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The Sixth Amulet: The Moon-Chasers [文学 アイルランド]

以前、このブログに記した、私のホスト・ファミリーの人が書いた文学作品の第二部。ちなみに三部作らしいので、そのうち、第三部も読むことになるであろう。

前作は500ページ近い大作であったが、今回は、350ページほどの作品。しかも今回は二度に分けて送られてきたので、結構短いスパンで読み終わることが出来た。

前作の続きで、Oranという人(?)とMagia Neraという人の、腕輪(Amulet)とある秘術が書かれた本(book)をめぐる攻防(なのだと思う・・・)。
ふたりを取り巻く人物達の内面が、前作The Sixth Amuletよりも細やかに描かれており、前作で宙ぶらりんにされていたものが、少し解明されたりと、最後のほうは結構どんどん読み進めることが出来た。

やはり不明瞭な部分が多いので、一作目から英語の勉強も兼ねて日本語訳をしてみようと少し考えてみたりもするのだが、結構時間も取られるだろうしどうしようかなあ、と迷い中。
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Salome [文学 アイルランド]


Complete Works of Oscar Wilde (Collins Classics)

Complete Works of Oscar Wilde (Collins Classics)

  • 作者: Oscar Wilde
  • 出版社/メーカー: Collins
  • 発売日: 2003/08/01
  • メディア: ペーパーバック



遂に、Salomeを読み終わった。
大学時代、岩波文庫で日本語『サロメ』を読んで以来の再読。リヒャルト・シュトラウスのオペラ『サロメ』も何度も見ているし、聖書でも有名な話なので、「あれ、こんな話だったっけ」みたいな驚きはなかった。

とはいえ、英語で読んだのは初めてで、Jokanaanの発言の中で、結構古い英語の語順などが使われていたりした。主語と動詞がひっくり返っていたり、notの位置が最後に来ていたり。King James版の聖書を読んでいなかったら結構読みづらかったかもしれない。
そして、この作品、Oscar Wildeはフランス語書いたらしい。それをLord Alfred Douglasなる人物が英訳したらしい。そんなことも大学で習った気がするが、すっかり忘れていた。
そして、Jakanaan(預言者ヨハネ)に対する、ユダヤ人達とナザレ人(キリスト教徒?)の対話が結構興味深かった。

西洋の作家は聖書を題材に様々な小説を書いている。聖書の題材をそのまま小説化したものもあれば、それを土台に小説を作った人もいる。

ギリシア・ローマ、そして聖書は本当に西洋文化に根付いているんだなあと実感した。

The Complete works of Oscar Wildeに収録されている、私の読みたいと思っていた作品がこれで全部読み終わった。

話の展開がとてもうまく、すごく楽しめる作品ばかりだった。
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An Ideal Husband [文学 アイルランド]


Complete Works of Oscar Wilde (Collins Classics)

Complete Works of Oscar Wilde (Collins Classics)

  • 作者: Oscar Wilde
  • 出版社/メーカー: Collins
  • 発売日: 2003/08/01
  • メディア: ペーパーバック



戯曲An Ideal Husbandを読み終わった。
相変わらずサロンの会話から始まる。正直初めは何を話しているのかわからない。人物関係もよくわからないので、今誰が話しているのか、それが男性なのか女性なのか、を把握するだけで精一杯だ。が、段々いろいろな人物関係が見えてくる。

Sir Robert Chilternとその妻Gertrudeはとても仲の良い夫婦。Robertは非常に有能で高潔な外交官として皆の尊敬を集めている。彼らが開いているサロンに、外国人のMrs. Cheverleyがやってくる。彼女は、Robertがかつて、インサイダー取引のようなことをして、金を設け、今の地位を得たことに対して脅迫してくる。高潔な妻には打ち明けられず悩むRobert。

この問題を解決するのは、Robertの親友Lord Goring。彼が主人公といっても良いだろう。

「An Ideal Husbandは金も地位もあり、高潔な人間」と誰もが思っているのだが、そんな人間はどこにも存在せず、人間だれしも過去にやましいところを持っているもの。結局、様々な問題を解決したGoringは、Robertの妹Mabelと結婚するのだが、彼のように、柔軟性があり、色々な意味で人間味あふれる人物こそが「An Ideal husband」なのだということなのだと思う。

