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サリーさんの手 [文学 日本 安房直子 さ行]


きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/01/02
  • メディア: 単行本



れい子という女性が、線路沿いの安アパートを借りる。彼女はお人形を作る会社で働いており、工場でお人形の「手」の部分だけを作っている。工場の流れ作業の中で、布の手の部分をミシンで縫い合わせる仕事をしている彼女は、いつか自分ひとりで、ひとつの人形をこしらえてみたい、と考えている。

暗いアパートのせいか、だんだんとれい子の気持ちは沈んでいき、転職も考える。しかもやはり線路際ということでうるさく睡眠不足。夜には通らないはずの電車の音も、真夜中の3時に一回聞こえる。その時通る電車はいつもの電車に比べなんだか少し明るい感じがするのだった。

そんなある日、眠れないまま、「電車がとおるかしら」と思い窓を開けて待っていると、白い猫が線路を横切ったかと思うと、続けてオレンジの電車が音を立ててやってくる。電車の中には女の子がたくさん乗っているが、みな同じ顔。よく見ると彼女が工場で作っているサリーさんが乗っている。そして彼女が作ってあげた「手」をみんなが彼女に向かって振っている。

「あたしが縫ってあげた手、一生けんめいふってたわ」と思い、その日から彼女の顔色はみちがえるほど良くなり、目もかがやきだす.


真摯に働く人を励ます、安房直子さんの心の暖かさが伝わってくる名作。最後の言葉が素敵だ。

「大量生産でつくられる個性のとぼしい人形にも、それが人形であるかぎり、やっぱり、ほとばしる命があるのだなあと、れい子は思うようになりました。」
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