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A changed Man, and Other Tales [文学 イギリス Thomas Hardy]


A Changed Man, and Other Tales

A Changed Man, and Other Tales

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Createspace Independent Pub
  • 発売日: 2018/03/31
  • メディア: ペーパーバック



A Changed Man
 ある町に、軍隊の一団がやってきてそこに居を構える。その軍隊は幽霊に取りつかれているという噂がその町に流れる。その噂を確かめようと、人々がその隊の大佐、30歳くらいのハンサムなMaumbryという人物の所に行き確かめるが、事実は認めるが詳しいことは話そうとしない。軍隊が居を構える場所が見える小高い丘に住む、足が不自由な中産階級の男が、Maumbryと仲良くなる。その中産階級の男の家の傍に住むLauraという若く美しい女性をMaumbryは見初め結婚する。二人は仲良く暮らしていたが、そんなある日町に新しい牧師がやってくる。その牧師は礼拝の邪魔になるからと、日曜の午後に行われていた軍隊による演奏会をやめて欲しいとMaumbryにお願いする。初めは不満だったが、この牧師と話をし納得して演奏会はやめる。Maumbryと牧師はこれをきっかけにどんどん仲良くなっていく。月日は経ち牧師が他の教区へ移動となる。そしてその後死んでしまう。その死にショックを受けたMaumbryは軍隊をやめて牧師になるとLauraに伝える。Lauraは反対するがMaumbryは軍隊をやめ牧師養成学校へと入学する。
 その後Maumbryは牧師となって町に帰ってくるが、Lauraの心はだんだんと離れていく。Lauraは足が不自由な中産階級の男と親しくなる。そんな中この町にコレラが流行し出す。牧師としてMaumbryは町の人々に献身的に尽くすが、妻のLauraをコレラに感染させるわけにはいかないと、別の場所に移動させる。その場所に軍隊の一団がやってきてその中の一人、若いMr. VannicockとLauraは急激に親しくなり二人で駆け落ちをはかる。駆け落ちをして町を出ようとしている最中、Maumbryが必死でコレラ患者達に対応しているのが目に入り、Lauraは駆け落ちをやめMaumbryを助ける。しかしMaumbryはその後すぐに死んでしまう。VannicockはシングルになったLauraに正式に結婚を申し込むが断られる。Lauraはその後ずっと結婚せず静かに息を引き取る。

脚が不自由な男が登場する意味がイマイチわからない。そして内容ももう一歩な気がする。

The Waiting Supper
 金持ちの女性Christineは父親と二人暮らし。彼女には農家の恋人Nicholasがいる。NicholasはChristineと結婚したいのだが、貧乏で教養もない自分に自信がない。そこで世界に出て、教養を身につけたいと思うのだが金もない。さらに世界に出てChristineを置いていってしまうと他の男に掠めとられてしまうのではと心配でならない。そこで彼はこっそり結婚証明書のようなものを教会で得て、彼女とこっそり結婚することにする。こっそりと結婚することに同意したChrisitineはMr. Bealandなる人物に手紙を書き、次の日の朝教会に来て欲しいと頼み了承を得る。
 翌朝、Bealand氏に頼んで結婚させてもらおうとするが断られる。この場面ShakespeareのRomeo&Julietを豊富とさせるシーンなのだが、牧師の断る理由もロミジュリを意識した感じで面白い。

p.20
“It is full of crises and catastrophes, and ends with the death of one of the actors. The tragedy of marriage, ~”

