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くまの楽器店 [文学 日本 安房直子 か行]


くまの楽器店

くまの楽器店

  • 作者: 安房 直子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2009/08/27
  • メディア: 単行本



のはらの真ん中のニレの木の下に、「ふしぎや」というくまが営む楽器店がある。
そこに様々な問題を抱えたお客がやってきて、くまが楽器を選んであげることで、その問題を解決してあげる話。あんびるやすこの「魔法の庭」シリーズの原型的な作品か。

1. ふしぎなトランペット      雨の日で退屈していた男の子         トランペット
2. 月夜のハーモニカ        育てているブドウを甘くしたいぶどう園の主人 ハーモニカ
3. 野原のカスタネット       お腹をすかせたねずみの子          カスタネット
4. さむがりうさぎのすてきなたいこ さむがりのうさぎ              たいこ

音楽のすばらしさを改めて感じさせてくれる暖かい良書。
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コンタロウのひみつのでんわ [文学 日本 安房直子 か行]


コンタロウのひみつのでんわ

コンタロウのひみつのでんわ

  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2007/11/30
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)



再読 次男と一緒に読んだ。

子供たちもみんな独立し、奥さんにも先立たれた、布団屋のおじいさんの話。ある日少年がやってきて、布団を注文する。実はその少年はコンタロウというキツネの子供で、そこからコンタロウとおじいさんの交流が始まる。花を使用したひみつのでんわで、おじいさんとコンタロウは連絡を取り合い、暖かい交流を続ける。最後は、場所的に離れていても、心理的につながっていればお互いのことがわかる、という最高の結末となっている。ネット環境を使った遠隔コミュニケーションが主流の今、花と風を使用したコミュニケーションをテーマにしたこの物語。素敵すぎる。

今回読んでみて気づいた点があった。
おじいさんも独り、コンタロウというキツネも、家族が何故か皆死んでいる。恐らく人間に殺されてしまったのだろう。そんな孤独な二人が心を通わせるという話で、名作「きつねの窓」にも通じる世界観がある。

ほんわかしている中に、結構深いテーマが隠されているなあと思った。
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コロッケが五十二 [文学 日本 安房直子 か行]


まほうをかけられた舌 (フォア文庫)

まほうをかけられた舌 (フォア文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1979/10/01
  • メディア: 新書



町の肉屋で何十年も使われている大きなおなべがあった。肉屋のおかみさんはこのおなべがお気に入りで、コロッケを毎日山のように作って売っていた。この肉屋に、「こふきちゃん」と呼ばれる小さい女の子がいた。彼女は小さくまん丸のコロッケを作ってお店の手伝いをしている気でいた。おかみさんは、彼女が作るコロッケでは売れないし、材料がもったいないが、いたずらやけがをされるよりはまし、と考えそのままにさせてあげていた。

ある日、家族全員で午後からお出かけすることに。その午前中、こふきちゃんは自分の作ったコロッケを揚げて欲しくておかあさんに頼むが、逆に怒られてしまう。それがショックで、午後お出かけの時間になっても「いかない」と言い張る。そこで父母は二人で出かけることに。

両親が出かけたあとこふきちゃんは自分でコロッケを作ってみることに。しかしいざ油で挙げる段階になるとさすがにビビってしまう。そんな時、電話がかかってきて、コロッケを50個注文される。

これを受けいよいよコロッケを揚げることになるが、彼女は数が数えられない。そんな時、大きなおなべが助けてくれることに。こうして50個のコロッケを作ってお客を待っていると、実はお客は猫だと分かる。猫と押し問答していると、まんまるコロッケがコロコロ転がっていってしまう。町へ転がるコロッケを、猫とこふきちゃんが追いかける。いつの間にか、こふきちゃんは自分がコロッケになってしまったかのような錯覚に陥る。

