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おいでおいで [文学 日本 松谷みよ子]


おいでおいで (現代の民話・戦争ってなあに 1)

おいでおいで (現代の民話・戦争ってなあに 1)

  • 出版社/メーカー: 国土社
  • 発売日: 2022/06/07
  • メディア: 単行本



戦争の実態を描いた本。どうやってこうした類の話を収集できたのかはわからないが、皆が口をつぐんで語ろうとしない、そしてあまり表に出てこない、戦争中アジアで日本人が何をしてきたのか、戦争中男たちが戦場に行ったあと女性たちが何を思い感じてきたのかを克明に描いた本。くだらない平和教育を行うなら、この本を読ませたほうがはるかに良い気がする。

01. 夢で帰ってきたとうちゃん
02. 空をゆく魂
03. 三度来た遺骨
04. おいでおいで
05. 海になげだされて
06. トラと泳いだ兵隊
07. 戦争にいったコックさん
08. 霜のふる夜
09. 死体橋
10. 生きていた兵隊

1,2は遠くにいるはずの夫の霊が家にやってきて自分が死んだことを知らせる話。3は自分の夫の死を受け入れられない妻の話。どれも妻視点描かれている。

4~は実際の戦場で行われたこと、行ったことが一人称で語られている。ユーモラスな作品もあるが基本的にはシリアス。特にアジア人を惨殺した話(霜のふる夜)、死体がおおすぎて手だけを焼いて持ち替えざるを得なかった話(おいでおいで)、南京大虐殺を描いていた話(死体橋)は真に迫っている名作。

10は戦後も戦争の後遺症に苦しむ(戦争で死んだ息子が生きているのではないか、という思いに苦しむ)女性の話。

本当に素晴らしい作品だと思うが、読んでいて結構辛い。
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ちびっこ太郎 [文学 日本 松谷みよ子]


ちびっこ太郎 (松谷みよ子全集)

ちびっこ太郎 (松谷みよ子全集)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1972/11/25
  • メディア: 単行本



松谷みよ子「太郎」三部作の最終作。西洋にもよくある三兄弟の末っ子が活躍する話。末っ子太郎は若干たりないとされている子。そんな太郎が逆に恐れ知らずの行動をし、畑を襲うしかを倒し踊るひょうたんを手に入れ、やまんばの子どもが生まれたお祝いをしに行き、決して無くならない錦をもらい、火の鳥退治に行きかえってその火の鳥と仲良くなり最強の刀をもらい、お殿様を助け、民のために働き最後は、お姫様と結婚しお殿様になる話。

お金ではなく人の心や暮らしを大事にし、緑を大切にし、誠実に生きることの貴さを訴えたこの本。「太郎」三部作の中では一番地味だが、一番メッセージ性が強く美しい話だと思う。

ぜひ子供に読ませたい作品だ。
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まえがみ太郎 [文学 日本 松谷みよ子]


まえがみ太郎 (偕成社のAシリーズ 1)

まえがみ太郎 (偕成社のAシリーズ 1)

  • 作者: 松谷 みよ子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2022/05/29
  • メディア: 単行本



山の山の山ん中の小さな村に住む貧しい老夫婦。明日は正月だというのに食べるものもない。たった一匹いた馬の黒を売って食べ物を手に入れようとおじいさんは出て行く。その時ある老人が道で倒れているのを助ける。助けた人は実は「お正月」の神様。願いを一つ叶えてやろうと言われ老夫婦は子供を願う。子供を授けられさらに若返った二人は大事にそのこを育てる。まえがみ太郎と名付けられた彼はすくすく成長する。彼は馬にのって遊んでいたのだが、この村では馬に乗ってはいけないということになっていた。そんなある日大地は揺れ岩や石が降ってくる。馬に乗って遊ぶまえがみ太郎が山の怒らせたせいだということになる。まえがみ太郎はそこで山へ行ってみることにする。

馬にあったり、火の鳥にあったり、くじらにあったり、ウシオニにあったり、様々な人間や動物、神様と会い助け助けられしながら、ある長者の姫様を助け、大蛇をやっつけ、町を救って、姫様と結婚し幸せになるという話。

有名な『龍の子太郎』ほど面白くはないが、竜宮城が出てきたり、様々な日本昔話をベースに、金儲けばかり考えていると悲惨な目に会うという昔話お決まりの教訓めいたものもあり、それなりに楽しかった。
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龍の子太郎 [文学 日本 松谷みよ子]


龍の子太郎(新装版) (児童文学創作シリーズ)

龍の子太郎(新装版) (児童文学創作シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/07/13
  • メディア: 単行本



国際アンデルセン賞優良賞を受賞したというこの『龍の子太郎』。日本の民話、桃太郎、三年寝太郎、鶴の恩返し、ほか様々なお話の要素を織り交ぜたような絶妙な物語となっている。

両親がおらずばあさまと暮らす男の子太郎。彼は「たつのこ、まもののこ」といじめられて育つ。そんなある日、ばあさまに彼の母親は本当に龍で、北のお山の沼の中に住んでいると聞かされる。龍にされてしまった母を救い出すために龍の子太郎は旅に出る。

そこで出会う鬼や天狗、老人たち、村人たちを助けたり、彼らに助けられたりし、太郎は成長し立派に母を救い出し、さらに村人たちを貧困から救い出す。

太郎の成長譚であるとともに、自然と共に生きること、山で貧困の元暮らすこと、様々なテーマが織り交ぜられたこの作品。派手な作品ではないが、かなり良質な作品であり、ぜひぜひ多くの子供に読んでもらいたい物語だ。
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民話の世界 [文学 日本 松谷みよ子]


民話の世界 (講談社学術文庫)

民話の世界 (講談社学術文庫)

  • 作者: 松谷 みよ子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/08/12
  • メディア: 文庫



松谷みよ子が「民話」について書いた評論作品。
様々な民話を実際に作品を提示しながら論じたもの。各々に点在する民話から、民話は語り手によって、切り口によって違ったものになることや、民話で取り上げられる様々なテーマなどを論じている。結局は民話は口頭伝承のものであり、決まった物語があるわけではないという結論で終わる(まとめすぎか・・・)。

