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プロタゴラス [哲学 プラトン]


プラトン全集〈8〉 エウテュデモス プロタゴラス

プラトン全集〈8〉 エウテュデモス プロタゴラス

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/08/26
  • メディア: 単行本



プロタゴラスというソフィストの権化のような人物とソクラテスによる、「徳は教えられるか」ということに関する白熱した議論の書。
議論の最後で、ソクラテスが「徳=知」ということをプロタゴラスに証明し、プロタゴラスは逆に「徳≠知」であることを躍起になって証明しようとしている。
そして、もし「徳=知」であるならそれは教えられなければおかしいので、二人が自分の説と逆のことを証明しようとしていることになる、という形になってしまい、さらなる議論をしようというところで終わっているのが面白い。

プロタゴラスの様々な説は結構説得力があったりし、ソクラテスの方が詭弁を弄しているように思えてしまう場面もなくはない。二人が「徳を扱った詩」についてお互いの意見を出し合う場面があるのだが、ここも結構興味深い。

議論のありかた、対話の仕方を学ぶのにうってつけの作品であり、二人の感情や周りで聞いている人々の様子も描かれている場面もあり、かなり重層的で面白い作品となっている。

p.118
「君はいま、ほかならぬ自分自身の魂の世話を、あるひとりの男ー君の言うところによれば、ソフィストであるところの一人の男ーにゆだねようとしているということだ。では、そのソフィストとはそもそも何ものなのか、君がもしそれを知っているとしたら、ぼくは驚くだろう。だが、その点をもし君が知らないでいるとすれば、君は、自分が魂をゆだねる相手がいかなる人かということもー善いしろものかも悪いしろものかもー知らないでいるといことにある。」
ソクラテスの強烈な皮肉がこもっているセリフ。「徳」という魂の根本のようなものを教えるなどということ自体が不遜であり、そうした人にお金を払ってまで教えを請おうとしている人々もまずいのでは、という気持ちがこもっている。

p.135
「私としては、人間の特性というものが、ひとに教えることのできるものであるとは、考えられないのです。」
p.200
「あなた(プロタゴラス)の自信のすばらしさたるやどうでしょう。ほかの人たちはこの技術をかくしているというのに、あなただけは、あまねくギリシアの人々に公公然と自分を宣伝して、ソフィストとして名乗りをあげ、自分が教育をうけもち徳を教える教師であることを標榜したうえで、そのための報酬を受けとることを要求した最初の人なのですからね。」
凄まじく皮肉たっぷりの発言で読んでいて笑ってしまった。

読み応えのある結構面白い作品だった。
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