SSブログ

ききょうの娘 [文学 日本 安房直子 か行]


花のにおう町 (安房直子セレクション3)

花のにおう町 (安房直子セレクション3)

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1983/08/15
  • メディア: 単行本



新吉という、酒飲みでなまけものでろくすっぽ仕事もしない大工がいた。ある日、そんな新吉の下に、母親から、「おまえも、そろそろ、よめをもらいなさい。よめは、山のものがいちばんだ。いい娘がいるから、そっちへいってもらいます」という手紙をもらい、実際10日すぎた頃に、白くて小鳥のような声をした娘がやってくる。彼女は、掃除から料理まで色々と面倒を見る。嫁入り道具に持ってきたシンプルな茶碗で、毎日のように山のものを食べさせる。そのおかげで新吉はどんどん元気に真面目に裕福になっていく。

そのうち、山のものに飽きてきた新吉は魚や甘いものを欲するようになり、「山のものは、どうも、どろくさくていけないよ。きのこや、山のいもは、たまに食べるのはいいが、いつもいつもじゃ、あきがくるよ」と言ってしまう。ある朝、「こんど、新しいおわんを買おうじゃないか。もっといいぬりの、外側にもちゃんと模様のあるやつを」と言ってしまう。その日仕事から帰ると妻はいなくなっている。

お椀の内蓋のききょうの模様を見ていると、いつの間にか故郷の町へいた。そこで、自分の家に戻ってみると、まわりにききょうの花が咲き誇っていた。ききょうの花は母親が大好きな花だった。家に入ると娘がこしかけていた。むすめは花の精だった。一緒に帰ろうと誘うと、断られる。そしてあなたの母親はいつもあなたのことを心配し山のものを食べさせたがっていたと伝える。そしておわんをプレゼントしてくれる。

新吉は、いつの間にか寂しくなった自分の家に戻っていて机の上にはおわんが置かれていた。

若干教訓めいた美しく暖かい話。この『花のにおう町』(現在絶版)でしか読めない名作。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。