民話に少しは興味はあるが、ものすごく興味があるわけでもないし、作品を取り上げて書いている部分は一度読んでいたりするので、結構飛ばし読みな感じだった。

じっくり読めば興味深いとは思うが、小説にどっぷりつかっている今の私には読み進めるのがちょっと辛い作品だった。
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舞踊台本 鯉女房 [文学 日本 松谷みよ子]


松谷みよ子の本 (第7巻) 小説・評論

松谷みよ子の本 (第7巻) 小説・評論

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/02/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




鯉にょうぼう (創作絵本 39)

鯉にょうぼう (創作絵本 39)

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 2022/03/20
  • メディア: 単行本



日本の昔話、「鶴の恩返し」に環境問題を絡ませたような物語。それに踊りを絡ませたものらしく、実際舞台を見たら結構楽しいんだろうなと思わせるストーリーとなっている。

短いが緊迫感もあり、結構面白かった。
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短編小説 [文学 日本 松谷みよ子]


松谷みよ子の本 (第7巻) 小説・評論

松谷みよ子の本 (第7巻) 小説・評論

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/02/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



数篇の短編集

①小説 坪田譲治 雲煙模糊なり
松谷みよ子が、夫の劇団の公演に呼ばれて、師匠である坪田譲治と八丈島へせっかくいったなのに、夫は自分と坪田の相手を全くせず、挙げ句の果てには不倫めいたことも堂々とされ、その不倫で使ったベッドに師である坪田譲治を休ませてしまったかもしれないという笑えるが笑えない話。それなりに面白かった。

②馬流
元・夫のお墓を探す電車の中で、ふと気になった駅「馬流」で降りようとしたが、降りられずそのまま東京に帰ってきたのだが、何故かその「馬流」に住む人から、「住所と電話番号があったので電話した」という連絡がその日にあった話。『あの世からのことづて』に入っていても良い超自然現象の話。結構面白かった。

③トランプ占い
仲良くなったとなりに住む夫婦の奥さんから、夫と自分の死期を、東京に行くついでにトランプで占ってきてほしいと頼まれるお話。これも少し怖い話だが面白かった。

④芥子の花曼荼羅
この話は初めに、すこし怖い話です、と断り書きがある。韓国併合を行い、夫と共に朝鮮へ行った女性が、芥子の花畑で恐ろしい体験をした話。わざわざ韓国併合の話を初めに書いているのは、この話がバチが当たった話として描きたかったのか、それともただ単に韓国の話をするための導入としてかいたのか。どちらかはわからないがとにかく恐ろしい話。本当にこんなことがあったのか、と思ってしまう。

⑤花さん
こちらは夢の話で、超自然現象の話。

全体的に面白かった。

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りえ覚書 [文学 日本 松谷みよ子]


松谷みよ子の本 (第7巻) 小説・評論

松谷みよ子の本 (第7巻) 小説・評論

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/02/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



語り手が結核病院で出会って仲良くなった、津田りえという人の生まれてから初潮を迎えるまでの波乱万丈の人生を描いた作品。

戦前に生まれ、母親をなくし、父親が三度も妻を変え、祖母に引き取られ、満州に行き、そこで様々な体験をし、これから戦争も体験し大変なことになりそうだ、というところで終わる。

結構大変な人生が語られるのだが、淡々とした若干ユーモアのある語り口調なためかあまり暗さや辛さを感じさせない明るい雰囲気の作品。最後の方で反戦的な部分もあり、それなりに考えさせられる作品となっている。

p.349
「いわゆる盧溝橋事件といわれるこの事件の発端は、北京の郊外に駐屯していた日本軍が夜半、夜間演習を行ったが、終了後突然小銃の音がした。不安を感じた隊長がすぐさま点呼を命じると、兵した一人行方不明になっていた。
 それを理由に郡は行動をおこして、盧溝橋を占領したのである。
 もちろん中国側も応戦し、交戦が始まったが、その時にはすでに行方不明の兵士の所在はあきらかになっていたのである。兵士は用をたすために隊列をはなれたにすぎなかったのだ。
 だがこうした歴史の糸目は、血で彩られ、人間の平和な生活がくだけ去ったあとにみえてくることがなんと多いのだろう。国民が知りうることは、中国側が発砲した、兵士が行方不明になったということであって、日本軍が実弾を携帯していたこと、相手側に通知もせず真夜中に大演習を行うことの不当さ、兵士は本当はピンピンしていた、などということは知らされない。」

p.353
「そうなのだ。中国の人たちは戦争が始まったからといって、特にりえたちに敵意のこもった眼をむけてくるわけではないのだ。」

こういう文章を読むと、日本が世界中の人々とどのように接していかなければならないのかを、考えさせられる。

それなりに興味深い作品だった。
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あの世からのことづて 私の遠野物語 [文学 日本 松谷みよ子]


あの世からのことづて―私の遠野物語 (ちくま文庫)

あの世からのことづて―私の遠野物語 (ちくま文庫)

  • 作者: 松谷 みよ子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2022/03/13
  • メディア: 文庫



小説というより、各地の不思議な話を集めた作品集みたいなもの。実在の登場人物ばかりが出てくる。
一度死んだけれども、三途の川を渡る前に呼び戻された話や、自分の死体を上から見て、帰ってきた話、誰かが遠くで死んだとき、その瞬間、遠くにいるはずのその人が自分の目の前や近くに現れる話など、基本的には死にまつわる不思議な話が収められている。後半、戦争の話になったりしてシリアスさを増す。

各地の不思議な話を集めたもので、アボリジニーの話に似ているなあ、自然と密接に関わって生活していた頃はこんな不思議な事象も当たり前に起こるのだなあ、など考えて呼んでいたが、最後は若干飽きてきた。

拾い読みするには面白い作品集かもしれない。
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捨てていく話 [文学 日本 松谷みよ子]


松谷みよ子の本 (第7巻) 小説・評論

松谷みよ子の本 (第7巻) 小説・評論

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/02/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



松谷みよ子の小説『捨てていく話』を読み終わった。彼女と瀬川拓男との結婚生活から離婚、彼の死、その後の話までを、小説という形にして語った物語。名前などは変えられているが、ほぼ真実なのだろうと思う。そういった意味では、私小説と言えるのではないだろう。

かなり彼女の結婚生活当時の内面が克明に描かれており、それなりに読み応えがある。モモちゃんシリーズと並行して読むことでかなり彼女の当時の内面がわかるのではないだろうか。

