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大地 下 [文学 フランス ゾラ]


大地 下 (岩波文庫 赤 545-2)

大地 下 (岩波文庫 赤 545-2)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2024/02/27
  • メディア: 文庫



最終巻。
基本は、フーアン爺さんが息子たちの家を転々としながら、悲惨な生活を送る描写が続く。爺さんのお金を求めて、息子たちが必死に爺さんにおもねり、こっそりとお金を盗もうとする姿が結構読んでいて醜い。

ジャンを中心とした、リーザとフランソワーズ姉妹のやりとりも盛り上がってくる。
普仏戦争の影が見えて、飲み屋などで政治的な話、戦争の話などが出るのが読んでいて面白い。

後半どんどん怨念のため、人が死んでいく。
特に、純真だと思われていたフランソワーズが、リーザ夫妻に乱暴される場面で、フランソワーズが実はジャンを愛していなかったと気づく場面は、結構衝撃的で嫌な感じだった。

読後感は非常に悪いが、ストーリーとしては悪くない。


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大地 中 [文学 フランス ゾラ]


大地 中 (岩波文庫 赤 545-1)

大地 中 (岩波文庫 赤 545-1)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2024/02/21
  • メディア: 文庫



フーアン爺さんが自分の土地を二人の息子と娘に分け、その後妻が死に、年寄り二人で住んでいた家を出て子どもたちの家を転々としていく話。子どもたちは結局自分たちが一番大事で、爺さんのお金にしか興味がない。その人間の暗部をこれでもか、と描いており結構読んでいると嫌な気持ちになる。

話はこれに加えて、フーアンじいさんの次男ビュトーと結婚したリーズ、そしてその妹フランソワーズ、そしてこのリーズとフランソワーズに密かに想いを寄せるジャンの話が交わってくる。ビュトーとリーズ夫婦と一緒に住むフランソワーズが、姉がいるすぐ近くで、その夫ビュトーに犯されそうになる場面(しかもこれが何度も)などは本当に読んでいて気持ちが悪い。

とはいえ、『居酒屋』『ナナ』ほどの気持ち悪さはなく、ジャンとフランスワーズが結構潔癖な感じでなので、まだ良い。

当時の政治状況、農民たちの苦悩など、社会問題も扱っており、それなりに興味深く読める。

あとは最後の下巻だけ。
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大地 上 [文学 フランス ゾラ]


大地 上 (岩波文庫 赤 545-0)

大地 上 (岩波文庫 赤 545-0)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2024/01/26
  • メディア: 文庫



昨年は、自分の中で集中的にフランス文学を読む年で、そんな中古本屋でこのゾラの『大地』を見つけ、とりあえず買っておいた。ゾラはそんなに好きな作家ではなく、あまりにも生々しい描写とストーリー展開が好きではないのだが、『居酒屋』と『ナナ』などの登場人物マッカール家に関係する本は結構読んできた。
『居酒屋』の登場人物ジェルヴェーズの子どもたち
クロード  『制作』
ジャック  『獣人』
エティエンヌ『ジェルミナール』
アンナ   『ナナ』

といった感じだ。今回読んだ『大地』の主人公ジャンは、ジェルヴェーズの兄弟。
大工的な仕事をしていたジャンは、戦争に行って帰ってきた後も大工仕事的なことをするが、大農場の手伝いをするうちに、農家的な仕事をするようになり、そのまま働いている。そんな中出会ったフランスワーズという若い女性とその姉、リーズ。リーズはフーアン家の次男ビュトーという男に孕まされ結婚の約束をするものの、それは果たされず、一人で子供を育てることに・・・。

そのフーアン家は父のミシェルが引退することになり、土地を二人の息子とひとりの娘で分割することに。しかしこれがまた大モメ。フランス革命、王政、共和制といった時代の大きな流れの中で生きる農民たちの生活を描いており、農民がどれほど貴族たちに苦しめられてきたか、ということが、本文の中で人々の語りや引用される本などを通して伝えられるのも楽しい。

ジイドの『贋金つくり』に続いて結構楽しい作品が続いていて良い。
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獣人 下 [文学 フランス ゾラ]


獣人 (下巻) (岩波文庫)

獣人 (下巻) (岩波文庫)

  • 作者: エミール・ゾラ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1991/03/01
  • メディア: 文庫



