オーケストラ! [映画]
オーケストラ! スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2010/11/04
- メディア: DVD
かつてユダヤ人迫害に抗議してオーケストラを辞めさせられてしまったソ連の楽団員とその指揮者が、あることきっかけに自分たちのオーケストラを組織しパリで演奏会を開き大成功をおさめるという、非現実的なストーリー。
だが非常に面白い。色々な人の心の模様も丁寧に描いており、暗い中にもユーモアたっぷりで笑える場面も多々ある。
指揮者のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に対する熱い想い。それに答えるヴァイオリニストやオーケストラメンバーたち。最後の演奏場面が素晴らしすぎて涙がこぼれた。
感動作。オススメ。
Once ダブリンの街角で [映画]
ジョン・カーニー監督『はじまりのうた』に続いて『Once ダブリンの街角で』も再観した。
『はじまりのうた』よりも、余韻があり、なんとの言えない間が有り、すごくすごくじっくりと考えながら観られる良作だ。アメリカ映画のようなバカみたいな明るさは皆無で、若干『シェルブールの雨傘』を彷彿とさせる切なさがある。
世界中で大ヒットする理由もいまいちわからないくらい繊細であまり大衆受けしないストーリーな気はする。
『はじまりのうた』よりも、一つ一つの曲も質が高く、ミュージカル作品として舞台化されるのは、わからなくはない。
とにかく良い映画だ。
はじまりのうた [映画]
アレクサンドリア [映画]
久しぶりに普通(文芸・ディズニー・ジブリ・ミュージカル・オペラ等ではない)の映画を見たきがする。
4世紀、段々とキリスト教化していくエジプトのアレクサンドリア。科学への情熱を持った自分の信念を貫く女性科学者ヒャパティアの物語。
彼女の教え子たちである、エジプト長官オレステス、ヒャパティアの奴隷であったが自由の身となり修道院に入るダオス、それぞれがそれぞれの形でヒュパディアを愛し守ろうとする姿が美しいし、何よりヒャパティア(レイチェル・ワイズ)の見た目もそうだが、内面の美しさが素晴らしすぎる。
結構残忍な場面も多く、未成年にはあまり勧められる映画ではないが、とてもよかった。
レベッカ [映画]
ミュージカル『ジェイン・エア』を観て、かつて観たミュージカル『レベッカ』が結構面白く、音楽も良かったのを思いだし、1940年に制作されたローレンス・オリヴィエ主演、ヒッチコック監督の映画『レベッカ』をもう一度観てみたいと思い、観てみた。
古い映画で白黒で画質もかなり悪いが、見始めるとほとんど気にならないくらいとにかく面白い。
原作は、ダフニ・デュ・モーリエの日本語版で上下2冊本とかなり長い作品で、深みがありかなり読み応えがある。まあそのエッセンスを抽出しただけの作品であるのには違いないのであるが、これはこれで良いと思う。
ヒロイン役のジョーン・フォンテインがとにかく綺麗で愛らしい。調べると、彼女は数年後、『ジェイン・エア』の映画版にも出演しているらしい。イギリス人両親の下に生まれ、日本で育ったらしい。
綺麗な画像になって売り出して欲しい作品。
マザー・テレサ [映画]
数年前、ブックオフで購入し、何度かはじめの部分を観るものの、最後まで観きれずにいた作品。
これはスペシャルボックスで、「ノーカット版」と「デラックス版」とあり、どっちがすごいのか?と思ってよく見ると、ノーカット版は劇場公開の際カットされてしまった1時間強の子供時代も含まれているのが、「ノーカット版」、主演のオリヴィア・ハッセーのインタビューなどが入っているのがデラックス版らしい。
当然ノーカット版を観て、デラックス版のインタビュー映像を見た。
マザー・テレサという人には前々から興味があるものの、『マザー・テレサ日々の言葉』という本しか彼女(について)の作品は読んだことがなく、今回彼女の一生を知ることができて良かった。
組織を作ろうとせず、とにかく今できることに力を尽くし、最も貧しい人たちのところへと回帰していく彼女の姿がとても感動的だった。
ホテル・ルワンダ [映画]
もう15年近く前だろうか。教えていた生徒に、『ホテル・ルワンダ』という映画を観てとても感動したから観てみて、と言われ、それがルワンダ虐殺を扱った映画であるということでずっと気になっていたのだが、長い年月見ないで来た。
先日、偶然Hard OffでこのDVDを見つけ購入し遂に今日観た。フツ族とツチ族の関係性、歴史的背景などを知ってから見ないと、何が行われているのかイマイチわかりづらい作品かもしれない。
初めは自分の家族を守ることを第一に考えていた主人公ポールが難民たち全員のことを考え行動するようになっていく過程は感動的だ。
ユダヤ人とアラブ人の対立・パレスチナ問題にしても、ツチ族とフツ族の対立・ルワンダ紛争にしても、結局白人たちの勝手な統治政策がもたらした問題だ。それに対して正面から向き合おうとしないヨーロッパの国々はなんなのだろうか、という気持ちがこの映画を見ながら湧き上がった。しかしこれはアジア諸国に対して正面から向き合おうとしない日本という国家にも同じことが言える。