この作品も後半かなり緊張感があり、面白かった。
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A Woman of No Impotrance [文学 アイルランド]


Complete Works of Oscar Wilde (Collins Classics)

Complete Works of Oscar Wilde (Collins Classics)

  • 作者: Oscar Wilde
  • 出版社/メーカー: Collins
  • 発売日: 2003/08/01
  • メディア: ペーパーバック



A Woman of No importanceを読み終わった。
前にも書いたと思うが、大学の授業で、Oscar Wildeに関する授業を取り、そのとき買わされた本。
せっかく買ったので、有名作は全部読もうとは思っているのだが、何にしろ、1200ページ以上もあり、重くて持ち運びできず、家で読むしかないのでなかなか読めない。

が、何とかこの作品を読み終わった。
初めは、上流階級のサロンのなんてことはない、女性たちの会話が続くのだが、そこに男性が加わっていき、段々と話は核心へと迫っていく。

Lord Illingworthという金持ちが、ひとりの何でもない若い青年Geraldを秘書に雇うということになる。かなり素晴らしい話だ、とサロンで話題になる。このGeraldはHesterというアメリカから来た女性と両思い。
しかしGeraldのこのおいしい話に対して、母親であるMrs.Arbuthnotは猛反対。実は、GeraldはIllingworthとArbuthnotの間に出来たこどもだったのだが、子どもが生まれるとともに、結婚の約束をしていたIllingworthは逃げ出したのだ。そんなこととは知らないGeraldは楽しげにIllingworthについていこうとするが、この会合の最後に、Illingworthが彼の恋人HesterにKissしようとする。怒ったGeraldが彼に襲いかかろうとするが、母親に「He is your own father!」と言われ止められる。
真相を知ったGeraldはIllingworthと母親を結婚させようとするが、母親はひたすら拒絶。Illingworth本人もArbuthnotの元にプロポーズにくるが、彼女は断る。別れ際かるいいざこざがあり、Illignworthは手袋を落として帰っていく。

後から入ってきたGeraldがその手袋を見て、これ誰の?と母親に聞き、母親は「No one in particular. A man of no importance.」といって幕となる。

とても素晴らしい劇だったと思う。
恐らく、Illingworthはイギリスの古いしきたりの中で育ったために、結婚前に子供を作ってしまったArbuthnotとは結婚できなかったのだろう。そして、ひとりで子供を育ててきた彼女は、a woman of no importanceであったのであろう。そしてその息子、Geraldは全く新しい世界からやってきた全く新しい価値観を持ったアメリカ人女性Hesterと結婚することになる。Hesterの発言のあちこちに、イギリス人サロンに対する侮蔑が入り混じっている。そして最後は、社会的地位も金もあるIllingworthは新しい価値観を持ったこの3人からa man of no importanceな存在へと追いやられる。

すごく、新しい時代、時代の変化を絶妙に表した劇だと思う。ぜひ劇場でみたい作品である。
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The Sixth Amulet [文学 アイルランド]

約20年前、アイルランドのダブリンに1ヶ月、語学研修に行っていた。
そこのホストファミリーがとても素敵な人たちで、その後もずっと文通を続け、Christmas, St. Patrick's Dayには必ずカードを送っている。

そのホストファミリーのお嬢さん、(とはいえ私よりも10歳くらい年上だが)、が本を書いたということで、PDFファイルで送ってくれた。
英文で500ページ弱の大作で、送られてきたときはかなりひるんだ。

しかし読み始めるととても面白く、約一ヶ月で読み終わることが出来た。
非常に単語のレベルは高いものの、文法的には平易で、読みやすかった。
とはいえ、目次もまだなく、登場人物も整理されていたりしなかったので、結構人物関係を把握するのが大変だった。

物語は、6個のAmuletと呼ばれる、お守りをめぐって、善と悪が戦うというようなストーリー。Oranという人に、かつて命を助けられた女性が、悪の女王のような人にうまく丸め込まれ、この地上を支配しようとする物語。はじめの、この女性に対する魔女裁判のシーンが迫力に富んでおり、とても面白かった。ほぼ永遠の命を悪の女王によって与えられた者たちが出てきたり、ちょっとしたラブストーリーがあったり、と本当に多様な物語で、先のストーリーも予想することが出来ず、素晴らしい話だった。

