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どこにもない動物園 [文学 日本 立原えりか]


どこにもない動物園

どこにもない動物園

  • 作者: 立原えりか
  • 出版社/メーカー: 株式会社 青土社
  • 発売日: 2012/10/10
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)



題名の通り、動物を主題にした作品集。

1. 花くいライオン
たったひとりで寂しく生きてきたライオンがある日花と友達になる。お腹がすいたライオンがうさぎを殺しに行ってくる、と花に告げると、「そんなことをしたら絶交」と言われ殺して食べるのをやめる。そのまま何も食べずにいたライオンはお腹がすいて仕方がない。それを花に訴えると花は「私をたべて」と言う。ライオンはあまりにお腹がすいていたので花を食べてしまう。朝目が覚めると当然唯一の友だった花はいない。それ以来ライオンは動物は食べずに花だけを食べて生きていくことになる。とても心暖まる良い話。

2. 青い目をしたろば
にんげんにこき使われて年をとってしまったロバ。死ぬ前に誰かを好きになることを望む。そこにアンズの木の子供である女のコが現れる。二人は友達になるが、アンズの木がかれる日がやってくる。枯れてしまうと女の子もいなくなってしまう。それを何とか防ごうとロバは頑張るが・・・。ひたむきに努力することの尊さを教えてくれる美しくも悲しい物語。

3. ユニコーン
再読。大きな花輪を作った女の子はそれをそのまま草原に置いていく。次の朝そこへ行ってみるとユニコーンと出会う。二人は夢の世界へ行きそこで過ごすが・・・。大人になって夢見ることがなくなってしまうことの悲しさを訴える物語。こちらも美しい。

4. くじらのお星さま
船になることを夢見た、金貨を吐き出すことのできるクジラの話。しかし悪い人間に騙されてしまったクジラは最後には・・・。悲しい話なのだがどこか希望のある綺麗な話。

5. コチョウガイ
お金に困ったひとからは無理にお金を取ろうとせず、人のために一生懸命働いてきたお医者さんの話。年をとり耳の聞こえづらくなった彼のもとに一人の女の子が来て・・・。日本昔話的な教訓的なとても優しくて心のあったまる話。

6. ホタルのちょうちん
こどもが迷子になってしまい探し回るにわとりをホタルたちが助ける話。短いが良い話。

7. さいごの蝶
少年と蝶の短い交流を描いた短い話。もう一歩か。

8. オオカミの船
じゃがいもしか食べない心優しいオオカミが最後は自分を犠牲にして女の子を助ける話。『哲学のライオン』と『スーホの白い馬』を足して二でわったような美しい話。

9. 笛吹きロバ
顔にあざがあるせいで誰からも愛されることのない心優しい女の子が、ロバの吹く笛に導かれて違う世界へと行ってしまう話。これも悲しいが美しく優しさあふれる話。

10. 海からきたひと
どこまでが夢でどこまでが現実かわからない現実的だが幻想的な、まさに小川洋子の初期作品のような物語。年取った海から来た人と少年の心の交流が美しい。

11. バク
嫌な思い出を忘れることの難しさと、嫌な思いででも忘れないで生きることの大切さを訴えた物語。かなり教訓めいた感じだがとても美しく最後はとても優しい。

12. わすれもの
出て行ってしまったお父さんを強く思う女の子の話。こちらも悲しく教訓めいた話で悲しい話なのだが何故か爽快感がある。

13. 北風の夕まぐれ
迷子になってしまった女の子が自然や動物たちに守られて無事生きて帰れる話。

14. 野原の食卓
再読。サーカスから逃げ出したクマが大好きな女の子とふれあいのだが、最後には・・・。これも悲しい話なのだが何故か読後感は悪くない。宮沢賢治に通じる世界観がある。


15. 光を食べる仔馬
愛の大切さを、光を食べる仔馬を通して伝える美しい物語。とても面白い。

16. 木馬が乗った白い船
再読。公園で長いあいだ子供のために働いてきた木馬がみんなにお別れをする話。こちらも大人になることの寂しさを伝えた本。

全体的に幻想的で美しい作品が多かった。安房直子、宮沢賢治と近い世界観がありやっぱり私はこういう話が大好きだ。
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妖精たち [文学 日本 立原えりか]


妖精たち

妖精たち

  • 作者: 立原えりか
  • 出版社/メーカー: 株式会社 青土社
  • 発売日: 2012/10/10
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)



1. 町でさいごの妖精をみたおまわりさんのはなし
2. 妖精に飼われていたいもむし
3. 妖精たちの氷菓子
4. 妖精たち

全ての作品が、人間界にあって、妖精に選ばれて妖精の姿が見えるようになった人間と妖精のふれあいの話。

1は、公園を見回っているあいだに妖精に話しかけられたおまわりさんのはなし。人間の都市開発と自然破壊を裏のテーマにしている愛らしくも悲しい話。

2は妖精と子どもの触れ合いを主軸に話が進んでいく。最後にそのはなし自体が子どもたちに語りかけられている話という構造になっている「入れ子構造」の話。

3は人間の女の子と母親の心の交流に、妖精をかませることにより、深みを与えている作品。幻想的で美しい作品。

4は中編で結構長い。妖精に選ばれたことにより妖精を見ることが出来る少年マオの話。実はそのお父さんも同じ能力を与えられており、その能力があることによりお父さんには悲劇が訪れてしまう。妖精を見られるような心を持ち続けることが良いことなのか、現実的に生きることが良いことなのか、深く考えざるを得ないような結末。

