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現代日本文学館 森鴎外 [文学 日本 Classic]


舞姫 雁 阿部一族 山椒大夫―外八篇 文春文庫 (文春文庫 も 11-1 現代日本文学館)

舞姫 雁 阿部一族 山椒大夫―外八篇 文春文庫 (文春文庫 も 11-1 現代日本文学館)

  • 作者: 森 鴎外
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1998/05/01
  • メディア: 文庫



高校・浪人時代世界史を勉強し、様々な文化史を学び、そこで出てきた文学作品に興味を持ち、大学時代は岩波文庫・新潮文庫を中心とした、世界の古典文学や哲学作品を読みあさった。何かのきっかけでそろそろ日本の近代文学も読んでみなくては、と思っていたところにこの文春文庫の「現代日本文学館」シリーズに出会った。有名な文豪の名作が結構な量でコンパクトに収録されているのに惹かれて購入した。

十数年ぶりに再読してみた。

1.舞姫
言わずと知れた名作と呼ばれているもの。公費でドイツに留学した主人公が、そこで知り合った女優と恋に落ち子供まで作るが、それが政府高官に知られるところとなり、帰国を余儀なくされる。その近代的自我と近代的国家観の狭間で揺れ動く主人公の心を丹念に描いた作品ということで教科書に取り上げられているっぽいが、とにかく主人公が最低人間にしか思えない。最後エリスと別れたことも人のせいにするし・・・。

2.妄想
西洋と東洋を比較したり、当時の思想状況などを語った日記的作品。『三太郎の日記』を彷彿とさせる。
p.52
「食物改良の議論もあった。コメを食うことを廃めて、たくさん牛肉を食わせたいと云うのであった。その時自分は「米も魚もひどく消化のいいものだから、日本人の食物は昔のままがよかろう、もっとも牧畜を盛んにして、牛肉も食べるようにするのは勝手だ」と云った。
この辺を読んでも、鴎外は進んでいる人の中でもさらに進んでいる、周りに流されないしっかりとした考えを持っている人だったのだなあ、と思う。圧倒的な読書量がそうさせたのだろう。

3.雁
これは傑作。金貸し業を営む男性のところに、妾としてとついだ美しく純真な心を持った女性と、前途有望な純真な心を持った学生の、交わりそうで交わらない物語。かなり長く初めは結構読み進めるのが大変だが後半は一気に読める。最後の二人が交わらずに別れとなってしまう場面が悲しい。

4.かのように
キリスト教というのか宗教と科学の対比を描いた作品。結局「かのように」がどういった事象を指すのか私にはわからないままだった。

5.阿部一族
当主を殺された阿部一族の仇討ち物語。昔読んだ時はかなり面白かった印象だが、今回はイマイチ。武士道のなんたるかのようなものは教えてくれる。

6.護持院原の仇討ち
これも仇討ち物語。父親を殺された一家が仇討ちをするために日本全国を探しまわる物語。

7.山椒大夫
もっと牧歌的な感じをイメージしていたが、人が売られかなり苦労して逃げた結果・・・、という話し。最後は「え、そんな結論!」という感じ。昔読んだ印象と全く違った。

8.魚玄機
中国の美しい女性の嫉妬の物語。

9.じいさんばあさん
これは非常に美しい。武士道を貫いた男とその人に最後まで真心を捧げた女性の物語。

10.高瀬舟
短いが非常に心に残る、安楽死をテーマにした時代をかなり先取りした作品。

11.寒山拾得
なんだかよくわからない坊さんたちの話し。

12.都甲太兵衛
この話もよくわからない。

ものすごい面白いという類の作品は少ない気がするが、当時はかなり先を行っていた作品群なのだろう。現在あまり読まれない、ファンがすくないのもわかる。
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