最後が中途半端な感じで終わっており、続編があるのかなあ、と思われる。
楽しみに待ちたい。


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Lady Windermere's Fan [文学 アイルランド]


Oscar Wilde: Complete Works

Oscar Wilde: Complete Works

  • 出版社/メーカー: Oscar Wilde
  • 発売日: 2017/01/10
  • メディア: Kindle版



WildeのLady Windermere's Fanを読み終わった。
LadyとFanという単語からLady Windermereは40歳~50歳の人なのだろうと想像していたのだが、実際は20歳代前半の若奥様。息子が一人いるらしいが、舞台には実際には登場しない。

初め、Lady Windermereとお友だちの会話で始まり、夫Lord Windermereがいかがわしい女にお金をつぎ込んでいるから注意したほうが良い、という忠告を受ける。
その日は、Ladyの誕生日なのだが、その誕生日会に夫が金をつぎ込んでいるといわれているその女性を招待すべきと、夫に言われる。猛烈に反対するが、もう既に夫は招待状を出しており、彼女は誕生日会にやってくる。そして・・・。

読んでいると、すぐにこの夫が金をつぎ込んでいる女性とLady Windermereの関係性が見えてくる。結構その緊張感をはらんだ二人の関係性が面白い。

が、やはりその当時のサロンの慣習や家の様子がわからないと、???の部分が多い。
とはいえ、想像できない部分もあるとはいえ、ストーリー的に面白く、わくわくどきどき感を常にもって読むことが出来た。

やはりWildeは面白い作家だと思う。

The Canterville Ghost [文学 アイルランド]


Complete Works Of Oscar Wilde (ShandonPress)

Complete Works Of Oscar Wilde (ShandonPress)

  • 出版社/メーカー: Oscar Wilde
  • 発売日: 2016/06/15
  • メディア: Kindle版



Oscar Wildeの短編小説The Canterville Ghostを読み終わった。

あるアメリカ人が、イギリスのお屋敷を買い取る。このお屋敷は幽霊が出ることで有名であった。
そのお屋敷に長年勤めていたMrs. Umneyはアメリカ人のOtis一家に幽霊の恐ろしさを淡々と語るが、誰も相手にしない。

基本的に物語は、このOtis一家に視点を当てて進むのかと思いきや、Ghostの心理に話はFocusされていく。このまったく驚かないアメリカ人一家を何とか驚かせようとするGhostだが、失敗ばかり。そのうちに自分以外のGhostに遭遇したりして、引きこもってしまうことに。

そんなある日、アメリカ人Otisの子供VirginiaがこのGhostをある部屋で発見する。会話を進めていくうちに、VirginiaがこのGhostを死なせてあげることになる。そしてVirginiaはGhostと一緒にどこかへと消えていく。

Virginiaがいなくなったことに気がついたOtis一家は懸命に創作する。近くに来ていたGypsyの仕業なのでは、と疑うが、違う。そして色々と手を尽くすのだが、Ghostの仕業じゃないのかと思わないのが面白い。

そして最後は、Ghostをとむらい帰ってきたVirginiaはフィアンセと結婚する。一緒になったふたりが最後に、あのときGhostと何があったのか、と聞くが、彼女は答えられないという。

彼女の答えられない理由がとても素敵だ。

I owe him a great deal. Yes, don't laugh, Cecil, I really do. He made me see what life is, and what Death signifies, and why Love is stronger than Both

VirginiaはGhostに生と死とは何なのかを教えてもらい、そして愛はそれら両者よりも強いのだ、ということを教えてもらった、というのだ。

短いながらも面白い作品だった。


Lord Arthur Savile's Crime [文学 アイルランド]


Complete Works of Oscar Wilde (Illustrated) (English Edition)

Complete Works of Oscar Wilde (Illustrated) (English Edition)