とはいえ、このブログにも何度か書いている気がするが、私は私小説的な小説があまり好きではない。全集を購入していなかったら決して読まなかった本ではあろう。
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人間界のむかし [文学 日本 松谷みよ子]


松谷みよ子の本 (第8巻) 昔話

松谷みよ子の本 (第8巻) 昔話

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



『松谷みよ子の本』第八巻「昔話」を読み始めた。かなりの量が収録されており、しっかり読む話と流し読みする話があるが、とりあえず、「人間界のむかし」とカテゴリー化された箇所を読み終わった。

三年寝太郎
屁っぷり嫁さま
桃太郎
力太郎
一寸法師
などの有名作はもちろんのこと、シンデレラ的な継母話や、ロシアの『森は生きている』的な西洋にもある昔話に近い話があったり、心の優しい人が最後は報われる話などとにかく読んでいて気持ちのよいものばかりだった。
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神話(古事記) [文学 日本 松谷みよ子]


日本の神話

日本の神話

  • 出版社/メーカー: のら書店
  • 発売日: 2001/04/01
  • メディア: 単行本



古事記は今まで、色々なバージョンを読んできている。子供向けのものから大人向けのものまで。イザナギとイザナミが出会い、三人の子供が生まれ、という話くらいまでは結構いつもそれなりに楽しく読めるのだが、そのあと常に飽きてしまう。この松谷みよ子バージョンは結構読みやすく、かなり先の話まで楽しめたがやはり途中から飽きてきてしまった。

しかし、いろいろ読んだ中では一番読みやすかった気がする。

やはり古事記はつまらない、と改めて実感した。
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鬼・河童・天狗や幽霊、もののいわれ、神々・地蔵、笑いの主人公などの話 [文学 日本 松谷みよ子]


松谷みよ子の本 (第8巻) 昔話

松谷みよ子の本 (第8巻) 昔話

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



『松谷みよ子の本』の第9巻「伝説・神話」の中にある、その他雑多な伝説話を読み終わった。。

というよりはページをめくり終わった。正直あまりどれも興味を惹かれず、唯一「鬼・河童・天狗や幽霊」などの章にある、p355の「雪女」がよく知る昔話のひとつで楽しめた。

最後は「神話」の章が残っている。古事記などで読んだ事が或話ばかりなのである程度読めるかなと思っているのだがどうだろうか・・・。
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城や武将などの話 [文学 日本 松谷みよ子]


松谷みよ子の本 (第8巻) 昔話

松谷みよ子の本 (第8巻) 昔話

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



『松谷みよ子の本』の第9巻「伝説・神話」の中にある、城や武将などの話を読み終わった。。

私はあまり、男の子が熱中する、戦国時代の武将ものや三国志などが好きではなかったし、人と人が争う本を好まない。なので、この章はあまり楽しめなかった。

沖縄県を中心に南の国の伝説が多かった気がする。

琉球王に逆らって戦った「按司・ニッチェー」はそれなりに面白かった。神のお告げによって男性と交わることなく妊娠した女性から生まれたニッチェーはかなり強く成長し琉球王に使えることになる。しかしその王が死に子供の代になり、悪政を敷く。それに嫌気がさしたニッチェーは国に帰るが妹から借りていた弓を王から取り返すのを忘れていた。その弓を盗み出して帰ってきたところ、王の知るところとなり軍が向けられる。結局ニッチェーもその妹も死ぬのだが、その後その島は襲われることもなかった。悪政を敷く二世に対する批判を含んだ良い話。

他にも有名な、平家物語を語る「耳なし芳一」、山の動物たちとふれあいながら強く育つ「金太郎」など昔話などで有名な作品も収められている。

だが基本あまり面白くなかった。
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山に生き、海に生き、土に生きた人びとの話 [文学 日本 松谷みよ子]


松谷みよ子の本 (第8巻) 昔話

松谷みよ子の本 (第8巻) 昔話

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



『松谷みよ子の本』の第9巻「伝説・神話」の中にある、長者・姫君などの話を読み終わった。。

姫君と自然の生き物の触れ合いを描いたものが多く短編が多かったが結構面白かった。

1.逃げ出したお姫様
これはとてもお城の中毎日暮らすことに飽き飽きし。自然の中でめいいっぱいあそびたいと願っているお姫様が、国に帰って自然の中で暮らしたいと願う若者の歌声を聞く。お姫様はそのものを呼び寄せ、話を聞き、自分を連れて自然豊かな自分の国に変えるよう若者に命ずる。その命令を一度は断るものの、姫のたっての願いで連れて行かざるを得なくなり、何とか武蔵の国まで帰り、自然豊かな中でふたりで幸せに暮らすという話。二人が暮らした屋敷跡が港区三田の済海寺らしい。こういう話が私はとても好きだ。

2.玉屋の椿
一生懸命働いてお金を設けたものの、そのお金のことが年がら年中頭から離れず精神的におかしくなってしまう長者さんのお話。自分も外貨預金や株を一時期やっていたことがあるのだが、いつも為替レートや株の動きが気になってしまい何となく日々心が落ち着かなくなった。人間の金というものに対する欲望は恐ろしい。こういう話も好きだ。

3.生れかわった赤ちゃん
不運なことで子どもをなくしてしまった長者夫婦が、死んでしまった子どもの手にその名前を書いておくと生れかわったこの世に誕生した際にわかる、という言い伝えを信じそのとおりにしたところ、何年かして名前が書かれた赤ちゃんを連れて夫婦が訪ねてくるという話。これも心が痛くなるような暖かくなるようななんとも言えない良作。

4.味噌買い橋
夢で「~に行くと良いことがある」と告げられそのとおりに行い実際良いことがあり金持ちになる話。西洋の伝説などでもよくあり、東西南北問わず夢というものは物語の題材として昔から取り上げられてきたんだなあと思う。

5.雪姫・紅葉姫
戦で命を落とすことになってしまった二人の姫達が魚に姿を変え人々の前に姿を現す話。普通。

6.黒姫と黒竜
人間の姫に、親切にされた黒龍が人間に姿を変え、姫に結婚して欲しいと求めに来る。姫は父親にお願いして欲しいといい、黒龍は実際父親に頼む。100日間も毎日お願いに来た末、ひどいことをされた仕返しに、嵐を起こす。これに心を痛めた姫は黒龍のところに赴く。姫は終始黒龍を愛しており最後もハッピーエンドでこういう話も私は好きだ。