改めて歴史を学ぶことの大切さ、そして学んだことを行動に生かしていくことの大切さを考えさせられる映画だった。
ベオウルフ [映画]
パリの家族たち [映画]
近所のおじさんから、映画のチケットを鑑賞券をもらったので観に行ってきた。
「パリの家族たち」という、「働く女性」と「こども」をテーマにした映画だった。
はじめは、いろんな登場人物が細切れに出てきて、誰が誰だか分からず、話も飛び飛びなのでよくわからなかったが、段々だんだんと色々な人々・話が収斂していって大団円を迎えるという感じのストーリーになっている。すべての登場人物がすべてひとつになるといったシェイクスピア的な感じではないのだが、様々な登場人物たちが、自分では意識しないで、出会っているといった感じになっている。
「母の日」というものをストーリーの柱にしながら、各個人の「自分と母親」「自分と子供」という関係性から生まれる苦悩・葛藤を非常に丁寧に描いている。特に女性大統領の葛藤、そしてその葛藤を乗り越えた(葛藤を経験して一歩成長した)時の清々しさがとても印象的で気持ちが良い。ジャーナリストが大統領にインタビューする場面があり、それがテレビで映し出され、多くの人がそれを目にしているという場面があるのだが、あの場面はもう少し突っ込んで細かく映像化しても良かったのではないだろうか。
彼女の言葉で非常によかった言葉、映像で見ただけなので正確な言葉ではないが・・・
ジャーナリスト「今度の選挙にも出馬なさいますか?」
女性大統領 「4年前、フランス国民は大統領に女性を選んだ、そして今度は母親を選びことになる」
母親になったことで、自分に自身をなくし、それが意思決定にも影響を及ぼし、支持率が落ちている中での言葉だけに、この確信に満ちた言葉が心の響き、観ていて涙が出そうになってしまった。
ちなみに、同性愛や娼婦、結婚前妊娠などもストーリーの中に組み込まれており、徹底した弱者に対する視点がとても印象的で力強い作品だった。
「パリの家族たち」という、「働く女性」と「こども」をテーマにした映画だった。
はじめは、いろんな登場人物が細切れに出てきて、誰が誰だか分からず、話も飛び飛びなのでよくわからなかったが、段々だんだんと色々な人々・話が収斂していって大団円を迎えるという感じのストーリーになっている。すべての登場人物がすべてひとつになるといったシェイクスピア的な感じではないのだが、様々な登場人物たちが、自分では意識しないで、出会っているといった感じになっている。
「母の日」というものをストーリーの柱にしながら、各個人の「自分と母親」「自分と子供」という関係性から生まれる苦悩・葛藤を非常に丁寧に描いている。特に女性大統領の葛藤、そしてその葛藤を乗り越えた(葛藤を経験して一歩成長した)時の清々しさがとても印象的で気持ちが良い。ジャーナリストが大統領にインタビューする場面があり、それがテレビで映し出され、多くの人がそれを目にしているという場面があるのだが、あの場面はもう少し突っ込んで細かく映像化しても良かったのではないだろうか。
彼女の言葉で非常によかった言葉、映像で見ただけなので正確な言葉ではないが・・・
ジャーナリスト「今度の選挙にも出馬なさいますか?」
女性大統領 「4年前、フランス国民は大統領に女性を選んだ、そして今度は母親を選びことになる」
母親になったことで、自分に自身をなくし、それが意思決定にも影響を及ぼし、支持率が落ちている中での言葉だけに、この確信に満ちた言葉が心の響き、観ていて涙が出そうになってしまった。
ちなみに、同性愛や娼婦、結婚前妊娠などもストーリーの中に組み込まれており、徹底した弱者に対する視点がとても印象的で力強い作品だった。
ニコラス・ウィンストンと669人の子どもたち [映画]
昨日恵比寿の映画館で「ニコラス・ウィンストンと669人の子どもたち」という映画を見てきた。
第二次世界大戦直前、まさにナチスが侵攻してこようという直前の、チェコスロヴァキアから、数百人の子どもたちをイギリスへ電車と船で救い出したニコラス・ウィンストンのドキュメンタリー映画。
正直、色々な人の話が出てきたり、過去と現在が行ったり来たりしたり、ウィンストンに焦点を当てているので、全体像としてその救出計画がどのようなものだったのか、といったことが非常にわかりにくい構成になっている。なので、この救出の全貌を知りたいという人にはあまり適さない映画かもしれない。
しかし、原題は「Nicky's Family」。つまり、彼が子どもたちを救い出し、その子どもたちが生き残ったことが、現代(後の世)にどのような影響を与えたか、ということに焦点を当てた映画なのだ。
観た後、非常にポジティブな気持ちになると共に、自分はこの世界で何をしているんだろうと考えさせられてしまう映画だった。
第二次世界大戦直前、まさにナチスが侵攻してこようという直前の、チェコスロヴァキアから、数百人の子どもたちをイギリスへ電車と船で救い出したニコラス・ウィンストンのドキュメンタリー映画。