ゾラの『獣人』下巻を読み終わった。
字体が古いというのももちろんあるが、物語が進んでもなかなか読むペースは上がらなかった。
ゾラの別の作品『ジェルミナール』も、旧字体で印刷された本だったが、こちらは読むにつれて全く旧字体も気にならなくなり、どんどん読むスピードが上がっていったので、やはり『ジェルミナール』は物語として面白く、読みやすかったのだと思う。

この『獣人』読み進めにつれ、どんどん残酷さ、悲惨さが増していく。ドストエフスキーの『悪霊』を思わせる感じだった。

「獣人」とは誰なのか?ということを読者は考えながら読むのであろうが、ゾラとしては、全ての人間に潜む「獣」性を、様々な点で、描いたのだと思う。登場人物は皆、それぞれが違った意味で「獣人」性を持っている。そしてそれが社会的地位によって、周りの人間の見方も違ってきて、その「獣人」性に引き起こされた事象が、結果的に大きく違ったものになっていく。

人間の内面における不条理さと、社会の不条理さを同時に描いた傑作と言える。とはいえ、やはり読むには結構しんどかった。

湊かなえ好きの人にはとても面白く読める作品なのではないだろうか。
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獣人 上 [文学 フランス ゾラ]


獣人 (上巻) (岩波文庫)

獣人 (上巻) (岩波文庫)

  • 作者: エミール・ゾラ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1991/03/01
  • メディア: 文庫



ゾラの『獣人 上巻』を読み終わった。

居酒屋の主人公、ジェルヴェーズの子供たちの中の一人を描いたこの作品にも興味を持ち読み始めた。
ちなみにジェルヴェーズの子供たちを紹介しておきたい。

長男 クロード     『制作』主人公      画家
次男 ジャック     『獣人』主人公(登場人物?) 機関士
三男 エチエンヌ    『ジェルミナール』主人公 炭鉱労働者
長女 アンナ      『ナナ』主人公      高級娼婦

一応、母親の『居酒屋』はじめ、彼女の子供達の本はこれで全部読むことがになる。

はじめは非常にほのぼのとした雰囲気で始まる。真面目に鉄道会社で働いてきた中年男性ルゥボーが、ふとしたことから若い美しい妻をもらい、その妻とつかの間のパリを楽しむ様子が描かれている。仕事というのか、嘆願というのか、なんにしろ真面目な目的でパリに来たルゥボーと、それについてきて、パリでのショッピングを楽しむ妻セブリーヌのほのぼのとした夕食を楽しむ場面なのだが、これが本当に美しく楽しげに描かれており、若い妻をもらい何となくその愛情に不安を持っている夫の内面も非常にうまく描いている。

そんな、優しい場面が一転して修羅場と化す。優しく美しい妻が、実は育ての親と肉体関係を持っていたことが分かってしまうのだ。
そこから物語は、一気に暗くなっていく。

相変わらず一人一人の欲望や、心の中の醜い部分を徹底的に描きつくしており、読むのが嫌になってしまう部分もなくはないが、非常に緊張感に富んでおり面白い。
犯人が始めから分かっているサスペンスドラマ的な部分もありとても楽しめる。

最後がどうなるのか非常に楽しみである。 
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制作 下 [文学 フランス ゾラ]


制作 (下) (岩波文庫)

制作 (下) (岩波文庫)

  • 作者: エミール・ゾラ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/09/16
  • メディア: 文庫



ゾラの『制作』を読み終わった。

ゾラ作品は読んでいて嫌になってくる作品が多い。私のあまり好きでない道徳的退廃、不道徳な性関係などが描かれているということもある。

しかしよくよく何が嫌になってくるのかと考えたとき、人間誰でもが恐らく持っているだろう、人間の暗部(欲望・安きに流れる心)を描きつくしているところが、彼の作品から目を背けたたくなる要因なのではないかと考えた。

今回のこの『制作』も下巻になるとどんどん暗くなっていく。若い希望に満ちた芸術家たちも世俗的な成功を求めて、それぞれが理想を捨てていき、安きに流れていく。青春時代を懐かしみながらも、理想を追い続ける人間をバカにするようになる。結局金を求めて運動するようになる。主人公クロード以外は多かれ少なかれこの流れに巻き込まれる。

しかし、主人公クロードだけは、芸術に埋没していく。しかし芸術に埋没することで、彼を愛してくれている妻クリスティーヌもほったらかしにしてしまう。

この作品は、純粋さを求めたあまり心が崩壊していく芸術家の暗部を描いているという意味で、他の『居酒屋』や『ナナ』とは異質の作品といえる。そして、暗部を描いているとはいえ、根底に純粋さがあり、彼の最も近き存在である妻クリスティーヌも一途に彼を愛し続けるということに、この作品の希望があり、美しさがある。