コロッケを追いかけてだんだん疲れてきたところにお母さんが帰ってくる。

安房直子作品の中ではもう一歩な感じの作品ではあるが、可愛らしい作品ではある。
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木の葉の魚 [文学 日本 安房直子 か行]


夢の果て: 安房直子十七の物語

夢の果て: 安房直子十七の物語

  • 出版社/メーカー: 瑞雲舎
  • 発売日: 2005/12/10
  • メディア: 単行本



アイは、貧しい漁師の娘。
10人兄弟の一番上のアイは、結婚適齢期となり、両親は結婚相手を探すが、あまりにも貧しいのでもらい手がなかなか見つからない。ところが遠い山から時々野菜を売りに来るばあさんが、自分の息子の嫁に欲しい、と言われる。

結婚前夜、アイは母親から嫁入り道具として鍋をもらう。山の葉を2~3枚入れて、ふたをしてちょっとゆすると木の葉が素晴らしい焼き魚になるという。しかし、これを使うたびに海の魚が死んでしまうので、めったなことで使ってはいけないと言われる。

いよいよ山の家に行き、姑と夫のために、葉っぱを三昧並べてふたをしてちょっとゆするとカレイが三匹こんがりと焼けていた。その後、アイは鍋を戸棚にしまいこんで、使おうとはしなかった。

こうして平和な日々を過ごしていが、夏になると何百年かに一度の飢饉に見舞われる。食べるものにも困ったアイは、鍋を出してきて魚をやく。その匂いにつられ町の人々も次々にやってくる。噂が噂を呼び、アイの家には魚を求めて多くの人が来るようになる。その人たちに魚を出すたびに、アイは両親の呵責に苛まれるが仕方なく出し続ける。

アイの家に魚を食べに来る人々がおいていく品を売ったりするうちにアイの家はどんどん豊かになっていく。ある日夫が、村からの帰り綺麗な着物を買って帰ってくる。アイは新しい着物を抱きしめて、母親が「このなべが、お前をしあわせるする」といった母親の言葉を自分なりに解釈し、そのうちアイは喜んで魚を焼くようになる。

かなりの年月が過ぎた時、激しい雨が3日降り続きドドーッという音がなる。気がつくと姑・夫・アイの三人は海の底に。そんな時、上の方からアイを呼ぶ母親の声。父ちゃんの船も来ていると母親はアイに告げる。こうしてアイは上へ上へと向かう・・・。

欲望により破滅する人間を描いた作品ではあるが、最後は悲劇的ではなく、どこかしら希望を残したエンディングが良い。
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小鳥とばら [文学 日本 安房直子 か行]


夢の果て: 安房直子十七の物語

夢の果て: 安房直子十七の物語

  • 出版社/メーカー: 瑞雲舎
  • 発売日: 2005/12/10
  • メディア: 単行本



花のにおう町 (安房直子セレクション3)

花のにおう町 (安房直子セレクション3)

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1983/08/15
  • メディア: 単行本



ある春のまひる、同い年の二人の女の子がバトミントンをしていた。ひとりは背の高い大柄な子。もうひとりはやせた小さな子。大きな子が打つと、力強く跳ね返るが、小さな子が打つと、ふわりと花びらのように飛んでいく。大きな子は小さな子がしっかり打ち返さないことに対し起こりどなっていた。そのうちにバトミントンの羽が生垣の中に飛び込んでしまう。大きな子に文句を言われ、小さな子は生垣の中へ取りに行くことに。

中へ入っても簡単に羽は見つからずどんどん奥へ入っていく。ようやく見つけた羽は、なぜか一羽の小鳥となってさらに奥へと飛んでいく。小鳥を追ってどんどん中へ入っていくと、銃声がなり小鳥は撃ち落とされてしまう。そこへ少年が銃をもって現れる。彼は撃ち落とした鳥をもって、「いっしょね食べるかい?」と彼女を誘う。ばらの花びらと小鳥をパイにして一緒に焼くというのだ。彼の家まで歩いていく間、二人は話をする。その中で彼女は彼に次のようなことを言う。

