調に進んでいた。

色々と差出人を考えてみたが思い当たらなかったのでそのままにしておいたら、今度は大量に同じような手紙が届いた。今度ばかりは諦め風鈴をしまった絵かき。

風鈴をしまってから仕事がはかどらなくなって一週間。10月の秋晴れの日、雨戸を開けるとそこには一面のコスモスが。

ようやくコスモスから来た手紙だったと納得し、心がほうっとあたたまり、おもわず涙がこぼれそうになる。

若干ミステリー的要素も含んだ優しい物語。
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秋の音 [文学 日本 安房直子 あ行]


花のにおう町 (安房直子セレクション3)

花のにおう町 (安房直子セレクション3)

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1983/08/15
  • メディア: 単行本



耳が悪くなってしまったおばあさん。電話がかかってくると、「電話はあまりかけないでください。そのかわりに手紙をください。お返事は、かならずさしあげますから。」と伝える。

耳がわるくなってから、おばあさんはいろいろなものを、よく見るようになる。コスモスの花、空一面の夕焼雲。

そんなある日、おばあさんに小さな小さな荷物が届く。送り主を見ると「山の風より」とあり、開けると3つのくるみが。おばあさんの故郷は山で、そこではくるみがたくさん採れた。それでおばあさんは昔を思い出す。大事に袋にしまって眠っていたところ、「あけて、あけて」という声が。

くるみの声だと気がついたおばあさんはくるみのもとへ。そしてくるみを一つずつ割ってみることに。

1.中からハーモニカ
2.中からハープ
3.中からタンバリン

それぞれの音を出すとそれぞれ昔の思い出を呼び覚ましてくれる。おばあさんはとっても幸せな気分になり楽器たちを大事にしまう。

おばあさんを主人公としているが、これは自然に意識を向けなくなった現代人への警告なのではないかと思う。普段使わない五感を使うことで見えてくる世界が変わり、自然に意識を向けることで心が豊かになる。

とても暖かく優しい気持ちになれる名作。
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赤いばらの橋 [文学 日本 安房直子 あ行]


北風のわすれたハンカチ (偕成社文庫)

北風のわすれたハンカチ (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2015/01/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



崖の北側に住む男の子の子鬼。ある日南風に乗って良い匂いのフェルトの帽子が舞ってくる。角のない可愛い女の子の持ち物に違いないと思い、近くに住む女の子の子鬼に、三つ編みの仕方を教えてもらい、三つ編みにした蔦(つた)で橋を作り、南側へ行く。

南側は魔女の住む場所。魔女には灰色のボサボサの髪をした娘がいる。娘に会った子鬼は、手にしている帽子はその魔女の娘のもので、こんなに可愛い帽子が、こんなに可愛いくない魔女の娘のものだったなんてとがっかりする。

しかし色々と話したり、母親である魔女から自分を助けてくれたりするうちに、この魔女の娘がだんだん可愛く見えてきて好きになっていく。

最終的には魔女に見つかり捕まりそうになるが、娘の機転によりなんとか助かる。刺がたくさんあるバラの枝がからまった橋を、娘からもらった、帽子とおそろいのフェルトの靴で何とか渡りきった子鬼。最後はお母さんに抱きしめられ、魔女の娘はいつまでも手を振ってくれている場面で終わる。

「恋をする」というのはどういうものなのか、見た目ではなく心が大事なんだ、ということを恐ろしくも暖かいストーリーで教えてくれるこの作品。是非多くの人が小さいうちに読んでもらいたい。
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赤い魚 [文学 日本 安房直子 あ行]


日暮れの海の物語

日暮れの海の物語

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2022/07/19
  • メディア: 単行本



主人公の雪枝は小さな宿屋の娘。その宿屋で結婚式が開かれることになり、その時の食事のために、雪枝の父親は漁に出てとびきり美しい赤い魚を釣ってくる。

その夜雪枝は「助けて、助けて」と声が聞こえたような気がして、生簀(いけす)に行って、「あんたね、さっき声をあげたのは」と聞くと、雪枝をじっと見つめて、ぽろりと涙をこぼす。それを見て雪枝はその魚を逃がしてあげることに。