7.丹鶴姫さんと黒い兎
これは結構恐ろしい人さらい姫の話・・・。

8.黄金の沼
金銀を自然の中から見つけて長者になった人の話。これもイマイチか。

9.三十三の百合の花
二人の女の子の座敷わらしの話。座敷わらしによって富んだり貧しくなったりする人々の話。座敷わらしのことがよくわかって面白い。

10. 姫淵の歌
戦で父親を失い、自らの命も危ない姫君が追っ手から逃げる話。色々な人に助けを求めるが誰もだすけてくれない。最後に姫と同じ年代で孫娘を失ったじいさまに匿われるが、追ってからは逃げきれず・・・。最後は身投げする話。これもかなり緊迫感があり美しい話。

11. 首切れ馬
これは欲深い人が一つのものを求めていろんなものを失ってしまう話。こういう教訓譚みたいなものも結構好きだ。

12. 湖山長者
これも欲深長者がすべてを失う話。結構面白い。

13. 榛名湖の主
こちらも自然を愛する姫が自然に汲み取られていく話。美しい話だ。

14. 炭焼き長者
黒いあざが全身にあることでお嫁に行けなかった姫が、神からのお告げで田舎の炭焼きのもとへ向かう。その炭焼きのおかげであざも消え、炭の中にたくさんある砂金のおかげで長者となり娘を設ける。その娘の美しさに心惹かれた皇子が姫の心を得て婚約することになる。父母は泣く泣く結婚を認め、姫は都へと向かうが、海で大嵐にある。神のお告げで、姫が命を捧げれば嵐を沈めると告げられ、彼女は命を捧げる。
ギリシア神話にも似た美しい物語。きらびやかな心の貧しい都ではなく、自然の中で心豊かに生きることの幸せを暗に教えてくれる作品。

15. 金のべココ
正直よくわからない・・・。

全体的に私好みの作品が多く、一途な心を持った人や、正直な人の話が多くとても気持ちよく読むことができた。
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山に生き、海に生き、土に生きた人びとの話 [文学 日本 松谷みよ子]


うらしまたろう (いわさきちひろの絵本)

うらしまたろう (いわさきちひろの絵本)

  • 作者: 松谷 みよ子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2021/10/30
  • メディア: 単行本



『松谷みよ子の本』の第9巻「伝説・神話」の中にある、色々な人びとの話を読み終わった。

自然と共生して生きる人々を描いた作品が多かった。前にも記したが、松谷みよこさんは、社会で行われている不正に対し、怒りを覚え、そのことをテーマに作品を書くことで社会改革を目指して来た人なのだと思う。その根っこには、「人は自然と共に生きている」というものがあるのだろう。それがヒシヒシと伝わってくる作品集だった。

力のある若者が自分の村のために、自然に立ち向かい自然に取り込まれて命をなくす「平之と与作」
一途な女性が恐ろしい魔物となり自然に取り込まれる「つつじの乙女」「椿の乙女」
自然にある動物を助けたことで恩返しを受ける「水の種」「浦島太郎」
人の欲望が自然に仕返しをうけることになる「米良の上漆」
短編の中では結構長く自然の中で様々な体験をする「猟師渋右衛門」
中でも恐ろしいのは、飢饉により食べるものがなくなり、人が人を食べるようになりその成れの果てを描いた「人、人を食う」
『鯨、小学校』にもあった「おしになった娘」などとにかく興味深い自然の恐ろしさ崇高さを感じられる作品が多かった。

物語一つ一つはそんなに素晴らしく面白いというものでもないのだが、何となく考えさせられる作品が多々あった。『鯨小学校』に出てきたような話(「木やりをうたう狐」)もあり面白かった。
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狸・狐・蛇などの話 [文学 日本 松谷みよ子]


日本の伝説(4)きつね・たぬき・ねこ・へび などの話

日本の伝説(4)きつね・たぬき・ねこ・へび などの話

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1973/12/07
  • メディア: 単行本




松谷みよ子の本 (第9巻) 伝説・神話

松谷みよ子の本 (第9巻) 伝説・神話

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/10/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



『松谷みよ子の本』の第9巻「伝説・神話」の中にある、動物たちの話を読み終わった。

タヌキやキツネが人間に姿を変え、人間を騙す、といったものから、「鶴の恩返し」のような助けてもらった人間に対し恩返しをする動物の話まで様々なものがある。どれもこれも自然と人間の生活が密接に関わっており、昔の子どもたちはこういった伝説を口承で聞くことによって自然に対する畏怖・畏敬の念を払うようになり、大人になってからも自然と共存してきたのであろうと思う。

一昔前であれば、こうした昔話のようなものも本として売り出され読まれていたんだろうし、「日本昔ばなし」のようなテレビ番組で子どもが親しんだりしていたのであろう。しかし現代、刺激のあるわかりやすい物語が好まれ、親や祖父母からこうした類の物語を聞かされることもなく、ひたすらデジタル機器に向かい合う子供たちが、自然に対して畏敬の念を持つのも難しい世の中なのであろう。

戦争に反対し、公害などにも意識を向け、そうしたことをわかりやすく子どもたちに伝えるために物語を書いていた松谷みよ子の像と、日本民話の会で活動する松谷みよ子の像が、これを読むまであまり一致してこなかったのだが、根本にあるのは「自然と人間の調和」であり「自然と人間への深い愛」なのであろう。

物語一つ一つはそんなに素晴らしく面白いというものでもないのだが、何となく考えさせられる作品が多々あった。『鯨小学校』に出てきたような話(「木やりをうたう狐」)もあり面白かった。
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詩集『とまり木をください』 [文学 日本 松谷みよ子]


とまり木をください

とまり木をください

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1987/06/01
  • メディア: 単行本



「とまり木」つまり鳥が一休みできるために付けられた木を奪われてしまった人々の心の叫びを代弁したかのような痛切な詩集。これはかなりの傑作だと思う。あまりに表現が直接的すぎるので逆に敬遠されてしまうのか。あまり市場では見かけない・・・。