「あたしねえ」
「体が小さくて、運動がへたで、気が弱くて、ほんとに、どうしようもない女の子なのよ」

これに対して少年は答える。

「いいさ、いいさ、そんな事。パイを食べれば、けろりとなおるさ」

この言葉に彼女は次のように思う。

”ああ、そうかもしれないと、少女は思います。ほんとに、そうかもしれない。ふしぎなパイを食べたら、あたし、きっとすてきな女の子になれるわ”

そして彼の家で小鳥とばらのパイをご馳走になる。食べ終わると眠くなってそのまま眠りそうになる。が、それを少年が起こす。

「眠っちゃいけない!」
「これは、母さんの魔法だよ。小鳥とばらのパイを食べて、そのまま眠ってしまった女の子は、ばらの花になってしまうんだ」

少女は急いで逃げ、生垣の外へ出る。そこで大きな女の子が待っていて羽はあったか聞くが彼女は次のように答える。

「あったわ。でも、私が食べてしまったわ」

その後彼女は友達をおいて走りさる。

最後の一文が美しすぎる。

”走りながら、小さい少女は、自分が、バラの花のようにきれいになって、小鳥のようにかるくなった事を、はっきりと感じていました。”

劣等感を持った子が、ある言葉がけ、なんてことはないあることをきっかけに劣等感を乗り越えられることを教えてくれる作品。安房直子さんも運動が苦手だったらしいが、そんな彼女のいろいろな体験からこの暖かい話は生まれているのではないだろうか。
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声の森 [文学 日本 安房直子 か行]


夢の果て: 安房直子十七の物語

夢の果て: 安房直子十七の物語

  • 出版社/メーカー: 瑞雲舎
  • 発売日: 2005/12/10
  • メディア: 単行本



日暮れの海の物語

日暮れの海の物語

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2023/04/28
  • メディア: 単行本



声の森という、不思議な森があった。生き物は何一つなく、古いかしわの木々がうっそうと生い茂っている。この森に迷い込んだ動物が、声をあげると、森たちがその声真似をしてひたすら歌い続けるので、恐怖に陥ってしまった動物は力尽きて倒れてしまう。人間にも迷い込んでしまう人がおり、森の養分になってしまうものもいた。

みんなからつぼみちゃんと呼ばれている女の子がおり、にわとりの番をしていると、にわとりが空は飛び、声の森に入り込んでしまう。森の中へ入り、にわとりが倒れているのをようやく見つける。にわとりに静かに子守歌を歌ってあげていると森たちもその声を聞きつけて歌いだす。しかし普通と違いすばらしい歌だったので、綺麗なすばらしい輪唱となる。かしわの木々は自分たちの声を聴いてすっかりいい気分になり、眠ってしまう。

結局つぼみちゃんとにわとりは森を出られる。

少し怖いが美しくあたたかい話。
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グラタンおばあさんとまほうのアヒル [文学 日本 安房直子 か行]


グラタンおばあさんとまほうのアヒル (どうわのひろばセレクション)

グラタンおばあさんとまほうのアヒル (どうわのひろばセレクション)

  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 2009/03/01
  • メディア: 単行本



前のブログによると、数年前、次男と一緒に読もうとしたが、次男は興味を示さなかったっぽいが、今回はかなり楽しんで読んでおり、アヒルが歌うセリフを覚えて何度も歌っていた。

グラタンが大好きで毎日のようにグラタンを作っているおばあさん。彼女が毎日使うグラタン皿には一羽のアヒルが、描かれていた。ある日おばあさんが病気になり、買い物に行けず食材が買いに行けないおばあさんのために、アヒルはほうれん草を出してあげる。その後も色々な食材を出してあげていたら、それにすっかり慣れてしまったあばあさんは全然自分で買い物に行かなくなる。そのことに頭にきたアヒルは家出をする。