逃がしてあげる直前に
「今度また、会いましょう」「あんたは、私を助けてくれたから、今度は、こっちが、お返しをする番だ。あんたの願いを、三回だけ、かなえてあげよう」と言われる。

1つ目:美しい髪
2つ目:美しい目

この二つを手に入れた雪枝は、このあたりで一番裕福な網元のむすこと恋仲に。結婚が決まるが、身分違いの結婚に周りは大反対。

結婚式前夜、父親が
「あしたのおぜんに、朝焼け色の鯛をのせられたらなあ」
「あれは、めったに手にはいらない魚だ。それだけに、縁起の良い魚でなあ。あの魚を、婚前のおぜんにのせられた花嫁は、一生幸福に暮らせるという言い伝えがある」

これを聞いた雪枝は、赤い魚に最後の願いを言いに行く。赤い魚は願いを叶えバケツの中に入る。しかしその時、魚の魂が、どこかにとんだような気がする。そしてバケツの魚をすくい上げようとすると、何もつかむことができない。

ディズニー映画の「アラジン」もそうだし、色々な昔話もそうなのだが、3つ目の願いを結局人は自分勝手に願いすべてを台無しにしてしまう。人の欲望の深さを描いた作品。結構暗くてこわい物語。
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青い糸 [文学 日本 安房直子 あ行]


銀のくじゃく (偕成社文庫)

銀のくじゃく (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2017/01/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



みなしごで育ち、今は街の「かど屋」という宿屋の女中として働く千代の話。
彼女の好きな仕事は、店のガラス戸をみがくこと。

ある日ガラス戸をみがいていると、ふしぎな人かげがぼんやり映る。その人は馬に乗ってゆっくり片手を降っていたように見えた。しかし扉を開けると誰もいない。そんなことが続き、ついに千代は番頭の正吉じいさんに悩み事を相談する。じいさんは「春のかげろうか、かすみのいたずら」だと思うが、千代に少しでも幸せな気分になってもらいたいと思い、「あんたのいどころを、たずねまわってたのかもしれないなあ。」と言ってしまう。そして差出人不明のラブレターを彼女に出してしまう。ここのじいさんの気持ちの描写がなんとも切ない。

p.204
「正吉じいさんは、千代に手紙を書いたのです。ちょっとした恋文でした。やさしい、いい手紙でした。差出人の名を書くのはやめておきました。それを、正吉じいさんは、ほんものらしくするために、念入りにも、駅前のポストに入れたのです。
 じいさんは、みなしごの千代に、ちょっとした身寄りをつくってやりたいと思っただけでした。ただただ、それだけのことだったのでした・・・・・・。」

 結局一度しか手紙は届かず、千代は再びじいさんに相談に。するとじいさんは、「いっしょうけんめい働いて、いい娘でいさえしたら、そうさなあ、はたちになるころには、きっとまたあらわれるだろうよ」と言ってしまう。そんなに長く我慢できないと思った千代だが、セーターを編んで待つことに。

駅前の糸屋に青い糸を買いに行き、良いものを見つけ見せてもらって気に入って購入しようとして値札を見ると、一ヶ月分の給料よりも高額だった。店主がほかの客に対応しているあいだ、彼女はそれを持って逃げてしまう。つまり泥棒してしまう。

良心の呵責に苛まれながらも青のセーターを編み続けるが日毎にやつれていく。そんなある日、胸の中で様々なことをしまっておくことができなくなり「鳥になりたい」とつぶやき本当に青い唇の真っ白な鳥になって飛び立ってしまう。

