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松谷みよ子 短編1 [文学 日本 松谷みよ子]


貝になった子ども (角川文庫クラシックス)

貝になった子ども (角川文庫クラシックス)

  • 作者: 松谷 みよ子
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2021/09/05
  • メディア: 文庫



『松谷みよ子の本』第四巻に収録されている短編を読んだ。

1.貝になった子ども
2.スカイの金メダル
3.ポプラのかげで
4.お日さま お日さま
5.机といす
6.三つの色
7.白いお部屋
8.五郎のおつかい
9.こけしの歌
10.なまこの時計屋
11.花びら
12.夜のいちご

これらの作品は、初出一覧を見ると、1948年~1953年に発表された作品だとわかる。
戦後の混乱、朝鮮戦争などが背景にある作品が多く結構考えさせられる作品ばかりだ。

1はデビュー作らしい。行方不明になり死んでしまったであろう息子を思い周りの人々との交流もほとんど断ってしまった母親が、自分の息子が貝になったと考えることで心を取り戻すきっかけをつかむ話。ヒリヒリとした冷たい中に暖かいものが含まれる確かに美しい作品だ。

2は金メダルを目指し努力するがなかなか一番になれない少年を描いた作品。ファンタジーが入り込む、モモちゃんシリーズに近い雰囲気を持っている気がする。

3,4,5,6はルーモとファーボという兄・妹の心の交流を描いた暖かい話。お兄さんの優しさが心に染みる。

7は少女の夢の世界を描いた作品か?正直イマイチよくわからない。

8は素晴らしい。「はじめてのおつかい」のような感じで、戦争が終わったばかりで貧しい家を何とか助けたいと考える小さい男の五郎の孤軍奮闘を描いた作品。途中雲に助けられるファンタジー要素も混じった話。

9~12は戦争を色濃く反映した作品。
9は高田祐実さんという方の「こけし」の詩からイメージをふくらませた作品なのだろう。こけしとは「子消し」から来ているとも言われ、亡くなってしまった子どもへの鎮魂の意味もあるとどこかで読んだ事がある気がする。戦時中、幸一という男性と結婚したが、子どもが出来る前に幸一は戦争に行ってしまい、戦争中はこき使われ、幸一が戦死したとなると家を出され、と大変な想思いをする女性の人生をこけしの詩を織り交ぜながら描いた幻想的な作品。とても考えさせられる名品だ。

10は、戦争とは直接関係ないが、時計という道具を使って、ひとりの男性の大変な生活を最後にパッと見せるショート・ショートのような作品。やはり戦争の影を感じる作品。

11は完全に戦争を描いている。戦争によって愛する人を奪われた女性。戦争によって人の顔が人間に見えなくなり目医者に行くという、ある意味滑稽だが全く笑えない作品。

12は朝鮮戦争を描いた作品。日本の韓国併合、創氏改名、戦時中・戦後の朝鮮人へのひどい扱いを、ひとりの朝鮮人女性「みどりちゃん」を通して描いた作品。みどりちゃんのまっすぐで美しい心がひときわ輝く作品でこれも名品だ。

童話というカテゴリーになっているが、スラスラ読める作品群ではなく、子供にはかなり読み進めるのが厳しい作品だと思われる。テーマが重くかなり考えさせられ作品たちだ。
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