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しいちゃんと赤い毛糸 [文学 日本 安房直子 さ行]


しいちゃんと赤い毛糸 (1980年) (旺文社創作童話)

しいちゃんと赤い毛糸 (1980年) (旺文社創作童話)

  • 出版社/メーカー: 旺文社
  • 発売日: 2023/07/10
  • メディア: -



絶版本。旺文社から出ている安房直子さんの本は絶版になってしまっているものが多い。
ネットの古本屋で見つけかなり高額だったが思わず買ってしまった。

早速次男と読む。

秋の終わり、おばあさんが山道を歩いているとお月様に話しかけられる。
おばあさんは、「孫娘にセーターとぼうしと手袋を編んで上げるために赤い毛糸を買ってきたところだ」と月に話す。

突然天気が悪くなってきたのでおばあさんは急いで家に帰ろうとする。
すると「毛糸 くださいな」という声が次々にしてくる。誰だ、と聞くと「山の かれ木です。」と応える。寒くてたまらないらしい。しかし、せっかく孫のために買った毛糸を手放すわけにも行かずおばあさんは孫の待つ家へ急いで帰り、なんとかたどり着く。

そして3日でセーターと帽子と手袋を編み上げてしまう。

早速それを着て外へ遊びに行く孫娘しいちゃん。すると「ください、ください」という声がしいちゃんにも聞こえる。まわりには白いきものをきた背の高い人たちが大勢いる。そして寒い寒いと訴え、しいちゃんの服で焚き火をしたいと言い出す。長老の白い人がしいちゃんのところへやってきて、ぼうしと手袋の上に手をかざすと、ぼうしと手袋が燃え上がる。

しいちゃんは初めは悲しんでいたが、いつまでたっても燃え尽きない自分の服に興味を抱き始める。すると白い服の女性がしいちゃんのもとへやってきて白いクリームを両手と顔にすりこんでくれる。

どんどん火が大きくなり、周りでみんな踊りだす。最終的に「むねの中にひがともったわ」「赤い花が一りんさいたわ。」と言い、皆が笑顔になる。

気がつくとぼうしと手袋が無い状態で森の中に一人立っている。急いで変えるしいちゃん。外は寒いはずなのに、塗ってもらったクリームのおかげでなぜか寒くない。

家に帰りおばあちゃんに森での話を全部する。最後におばあちゃんが病気のお母さんから届いた手紙をしいちゃんにわたす。そろそろ退院できそうだ、という内容の・・・。

若干『となりのトトロ』を彷彿とさせる暖かい世界観の本。
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空色のゆりいす [文学 日本 安房直子 さ行]


なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



いすつくりとそのおかみさんに女の子が生まれる。空がとても青い日だった。しかしその子はうまれつき目が見えなかった。自分の子供には色が見えないんだ、と悲しんでいたところ、絵の具を使って絵を描いている小さな男のこと出会う。彼は絵の具を調合して空の色を作って、空の絵を描いていた。

自分の作ったゆりいすを空色にしようと、彼が調合した空色の絵の具をくれるよう頼む。彼は次の日その絵の具を持ってきてくれる。いすつくりはその絵の具で娘のために作ったゆりいすを空色に塗り、彼女はそこに座って空色を知ることになる。

娘が5歳になった頃、あの男の子がやってくる。いすつくりは、今度は女の子に花の色を教えたい、と男の子に赤い色を頼む。シチューを食べながらいろいろ話すうちに、この子が風の子だとわかる。この風の子は、ばら園に忍び込み、バラの色で作った赤を女の子に渡す。女の子は、「来年は海の色がほしい」とお願いする。

風の子は海に頼んで、海の色を作ろうとするが、うまくいかなかった。しかし海から歌を習い、女の子に歌って教えてあげる。こうして女の子は海を知る。

女の子が15歳になったとき、おかみさんにならってシチューを作れるようになった。

ある秋の日、背の高い若者が、いすつくりの弟子になりたいとやってくる。若者は仕事場で海の歌を歌う。その歌が昔少年が自分に教えてくれた歌だと気付いた女の子は「やっぱりあなたなのね」と喜び、二人は結ばれる。

