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君が夏を走らせる [文学 日本 瀬尾まいこ]


君が夏を走らせる(新潮文庫)

君が夏を走らせる(新潮文庫)

  • 作者: 瀬尾まいこ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/07/10
  • メディア: Kindle版



『あと少し、もう少し』という中学駅伝を描いた作品の、スピンオフというのか、その中の登場人物の一人にスポットを当てた作品。

小学校時代に分数がわからなくなり、勉強を投げてしまい、それ以来ちゃらんぽらんに、そして不良として生きてきた大田。中学で駅伝に誘われ、一生懸命何かに打ち込むことの楽しさに目覚め、必死で勉強をしたが、思うような高校受験の結果が得られず、やる気のない人間ばかりいる高校に入ってしまい、周りの状況に流されるかのようにだんだんやる気がなくなっていってしまった。

夏休みを控えたある日、突然昔の悪仲間の先輩から、1歳10ヶ月の娘の面倒を1ヶ月見て欲しいと頼まれる。

一生懸命子供と向き合う大田の姿がとても美しいし、その大田と真剣に向き合う娘の鈴香がとても可愛い。公園のママたちとの会話、大田が鈴香と向き合うことで分かっていく本当の自分の気持ち、そして偶然出会った昔の中学の陸上部の顧問上原との出会い。そうした一つ一つが大田を成長させていく。

前作でも顧問上原のファンだった私は結構彼女の登場は嬉しかった。

瀬尾まいこ作品は、本屋大賞を受賞した『そして、バトンは渡された』が号泣ものなどと言われているが、正直あまりピンと来なかった。しかし、この作品は、鈴香との別れの日が近づくにつれて高まっていく大田の寂しい思いの描写を読むうちに少しうるっと来てしまったし、いつまでもこの小説が終わらないで欲しいという感覚を久しぶりに味わえた作品だった。

彼女の作品の中では今のところマイベストだ。
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図書館の神様 [文学 日本 瀬尾まいこ]


図書館の神様 (ちくま文庫)

図書館の神様 (ちくま文庫)

  • 作者: 瀬尾まいこ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/11/08
  • メディア: Kindle版



「図書館の神様」と「「雲行き」が収録されている。二つに共通するのは、文化系の部活に所属している男の子が登場するところか。

この作品、文化系クラブを文系クラブと記している部分が結構あって、最後の方で一度だけ文化系クラブという表現になる。あと、~に「惹かれる」とすべきところを「引かれる」と記されていたりする。ちくま文庫だし校閲とか大丈夫なのかな、と思ってしまう。この作家、結構こういうのがある。さらに題名の「図書館の神様」だが、ネット上でだれかが指摘していたが、「図書室の神様」のほうが良い気がする。

まあ、それはさておき、「図書館の神様」の主人公清は頭痛持ちで体が弱いが、その分清く正しくまっすぐに生きてきた女性。バレーボール一筋で生きてきたが、高校時代のある事件をきっかけに、清く正しく生きることにくいじけてしまう。
何となく成り行きでなった、国語教師&文芸部顧問。そこで出会った文学青年との交流を通して、「清く正しく生きること」を考え直し、違った世界が開けてくる。

「雲行き」の主人公も頭痛持ち。母親の再婚相手とうまくいっていないが、あることをきっかけに少し距離が縮まる話。

私も、「清く正しく」なるべき生きていこうとしてきたし、ずっと頭痛持ちだった。さらに教師として仕事をしている。結構「図書館の神様」の主人公に共感するところが多くあった。
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卵の緒 [文学 日本 瀬尾まいこ]


卵の緒 (新潮文庫)

卵の緒 (新潮文庫)

  • 作者: まいこ, 瀬尾
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/06/28
  • メディア: 文庫



坊ちゃん文学賞を受賞した、表題作でありデビュー作と、「7's blood」という2作品を収録した作品。
どちらも血の繋がらない家族を描いた作品。

「卵の緒」は育夫という少年と鈴江君子という女性の親子関係、「7's blood」は七生と七子という父親が同じで、母親が違う男の子と女の子の話。

『そして、バトンは渡された」同様一人称がたりで、淡々とした感じで語られており、状況的には悲惨な状況なのだが、悲壮感がまるでないところが良い。

卵の緒がどこか前向きな雰囲気で終わるのだが、7's bloodは若干物悲しい感じで終わる。前者は「誕生」をテーマに、後者は「死」をテーマにしているところからもこの違いが生まれるのかもしれない。

ものすごく面白いという感じの作品ではないが、それなりに楽しめた。
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そして、バトンを渡された [文学 日本 瀬尾まいこ]


そして、バトンは渡された (文春文庫)

そして、バトンは渡された (文春文庫)

