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ねこじゃらしの野原 [文学 日本 安房直子 な行]


ものいう動物たちのすみか (安房直子コレクション)

ものいう動物たちのすみか (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/04/01
  • メディア: 単行本



副題に「とうふ家さんの話」とつけられた、とうふ屋さん一家が主人公となり、様々な動物と触れ合う作品。

1.すずめのおくりもの
ちいさなとうふ家さんのもとに、ある日早くに、すずめがたくさん並んでやってくる。大豆を差し出して「とうふを一丁、こしらえてもらいたいのです」という。すずめの小学校の入学式のお祝いに、二十五羽分ごちそうを作りたいというのだ。

おひとよしのとうふ家さんは、作ってあげることに。一時間おきに様子を見に来るすずめたち。いよいよとうふができて一服しようとすると、「このとうふで、あぶらげをつくってもらいたいのです。」と言われる。25羽いるから、13枚あぶらげを作ってくれれば、それを半分にするということで、13枚揚げてあげてわたしてやる。

夕方すずめたちがやってきて、無事新入生にお祝いを渡すことができたといい、朱塗りの金銀で花の模様が描かれた重箱をお礼にもらう。おかみさんとそれをみながら開けてみると、中に小さないなりずしがが一つ入っていた。


2.ねずみの福引き
ある日、とうふ家さんのもとにねずみが一匹やってくる。ねずみの福引き会があるから招待する、というのだ。代わりにとうふを一丁持ってきてくださいと頼まれる。

風の冷たい晩だったがせっかく誘われたので、とうふを一丁なべに入れて誘われた場所へ行く。福引会が行われているが、当たりはほとんどなく、ほぼ皆参加賞の線香花火をもらっている。福引き会も終わり、そのあとは寄せ鍋となる。持ってきたとうふを出そうとすると、すでにとうふ家さんの持ってきたなべを使って寄せ鍋が作られている。みんなで美味しく鍋を頂いた後は花火大会。素晴らしい花火を見ることができたとうふ屋さんは大満足。ふと周りを見渡すと誰もいない。とうふ屋さんも家に帰ることに。家に近づき、なべを忘れたことに気がつくが、しばらく貸しといてやろうと思う。ポケットに手をやるともらった線香花火が。おかみさんとふたりで線香花火でもしようと思うとうふ屋さんだった・・・。


3.きつね山の赤い花
とうふ屋さんの一番下の娘ゆみ子は5つ。ひとりで人形をおぶっておままごとをしていると、歌を歌っている歳もおなじくらいの女の子を見つける。よくよく見るとそれは人形をおぶったきつねだった。ふたりで楽しくおままごとをして、ご飯の時間となる。せっかくなので本物のとうふを使おうと、ゆみ子は家にとうふを取りに行く。両親ともに家にいなかったので、おとうふを一丁持ってくる。とうふを食べ終わると、きつねのお母さんが迎えに来る。そして「いいあぶらげが、どっさり手にはいったよ。ちょうど、とうふ屋の店、だれもいなくてね」という。よく見るとそれはゆみ子の家のあぶらげ。何か言おうとすると、きつねのお母さんが「マニキュアをしてあげる」とゆみ子に言って椿の花で綺麗に爪を塗ってくれる。「今夜は、おいなりさんでもつくろうね」ときつねの親子は帰っていく。さみしくなったゆみ子も走ってうちに帰っていく。


4.星のこおる夜
ある冬の日、とうふ屋さんに、灰色のマントにくるまり、灰色の影のような、青白くて、目の大きい娘がやってくる。山からとうふを買いに来たというのだ。よくよく聞くと木の精らしい。ありったけのとうふが欲しいというので訳を聞くと、「こおりどうふ」を作るという。こおりどうふというのは高野どうふのことらしく、星のこおる夜に干すと美味しくできるから、星のこおる夜である今日、もらいに来たのだというのだ。店に残った5丁のとうふをあげると、お礼に「こおった星のかけら」をプレゼントされる。おかみさんと暗いところで見ると星の光そっくりに青く光る。いつまでも二人はその光を見ていた。