終始暗いが最後が希望にあふれている『ジェルミナール』ほど、読後感がすっきししたものではない。
しかし、なんとなく希望が持てるエンディングであることは間違いない。

19世紀のフランスの芸術界の暗部を描いているこの作品、色々な側面から楽しめる作品となっている。

最後に印象的な一節を紹介したい。

p.320
「彼は幸せものだ」ボングランが言った。「土の中で眠っているいまは、絵を描かなくてもいいんだ。・・・・・・われわれみたいに、いつもどこかに欠陥があり生命力のない作品を産み出すことにあくせくしているよりも、死んだ方がずっとましだよ」

生きることは苦悩の連続だ。
それを芸術家の言葉を借りて語ったこの言葉、非常に深い。
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制作 上 [文学 フランス ゾラ]


制作 (上) (岩波文庫)

制作 (上) (岩波文庫)

  • 作者: エミール・ゾラ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/09/16
  • メディア: 文庫



ゾラの『制作』上巻を読み終わった。
ゾラの始めて読んだ本は『居酒屋』。あまりにも悲惨なストーリー、人間の暗部をえぐりにえぐった描写、性的に不道徳な登場人物たち、色々なものがあまりにもグロテスクで、私の趣味に合わず、二度とゾラ作品は読まない、と読後は思った。

しかし、その後、岩波文庫で、『ジェルミナール』が再販され、炭鉱のストライキを扱った作品と知り、読んでみた。かなりの長編に関わらず、非常に面白く、素晴らしかった。ということで、引き続き『ナナ』を読んだのだが、これもげんなり・・・。非常に淫らな性を描いた作品であらすじでそのことを知っていたとはいえやはり気持ち悪くなってしまった。

それでもうゾラはいいかな、と思っていたのだが、様々なことが重なり、この『制作』を読むことに。

この上巻、非常に面白い。オペラ『ラ・ボエーム』を彷彿とさせる、貧乏ながらも夢に燃える若い芸術家の友情・愛情を描いており、性に奔放な人物も多々登場するが、とにかく主人公が非常に好青年であり、熱血的な芸術家で、まっすぐな性格であり、非常に高潔で、ヒロインとの恋愛も非常に気持ちよく、読んでいてとても気分が良かった。

若者達の会話を通して語られる、芸術観、芸術を取り巻く世間に対する見方も非常に面白く、ゾラの批判精神が間接的にせよ非常によく出ている作品だと思う。

最後のほうから若干様々な人間関係にきしみが生じてきており、悲劇に向かう予兆がある。

下巻が楽しみだ。
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ナナ [文学 フランス ゾラ]


ナナ (新潮文庫)

ナナ (新潮文庫)

  • 作者: ゾラ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/12/20
  • メディア: 文庫



ゾラ作『ナナ』を読み終わった。
以前、ゾラの『居酒屋』を読み終わったとき、読後感があまりのも悪かったので、その続編(『居酒屋』の主人公の娘ナナが主人公の作品)とも言えるこの『ナナ』を読む気になれなかった。

しかし、『ジェルミナール』が復刊されたとき、同時にこの『ナナ』も買っておいた。
『居酒屋』の主人公    ジェルヴェーズ
『ナナ』の主人公     ジェルヴェーズの娘
『ジェルミナール』の主人公 ジェルヴェーズの息子
という関係になってはいるが、ほとんどお互いの作品にお互いが言及されることはない。

この『ナナ』だが、ヴェリエテ座という演劇、オペラ?を見せる劇場の様子から始まる。新人女優「ナナ」が登場するのだが、新人とは思えない売り出しで、客は期待を膨らませる。初登場は歌が下手過ぎて注目されないが、3幕で裸同然のような格好で舞台に立ち、一気に男たちのハートをつかむ。

その後、伯爵家でのサロンの様子になる。ここで何故か執拗にプロイセンのビスマルクが話題になるのだが、何故なんだろうと思っていたが、物語の最後で普仏戦争が起こり、再びビスマルクが話題となる。この辺は流石に現代流行作家と違い計算しつくされた感がある。

このサロンで男女限らず、様々な人物が登場し、正直頭を整理しきれず読み進めるのだが、ここに登場する男たちがほとんど後に、ナナと肉体関係を結ぶことになる。

その後ミュファ伯爵の愛人となるのだが、一時ナナも純愛に目覚め、劇団の一員の不細工な男と同棲するのだが、この男にナナは金をほとんど取られ、挙げ句の果てに暴力を振るわれる。が、ナナは暴力を振るわれれば振るわれるほど、従順になっていく。