幻想的で、温かい話。
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空にうかんだエレベーター [文学 日本 安房直子 さ行]


見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/04/01
  • メディア: 単行本



大きな町の大通りに、子ども服の店ができる。
その店のショーウインドーの中には、いろいろな服が飾られていた。
秋が来ると、その服と一緒に、大きなぬいぐるみのうさぎが飾られる。そのうさぎはピアノを弾いていた。
この飾り付けに魅せられ、ともちゃんという女の子が毎日のようにやってくる。彼女はあまりにうさぎに熱中してしまい、ショーウインドーに鼻までくっつけてしまい、店の人に怒られてしまう。しょうがなく帰ろうとすると、うさぎがウィンクして「満月の晩に会いましょう」と歌いかけてきた。

そして満月の晩、ともちゃんがお店へ行ってみると、うさぎが窓ガラスをこすってガラスをなくしてしまう。外に出てきたうさぎはともちゃんと一緒に大通りを走っていく。高いビルまで来て、エレベーターに乗ると、そのエレベーターがビルを突き抜け、月へと向かってぐんぐん登っていく。

しばらくして、空へうかんだエレベーターから外へ出た二人は、自分たちで作ったマントを羽織り、そらを飛び回る。

しかしこうした魔法が効いているのは月が出ているあいだだけ。月がしずみそうになり、急いでエレベーターに戻ろうとするが、間に合いそうもない。うさぎはともちゃんを家に送り店へ帰ろうとするが、ぎりぎりのところで間に合わず店の前に放り出されてしまう。結局色々な人に踏まれて汚くなってしまう。

しばらくしてともちゃんがやってくるがうさぎがいないので、窓を強く叩く。店の人が出てきて、うさぎをあげる代わりに、二度と店には来ないと約束する。

二人は幸せそうに一緒に家へ帰っていく。

幻想的で、夢と優しさにあふれた名作。
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すずをならすのはだれ [文学 日本 安房直子 さ行]


すずをならすのはだれ (とつておきのどうわ)

すずをならすのはだれ (とつておきのどうわ)

  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2008/11/13
  • メディア: 単行本



北風が、銀のトランペットを吹き鳴らしているなか、一匹のうさぎが「さむうっ」と言いながら森の中に現れる。これから町へ買い物に行くところ。そんなとき、うさぎは白い小さな家を見つける。

家にはすずがついていて、「ごようのかたはすずをならしてください」とある。すずを鳴らすと、中から声がして、仕事をするなら、中であたたまっていってもいいよ、と言われる。しごとは歌を歌うこと。了承したうさぎは中には入り歌を歌うが、うさぎはいつまでたっても家を出てこない。

その後、たぬき・ねずみ・しか・いのしし・くまと次々に家にやってきて、歌を歌うが、みな出てこない。

実はここは春の精の家。はるのじゅんびを みんなで手伝っていた。ついに春がやってきて、みなが外で歌を歌い、花という花がみんなすずをならして、春が来たのを喜ぶ。

はじめはなんとなく暗く、最後は明るく、とても楽しい作品。『緑のスキップ』に通じる作品。
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しろいしろいえりまきのはなし [文学 日本 安房直子 さ行]


しろいしろいえりまきのはなし (小学館の創作童話 初級版 6)

しろいしろいえりまきのはなし (小学館の創作童話 初級版 6)

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2023/06/03
  • メディア: 単行本



いきなりおかあさんうさぎが泣いている場面からはじまる。
三匹のこどもの、末っ子の女の子がわなにかかって、人間に連れて行かれてしまったのだ。
長男が探しに行く、ということになり、一度しか使えない魔法、うさぎを人間に変える魔法を使い、彼を人間の姿に変えて送り出す。