  • 作者: 瀬尾 まいこ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/09/02
  • メディア: Kindle版



本屋大賞を受賞し、映画化もされた名作と言われている作品。

いろいろ書評等を読んでも「涙が止まらない」とか「感動!」とかの言葉が溢れていて、かなり期待して読んだ。

親が何度も変わっても、その度ごとにそれぞれの親に愛され、Happy Endを迎えるという話。
初めは結構淡々と物語が語られていく。わざと自分の感情を押し殺すように生きてきたのでは、と考えさせられるような描写もあり、どこか人生を達観しているような感じが後半まで続いていく。

いよいよ結婚間近になって、色々な人々も本当の気持ちがわかってくるに連れて、主人公の気持ちもどんどん高まりを見せていく。

・・・

しかし、しかし、期待が高かっただけに、最後はあっさりだった。涙も出なかったし、すごく爽やかな感じにもならなかった。

確かに名作なのかもしれないが・・・。
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天国はまだ遠く [文学 日本 瀬尾まいこ]


天国はまだ遠く(新潮文庫)

天国はまだ遠く(新潮文庫)

  • 作者: 瀬尾 まいこ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/06/01
  • メディア: Kindle版



文庫版あとがきによると、著者が丹後地方の中学校での勤務した経験から生まれた作品らしい。

自殺を決めた女性が森の奥地へ行きそこで自殺をしようとするものの失敗し、宿屋の若い男性や周りの暖かい人々、大自然の恵みを受けることで、心を回復し、後ろ向きながらも街の中で生きていく思いをしっかりと持って旅立つ話。

小川糸作品のような、美味しそうな素朴な食べ物がたくさん出てきてとてもよかった。

途中、キリスト教の教会へ行く場面が有り、主人公の女性と宿屋の男性が話す場面で
「別に教会だけやない。神社も奉ってるで。」
  中略
「仏教徒であり、クリスチャンでしょ」
とあるのだが、神社は仏教徒は関係ないのでは?と思ってしまった。

著者もそうだが、出版社の校閲担当者等は気にならなかったのだろうか。
単行本から文庫本になる過程で直したりとかもなかったのだろうか。

まあいいや。とても心温まる話で、最後はお決まりの主人公の女性と宿屋の男性が結婚する、という形にならないのもよかった。
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ファミリーデイズ [文学 日本 瀬尾まいこ]


ファミリーデイズ (集英社文庫)

ファミリーデイズ (集英社文庫)

  • 作者: 瀬尾 まいこ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: 文庫



瀬尾まいこさんの、『あと少し、もう少し』が素晴らしい作品で、彼女のエッセイ集『ファミリーデイズ』も、評判が良さそうなので読んでみた。

彼女が、のんきな夫と結婚し、やんちゃな娘を授かり、娘の成長を見守る過程を綴った作品。基本的に時系列に並んでいる。

はじめの方は、夫との面白エピソードが満載だったが、娘が生まれてからのものは結構飽きてきて、最後は結構飛ばし読みだった。

ほかの小説を読んでみようとは思うが、エッセイはもういいかな、という感じ。
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あと少し、もう少し [文学 日本 瀬尾まいこ]


あと少し、もう少し(新潮文庫)

あと少し、もう少し(新潮文庫)

  • 作者: 瀬尾 まいこ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/09/18
  • メディア: Kindle版



中学駅伝を描いた作品。箱根駅伝を描いた三浦しをん作の『風が強く吹いている』に似た作品。
『風が~』は大学駅伝を描いているということもあり、悩みなども大人な感じがあるが、登場人物が中学生ということもあり、悩みが結構生々しく、中学生ならではの微妙な揺れ動く気持ちなどもよく描けている。

公立中学が舞台となっていることもあり、名物顧問が異動になってしまい、しょうがなく顧問になってしまった女性の美術教師で陸上ど素人の上原先生が非常に良い味を出している。

走順通りの章立てになっており、走っている様子と、それまでに至る時間が行ったり来たりしながら重層的に語られており、非常に深みのある作品となっている。各走者が次の走者にバトンを渡す描写は全ての章で涙が出てしまった。そして皆がそれぞれの立場から部長の桝井を思う気持ちが非常に美しい。

解説をなんと三浦しをんが書いており、彼女が非常に良いことを書いている。

p.360
「私たちは決して、決して、一人ではない。あなたがだれかを思うとき、だれかがあなたを思っている。必ず。そう信じて前進する姿は、なんと激しく崇高なのだろう。もし、そのがむしゃらな姿を嗤うひとがいるとしたら、そのひとは「生きる」ということを知らないのだ。」

中島みゆきの「ファイト!」にも通じる非常に良い作品だと思った。
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