『ジェルミナール』に登場したカトリーヌもそうだったのが、ゾラ作品は、男にひどい目に合わされれば合わされるほど、その男と離れられなくなく女性が描かれる。ある意味『居酒屋』のジェルヴェーズもそうだ。現代でもDVを受けている女性がなかなかほかの人にその事実を伝えられず、暴力を受け続けるという話しをよく聞くが、時代・場所を問わず、こういったことは同じようなことがあるのだなあ、と思いながら読んでいた。

結局、その男とは別れ、再びミュファ伯爵の愛人となるのだが、その後ナナはどんどんと男と肉体関係を結び、その男達に貢がせ、彼らを崩壊させていく(罪を犯すもの、死に至る人物も出る)。

最後は天然痘にかかり死ぬのだが、ナナの死と同時並行的に普仏戦争が開始される。


やはり読んでいて気持ち悪くなり、早く終わらないかなあという思いしか最後の方はなかった。結婚している男女がお互い公認で愛人を作ったり、その愛人と夫がお互いの関係を分かりながら家計を切り盛りしたり、正直意味がわからなかった。

とにかく不道徳な関係の多く出てくる小説は読んでいて気持ちいいものではない。『ジェルミナール』のエティエンヌとカトリーヌが関係があまりにも美しく、正義感か前面に押し出された作品で、読後感も清々しいものだっただけに、かなりげんなりしてしまった。

ジェルミナール 下 [文学 フランス ゾラ]


ジェルミナール 下 (岩波文庫 赤 544-9)

ジェルミナール 下 (岩波文庫 赤 544-9)

  • 作者: エミール・ゾラ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1954/09/25
  • メディア: 文庫



ゾラ作『ジェルミナール』を読み終わった。岩波文庫の復刊で、当時のままの書体の本なので旧字体も非常に多く読みづらくはあったが、下巻は一気に読み終わった。

ストライキも2ヶ月経ち、寒さも増してきてどうしようもない状態になる。
餓えのため、死者も出て、官憲(軍隊?)との衝突の際にも死者が出て、特にマユ一家はどんどん死んでいく。
このストライキを軸としてストーリーが進む一方、シャヴァル、エティエンヌ、カトリーヌの三角関係が話の前面にぐっと出てくる。
カトリーヌを巡って、シャバル、エティエンヌが殴り合いをし、エティエンヌが勝利する。
しかし、これですぐにエティエンヌとカトリーヌが結ばれないところが、読んでいてむず痒い感じだ。
最終的に二人は絶望的な状態の中で結ばれるのだが・・・・・・。

エティエンヌとカトリーヌの恋愛がとても綺麗なので、読んでいて『居酒屋』よりははるかに心地よい感じだったのだが、人がどんどん死んでいく後半部は読んでいて結構つらかった。しかし、最後に、はるかかなたに何か光が見える感じの、清清しさを感じることが出来る結末が、読後感を綺麗なものにしてくれる。

『居酒屋』より、この作品がもっと読まれても良いのでは、と思った。

ジェルミナール 中 [文学 フランス ゾラ]


ジェルミナール 中 (岩波文庫 赤 544-8)

ジェルミナール 中 (岩波文庫 赤 544-8)

  • 作者: エミール・ゾラ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1954/09/05
  • メディア: 文庫



『ジェルミナール 中』を読み終わった。
上巻は、エティエンヌ、マユ一家を中心とした労働者側の生活の描写が多かったが、中巻は資本者側の生活から始まる。資本者側にも様々な立場、様々な考えのものがおり、それぞれがそれぞれの内面を持っており、それぞれに様々な葛藤をしている。労働者(苦・被害) vs. 資本家(楽・加害)というだけの単純構造にしていないあたり、ゾラの小説家としてのうまさを感じる。

資本家側のエンヌボー氏は、妻との関係がうまく築けず、妻は公認の情夫を持っている。挙句の果てには、親戚の子どもを家に入れ、面倒を見つつ、彼と肉体関係を持つ。エンヌボー氏は妻を愛しているのだが、結局妻を責められず、もんもんとした日々を過ごす。彼は若い労働者たちが仕事の後、そこらへんで成功している姿を目にし、うらやむ。
「パンか愛か」。暴動が起きパンを求める労働者に対し、彼はひそかに、野獣のように娘と性行為が出来るならパンを与えてやる、と思う。