1.とまり木をください
2.仮面
いじめられている人の気持ちを歌った作品。

3.黒人の歌
題名通りの作品

4.地獄
5.わらい
こちらもいじめられている人の気持ちを歌った作品

6.墓
いじめられて命を失った人の気持ちを歌った作品

7.カエル
8.檻のなかのくまのように
9.こころも ことばも
いじめられている人の歌

10.おねがい
こちらはいじめられている人が、教師に向けた言葉。積極的に生徒の人権を踏みにじる教師に投げかける言葉。こういう教師いるよね~と思わせる。

11.芽
12.いま、生きていて
13.生きる
これは少し前向きな歌。いじめられても必死で生きることで希望を見出した人の歌。

テーマがテーマだけに、かなり暗い雰囲気の詩集だが、最後は希望を持って終わるのだが良い。
ぜひ多くの人に読んでもらい、何かを心に感じてもらいたい詩集だ。
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こわい話  [文学 日本 松谷みよ子]


学校の怪談 学校の七不思議 (ポプラポケット文庫)

学校の怪談 学校の七不思議 (ポプラポケット文庫)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/01/02
  • メディア: 新書



講談社から出版されていた『松谷みよ子の本』第四巻に収録されている、怖い話を集めた章を読み終わった。

基本は学校を舞台にした怖い話で、学校関係者が事故などでなくなってしまったが、その霊がしっかりと弔われなかったり、ぞんざいに扱われたりしたことにより、成仏できず学校に住み着いてしまったというものが多い。

これを読むと結構学校という場でも小さい子達が死んでいたんだなあということがわかる。戦争で亡くなってしまった人の話も数篇出てくる。初出が1980年~1990年代のものばかりで戦後30~40年くらい経っているのにもかかわらず戦争をテーマにした作品を書き続けた松谷みよ子。彼女にとって太平洋戦争は大きなものだったのだろうな、ということがこういった作品を読んでもわかる。

確かに怖い話なのだが、結構悲しい考えさせられる作品でもある。
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鯨小学校 [文学 日本 松谷みよ子]


鯨小学校―おじさんの話 (偕成社の創作)

鯨小学校―おじさんの話 (偕成社の創作)

  • 作者: 松谷 みよ子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2021/10/01
  • メディア: 単行本



「松谷みよ子」と言えば、赤ちゃん絵本『いないいないばあ』で有名だ。


いないいないばあ (松谷みよ子 あかちゃんの本)

いないいないばあ (松谷みよ子 あかちゃんの本)

  • 出版社/メーカー: 童心社
  • 発売日: 2021/10/01
  • メディア: 単行本



そしてあまり知られていないかもしれないが、民話の収集でも有名な人で、木下順二が作った「民話の会」の会員でもあった。松谷みよ子著、日本昔話みたいな本も、気づいていないが結構多くの人が読んでいるのではないだろうか。

ママお話きかせて 1 生きる力を育てるお話編 (松谷みよ子 かたりの昔話)

ママお話きかせて 1 生きる力を育てるお話編 (松谷みよ子 かたりの昔話)

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2002/03/01
  • メディア: 大型本



そんな松谷みよ子が創作した『鯨小学校』。
おじさんが、こどもに、色々な話をしてあげる、という体裁をとった物語集。様々な民話や口承伝承の物語が収められており、小学校での読み聞かせや、夜の読み聞かせなどにもぴったりの作品だと思う。本当におもしろい話ばかりなのだが、恐らくこの本は絶版。安房直子、立原えりか作品などもそうなのだが、物語としても面白いしすごく心暖まる話ばかりなのに、瞬間的にパッと惹きつけるような派手さがないためにあまり売れずに市場から消えていってしまうのであろう。この辺に現代日本の精神の貧困さが見て取れる気がする。

全29話からなる。

1.「鯨小学校」
タイトルになっているだけあり、かなり面白い。出だしも素敵だ。
「おじさんの話ならおもしろい。ほんとうかうそか、わからないけれど、そこがおもしろい。」
科学一辺倒の現代、ほんとうかうそか、わからないからこそ面白いというこの感覚はきっと受けないのであろう。鯨の夫婦が信州の「小海」という場所をめがけてやってくる。鯨の夫婦は、そこが小さい海だと思ってやってきたのだ、という話。そうした話からはじまり、鯨が大量に浜にやってきて、彼らは皆海に帰れず、そのままその鯨たちで金を大量に設けた村人たちが、その金で鯨小学校という学校を立てた話で終わる。

他にも昔話にはよく出てくる、「てんぐ」「きつね」などが登場する話や、洪水から村を救った琵琶法師の話なども出てくる。

8.「くちびるをぬう」
この話は結構重い話。貧乏な家の娘が病気になる。病気の娘に白いコメと小豆を食べさせてやりたくて父親がそれらを盗む。すっかり良くなった娘は、元気になって小豆を食べられたことを元気に歌う。それによって父親は殺される。それから娘はすっかり喋らなくなってしまう。「沈黙は金かどうか」ということを考えさせる作品。おじさんがぼくに言った、次の一節が結構重い。

p.442
「おまえさんはまだ生まれていなかったから知るまいが、戦争はいやだ、と、ただそれだけいっただけで、牢屋にぶちこまれたもんだ。そんなときの沈黙は、金といえるだろうか」

ほかのも「おおかみ」の話、「いのしし」の話、「くま」の話なども出てくる。

11.「銀の矢、くるみの木の矢」
これも強烈な話だ。くるみを食べている僕に、おじさんは、くるみの皮は毒だから気をつけろ、という。そして毒を海に流し、魚を取る地方がある話になり、そこからイタイイタイ病の話になる。恐らく当時かなり問題になっていたのであろう。

13. 「からすの話」
これはいつか絵本で同じような話を読んだのだが、太平洋戦争中アジアに出征して現地で戦死してしまった人たちを弔うために黒い喪服を来たカラスたちが大量に飛んでいく話。かなり心が痛む作品だ。

他にも「かっぱ」の話、「貧乏神」の話なども出てくる。当時流行していたのであろう「ネッシー」の話なども面白い。

23. 「ゆうれい」
これは、広島、長崎など原爆によって死んでしまった人々が歳をとることなく幽霊として現れることを悼んだ作品。

雪女の話なども出てくる。

様々な昔話特有の動物や伝説上の生き物を登場させるとともに、戦争・社会問題も織り込んだこの本。かなりの名著だと思う。先にも書いたが、こうした良本はもっと市場に出回るべきだと思うのだが・・・。
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松谷みよ子 短編3 [文学 日本 松谷みよ子]