少し行くと人間の家が見つかり、そばかすだらけの女の子が窓から顔を出している。
彼女に末っ子のゆくえをたずねると、自分の父親がもうすでに殺してしまい、えりまきにして売ってしまったという。
色々と話をしているうちに、男の子がうさぎだということが分かり、人間の世界にうんざりしていた女の子は自分をうさぎにして欲しいと一緒にうさぎの家へ帰ることにする。

家に帰って事情を知り、かなしむ母うさぎ。しかし人間の娘が代わりにうさぎになって娘になると聞き、少し気持ちを立て直し、長男をうさぎに戻そうとする。しかし一度しか魔法が使えないので、長男はうさぎに戻れない。

人間として生きていくしかなくなった長男をどうやって食べて行かせようか、と考え、母うさぎはすすきでえりまきを作る。作り方を長男と人間の子の娘に教え、二人はそれで大繁盛というはなし。

結構残酷な話なのに、最後は明るくハッピーエンド。

もう絶版の本で図書館でもあまり見つけられない理由がなんとなくわかる本ではあるが、それなりに面白かった。
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白いおうむの森 [文学 日本 安房直子 さ行]


白いおうむの森―童話集 (偕成社文庫)

白いおうむの森―童話集 (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2006/08/01
  • メディア: 単行本



スダア宝石店というインド人が経営している店がある。入口には白いおうむがいて「こんにちは」と話しかけてくる。みずえという女の子と、その飼い猫ミーは、よく一緒にこのおうむを見に、スダア宝石店へ行っていた。みずえは、このおうむに、死んでしまった自分のお姉さんの名前を教え込もうとしていた。だれかが、「この世界にいる者で、死んだ人の国へいけるのは、鳥だけなのだ」と言っていたから、このおうむにお姉さんへの手紙を届けてもらおうと思っていたのだ。

そんなある日、店からおうむがいなくなってしまっていた。インド人に「おうむはどこにいるの?」とたずねると、インド人もみずえに「おうむはどこにいるの?」とたずねてくる。インド人はねこのミーがおうむを食べてしまったと思っていたのだ。

それから何日かしてねこのミーもいなくなり、インド人にさらわれたと思い込んだみずえは、スダア宝石店へと向かう。すると店の奥で猫の鳴き声がし、下へ向かう階段がある。ねこの鳴き声をおって階段をどんどん降りていくと、ミーがいた。そこでミーに話しかけると、おうむの声で、「こんにちは」と返してきた。すると闇の底がふっと明るくなり、そこにお姉さんがいると思ったみずえはさらに階段を下りていく。

大きな森へついたみずえは、そこで「夏子姉さん」に会う。夏子姉さんによると、みずえのおとうさんもおかあさんも、みずえにメッセージを伝えるためにおうむを飼っていたことを知る。そしてインド人も死んでしまった大事な人に何かを伝えるためにおうむを飼っていたんじゃないかと考える。

しかしこの森は鬼が来る恐ろしい場所らしい。本当は花が咲き誇る美しいところがあるのだが、そこに行くには導いてくれるおうむが必要らしい。おねえさんは、ミーに注目し、ミーに道案内をしてくるよう頼み、周りの人間もミーにたのもうとするが、あの世へミーが連れて行かれると思ったみずえは、ミーを連れて元の世界へ逃げ帰る。

スダア宝石店へ戻ると、インド人が待っていた。インド人も婚約者を亡くしていたことを知る。彼のためにミーを貸してあげ、ミーとインド人は階段を下りていく。そして彼らは二度と帰ってこない・・・。

かなり悲しい話であるが、希望を感じさせる心が温かくなる素敵な作品。次男もかなり気に入っていた。
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白樺のテーブル [文学 日本 安房直子 さ行]


白樺のテーブル

白樺のテーブル

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 1976/05/01
  • メディア: 単行本



ある男の人が引越し祝いに、友人から「白樺のテーブル」をもらう。
彼は、「こんなしゃれた品物、ぼくにはにあわないよ」と断るが「こんな、コンクリートの壁にかこまれて暮らすんだから、せめてテーブルぐらい素朴なのを使って、森に行ったつもりにでもなるといいよ。」と言われ、使い始める。
初めは大事にしていたが、そのうちにあまり使わなくなり、物置台になってしまう。