その後、アヒルは、若い奥さんや子供、風船売りのおじさんに出会ったアヒルは、最終的に・・・。

人間誰もが持っている良い面、悪い面、普通に生きる人々の心の中にある密かな悲しみ・苦しみ、こういったものをほんわかとした物語の中に織り込んでいる彼女の作品は素晴らしいと思う。

前回も感じたが、いせひでこさんの絵がとても良かった。
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熊の火 [文学 日本 安房直子 か行]


銀のくじゃく (偕成社文庫)

銀のくじゃく (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2017/01/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




恋人たちの冒険 (安房直子コレクション)

恋人たちの冒険 (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



山で遭難した男が、熊と結婚し子供までもうけるのだが、ふとしたことで人間の世界に戻ってしまう話。熊として、理想郷のような世界で生きるのか、少し辛いことがあっても人間として生きるのか、読む人にそのようなことを問うている作品とも言える。

昔話「浦島太郎」などでは、理想郷では短い時間でも、現実の世界に戻ると、かなりの時間が経っていたというものはよくあるが(安房直子の「丘の上の小さな家」も似た作品)、長い時間理想郷で過ごしたが、現実に戻るとたいした時間は経っていなかったというのは、少ない気がして、面白かった。
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銀のくじゃく [文学 日本 安房直子 か行]


銀のくじゃく (偕成社文庫)

銀のくじゃく (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2017/01/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



真面目で腕の良い若い機織り職人の話。あるお客にお願いされ、森で「緑のくじゃく」を織り込んだ旗を作って欲しいと頼まれる。森の奥深くにある五階建ての塔の五階で、数日一心不乱にそれを作っていると、頼んだ人とは別の1~4階に住む似たような顔をした4人の女性が仕事場にやってきて、「銀のくじゃく」の旗が欲しいと言われる。元々頼んだ人は「緑」以外で絶対に織ってはいけない、と頼んでいたのでかなり悩んでしまう。悩んだ末、どちらにもわからないように、表は緑、裏は銀で旗を編み上げる。そのうちに、その若い機織りは・・・
ひとつのことに熱中することで、その物自体と一体化してしまう、決してないのだが、ないとは言い切れない情景を描いた、非常に幻想的で美しい作品。

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きつねの夕食会 [文学 日本 安房直子 か行]


ものいう動物たちのすみか (安房直子コレクション)

ものいう動物たちのすみか (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



コーヒーセットを買ってもらったきつねの娘はお茶会をしたくてしょうがない。そこで、お父さんに頼んで、人間にお客になってもらうことに・・・。なかなかお客は見つからないのですが、ふとしたことでお客さんがみつかって。最後はたくさんお客が来たけれど・・・。

とっても和やかな最後にくすっとなる話。
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きつねの窓 [文学 日本 安房直子 か行]


風と木の歌―童話集 (偕成社文庫)

風と木の歌―童話集 (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2006/07/01
  • メディア: 単行本



つきよに [教科書にでてくる日本の名作童話(第1期)]

つきよに [教科書にでてくる日本の名作童話(第1期)]

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1995/04/20
  • メディア: 単行本



きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/01/02
  • メディア: 単行本



なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



安房直子さんの最も有名な作品だろうと思われる。
教科書にも掲載されている作品らしいが、私は小学校当時読んだ記憶はない。

親を殺されたきつねが、人間をばかしながらも、ばかされている人間が、そのきつねによって自分の心の傷と向き合う話。安房直子さんの作品には、親兄弟を、人間に殺されてしまい孤独に生きる動物がよく登場する気がする。人間の業の深さ、罪深さを突きつけながらも、それでも生きていかなくてはならない人間は、動物と共生する道を探っていくしかない、と訴えている気がする。

安房直子さんの中では私は、そこまで名作という気はしないのだが、「安房直子=きつねの窓」という感じの彼女の名刺的作品なんだと思う。
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北風のわすれたハンカチ [文学 日本 安房直子 か行]