~20年後~
母親が再婚し捨てられてしまい孤独に育ったカメラマンの男性が、「かど屋」に泊りに来る。宿はあまりにも混んでいたので、昔千代がいた屋根裏部屋に泊まることに。そこで昔、自分に優しくしてくれた女の人がしてくれたあやとり遊びを思い出す。偶然そこに編みかけの青いセーターを見つける。それを少しほどいてあやとり遊びをしていると、青い唇をした真っ白な鳥がやってきて、その糸をついばみもっていってしまう。何度かそのやりとりを行ったあと、その男性も鳥になってあやとりで作ったまどからあちらの世界へ行ってしまう。

ほんの出来心から生まれた盗み、孤児、貧困、様々な負の要素を描きながら何故か暖かい雰囲気で、さらに物語の先に見える世界も幸福感がある不思議な作品。
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青い貝 [文学 日本 安房直子 あ行]


夢の果て: 安房直子十七の物語

夢の果て: 安房直子十七の物語

  • 出版社/メーカー: 瑞雲舎
  • 発売日: 2005/12/10
  • メディア: 単行本




戦争中の、八重という名前の私と、外国人の父と日本人の母を持つ女の子ミチルさんの心の交流を描いた作品。
容姿から頭の出来、何から何まで平凡な八重は、立派な洋館に住む青い目を持ったミチルと友達になる。彼女のお父さんは夜にしか帰ってこない。

二人は仲良く遊んでいたのだが、ある日目の青い女の子が突然やってきて
「八重ちゃん、ぜったい内緒よ」「あたし、お別れに来たの」「今夜ね、引越しするの」「これ、おかたみに、あげるわ」
といって青い絹製のフレアースカートをくれる。

次の日、彼女の父親がスパイだったことが分かる。ミチルさんと友人だった八重もいろいろ聞かれるが、彼女は決して口を割らない。

そんなある日、彼女は夢を見る。海辺で青い貝を一緒に拾って首飾りを作る夢。しかしミチルさんは何かに追われている、足音が聞こえるといって走って行ってしまう。

数日してミチルさんは母親と、海に飛び込んで死んだという噂が聞こえる。

その後長いもらったフレアースカートをはいていたが、いつの間にか家族に隠されてしまい、戦災で萌えてしまう。

戦争の悲しさと少女たちの暖かい心の通いあいが美しく織り交ぜった作品。


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青い花 [文学 日本 安房直子 あ行]


つきよに [教科書にでてくる日本の名作童話(第1期)]

つきよに [教科書にでてくる日本の名作童話(第1期)]

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1995/04/20
  • メディア: 単行本




まほうをかけられた舌 (フォア文庫)

まほうをかけられた舌 (フォア文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1979/10/01
  • メディア: 新書




見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/04/01
  • メディア: 単行本




 「かさのしゅうぜん」を専門にしているかさ屋さんが、ある日少しお金が手に入ったので、色々なものを買おうとデパートに向かう。
 その途中、雨の中傘もささずに立っている女の子に出会う。可哀想に思ったかさ屋さんは、彼女に「雨がさをつくってあげよう」と言って、一緒に高級な青い生地を選び、早速彼女に作ってあげる。
 次の日彼女にその雨がさをプレゼントして別れて家に帰ると、店の前に大行列。みんなが青い雨がさを欲しがる。結局青い雨がさは大人気となり、かさ屋は修繕をしなくなる。何度か修繕を頼みに来た人もいるが顔も見ずにそのへんにほっぽらかしてしまう。店は大繁盛し、お金持ちになる。
 しかし、ある日新聞が、「レモン色のかさ」を紹介すると一気に店には人が来なくなる。そんなある日、小さな女の子が店にやってくる。彼女は作ってもらった青い傘が壊れてしまい、修繕を頼み何度も来ていたのだが直してもらえていなかった。
 かさ屋や丁寧に直し、彼女に渡しに行く。しかし待ち合わせ場所に彼女はおらず青い花だけが咲いていた。

人間の欲望と、資本主義社会の悲劇、そして心を込めてものを大切に作り、それを大切に使い続けることのすばらしさを描いた名作。

かなり心に響く作品だ。
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