  • 出版社/メーカー: Minerva Classics
  • 発売日: 2013/08/19
  • メディア: Kindle版



大学2年の時、教職を取る関係で、「英文学」の授業を何個か取らなければならず、オスカー・ワイルドの作品を扱った授業をとった。その時に、このThe Complete Works of Oscar Wildeという本を買わされた。

全部で1200ページを超える本で、その当時はこんな本がこの世にあるのか、と驚きだった。さらに毎週この本を授業にもっていかなければならず、紙辞書と共に持って行っていた関係で重くてしょうがなかった。
しかし、ほとんど授業では扱わず、こんな厚い本を買ったのにもったいないなあ、とずっと思っていた。

で、たまに思い出したように読むのだが、何しろ重いので、電車等には持っていけない。なので家で読むことになるのだが、家ではなかなか英語の本を読み進めることができず、今まであまり読めなかった。

が、この年末年始少し時間と心に余裕があったので、短いこのLord Arthur Savile's Crimeを読んだ。

手相を見る占い師Mr.Podgersによって、殺人を犯すことを予言された主人公Lord Arthurはその予言に、苦しみ、婚約者Sybilとの結婚も延期する。そして色々な形で人を殺そうと試みるが、なかなかうまくいかない。最後には・・・。

けっして読みやすい文章ではないが、そこまで難解な文章でもないので、調子に乗ってくると結構すらすら読めた。最後の笑えるような笑えないようなオチがとっても面白かった。金持ちたちを揶揄している感じもあり面白かった。

Mrs. Warren's Profession [文学 アイルランド]


George Bernard Shaw's Plays: Mrs Warren's Profession, Pygmalion, Man and Superman, Major Barbara : Contexts and Criticism (Norton Critical Editions)

George Bernard Shaw's Plays: Mrs Warren's Profession, Pygmalion, Man and Superman, Major Barbara : Contexts and Criticism (Norton Critical Editions)

  • 作者: Bernard Shaw
  • 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc (Np)
  • 発売日: 2002/04
  • メディア: ペーパーバック



Mrs. Warren's Professionを読み終わった。舞台が大きく移動することもなく登場人物も限られているので、比較的読みやすかった。
Vivieは当時非常に珍しかった大学出の女性。しかも美人。彼女はひとりで家に暮らしている。
ある日、彼女の前に二人の男性CroftとPraedと彼女の母親Mrs. Warrenが現れる。さらにそこにFrankというVivieの幼馴染と彼の牧師の父親が現れる。
FrankとVivieは結婚しようという話になるが、Frankの父は反対する。Vivieも母親のむちゃくちゃさに嫌気がさし、彼女を遠ざけようとするが、母親のかつての苦労話を聞き、母親を見直す。
次の日、VivieとFrankが結婚の話をしていたところ、Croftが現れVivieとFrankは血のつがなった兄弟であることを告げる。
VivieとCroftがその後話を続けたところ、Mrs. Warrenの職業(profession)は売春婦であったことがわかる。
それを受け入れられないVivieは母の財産も全て捨てて母親と決別することを決める。財産のないVivieと結婚できないと考えたFrankもVivieから去っていく。

Shawのほかの作品と違い、とにかく登場人物たちが感情的になる場面が非常に多い。そう言う意味で舞台で見ると非常に面白い作品なんだろうなあと思う。
この本のテーマはおそらく「貧困、道徳、金」なんだろうとおもう。
道徳的に正しいことをしたくても貧困であったらどうにもならない。金を得るために非道徳的な職業に就く。母親が非道徳的な職でえた金で大学を卒業した娘はどうするべきか。この揺れ動く娘の気持ちを作品に仕上げたものなのだろうと思う。
一人ひとりが自分の立場から自分の信念で話を進めるのだが、なかなかそれぞれが噛み合わない。そして最終的に一人になってしまうVivie。それを敢然と受け入れるVivie。
非常に美しい作品だと思う。

Major Barbara [文学 アイルランド]


George Bernard Shaw's Plays: Mrs Warren's Profession, Pygmalion, Man and Superman, Major Barbara : Contexts and Criticism (Norton Critical Editions)

George Bernard Shaw's Plays: Mrs Warren's Profession, Pygmalion, Man and Superman, Major Barbara : Contexts and Criticism (Norton Critical Editions)