北風のわすれたハンカチ (偕成社文庫)

北風のわすれたハンカチ (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2015/01/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫)

春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/11/04
  • メディア: 文庫




なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



人間に、両親と弟妹をことごとく殺され、ひとりさみしく暮らす月輪熊。
彼はとびらにつぎのようなことばを貼っている。

「どなたか音楽をおしえてください。
 お礼はたくさんします。
              熊」

はじめにやってきたのは北風(のおとうさん)。
ちょっとやすみに立ち寄ったのだが、トランペットを持っていたので、自分で少し吹いた後、くまに少し吹かせてあげることに。
しかし、熊は前歯を楽器に当ててしまいうまく吹けない。結局直ぐにトランペットは取り上げられ、冷蔵庫にあったパイナップルのかんづめをお礼の代わりに持って行かれてしまう。

つぎにやってきたのは、北風のおかあさん。
彼女はヴァイオリンを持っていてメヌエットを弾いて聴かせてくれる。くまも少し触らせてもらうがうまく音が出ない。
結局北風のおかあさんは、冷蔵庫にあったやまぶどうを持って行ってしまう。
これで、冷蔵庫に残っていたものは全部なくなってしまう。

さいごにやってきたのは北風のおんなのこ。
外は雪世界。彼女が家に入ってくると、くまは「あいにく、お菓子がなんにもなくて」といいながらお茶を出す。すると少女は50数えて待っているよう伝える。
数え終わると、ハンカチの上にホットケーキの材料が!。
ホットケーキを少女は作ってくれて、二人で食べる。
その後二人で静かに外で降りしきる雪の音を聞く。
次に50数えるよう言われると、その間に少女は出て行ってしまう。
少女がいなくなってしまったのをさみしがっていると、彼女はあの魔法のハンカチを置いていったしまったことに気がつく。
自分で、ホットケーキの材料を出してみようと試すが、うまくいかない。
ハンカチを置いていったということは帰りにまた立ち寄るかもしれない、と希望を持ったくまは、自分の耳にハンカチをしまい、しずかにふゆごもりに入る。

さみしい雰囲気が全編をおおっているが、どこか希望のある美しい話。
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ききょうの娘 [文学 日本 安房直子 か行]


花のにおう町 (安房直子セレクション3)

花のにおう町 (安房直子セレクション3)

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1983/08/15
  • メディア: 単行本



新吉という、酒飲みでなまけものでろくすっぽ仕事もしない大工がいた。ある日、そんな新吉の下に、母親から、「おまえも、そろそろ、よめをもらいなさい。よめは、山のものがいちばんだ。いい娘がいるから、そっちへいってもらいます」という手紙をもらい、実際10日すぎた頃に、白くて小鳥のような声をした娘がやってくる。彼女は、掃除から料理まで色々と面倒を見る。嫁入り道具に持ってきたシンプルな茶碗で、毎日のように山のものを食べさせる。そのおかげで新吉はどんどん元気に真面目に裕福になっていく。

そのうち、山のものに飽きてきた新吉は魚や甘いものを欲するようになり、「山のものは、どうも、どろくさくていけないよ。きのこや、山のいもは、たまに食べるのはいいが、いつもいつもじゃ、あきがくるよ」と言ってしまう。ある朝、「こんど、新しいおわんを買おうじゃないか。もっといいぬりの、外側にもちゃんと模様のあるやつを」と言ってしまう。その日仕事から帰ると妻はいなくなっている。

お椀の内蓋のききょうの模様を見ていると、いつの間にか故郷の町へいた。そこで、自分の家に戻ってみると、まわりにききょうの花が咲き誇っていた。ききょうの花は母親が大好きな花だった。家に入ると娘がこしかけていた。むすめは花の精だった。一緒に帰ろうと誘うと、断られる。そしてあなたの母親はいつもあなたのことを心配し山のものを食べさせたがっていたと伝える。そしておわんをプレゼントしてくれる。