5.ひぐれのラッパ
とうふ屋さんは、金のラッパを吹きながらとうふを売っている。その帰り道、すすきが原で、「とうふ屋さーん」と呼ばれる。振り返るけれど誰もいない。そのうち大勢の声が聞こえてくるが、やっぱり誰もいない。声のする方へ向かいとうとうがけの近くまできてしまう。そこでよく目をこらすと、灰色の着物を着た子どもたちが5~6人かたまって立っている。「ラッパを聞かせて」と頼まれ聞かせてあげる。ずっと吹いていると自分の力がラッパの音になって出ていくような気がしてくる。そのうち子どもたちを呼ぶ気味の悪い声が聞こえてきて子どもたちは帰っていく。
気持ちが悪かったのでもう二度とすすきが原では立ち止まらない、と決めたものの、天気の良い日にまた子どもたちの声に呼び止められラッパを聞かせて、と言われると吹いてしまう。そんなことが何日も続き、とうふ家さんはどんどん痩せて顔色も悪くなっていく。
おかみさんがおかしいことに気づき話をきき、ふたりで行ってみることに。ラッパを吹くと子どもたちが集まってくる。「ラッパをください」と頼んでいるようだった。恐ろしくなった二人はラッパをあげてその場を立ち去る。おかみさんが、そこは百年前、山崩れで村が潰れてしまったことを思い出す。
結局それから、子どもたちの声は聞こえなくなる。

6.ねこじゃらしの野原
とうふ屋さんのところに間違い電話がよくかかるようになる。よくよく聞くと、「ねこじゃらしとうふ店」と名乗るとうふ屋と間違えられているらしい。よくわらからないまま外へ出るとねこじゃらしでいっぱいの野原に出てしまう。するとラッパの音が聞こえてきて昔買っていたタロウが自転車にまたがってとうふを売っている。よくよく話を聞くと猫の電話局番のあとに、とうふ屋さんの電話番号をかけると「ねこじゃらしとうふ店」につながるのだが、猫たちは局番を間違えていることがわかる。
タロウに連れられ彼の豆腐屋へお邪魔する。そこで豆腐料理をご馳走になり、幸せな気分で帰る。

初めは結構ほんわかした話だが、だんだん恐ろしくなっていく。最後はほんわかしていて良い話。物語として結構楽しい話が多い。

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西風放送局 [文学 日本 安房直子 な行]


日暮れの海の物語

日暮れの海の物語

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2023/09/22
  • メディア: 単行本



白ねずみ、黒ねずみ、灰色ねずみの三匹がコーラスグループを結成する。
自分たちの歌を放送局に売り込もうと相談するが、先に洋服を作ったほうがよい、ということになり、皆で洋服屋へ向かう。

裏通りの洋服屋で、「ラジオの音楽番組に出ることになっています」と嘘をついて、タキシードを作ってもらう。

10日ほど経ってタキシードを受け取りに行くと、ネクタイやカフスボタンまで揃えてくれてあった。

作ってもらった服を着ていざ放送局へ行くが相手にされない。三匹がトボトボ歩いていると、風がぴゅーと吹いてきて、目の前に長い男のかげがうつる。そして「よかったら、うちの放送局で歌いませんか」と言われる。放送局へ案内すると言われ、その男についていく。

場面変わって洋服屋。洋服屋はラジオのダイヤルを回していると聞き覚えのあるコーラスが・・・。
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夏の夢 [文学 日本 安房直子 な行]


日暮れの海の物語

日暮れの海の物語

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2023/09/21
  • メディア: 単行本



ある若者が公園のペンチで座っていると、ひとりの老人に話しかけられる。
「このごろ耳鳴りがしましてねえ」と。

よくよく聞くと、耳の中にメスのセミを入れているという。とうもろこしやの屋台をやっている若者は、老人の耳の中に入っていたセミを受け取ると自分も耳に入れてみる。すると耳の中からセミの静かな声が聞こえてきていつの間にか眠ってしまう。