 その後二人は納得し、駆け落ちしないことも近い帰っていく。その日ちょうど、Christineの父の知り合いの家でPartyがあり、Christineも手伝いに行く。そこで知り合ったMr. Bellstonに心を寄せられてしまう。Partyでダンスが始まりそうなとき、ChristineはNicholasの姿を発見する。彼はChristineがこのPartyに参加することを知り、わざわざ遠くから徒歩でやってきていた。二人でDanceをしてPartyは終わる。家に帰って父親に呼ばれたChristineは貧しいNicholasと付き合ってはいけないと言われ、Bellstonから結婚の申し出があったことを伝えられる。心乱れるChristine。次の日Nicholasと会ったChristineは彼から、二人が教会でひそかに結婚しようとしたことが噂になっていると伝えられる。これを聞いた彼女は、彼にしばらく会わず、旅に出て名を上げてくるように伝える。別れた後、家に戻ったChristineは再び父に呼ばれる。二人のことが噂になっていることを伝えられ、二度とNicholasに会わないよう告げられる。色々なことがあり、Christineの気持ちは何となくNicholasから離れていく。それを察したNicholasは町を去る。
 15年後、一旗揚げたNicholasは町へ帰ってくる。そこでChristineと再会する。Christineは数年間Nicholasを待っていたが、結局Bellstonと結婚し、今は貧しい生活を送っている。Bellstonは結婚後ChristineにDVを行っていたらしい描写もあり、さらに彼は結婚後数年して、Christineの実家の金を使って周遊の旅に出て帰ってきていないことがわかる。一説によるとどこかで死んだ可能性もある。そこでNicholasとChristineは結婚することに決め、それを新聞に発表する。それをIrelandで見たBellstonが、結婚式前夜、彼らの元へ帰ってくる。使いの者が先に来て一時間後に本人が到着する、とChristineは伝えられる。その後Nicholasがやってきてその事実を知り、結婚はとりあえず取りやめにする。しかし待てど暮らせどBellstonは姿を見せない。結局彼は帰ってこないまま17年が過ぎる。採取的に結婚するのか?という余韻を残して終わる。

Nicholasの純愛が痛すぎる。Hardyは男性が一筋に相手の女性を想う作品が多い気がする。読んでいるときは、結婚式直前帰ってきたBellstonを逆上したNicholasが殺してしまうという結末を予想してただけに、何となく平和な感じで終わって良かったのだが、二人はさっさと遠くへ行って結婚してしまえばよかったのに、と思ってしまう。

Alicia’s Diary
 題名通り、Aliciaの日記。若くて子供っぽく元気な妹Carolineは母と共に人生経験を積もうとフランスのParisに向かう。そこでM. de la Festeという若い男性と出会い婚約する。そんなある日、フランスで母が病気になり死んでしまう。父親が母の遺体とCarolineを母国へ連れ帰る。母は生前自分が死んでもCarolineとFesteの結婚の話を進めるように言っていたが、Carolineはショックで結婚話は進まない。しかし段々と落ち着いてきていよいよ結婚に向けて話を進めようとするが、肝心のFesteがイギリスへやってこない。
 ついにやってきたFeste。かなり格好良く教養ある人物で、子どもっぽいCarolineよりも姉のAliciaとの会話の方が楽しくなってしまう。段々と惹かれあうAliciaとFeste。結局Festeが告白するもAliciaは断る。Festeはイタリアのヴェニスへ。Festeが自分と結婚せず遠くへ行ってしまったことを悲しむCarolineは病気になってしまい死にかける。AliciaはFesteを呼び寄せ、とりあえず結婚の約束だけでもCarolineにしてあげてくれと頼み、それを彼は受け入れる。こうしてCarolineの体はすっかり回復する。
 その後Festeはヴェニスから帰ってこず便りも途絶える。そこでCarolineはFesteを追ってイタリアへ。AliciaもCarolineを追ってイタリアへ。ホテルで会った三人。AliciaとFesteは今までのことを正直に話す。FesteはAliciaに、Carolineと自分に結婚して欲しいのか、と尋ねる。AliciaはCarolineと結婚することを勧める。
P60
“You belong to her(Caroline) – how can I do otherwise?”
“Yes; it is so; it is purely a question of honour, he returned. “Very well then, honour shall be my word, and not my love.”