  • 作者: Bernard Shaw
  • 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc (Np)
  • 発売日: 2002/04
  • メディア: ペーパーバック



Shawの戯曲Major Barbaraを読み終わった。この作品も途中、Salvation Armyの団体の内部の状況に話が移るACTⅡは下層階級の人々の言葉ということで普通のスペルではないスペリングで書かれている単語が多く出てくるので意味がわからない部分が多かったが、そのほかの点では比較的読みやすい作品だった。

登場人物もほとんどが家族内だけなので人物を見失いづらいので良かった。
父:Undershaft
母:Lady Britomart
娘1:Sarah
Sarahの夫:Lomax
娘2:Barbara
Barbaraの夫:Cusins
息子:Stephen

ACTⅠ 場面は家で、Lady Britomartと息子Stephenが会話をするところから始まる。娘ふたりが結婚することになるのだが、旦那になるLomax、Cusinsには現時点ではまともに生活していけるだけの財産がない。そこで軍需産業に従事し資産家である元夫Undershaftにお金をもらうよう交渉したほうがいいかどうか母は息子に相談する。
結局夫を呼び出し、交渉することになる。

ACTⅡ 場面はSalvation Army. たくさんの困っている人が続々と登場する。Salvation Armyに属している娘のBarbaraは彼らの魂を救済しようとするが、なかなかうまくいかない。そこに父親のUndershaftが登場。資産家の友人Bodgerと大量のお金をSalvation Armyに寄付することを申し出る。軍需産業に従事するUndershaftとアルコール産業に従事するBodgerからお金を受け取るということに納得できない娘のBarbaraはSalvation Armyを去る。

ACTⅢ 家族が全員でUndershaftの工場を見に行く。そこには工場だけではなく教会から病院まで何もかも揃っている。Undershaftは息子たち(義理も含めて)に工場で働くことをすすめる。Lady BritomartとBarbara以外は結局お金が人々を救うことを認め工場で働くことを受け入れる。最後まで夫(になる予定)のCusinsと議論した結果Barbaraも受け入れ物語は終わる。

この話のテーマは、“資本 vs. 宗教”ということだと思う。Man&Supermanと同じくニーチェの思想から大きな影響を受けているであろうことは容易に見て取れる。綺麗事を並べたところで宗教は人間を救うことができない。なぜなら金がなければこの社会では生きていけないからだ。そして金がない人が傷を舐め合って資本家に対して嫉妬感情を抱いている状態(ルサンチマン)を作り出しているものこそキリスト教(宗教)だ、ということなのか。

さらにここでは学問に対する批判もなされている。Barbaraの夫cusinsはギリシャ語の研究者。しかしそれでは結局食っていけない。「人間を救うのは宗教でも高等な学問でもなく資本だ」ということだろう。

これはプラトン思想、キリスト教という西洋を形作ってきた精神性を根本から覆す思想だ。この二つを乗り越えて初めてManはSupermanになれるということか。

これは観る側に観ているあいだも、観たあとも多くを考えさせる作品であることは間違いない。人間を救うことができるのは金なのか宗教なのか。答えを出すのは難しい。しかし現実的に生きるためにはまずは金が必要になってくる。考えるためにも金は必要だ。そうすると・・・。思考はぐるぐる回り続ける。

この作品は結構上演される機会が多いらしい。観客を思考させるという点で、確かに上演するにふさわしい作品だと思う。

Man & Superman [文学 アイルランド]


George Bernard Shaw's Plays: Mrs Warren's Profession, Pygmalion, Man and Superman, Major Barbara : Contexts and Criticism (Norton Critical Editions)

George Bernard Shaw's Plays: Mrs Warren's Profession, Pygmalion, Man and Superman, Major Barbara : Contexts and Criticism (Norton Critical Editions)

  • 作者: Bernard Shaw
  • 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc (Np)
  • 発売日: 2002/04
  • メディア: ペーパーバック



George Bernard ShawのMan & Supermanを読み終わった。数年前、ミュージカル映画『マイ・フェア・レディ』の原作Pygmalionを読んでみたくて買った本で、当時ほかの作品は読んでいなかった。しかし、ほかの作品も面白いらしいということを目にし、良い機会だからと思い読んでみた。