そんなある日、びしょ濡れの女のコが現れ、「白樺のテーブル」を大事にするよう彼に伝える。そして彼女と会話を交わしているうちにいつの間にか森の中へいる自分に気がつく。

近代文明批判、自然を大切にすること、そしてなによりモノを大切にすることの、大切さを訴えたこの本。表紙同様、非常に地味な静的な作品だが、シンシンとした冷たい緊張感が漂う素晴らしい作品だ。
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サンタクロースの星 [文学 日本 安房直子 さ行]


サンタクロースの星 (創作絵本シリーズ)

サンタクロースの星 (創作絵本シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 佼成出版社
  • 発売日: 1989/10/30
  • メディア: 大型本



結構前に購入していたのだが、せっかくなのでクリスマス近くに読もうと思って読まずにいた本。

家にえんとつのない子供から、「家に入ってこられますか?」という手紙をもらったサンタクロースがそれに答える話。

安房直子さん特有のファンタジー的な回答がされていて良かったのだが、彼女のクリスマス・ストーリーということでかなり期待していただけに、若干残念な感じだった。しろくまとサンタクロースの若干心暖まる感じがなくはないが・・・。

2023年6月2日 再読

サンタクロースが、読者に話しかける形で始まる。
最近は、えんとつのない家が増えて、そういう家の子どもから、「ぼくのいえには、えんとつがひとつもないんです。それでもクリスマスには、ぼくのところにちゃんときてくれますか?」という手紙が届くということを紹介し、ポケットの中にある青い流れ星が、どんなドアも開けてくれることを紹介する。

そして、この青い流れ星とどのようにして出会ったのかが語られる。

ここからが本編。

プレゼントのしたくをするのに疲れてイライラしていたとき、トナカイが飛び込んできて、星がひとつ落ちてきたことを教えてくれる。その流れ星を追いかけると、しろくまへとたどり着く。流れ星はしろくまの耳の中へ入り込んでいる。するとその青い流れ星がしろくまの耳にあった扉を開けてしまう。サンタクロースも小さくなってその中へ。その中は暖かい空間で、ワインとギターと暖炉が用意されていた。しろくまの夢の世界でゆっくりしたあと、その青い流れ星を借り、サンタクロースはえんとつのない家へもプレゼントを配って回る。戻ったサンタはしろくまと友達になる。

やはりそこまで心に響かなかった。
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さんしょうっ子 [文学 日本 安房直子 さ行]


風と木の歌―童話集 (偕成社文庫)

風と木の歌―童話集 (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2006/07/01
  • メディア: 単行本



きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/01/02
  • メディア: 単行本



なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



木の中に住んでいる「さんしょうっ子」。
彼女が住んでいる木が、ある日「じゃまっけだ」ということで切られそうになるが、すずなという娘のおかげで切られずに住む。
すずなは茶店の三太郎という男の子といつも遊んでいた。すずなと三太郎はさんしょうっ子が住む木の下でよくおままごとをして遊んでいた。

さんしょうっ子はお手玉が大好きで、すずながお手玉で遊んでいると、それを持っていってしまうことがよくあり、すずなはお母さんに「しようのない子だね、いくらつくってやってもなくすんだから。」といつも言われていた。
さんしょうっ子は時々、すずなと三太郎の前に姿を現して、三太郎の店でおだんごをもらったりしていた。

時は流れ、すずなも三太郎も大人になる。さんしょうっ子も大人になったのだが、木の精は大人になると人から姿が見えなくなってしまう。そのことにさんしょうっ子はまだ気がついていない。

そんなある日。すずなは見知らぬ人のお嫁に行くことに。相手はとなり村の大金持ち。一方三太郎は茶店を継いだものの、商売はうまくいかずどんどん貧乏に。すずなは嫁に行ってしまうし、商売はうまくいかないしで、気落ちしている三太郎を励まそうと、さんしょうっ子は彼に話しかけるが、すずなのことで頭がいっぱいの彼は気がつかない。