こうしてCarolineとFesteは結婚するが、その日Festeは外へ行ったきり帰ってこない。すると彼が湖で死んでいるのが発見される。事故だったとされるが・・・。

かなり哀しい悲劇的な話。

The Grave by the Handpost
軍隊生活をしていた父親が、穏やかで平和的な性格を持つ息子も軍隊にいれ生活を安定させてやろうとしたことによって起こってしまった悲劇の話。地元で静かに商売を営みたかった息子は父親の意向に沿って軍隊入りし、インドへ送られる。しかしそこでの生活が苦しいことを手紙で父親に訴える。それを読んだ父親は自分のやってしまったことを悔い自殺する。自殺した人間の墓は作れないというイギリスの掟の元、とりあえず埋葬だけはされる。父の死を知った息子は墓石を作って建ててもらおうとするが自殺者ということで墓石は埋葬されたところに置かれず放っておかれてしまう。息子が久しぶりに帰ってきても墓石は建てられていない。結局息子も自殺し、彼は父と別の所に埋葬される。

救いようのない悲しく暗い話。

Enter a Dragoon
 Selinaという女性が、軍隊勤めのJohn Clarkという男性と婚約する。Selinaの父はこの結婚に反対し正式に結婚しないままJohnは戦地へ赴く。Johnが戦地に行った後SelinaにJohnnyという子供が生まれる。Selinaはある日、彼が戦地で亡くなったという情報を目にする。その情報はJohn ClarkではなくJames Clarkだったのだが、書き間違いだろうということで彼は死んだものと考えていた。その後、Mr. MillerがSelinaに告白し結婚することに。まさに結婚前夜、Johnから手紙が届き、彼が帰ってくる。SelinaはMr. Millerを愛していたが、高潔な彼女はJohnと結婚することを選び、Mr. Millerもそんな彼女の心を尊重する。色々ダンスをしたり酒を飲んだりしているうちに、Selinaが実は他の人と結婚準備をしていたことがJohnにわかってしまう。
 SelinaがMr.Millerとの話をJohnにしている間に、Johnの顔色がみるみる悪くなりそのまま死んでしまう。死因はよくわからなかったが、Selinaは自分がMr.Millerと結婚しようとしていたせいだと考え、自責の念に駆られる。色々ないきさつを知っている村の人の中でいるのも辛くなり、彼女は息子のJohnnyと少し離れた町で青果店を開きそれなりに生活できるようになる。2年弱経ち、Mr.Millerがもう一度結婚の申し込みに来るが、彼女は断る。その後Mr.Millerは別の女性と結婚したことが風の便りで伝わってくる。
 SelinaはJohnのお墓を定期的に訪れ、花を捧げていたが、そんなある日子供を連れた女性が、Johnの墓を掘っているのを発見する。彼女を問い詰めたところ、彼女はJohnの正式の妻であり子供は彼の子供だとわかる。

これも何とも言えない後味の悪さがある作品だ。


A Tryst at an Ancient Earth Work
 一人称の語りの正直よくわからない作品。

What the Shepherd Saw (A Tale of Four Moonlight)
 一人の若い羊飼いが丘の上に住んでおり、年老いた羊飼いが彼の元を毎晩訪れる。
 ある日、老人の羊飼いが帰った後、眠れずに外を眺めると、ある女性とある男性が話をしている。女性は人妻で、男性は昔の恋人。彼女が結婚した後も想いが経ち切れず彼女を呼び寄せ口説いている。女性の夫は、今日、明日、明後日と帰ってこないらしい。そこで明日も会いたいと男は頼むが女は断る。しかしどうしても男性が放そうとしないので、女性は明日も来ることを約束しその場を立ち去る。二人が立ち去った後怪しい男の人影が・・・。
 次の夜、最後にいた男性が現れ隠れる。その後昨日口説いていた男が現れ、先に来ていた男性に殺され、埋められる。その男性は家に戻り自分の妻に迫るが、妻は昨日のことを淡々と話す。
 さらに次の夜、女性は夫に頼んで、男がまた来ているはずなので、二度と自分に近づかないよう冷静に話をしてくれうよう頼む。夫は嫌がるが結局約束の場所へ。当然彼は来ない。そこへあの若い羊飼いが通る。夫は昨日この場所で何かを見なかった聞くが、羊飼いはうまく答えられない。妻を先に家に帰し、夫は羊飼いの元へ。そこで彼は殺人を見ていたことを知るが、教育を受けさせることと引き換えに決して昨晩のことは話さないことを誓わせる。
 それから22年後、羊飼いは夫の執事になっている。そんなある日、年老いた羊飼いが死ぬ。彼は22年前に見たことを警察?に話してしまったらしい。結局夫は両親に呵責にさいなまれ、夢遊病のようになり、階段から落ちて死ぬ。元羊飼いの執事もその後すぐに死ぬ。