ゾラは、労働者側の餓えの苦しみと共に、資本家側の心の苦しみも描いている。これが物語りに厚みを与えており、非常に面白い。

この中巻はストライキから暴動に至る過程を詳細に描いており、様々な人物のその過程での心の動きも詳細に描いている。ユゴーの『レ・ミゼラブル』の暴動場面同様、非常に面白かった。

最後の下巻でどのような展開になるのか、楽しみだ。

ジェルミナール 上 [文学 フランス ゾラ]


ジェルミナール 上 (岩波文庫 赤 544-7)

ジェルミナール 上 (岩波文庫 赤 544-7)

  • 作者: エミール・ゾラ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1954/08/25
  • メディア: 文庫



今年の春、岩波文庫からゾラ作『ジェルミナール』が復刊された。正直、ゾラの作品は『居酒屋』で結構お腹いっぱいになったのでもういいや、と思っていたのだが、ネット等で色々調べてみると、炭鉱労働者のストライキを描いた作品らしく、かなり評判がいいので買っておいた。

そして上巻が読み終わった。
主人公はエティエンヌという若い青年。『居酒屋』の主人公の女性の息子。何となくエティエンヌという響きが女性っぽくはじめは結構混乱してしまった。彼は機械工だったのだが、前の職場の上司とトラブルになり、職と食がないままうろついて死にそうなところを、炭鉱に拾われ働き出す。
そこで出会ったカトリーヌという少女に恋心を抱くのだが、彼女は仲間のシャヴァルに奪われてしまう。
そのうち、ひょんなことから、エティエンヌはカトリーヌの家にお世話になり、同じ部屋で彼女と寝る事になるのだが、お互い愛し合っているにもかかわらず、行動に移すことが出来ない。
そんな中、世の中が不況になり、給料が減らされることに。共産主義思想に染まり、労働組合のようなものを組織し、そのリーダー格になっていくエティエンヌ。上巻はまさにストライキが始まらんとするところで終わる。

カトリーヌが簡単にシャヴァルのものになってしまったのが非常に残念であった。正直小説であればヒロインをもっと理想的女性として描くのであろうが、簡単に落ちてしまい、そのあと毎日のように肉体関係を持ち続けさせるあたり、自然主義文学なんだなあ、と思う。
お互い愛し合いながら、絶妙な距離を保ち続ける、カトリーヌとエティエンヌの描写はとても良かった。
エティエンヌが、理想主義に燃えて行動することに主眼がおかれているので、読んでいて苦しいだけだった『居酒屋』よりははるかに面白い。

居酒屋 [文学 フランス ゾラ]


居酒屋 (新潮文庫 (ソ-1-3))

居酒屋 (新潮文庫 (ソ-1-3))

  • 作者: ゾラ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1970/12
  • メディア: 文庫



ゾラの『居酒屋』を読んだ。
ゾラはドレフュス事件に際し、「私は告発する」というパンフレットを書いた人として有名だ。
が、あまり本自体は日本では読まれていない気がする。
かくいう私も今回『居酒屋』を読むまで一度も読んだことがなかった。

主人公ジェルヴェーズという真面目で優しい平凡な一女性が、自分の洗濯屋を持ち、一時はかなり儲かり幸福と言える生活を手に入れるが、夫クーポーの怪我(娘ナナがきっかけ)をきっかけに、どんどんと生活が苦しくなっていき、堕落した生活となり、最後は最期を迎えるという内容だ。

途中までは楽しげな描写もあり、ジェルヴェーズとグージェという洗濯屋の出店資金を貸してくれた男との純愛も描かれそれなりに楽しめるのだが、その怪我以降は堕ちていく一方なのでつらくてページをめくることができなくなっていく。

テーマは人間の欲望、酒、セックスといえるだろう。そして堕ちる所まで堕ちた人間は正常な理性を保持できなくなるということをこれでもかこれでもかとばかりに描いている。
これに賭博が加われば完璧だが・・・。

そしてこの堕ちるきっかけとなったのが娘のナナが何気なく父親を呼んだことというのも象徴的だ。
自作『ナナ』はこの娘ナナを主人公とした描いた作品らしく、これも社会の暗部をえぐり出すような作品らしいからだ。
らしい、というのは実はまだ未読だからである。
しかし、もういいかな、というのが正直な感想。
もうお腹いっぱいでしばらくいいですという感じ。

読む人はそれなりの覚悟を持って読み始めなければならない作品だと思う。

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