父親を亡くしたばかりのAnnは父親の遺言により老紳士とTannerなる人物に後継人をお願いする。最終的にはこの後継人のTannerとAnnが結婚することになるのだが、それまでに様々な紆余曲折を経ながら結婚へとたどり着く。
全4幕の作品で、1幕、2幕はわりとわかりやすい。
しかし第3幕に入り、夢の世界へと話は飛び、舞台が地獄へと移る。ここで、ドン・ジュアン、悪魔、ドン・ジュアンに誘惑された娘を助けようと剣をもって彼に襲いかかってかえって殺されてしまった娘の父親も登場する。その時の娘Annは70歳ぐらいで死んでしまい、死後地獄へとやってきてドン・ジュアンと再開する。自分が地獄にいることを受け入れられないAnnはドン・ジュアン、悪魔、父親と哲学的議論を展開する。このドン・ジュアンに登場するAnnとMan&Supermanの主人公Annとが同一人物なのか、関係があるのかなど、よくわからない。
さらにこの第3幕は話が難しく、60%くらいしか理解できなかった。これは『ドン・ジュアン』とニーチェの超人思想を絡めた思想が展開されているらしく、非常に難しい。今までニーチェをずっと読んできたのでなんとなく言いたいことはわからなくはなかったが、やはり理解しきれない部分は多かった。
St.Joanもそうだったが、Shawは劇の中に夢を挿入するのが好きらしい。そしてこの夢の場面が非常にわかりづらい。そして一人ひとりのセリフが異様に長い。こんな長いセリフを役者は覚えられるのか、と思ってしまう。
それなりに面白く、興味深い作品ではあったが、自分の英語力の低さのせいで、本当のおもしろさの20%くらいしか味わえていないのではないかと思うと悔しい限りだ。

St.Joan, Pygmalionと並び、再読したい作品だ。

Saint Joan [文学 アイルランド]


Saint Joan (Penguin Classics)

Saint Joan (Penguin Classics)

  • 作者: George Bernard Shaw
  • 出版社/メーカー: Penguin Classics
  • 発売日: 2001/05/01
  • メディア: ペーパーバック



Bernard ShawのSaint Joanを読んだ。世田谷パブリックシアターでこの秋、演劇「ジャンヌ・ダルク」をやるというチラシを見かけた。そこに原作バーナード・ショーと書いてあり、恥ずかしながらショーがジャンヌ・ダルクを扱った作品を書いていたことを知らなかったので、読んでみた。
Shawの作品は「マイ・フェア・レディー」の原作Pigmalionしか読んだことがなかったが、比較的読みやすい印象を持っていた。
この作品もかなり読みやすく、結構スラスラ読めた。
ジャンヌがRobert de Baudricourtにイギリス軍を倒すために軍を貸して欲しいと頼む場面から始まる。
その後、イギリス軍との戦いに勝ち、フランス王を戴冠させるものの、イギリス軍につかまり、フランス側に身柄を戻された後、有名な裁判にかけられる。そして、火刑にあい死ぬが、その様子に恐れをなした貴族たち・僧侶たちのあたふたした様子で本編は終わる。
エピローグで、約25年後のフランス王の夢の中にジャンヌは現れる。そして彼女を有罪にした者たちと再会し、聖人になったことを告げられる。しかし、ジャンヌはそれでも救われぬまま・・・。
読みやすいとは言え、フランス語の地名や人名なども多く、いまいち自分の中で映像化できなかった。
劇団風による演劇「ジャンヌ・ダルク」の原作はマテイ・ヴィスニユックという人が書いたものらしいが、こちらのほうがメッセージが伝わりやすいきがした。実際目の前で演じられているのと、本を読んでいるだけなのとでは明らかに前提は違うが・・・。
とはいえ、ジャンヌ・ダルクを描いた数ある作品の中では、普通の仕上がりなのではと思ってしまった。
背表紙によると、ショーが1925年ノーベル文学賞をとったのはこの戯曲のおかげらしいが、本当なのだろうか。"

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