コッペパンはきつねいろ (偕成社文庫2001)

コッペパンはきつねいろ (偕成社文庫2001)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2021/09/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



『松谷みよ子の本』第四巻に収録されている短編を読んだ。

1.東京っ子
2 赤ちゃんネコ
3.ばあちゃんの大切なもの
4.黒ねこ四代
5.ヤッホーさそりくん
6.コッペパンはきつねいろ
7.日本は二十四時間
8.雪
9.ねこの幼稚園
10.りゅうになりたかったへび
11.キマラ・ハラヘッタというヒツジの話
12.ベトちゃんドクちゃんからのてがみ

これらの作品は、初出一覧を見ると、1961年~1972年に発表された作品だとわかる。最後の方は70年代後半、一番最後の12.「~てがみ」は1991年発表らしい。戦争の痕跡もなくなっていき結構明るい雰囲気の作品が多いが、最後はヴェトナム戦争の枯れ葉作戦のせいで犠牲になった子供達を描いた作品。

1はいなかに東京からやってきたこの話。短くもう一歩。

2は放射能が雨とともに降ってくることを心配する子どもが、捨て猫も放射能にされされてしまうことを心配する短いながらも心暖まる話。

3はなくなった夫が町を救ったことをいつまでも大切に誇りにしている女性の話。これも心暖まる。

4はこれは傑作。モモちゃんとアカネちゃんシリーズのプーが家に来るまでの話のような感じ。恐らく松谷みよ子一家の実話にかなり近いのだろう。

5はよくわからない。さそり座の話?

6も傑作。母親を失った女の子と、同じように母ギツネを失ったキツネの心暖まる交流を描いた作品。

7は落語のような話。おばあちゃんが初めてフランスに飛行機で向かい色々ドタバタ劇を繰り広げる話。

8は、綿菓子売りのおじいちゃんが天に召される様子を、天の子供をうまく使って美しく描いた作品。

9は、イマイチ。

10も3に近い雰囲気をもった、おばあちゃんが愛するおじいちゃんのために知恵を絞り問題を解決する話。昔話をベースにしながらも、皆が幸せになるエンディングを用意しているあたり非常にうまいなあと思う。

11も面白い。二つの大きな湖のあいだに人工的な湖が出来た過程を自然描写とユーモアを交えて巧みに描いた作品。

12はとても考えさせられる。ヴェトナム戦争でアメリカが行った枯葉剤作戦のせいで生まれてしまったひとつの体に二つの頭がある奇形児として生まれたベトちゃんドクちゃんの実話。子供の頃テレビで映像を見てかなり衝撃的だった。根本に反戦思想がとことんあるのだなあと考えた。

結構心暖まる作品が多かった。

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松谷みよ子 短編2 [文学 日本 松谷みよ子]


茂吉のねこ (偕成社文庫 3016)

茂吉のねこ (偕成社文庫 3016)

  • 作者: 松谷 みよ子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2021/09/12
  • メディア: 単行本



『松谷みよ子の本』第四巻に収録されている短編を読んだ。

1.灰色の国へ来た老人の話
2.カナリヤと雀
3.黒い蝶
4.夜
5.赤ちゃんのおへや
6.はと
7.かあちゃん
8.草原
9.朝鮮の子
10.指きり
11.いたずらっ子テレビにでる
12.火星のりんご/かっこう/とりかえっ子/おせんべちょうだいね/東京っ子

これらの作品は、初出一覧を見ると、1954年~1961年に発表された作品だとわかる。
やはり1950年代に書かれたものは戦争の影を色濃く残しているが、段々と明るくなっていき、最後のほうは宇宙に関する話も出てくる。

1はルーモとファーボが登場する幻想的な話。日の光を知らない国に来た老人が、そこに住む子どもたちに月の光や太陽の光の話をしてあげる。その老人を中心に、悪魔に取られてしまった光を取り戻しに生き、老人は命と引き換えに人々に光を授ける。結構感動的な話。

2は教訓譚のような話。「人間にとって一番大切なものは自由だ」という命題を寓話的に示す作品。
「自由」について語っていたふたりの若者が、巨人によって鳥に変えられてしまう話。
一人はカナリヤ、
一人は雀。
金の鳥かごを与えられて人に飼われるようになったカナリヤは、食うに困らない贅沢な暮らしをしている。一方雀にかえられた方は、自分で食を得なければならず大変だが、貧しくても自由を愛し誇り高く暮らしている。そんな二人の状況を見て、本当に人間らしく生きられるのは自由を愛している雀だ、ということで巨人は最終的に雀の方だけを人間に戻す。
短いが良い話。

3は貧しい家の子が、家計を助けようと考え、弾丸の来る山へ鉄を探しに行きそこで弾丸にやられ死んでしまう話。戦争の愚かさを描いた名作。

4は二人の貧しい男女がやっと手に入れた給料で、かき氷を食べているあいだにスリにあってしまう話。暗い話だが最後は何故か明るい気分になる。

5も戦争中の話。父親がいない母子家庭の女のコが、隣の家の赤ちゃんを羨み、お母さんに赤ちゃんをねだる話。これもしみじみとした良い話。

6は結構長く、「みどりのゆび」に近い世界観を持った作品。「はと」の絵を描くことで戦争をやめさせようとする少女と、戦争のせいで体を壊してしまった男性の心の交流を描いた作品。最後は希望に満ちている。

7は女性・母の強さを描いた小品。そんなに面白くない。

8もイマイチ。

9は、「みどりちゃん」という朝鮮人女性を描いた作品の主人公みどりちゃんの少女時代を描いた作品。差別に屈することなく、差別する周りの人間たちから助けてくれた人に対する感謝を忘れることなくひたむきに生きる少女を描いた作品。これも素晴らしい。

10もイマイチ、

11は結構長い作品で、恐らく自宅で塾か何かを開いている男性と子供たちの心の交流を描いた作品。
劇団をやっていた松谷みよ子の実体験がかなり生かされているだろう作品で結構読み応えがある。

12は新聞に載った小品群で宇宙に関することが織り込まれていて、この1960年前後恐らく月面着陸みたいなものが結構世を賑わせていたんだろうなあと予想される。
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松谷みよ子 短編1 [文学 日本 松谷みよ子]


貝になった子ども (角川文庫クラシックス)