「妖精」がテーマの作品集ということで幻想的で、頭のちょっと上あたりで物語が展開されているような印象。今まで読んだ立原えりか作品に比べ、個人的にはもう一歩な感じはあったが、それなりに楽しめた。
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おさないともだちに [文学 日本 立原えりか]


おさないともだちに

おさないともだちに

  • 作者: 立原えりか
  • 出版社/メーカー: 株式会社 青土社
  • 発売日: 2012/10/10
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)



青土社から出版されていた『立原えりかのファンタジーランド』という絶版の本を、アマゾンがペーパーバック化して売ってくれているものを購入した。全16巻なのだが、何故か14巻しか売り出されていない。

これは幼い子供向けの書かれた作品を集めたもの。

1. ゾウのおふとん
動物園で迷子になってしまった女の子を、たくさんの動物たちが自分のこどもにしようとする話。最後はゾウのこどもに助けられ無事お母さんのもとへ。家族から引き離されて動物園に連れてこられた動物たちの悲しさを裏に込めていると思われる愛おしい話。

2. 森のこうもりがさや
森に白いこうもりがさやが出来、いろんな動物たちが自分たちの願うことを叶えられる話。月曜日から土曜日まで代わる代わる動物たちがやってくる構成も素敵。

3. こたえはひとつだけ
妹が生まれたことによって自分への愛情が薄まってしまったことに嘆き、「妹なんかいなくなればいい」と願ってしまったことで大変なことになる女の子を描いた作品。上の子たちはかなり共感を持って読めるのではないだろか。

4. 古いシラカバの木
林の奥深くにあって、人々が迷わないように道案内してくれるシラカバの話。伝統が受け継がれている話でもあり、短いが心があったかくなる話。

5. おかあさんのかみ
すご~く長い髪を持つお母さんは、朝起きるといつも髪をまとめてしまっている。まとめていないときはどれだけ長いのかを確かめたくて早起きする女の子の話。これも心がほっこりする。

6. 一等になってみたいな
運動会のかけっこで一位になりたい女のコがくまの手を借りて一等賞を取る話。必死でやることの大切さを訴える話。若干「泣いた赤鬼」に通じるものがある。

7. ライオンららら
この作品集の白眉。原作はアンパンマンの作者やなせたかしが絵を描いている。ジャングルから抜け出したライオンと女の子の心暖まる心の交流を描いた作品。

8. おいしいカップケーキのつくりかた
おそらく母子家庭のさみしい思いをしている女の子の話。うさぎのぬいぐるみが話せるようになったことで心を明るくする話。これも良い話だ。

9. ゆりくまさん
「ライオンららら」と並ぶ傑作。ドン・フリーマンの『くまのコーデュロイ』に似た話。デパートで売られていたクマのぬいぐるみと、女の子の素敵な話。若干『くるみ割り人形』の世界観も入り込んでいる。

10. まほうつかいのまごむすめ
これも恐らく母子家庭の話。魔法はいつかとける。それがとけてしまった時に耐えられる力をどうつけるか、いろいろなことが込められた深い物語。いつ、どういった形で別れがやってくるのか、ドキドキしながら読みすすめてしまった。

11. 雪がふる
絵本『スノーマン』に近い世界観。大人になって忘れてしまった子供心を呼び覚ます素敵な話。

心暖まる話が多かった。
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でかでか人とちびちび人 [文学 日本 立原えりか]


でかでか人とちびちび人 (新装版) (講談社青い鳥文庫)

でかでか人とちびちび人 (新装版) (講談社青い鳥文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/11
  • メディア: 新書



立原えりかの講談社児童文学賞受賞作『でかでか人とちびちび人』を読み終わった。どこもかしこも立原えりかのオリジナル作品集は絶版になっており、ネット上の中古市場でこの青い鳥文庫版を手に入れた。

題名だけみるといかにもつまらなさそうが、結構面白かった。

オーストラリアのそばにあるある島には、でかでか人という人種がおり、その側にはちびちび人という人種もいる。彼らは言葉を知らない。二つの人種は協力して生きている。

ちびちび人たちは、ワニの耳の中に入り、竪琴を奏でながら歌を歌うとワニたちは眠ってしまう。眠っているあいだにでかでか人達がワニをとらえる。とらえたワニを人が大勢いる島へ持っていき売って生活している。

そんなでかでか人とちびちび人とふとしたことから知り合った船長とその親戚の娘ゆり。彼らはちびちび人たちに言葉を教える。言葉を教えたことでお互い連絡が取れるようになる。