新吉は、いつの間にか寂しくなった自分の家に戻っていて机の上にはおわんが置かれていた。

若干教訓めいた美しく暖かい話。この『花のにおう町』(現在絶版)でしか読めない名作。
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黄色いスカーフ [文学 日本 安房直子 か行]


春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫)

春の窓 安房直子ファンタジスタ (講談社X文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/11/04
  • メディア: 文庫




花のにおう町 (安房直子セレクション3)

花のにおう町 (安房直子セレクション3)

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1983/08/15
  • メディア: 単行本



おばあさんが、新聞で「外出にはスカーフがとても便利」という記事を読んで、昔使っていた黄色いスカーフを身につけて外に出る。しかし、外で自分の姿を鏡に映し出したところ、あまりにも自分ににあっておらず、外してしまってしまう。しかし、スカーフが「出してくれ」と騒ぎ出し、出してあげると様々な出来事が起こる。過去の出来事なども思い出され、最後はおばあさんも前向きになって終わる。

おいしそうな、ホットケーキが出てきたり、可愛らしいカナリアが登場したり、愛らしく読後感もすがすがしい、楽しい作品。
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風のローラースケート [文学 日本 安房直子 か行]


ものいう動物たちのすみか (安房直子コレクション)

ものいう動物たちのすみか (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



峠に住む家族たちの話。基本は茂平茶屋という茶屋を営む家族が主人公の話。

1. 風のローラースケート
◎茂平さんといたち
小さな茶店を営む茂平さんが、「きょうはひとつ、ベーコンをこしらえてみよう」と思い立つ。作っている途中でいたちが現れ、ひと口分けてくれ、と頼まれ、できたらわけてあげようと約束する。すると別のところからもいたちが現れ、こちらも同じように頼んでくる。同じように分けてあげることを約束する。遂に出来たところ、一方のいたちがベーコンを盗んで走り去る。いくら追っかけてもなかなか追いつけない。すると、もう一匹のいたちが現れローラースケートを貸してくれる。盗んだいたちもローラースケートを履いていたことがわかり、追いかけっことなる。ハラハラドキドキのストーリ。最後は楽しく平和に終わる。

2. 月夜のテーブルかけ
◎おかみさんとたぬき
おかみさんがセリをつんでいると、たぬきがテーブル掛けを選択しているところに出くわす。色々話しているうちに、このたぬきはホテルを経営しており、そこで美味しい料理を提供していることがわかる。このたぬきが、茂平茶屋で作っている「みそおでん」の作り方を習いに来ることになる。
茂平さんにみそおでんの作り方を習ったたぬきは、一家を自分の経営する「ゆきのしたホテル」へ招待する。
こどもの太郎もつれ三人で「ゆきのしたホテル」へ。そこでおいしい野草料理をごちそうになる。
こころがほっこりする話。

3. 小さなつづら
◎茂平茶屋の近くにある、お土産屋さんを営む老夫婦と猿
「つるのおんがえし」のような話で、風邪を直してもらった猿に助けられる老夫婦の優しい心がとても良い。最後の一文が心に残る。
「おばあさんは、いちばんはじめに、猿が持ってきてくれた見本のつづらを、だいじにしています。これだけは、けっして売らないでおこうと心に決めているのです。」

4. ふろふき大根のゆうべ
◎もへいさんといのしし
買い物に行った帰り、いそいで山を登っていたところ、いのししに出会う。そこで手にしていた大根を見て、「一本わけてもらえませんでしょうか」と頼まれる。一本わけてあげたお返しに、いのししのふろふき大根パーティに、呼ばれてご馳走になる。帰りにほっかむりを借り外へ出ると自分の足が軽くなっていてあっという間に家に着くという話。

5. 谷間の宿
◎朝、茂平茶屋に息をきらしてやってきた男と虫
狭い宿で虫に囲まれる男のはなし。宮沢賢治の「注文の多い料理店」を彷彿とさせる。かなり怖いし気持ち悪い話。