正直、色々な人の話が出てきたり、過去と現在が行ったり来たりしたり、ウィンストンに焦点を当てているので、全体像としてその救出計画がどのようなものだったのか、といったことが非常にわかりにくい構成になっている。なので、この救出の全貌を知りたいという人にはあまり適さない映画かもしれない。
しかし、原題は「Nicky's Family」。つまり、彼が子どもたちを救い出し、その子どもたちが生き残ったことが、現代(後の世)にどのような影響を与えたか、ということに焦点を当てた映画なのだ。
観た後、非常にポジティブな気持ちになると共に、自分はこの世界で何をしているんだろうと考えさせられてしまう映画だった。
いしぶみ [映画]
是枝裕和監督、綾瀬はるか主演の映画「いしぶみ」を観て来た。
1945年8月6日広島 旧制広島二中の一年生が建物解体作業のために現原爆ドームそばの川の近くに集まっていた。原爆を落とされ、そこにいた全員が死亡した。
この出来事を映画にしたもの。
なのだが、普通の映画とは全く違う。
ひたすら綾瀬はるかが、生徒一人一人の当時の状況を朗読するだけというものなのだ。文章を読む綾瀬はるかの映像と声、セットとしておかれた木箱のみでひたすら映画は進んでいく。途中池上彰が、生き残った人々にインタビューする場面が挟まれるが、基本は綾瀬はるかの朗読のみ。
最初から最後まで極度の緊張感を強いられるすさまじい映画だった。池上彰のインタビュー映像から綾瀬はるかの朗読に戻った数分、集中力が切れてしまい、彼女の言葉が入ってこなかった瞬間があったが、あとはひたすら彼女の朗読に耳を傾けた。
徹頭徹尾冷静な視点で語られるこの映画。戦争物というととかく人の感情に訴え、悲惨さを強調し、涙を誘うようなものが多いこの日本において、素晴らしい映画だと思う。
我々は冷静に太平洋戦争を見つめ、戦争、暴力の非人道性・非道徳性に心を向けるべきではないだろうか。
ハンナ・アーレント [映画]
昨年秋、日本でも大ヒットした映画「ハンナ・アーレント」を仕事の関係で観た。
私は卒論でハンナ・アーレントの『全体主義の起源』を用い、かなり綿密に読んで以来、アーレントはずっと気になる存在で、その後も『アウグスティヌス愛の概念』(これはむずかしくよくわからない)、『イエルサレムのアイヒマン』『革命について』『人間とは何か』『暗い時代の人々』『過去と未来の間』などなど、社会人になってからも結構読んできた。
彼女の作品は論理がわかりづらく(私にとっては)、彼女が何を主張したいのかその本質を掴むのが難しい。文章を読み進める際、常に考えながら読まなければならないし、読後も考え続けなければならないし、ずっと心のどこかに引っ掛かって、思考することを要求してくる。
彼女の作品を何冊か読み考えることによって気づいたことは、アーレントは「考える素材」を我々に提供するだけで、最終的には読者自身が結論を出すことを求めているのだ、ということだ。
だから自分の属する共同体であろうが、対立する(と一般的にはみなされている)共同体であろうが、冷静に分析し、(一般的な意味で)良い面であろうが悪い面であろうが、事実として提示している。
これは素晴らしい姿勢だと私はおもう。自分の属する団体の中で問題点などを指摘すると、拒否感や嫌悪感を顕にする者が数多い。しかしそれでは共同体はよくならない。常に批判的に自分を見つめ変革していかないものは必ず腐敗する。それがわからない組織・個人があまりにも多すぎる。
映画『ハンナ・アーレント』はアイヒマン裁判にスポットを当てることで上記のようなことを伝えている作品だ。私が思っていたとおりの「ハンナ・アーレント」が映画の中で描かれていて、自分のアーレント解釈が自分勝手なものではなかったことに安堵の気持ちを持つとともに、自分の今までの価値観を揺さぶってくれるものがなかったことに若干残念な気持ちもあった。
ソクラテス、プラトン以来、「考える」ということが人間の重要な要素として尊重されてきた西洋社会。そんな社会の中でアイヒマンは自ら「思考」することを放棄し「ただ命令に従った」。「思考」しない人間は人間ではない。これは確かに西洋的な伝統なのだろうが、万国に共通のことだと私は思う。「思考」とはただぼんやり考えることではない。より善き社会をイメージし、それを現在ある社会に照らし合わせ、何が問題かを様々な角度から自分で考えることこそ「思考」と言える。テレビなどが垂れ流す権力者に擦り寄るような考えをそのまま鵜呑みにし人々にさらに撒き散らす過程で考えていることなど「思考」とは言えない。
この映画は日本ではかなり大ヒットしたらしい。新聞やネットなどではヒットの理由を様々に論じていた。その多くは「混迷するこの日本において、人々は思考することを求めているのではないか」というものが多かった。私にはまったくそうは思えず、ただヒットしているから見てみようという程度のものだとは思う。
しかし多くの人がこの映画を観たのであれば、その観た人たちだけでも「思考」し「行動」してくれることを切に祈る。