貝になった子ども (角川文庫クラシックス)

  • 作者: 松谷 みよ子
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2021/09/05
  • メディア: 文庫



『松谷みよ子の本』第四巻に収録されている短編を読んだ。

1.貝になった子ども
2.スカイの金メダル
3.ポプラのかげで
4.お日さま お日さま
5.机といす
6.三つの色
7.白いお部屋
8.五郎のおつかい
9.こけしの歌
10.なまこの時計屋
11.花びら
12.夜のいちご

これらの作品は、初出一覧を見ると、1948年~1953年に発表された作品だとわかる。
戦後の混乱、朝鮮戦争などが背景にある作品が多く結構考えさせられる作品ばかりだ。

1はデビュー作らしい。行方不明になり死んでしまったであろう息子を思い周りの人々との交流もほとんど断ってしまった母親が、自分の息子が貝になったと考えることで心を取り戻すきっかけをつかむ話。ヒリヒリとした冷たい中に暖かいものが含まれる確かに美しい作品だ。

2は金メダルを目指し努力するがなかなか一番になれない少年を描いた作品。ファンタジーが入り込む、モモちゃんシリーズに近い雰囲気を持っている気がする。

3,4,5,6はルーモとファーボという兄・妹の心の交流を描いた暖かい話。お兄さんの優しさが心に染みる。

7は少女の夢の世界を描いた作品か?正直イマイチよくわからない。

8は素晴らしい。「はじめてのおつかい」のような感じで、戦争が終わったばかりで貧しい家を何とか助けたいと考える小さい男の五郎の孤軍奮闘を描いた作品。途中雲に助けられるファンタジー要素も混じった話。

9~12は戦争を色濃く反映した作品。
9は高田祐実さんという方の「こけし」の詩からイメージをふくらませた作品なのだろう。こけしとは「子消し」から来ているとも言われ、亡くなってしまった子どもへの鎮魂の意味もあるとどこかで読んだ事がある気がする。戦時中、幸一という男性と結婚したが、子どもが出来る前に幸一は戦争に行ってしまい、戦争中はこき使われ、幸一が戦死したとなると家を出され、と大変な想思いをする女性の人生をこけしの詩を織り交ぜながら描いた幻想的な作品。とても考えさせられる名品だ。

10は、戦争とは直接関係ないが、時計という道具を使って、ひとりの男性の大変な生活を最後にパッと見せるショート・ショートのような作品。やはり戦争の影を感じる作品。

11は完全に戦争を描いている。戦争によって愛する人を奪われた女性。戦争によって人の顔が人間に見えなくなり目医者に行くという、ある意味滑稽だが全く笑えない作品。

12は朝鮮戦争を描いた作品。日本の韓国併合、創氏改名、戦時中・戦後の朝鮮人へのひどい扱いを、ひとりの朝鮮人女性「みどりちゃん」を通して描いた作品。みどりちゃんのまっすぐで美しい心がひときわ輝く作品でこれも名品だ。

童話というカテゴリーになっているが、スラスラ読める作品群ではなく、子供にはかなり読み進めるのが厳しい作品だと思われる。テーマが重くかなり考えさせられ作品たちだ。
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幼い子どものおはなし [文学 日本 松谷みよ子]


ふうちゃんのおたんじょうび (新日本出版社の絵本)

ふうちゃんのおたんじょうび (新日本出版社の絵本)

  • 出版社/メーカー: 新日本出版社
  • 発売日: 2021/05/16
  • メディア: 単行本



講談社から出ている、『松谷みよ子の本⑤幼い子への文学』に入っている「幼い子どものおはなし」の章を読み終わった。


「ふうちゃん」という女のコが主人公のお話が大部分を占めており、女の子の日常が優しい視点で描かれている。
「ふうちゃんとねずみ」では、大人が嫌がるねずみにご飯をあげてしまったり、
「ふうちゃんの大りょこう」では、飼い猫を追いかけてアメリカまで行ってしまったりと、大人では考えられないことをしてしまう子どもの行動が、写実的に描かれることもあれば、ファンタジー的に描かれることもあり、楽しく読めた。

他作品では
「おひさま どうしたの」という話は、「桃太郎」を現代版にアレンジしたような話の展開から、一気に現代文明批判に話しを持っていき物語を終わらせるという素晴らしい話になっている。
「まこちゃん しっているよ」という話も、掃除機をぞうさんに見立てて冒険をし、その冒険が終わるとともに、掃除機が壊れていたという「物が壊れて動かなくなる」ということに対する、物語的な説明を施しているのも子供にはたのしみやすい。
「ぞうとりんご」は子どものけんかを、収めるために、ぞうの素晴らしい行動を見せ、さらに一歩進んで、戦争中に犠牲になったぞうにまで思いをいたらせるような仕組みにしているのも素晴らしい。

とにかく、民話をベースにした、反戦思想を取り入れた素晴らしい物語が並んでいて良かった。
なんども読まれるべき作品群だと思う。


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動物たちのおはなし [文学 日本 松谷みよ子]


ジャムねこさん

ジャムねこさん

  • 出版社/メーカー: にっけん教育出版社
  • 発売日: 2005/06/01
  • メディア: 大型本



松谷みよ子さんの、松谷みよ子の本第5巻『幼い子への文学』の中の「動物たちのおはなし」を読んだ。
1.うさぎのおはなし
うさぎの一家の心暖まるおはなし。どれも小編で、日常を描いた作品で、心がぽっと暖かくなる。
2.りすのさんたのおはなし
こちらは、自分のせいでおかあさんが、イタチに食べられてしまい、寂しい気持ちを持ちながらも、おひさまを見て、前向きに生きていく話。もうひとつの、ひいひいひいひいひいじいさんが、自分で食べようとして胡桃を土の中に埋め、埋めたことを忘れてしまい、そのクルミが大きな木に育ち、子孫のリスに自分の胡桃をあげる話。とても心暖まる話。
3.そのほかの動物たちのおはなし
この中では「サンタクロースとワニの子」が、アフリカから連れてこられたワニが、友達が欲しくてサンタクロースにお願いをする話。これも心暖まる。

他にも「ジャムねこさんのお話」シリーズがシュールな感じだが、可愛らしくて良かった。
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ななちゃんのおはなし シリーズ [文学 日本 松谷みよ子]