6. 花びらづくし
◎おかみさんと桜の精
桜がちらほら咲き始めた頃、おかみさんのもとに、さくら屋から、年に一度やってくる、桜の精による、お祭りへの招待状が届く。まわりの婦人たちと一緒に当日出かけていく。そこで美しい枕を買うのだが、それを使って眠ると、桜のはなびらに自分がどんどん埋められていってしまう。最後はなんとか助かるものの、他にもいろいろ買ったものを林の中に置き忘れてしまう。若干、教訓めいていて怖い話。

7. よもぎが原の風
◎太郎&子どもたちとうさぎ
こどもが遊んでいるうちにいつのまにかうさぎになってしまっている話。安房直子さんは同じ様な話しを違う形で何回か書いている。あまんきみこさんなどもそうなのだが、結構児童文学になわとびをモチーフにして話を膨らませることがよくある。

8. てんぐのくれためんこ
◎たけしとてんぐ
傑作。絵本にもなっている。めんこの弱い男の子が天狗にもらっためんこで、きつねたちと勝負するうちに力を付ける話。「セロ弾きのゴーシュ」のような動物たちによって力をつける人間の姿がとてもほのぼのとしていて良い。

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カスタネット [文学 日本 安房直子 か行]


日暮れの海の物語

日暮れの海の物語

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2023/02/19
  • メディア: 単行本



お百姓の信太が、背中のかごにどっさりと梅の実をいれて、町へ売りに出かける。
町へ行く道中、おかみさんのことを考える。

おかみさんは三つ年上で、たいへんな働き者だが、ちっとも美しくないし、あまりやさしい言葉もかけてくれない。(もっと、べつのよめさんもらうんだった)とまで考えている。

森を歩いているあいだ、
「カタ、カタ、カタ」
という不思議な音が聞こえてくる。しばらく聞いていると、ある木の中から聞こえてくる木の精がカスタネットの音だとわかる。

木の中から出てきた木の精に、梅を少し分けてくれ、と頼まれ、あげる。木の精は帰ってくるまでに「砂糖づけ」にしておいてあげると約束する。

町で梅を全部売った帰り道、木の精に誘われ目をつむると、信太は木の中へと吸い込まれてしまう。

一日経っても帰ってこない信太を心配したおかみさんが、森へ向かう。
木のところには彼の帽子が。カスタネットの音を聞き、木の中に閉じ込められているのを知り、他にも閉じ込められていた数々の動物の助けを借りて、最終的には信太を救出する。

しかし、その過程で信太は足を痛めてしまい、足が動かなくなってしまう。

人間の欲望を描いたちょっと恐ろしい作品。あまり美しくないが働き者の妻がどうしようもない夫を助け出すというのが、安房直子さんっぽくて良かった。
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カーネーションの声 [文学 日本 安房直子 か行]


夢の果て: 安房直子十七の物語

夢の果て: 安房直子十七の物語

  • 出版社/メーカー: 瑞雲舎
  • 発売日: 2005/12/10
  • メディア: 単行本



書き手の祖父が七十いくつでなくなる。彼は十坪ほどの温室を残していた。そこにはいろいろな花が植えられていたが、カーネーションだけはもらいてもおらず全部捨てることに。

その後、その跡地にアパートが立つ。

そのアパートには八人の男が住むことに。
ある日のこと、住人の一人が、
「カーネーションよ、
 カーネーションよ、
 あたしらみんな、カーネーションよ」
という歌声を聞いたという。他の十人も同じように耳にしていた。

後日彼の部屋におじゃまして部屋にいると、確かに声が聞こえてくる。

それ以来、カーネーションは書き手の大好きな花に変わる。しかし徐々にカーネーションの声は聞こえなくなっていってしまう。

自然を壊す人間に警鐘をならす美しい作品。
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