制作 上 [文学 フランス ゾラ]
ゾラの『制作』上巻を読み終わった。
ゾラの始めて読んだ本は『居酒屋』。あまりにも悲惨なストーリー、人間の暗部をえぐりにえぐった描写、性的に不道徳な登場人物たち、色々なものがあまりにもグロテスクで、私の趣味に合わず、二度とゾラ作品は読まない、と読後は思った。
しかし、その後、岩波文庫で、『ジェルミナール』が再販され、炭鉱のストライキを扱った作品と知り、読んでみた。かなりの長編に関わらず、非常に面白く、素晴らしかった。ということで、引き続き『ナナ』を読んだのだが、これもげんなり・・・。非常に淫らな性を描いた作品であらすじでそのことを知っていたとはいえやはり気持ち悪くなってしまった。
それでもうゾラはいいかな、と思っていたのだが、様々なことが重なり、この『制作』を読むことに。
この上巻、非常に面白い。オペラ『ラ・ボエーム』を彷彿とさせる、貧乏ながらも夢に燃える若い芸術家の友情・愛情を描いており、性に奔放な人物も多々登場するが、とにかく主人公が非常に好青年であり、熱血的な芸術家で、まっすぐな性格であり、非常に高潔で、ヒロインとの恋愛も非常に気持ちよく、読んでいてとても気分が良かった。
若者達の会話を通して語られる、芸術観、芸術を取り巻く世間に対する見方も非常に面白く、ゾラの批判精神が間接的にせよ非常によく出ている作品だと思う。
最後のほうから若干様々な人間関係にきしみが生じてきており、悲劇に向かう予兆がある。
下巻が楽しみだ。
2019-01-22 07:53
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