そんなある日、悪い海賊にちびちび人が捉えられ、彼らの人を眠らせる歌声が悪用される。

そんなこんなで、ゆりの活躍もあり事件は解決、という話。

あらすじを読んでもあまり面白そうに感じないかもしれないが、結構心温まる良い話。
激しい展開になれた現代の子供たちには受けないのかもしれないが、このような心暖まる本はなるべく後世に残るように市場に出回るようにしてもらいたい。
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小さな花物語 [文学 日本 立原えりか]


小さな花物語 (講談社文庫)

小さな花物語 (講談社文庫)

  • 作者: 立原えりか
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/03/20
  • メディア: Kindle版



立原えりかさんの、様々な「花」をテーマにした作品。

「春」「夏」「秋」「冬」に分かれており、それぞれが12個の花の話で構成されている。
花自体が、主人公になっているものから、その花をテーマに人間たちや動物たちが物語を紡ぎ上げる作品もある。

恐ろしい教訓譚的な作品から、夢見るような美しいファンタジー的な作品、現実を描いた作品などヴァラエティに飛んでいる。一作一作は2~3ページと短いのだが、密度がかなり濃く、読み進めるのに結構時間がかかった。冬の花の物語が、深く面白いものが多かった。やはり寒いほうが深い物語ができやすいのかな、と思った。

「小さな花物語」以外に
◎かめもの歌
◎いつも見る夢
◎彼の仕事
◎雪の日のオルゴール
の四作が収録されており、これらは80年代初期に発表された作品らしいが、初期のヒリヒリした緊張感がそこまでなく、少し残念な感じの作品だった。
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立原えりか童話集Ⅰ 木馬がのった白い船 [文学 日本 立原えりか]


木馬がのった白い船―立原えりか童話集1 (角川文庫)

木馬がのった白い船―立原えりか童話集1 (角川文庫)

  • 作者: 立原 えりか
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/07/16
  • メディア: 文庫



どこで目にしたか忘れたが、「立原えりか」という児童文学作家がいるということを知り、色々と調べると私好みの作風らしいので、さらに色々調べると、彼女の作品はほぼ絶版状態だということを知った。

しょうがないのでとりあえず図書館で借りてみた。

1.人魚のくつ
彼女のデビュー作。ある女の子が落とした靴を、人魚の靴と勘違いしてしまう男の子の話。色々あって二人は出会わないまま、物語が完結するあたりがとても幸福感があり良い。

2.タムタムおばけとジムジムおばけ
松谷みよ子の「オバケちゃん」シリーズにも通じる、現代文明批判を孕んだ作品。一時流行ったネッシー騒動も彷彿とさせる。佳作。

3.お姫様をたべた大男
千夜一夜物語のような怖いようでいて、どこか哀愁漂う作品。

4.木馬にのった白い船
本の題名にもなっているだけあり、素晴らしい作品。公園で長いあいだ子供のために働いてきた木馬がみんなにお別れをする話。いつから人は、生身の人間としか話せなくなるのであろう、ということを感じさせる作品。

5.蝶を編む人
安房直子作品にも通じる、ひとつのことを一心不乱に行うことの大切さを我々に見せてくれる作品。

6.野原の食卓
サーカスで働いていたクマとそれを観ていた女の子との心の交流を描いた作品。サーカスでは使い物にならなくなり殺されそうとするところを必死で逃げるクマ。怖いようだが何故か暖かい気持ちになれる作品。

7.花園
これも安房直子作品に通じる、ある女の子によって皆が花にされてしまい、空間からいなくなってしまう作品。これもよく考えると非常に恐ろしいのだが、そこまで恐ろしさを感じさせない作者の腕が素晴らしい。

8.雪の夜のお客さま
こどもを亡くした女性と、子供たちの優しい心の交流を描いた作品。これも悲しい作品なのだが、こころがポッと温かくなる。

9.ぬいぐるみ
これも安房直子作品に通じる作品。犯罪を犯した男と子供の心の交流を描いた作品。これもとてもこころ穏やかで温かくなる佳作。

10.ユニコーン
幻想な中で生きるのと、現実の世界で生きるのと、どちらがより幸せなのか、考えさせられる作品。

11.ユキちゃん
戦争によって、ぬいぐるみをなくしてしまった女の子の心の痛みをテーマにした作品。少女がぬいぐるみによって心癒され、幸せになる姿は感動してしまう。

12.飛べない鳥
恐らく作者が持っていたであろう、飛ぶことに対するあこがれをカタチにした作品。どこまでの悲しくどこまでも愛おしい作品。

13.六本指の手ぶくろ
離れてしまった母親と娘の心の交流を描いた作品。心を失ってしまっていた母親が子供の手紙によって心を取り戻す場面が感動的。

14.幸福の家
幸せの「青い鳥」をモチーフにした素敵な作品。

15.花の時間割
これも現代文明批判を含んだ良品。

とにかくすべてが、小さなもの弱きものに視線を向けるとともに、その視線が限りなく暖かいので、恐ろしいもの、人から普通は敬遠されるものでも何故か愛情を持ち始めてしまう、そんな作品ばかり。

こんなに美しい作品集が、絶版なのは何故なのだろうか。ぜひ多くの人が再び手にできる状態なって欲しい作家だ。
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