「とうもろこし一本くださいな」という声が聞こえる。それは一人の少女だった。小学校五年生の時、引っ越してきて三ヶ月でまた引っ越してしまった女の子だった。彼女は言葉がしゃべれない(おし:原文ママ)子供たっだ。
ある朝、庭で水をやっているその女の子に手を振ると彼女も笑い返してくれた。彼女が話ができるようになったら良いなあと思い、外国航路から帰ってきたおじにもらった外国製のドロップをあげる。しかしその後すぐに彼女は引っ越してしまい、そのままずっと会えずじまいだった。

そんなことが思い出されているうちに、「とうもろこし、一本くださいな」という声はどんどん膨らみ、女の子の客がたくさん訪れる。男は女の子達にとうもろこしを売ろうと起き上がると、女の子たちは森の方へとうもろこしの話をしながら行ってしまう。彼女たちを追いかける男。森の奥まで追いかけていくと星のように輝く一本の木を見つける。よく見ると、木になっているのは、彼が彼女に昔あげた青いドロップ。

そしてその木の横に立つひとりの少女。彼女に話しかけると、彼女は声を出して答えてくれた。「このドロップを食べたため」に話せるようになった」と。

そしてそのまま二人は結婚式へ向かう。宴会の部屋のドアを開けると・・・。

目を覚ました若い男。さっきセミを貸してくれた老人に気がつき、よくよく見ると実は木だった。

自然と交流し、疲れてしまった心を取り戻す幻想的な話。
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長い灰色のスカート [文学 日本 安房直子 な行]


白いおうむの森―童話集 (偕成社文庫)

白いおうむの森―童話集 (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2006/08/01
  • メディア: 単行本



8つの女の子と、4つの弟が川べりで遊んでいる。お父さんは上流で魚釣りをしている。

弟はカッコーの鳴き真似をしながら歩いているっぽいが、それは鳩の鳴き真似のようにしか聞こえない。

ふたりでそんな風にしながら、林の中の自然を満喫していると、鳩に似た鳴き真似が不意に消え、弟が突然緑の中にふっと消えてしまう。女の子は弟の名前を呼びながら必死に探す。

すると遠くの方から、弟の鳴き真似の声が聞こえてくる。そちらに目をやると長い灰色のスカートをはいた、大きな女の人が現れる。そのスカートは幾重にも重なったひだスカートで、その奥から弟の声が聞こえてくる。人さらいだと思った女の子は弟にこっちにくるよう呼びかけるが、反応はない。女の子は、大きな女の人に、弟を「サーカスへつれていくの」と聞くと、「サーカスならここにあるわよ」と言い、スカーたのひだを広げる。すると本当にサーカスの世界が広がっている。次に見せられたひだの中は雪景色。そこには親子の熊がいて、自分の方を見て、「あれ、食後にうまそうだ」と話をしている。急いで逃げた女の子。

すると再び女の人のスカートのひだが見え、弟の声が聞こえてくる。女の子は一枚一枚ひだをめくり弟を探す。真っ青な湖が広がる世界が見え、ほたるの光に誘われどんどん入っていく。弟の声も遠くで聞こえる。だんだん疲れてきて眠りそうになるが、ここで眠ってはいけないと、歌を歌う。すると男の人が一緒に歌っているのに気がつく。その人はさっきみたサーカスのピエロのおじさんだと気がつく。おじさんはつゆくさの明かりで照らすとと会いたい人に会えると言う。

さっそくつゆくさの明かりで道を照らし、川沿いを歩いていくと鳩にされた弟が!

気がつくと父が目の前にいる。
「もう少し長くねむっていたら、お前も山の中で死んでしまっただろう」と言われる。その言葉で弟が死んでしまったことをさとる。

幻想的で、身近な人の死になんとか物語を付そうとする、ある意味宗教的なものも垣間見える、すこし恐ろしい作品。
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