松谷みよ子さんが、色々な場所に発表した恐らく幼稚園年長くらいの女の子「ななちゃん」を主人公にしたシリーズ。

大人の視点から見える、子どもの視点から見えるであろう世界を描いたこの作品群はとても愛らしい。
お友達との遊びや、動物たちとの交流、自然との交流を優しく描いている。

そこまで深い感じの作品ではないが、愛らしい「ななちゃん」が良い感じ。
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松谷みよ子の本 第5巻 「絵本」 [文学 日本 松谷みよ子]


松谷みよ子 あかちゃんの本 Aセット(全3巻)

松谷みよ子 あかちゃんの本 Aセット(全3巻)

  • 出版社/メーカー: 童心社
  • 発売日: 1999/02/09
  • メディア: 単行本



『松谷みよ子の本』という講談社から出ている全11巻の第6巻目は、絵本。
ページの上に絵本がそのまま印刷されており、その上のページだと文字がかなり読みづらいので、下の段に、文字が大きく書いてある。かなり画期的な企画の本だと思う。彼女の出したすべての絵本を収録するのは無理だったのだろうが、有名な作はそれなりに収録さている。

特に私のお気に入りは、

p.020 『きつねのよめいり』   瀬川康男 絵
p.086 『ばけくらべ』      瀬川康男 絵
p.132 『ぼうさまになったからす』司 修  絵
p.150 『まちんと』       司 修  絵
p.168 『わたしのいもうと』   味戸ケイコ絵
p.223 『おとうふさんと こんにゃくさん』
                にしまきかやこ絵

特に、『ぼうさま~』『まちんと』『わたしの~』の三作が素晴らしい。松谷みよ子の反戦思想、弱者に対する思いやりが強く出ており、ぜひ小学校の授業などで取り上げてもらいたい作品だ。

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初期短編 とかげのぼうや・王さまのぼうし [文学 日本 松谷みよ子]


松谷みよ子童話集 (ハルキ文庫)

松谷みよ子童話集 (ハルキ文庫)

  • 作者: 松谷 みよ子
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2011/03/01
  • メディア: 文庫




松谷みよ子さんの、初期の作品、7作を読み終わった。
戦中・戦後に書かれた作品らしいが、とても瑞々しく、優しさに満ちている。
1.とかげのぼうや
2.じょうろになったお姫さま
3.おふろやさんへいく道
4.かきのはっぱのてがみ
5.黒いきんぎょと赤いそり
6.こじきのこけし
このあたりは、西洋のイソップ物語やアンデルセン童話集の影響がかなり感じられる。動物や物、自然が人間世界に違和感なく入ってきている。

7. 王さまのぼうし
これは、傑作だ。戦中の世界を、昆虫たちの世界に置き換えた話。王様に帽子を与えられることで、思考することなく、苦境を耐え忍び、何でも王さまのいいなりになってしまう大人たちの世界を、子供たちが新しい帽子を編むことで変えようとする物語。

王さま(国)のいいなりになってしまう大人たちをどうしたら変えられるのか、という子供たちの問いに対して、風が返した答え。
p54.
「そうだなあ、まずおとなみたいに、なにをやってもしょうがないんだ、なんて子どもまでがマネしないことだな。それからっと、うん、それからどうしたらいいか考える、ひとりじゃなくって、みんなで考えるんだな、そしていい考えが浮かんだら、勇気をだしてやってみるんだ、勇気をだして!」

素晴らしい答えだ。松谷みよ子の反戦思想、そしてどうやったら戦争に向かう道を止められるのかのすべてがこの答えにある。
国だけではなく、いろいろな非論理的・非合理的権力組織を、日本人はどうしても受け入れてしまい、諦めてしまう。いや諦めているというより、今ある状態に疑問すら感じていないのだ。考え、みなで議論し、行動していく。社会を変える、というより社会の中で人間が生きていく上で当たり前のことがここで語られている。私の卒論と同じこと言っている。

すべての国民が、思考し・議論し・行動していったら、世界は必ず良い方向へと向かうはずなのだが・・・。
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子ぎつねコン シリーズ [文学 日本 松谷みよ子]


きつねとたんぽぽ (はじめてよむどうわ)

きつねとたんぽぽ (はじめてよむどうわ)

  • 出版社/メーカー: 小峰書店
  • 発売日: 2009/07/01
  • メディア: 単行本




キツネの子、コンが山に住みながらも、様々な人間の子供たちや大人たちと心通わせる温かい小品ばかり。

ディズニー映画Zootopiaでもそうなのだが、キツネというのはどうしてもずる賢く悪いものというふうに見られがちだが、このコンはとても純粋で良い子。うまく化けられなかったり、失敗したり、変な勘違いをしたりと本当に人間の子供を映し出したような楽しい作品が揃っている。単行本としてはあまり売られていないようだが、多くの人に読んで欲しい作品。


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オバケちゃんシリーズ [文学 日本 松谷みよ子]


オバケちゃん (オバケちゃんの本1)

オバケちゃん (オバケちゃんの本1)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1991/02/14
  • メディア: 単行本



松谷みよ子さんの、ある絶版本を読みたくて、こちらも絶版本になっている松谷みよ子の本 全11巻(講談社刊)をメルカリで購入した。

その第5巻「幼い子への文学」収録のシリーズ。

1. オバケちゃん
2. オバケちゃん ねこによろしく
3. オバケちゃんとむわむわむう
4. オバケちゃんとおこりんぼママ
5. オバケちゃんといそがしおばさん
6. オバケちゃん アカオニにあう
7. オバケちゃん 学校へいく
8. 学校おばけのおひっこし

1は傑作。人間の自然破壊、都市開発のせいで居場所を奪われる動物とオバケが人間に立ち向かう話。
2は、オバケちゃんが何故不思議な挨拶をするようになったのか。自分のアイデンティティを求める旅に出る。
ここまでは、とてもメッセージ性も強く読んでいて引き込まれる。

3からは長さ的にも短くなり、メッセージ性も薄れ、日々の暮らしの中にある発見のような話になる。お風呂の煙だったり、病気で顔に斑点ができてしまったり、赤ちゃんの世話の大変さだったり、. 読んでいてつまらなくはないが、そこまで大人が読んで面白いものでもない気がする。

しかしこのシリーズに一貫する「思いをこらす」という主張がとても良かった。
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