そんな三太郎に、昔こっそり持って行っていたお手玉をプレゼントする。これを福の神からのプレゼントだと思った三太郎とお母さんは、中に入っていたあずきで団子をこしらえ、これが大ヒット。店は大繁盛。

さんしょうっ子は、その後三太郎に会いにやってきて、話しかけるが、その声をすずなに似た声だと思う三太郎。悲しくなったさんしょうっ子は風に乗って行ってしまう。

さんしょうっ子はいなくなったサンショウの木は枯れてしまう。その枯れた木で、三太郎とお母さんはすりこぎを作る。

あまんきみこさんの「おにたのぼうし」や、浜田廣介の「泣いたあかおに」にも通じる、暖かくも少し悲しい美しい話。賞を取ったこともうなずけるかなりの名作。
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サリーさんの手 [文学 日本 安房直子 さ行]


きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/01/02
  • メディア: 単行本



れい子という女性が、線路沿いの安アパートを借りる。彼女はお人形を作る会社で働いており、工場でお人形の「手」の部分だけを作っている。工場の流れ作業の中で、布の手の部分をミシンで縫い合わせる仕事をしている彼女は、いつか自分ひとりで、ひとつの人形をこしらえてみたい、と考えている。

暗いアパートのせいか、だんだんとれい子の気持ちは沈んでいき、転職も考える。しかもやはり線路際ということでうるさく睡眠不足。夜には通らないはずの電車の音も、真夜中の3時に一回聞こえる。その時通る電車はいつもの電車に比べなんだか少し明るい感じがするのだった。

そんなある日、眠れないまま、「電車がとおるかしら」と思い窓を開けて待っていると、白い猫が線路を横切ったかと思うと、続けてオレンジの電車が音を立ててやってくる。電車の中には女の子がたくさん乗っているが、みな同じ顔。よく見ると彼女が工場で作っているサリーさんが乗っている。そして彼女が作ってあげた「手」をみんなが彼女に向かって振っている。

「あたしが縫ってあげた手、一生けんめいふってたわ」と思い、その日から彼女の顔色はみちがえるほど良くなり、目もかがやきだす.


真摯に働く人を励ます、安房直子さんの心の暖かさが伝わってくる名作。最後の言葉が素敵だ。

「大量生産でつくられる個性のとぼしい人形にも、それが人形であるかぎり、やっぱり、ほとばしる命があるのだなあと、れい子は思うようになりました。」
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サフランの物語 [文学 日本 安房直子 さ行]


うさぎ屋のひみつ (現代の創作児童文学4)

うさぎ屋のひみつ (現代の創作児童文学4)

  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 1988/02/22
  • メディア: ハードカバー



小さな女の子とおかあさんがまりなげをしていて、だんだん強く・速くしていくうちに、まりは遠くへ飛んでいってしまう。
女の子がまりを追いかけていくと、花畑と小さい家が見えてくる。まりは花畑でとまったので女の子も花畑へと入っていく。すると、おばあさんに、「わたしの花が、みんなだめになってしまうじゃないか」と注意される。花をつむのを手伝ったら許してくれるということになり、エプロンいっぱいにサフランの花をつむ。

つんだ紫色の花を乾かしそれを大きなお鍋に入れて煮るとどんどん黄色くなっていく。その黄色くなったもので黄色いリボンをおばあさんは作って女の子にくれる。楽しくてスキップしているうちに、女の子は黄色い鳥に変わってしまう。

なかなか帰ってこない娘を探しにお母さんがおばあさんの家にやってくる。おばあさんの家へうまく入り込み、娘が黄色い鳥にかえられてしまったことを見てとったお母さんは布でねずみを作り、そこに命を吹き込み娘が入れられている鳥かごをかじらせる。

なんとか逃げたお母さんと女の子。誰もいない野原で静かに目を覚ます。女の子の頭の上には黄色いリボンがついていた。

少し恐ろしいが、母の愛情を感じられる作品。
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