結構暗く悲しい話。

A Committee-Man of ‘The Terror’
 フランスからイギリスへ来た男が、街を歩いていると、女性が自分を見て失神するのを目撃する。彼女を助けるが彼女は彼に敵意むき出し。後日彼女の元を訪ねると、彼女の親は元貴族で、フランス革命で彼女以外の肉親はすべて殺されてしまっていたことが分かる。男性はその当時革命委員会の一人で、それを知っていた彼女は彼を憎んでいる。二人は街でしばしば顔を合わせる。彼女は相変わらず敵意むき出しだが、彼は彼女に惹かれていく。ナポレオンによるフランスのイギリス攻撃などがありフランス人としてイギリスに居づらくなった彼は、彼女にプロポーズし、一緒にカナダへ行こうと誘う。悩んだ結果彼女はプロポーズを受ける。
 彼女の唯一の友人だったフランス時代の女性にこの結婚を知らせると、友人は大反対。結婚式間近だったが悩んでいる気持ちを彼に伝える。彼は少し話をしてその日は自分の家に帰っていく。
 色々と悩んだ彼女は、彼との別れを決意し夜間に住んでいた宿を抜け出す。しかし馬車の中でさらに考えた結果やはり彼と結婚しようと思い直し今来た道を戻っていく。宿につくと彼からの手紙が残されている。友人からの手紙で悩み、過去の遺恨を残しているのであればやはり結婚できない、ということで彼は既に彼女の元を去っていた。結局彼女は生涯独身で死んでいく。

ハーディー得意の男女のすれ違いを描いた作品。しみじみとした感じがある。


Master John Horseleigh, Knight
 ある兄妹がいて、兄が海に2年間仕事へ行っている間、妹は裕福で優しい商人と結婚。しかしこの商人がすぐに死んでしまう。妹は前夫の死から半年も経たず別の男と結婚するつもりでいる。だが、この男は通い婚のような感じでいまいちはっきりしない。そんなある日、そんな事情を知らない兄が久しぶりに海から帰ってきて妹の前に姿を見せる。ごちゃごちゃやっている間に、子どもを連れたある女性が妹の前に現れる。
 じつは今の夫はこの女性と結婚しており子供もいた。しかし彼女たちの元を彼は去ってしまう。そのまま夫は死んでしまったものと考えていたが実はフランスで生きていた。彼は彼女たちの心を乱したくないらしく姿を現さなかったらしい。

イマイチよくわからない話。

The Duke’s Reappearance –A Family Tradition
 娘二人と一緒に住むある男の元に、真夜中ぼろぼろの姿をした男が自分をかくまってくれと尋ねてくる。彼はぼろぼろの男を一晩泊めてやり心を尽くした世話をする。しかし果樹園でその男が娘の一人に無理やりキスしようとしているのを目にし、冷静に話をしお引き取り願う。しかしこの男は実は偉い人だった、という話。

これも良く分からない話。

A Mere Interlude
島に住むBaptistaという娘が、先生になる教育を受け先生になる。そんな中、父親の友人であるMr. Heddeganという裕福な商人との結婚話がもちあがる。彼はBaptistaよりも20歳以上年上だが、金持ちだし教師という仕事もあまり好きではない彼女は結婚を承諾し、自分の生まれ故郷島へと戻ろうとする。
 結婚式は木曜日。前の週の土曜日、島へ渡るための船に乗ろうとしたところ、時刻表が変わってしまっており、帰れない。船は火曜日まで出ない。しかたなく近くの宿にしばらくいようとしていたところ、昔の友人Charlesと偶然出会いプロポーズされる。初めは断るが熱心に求婚され月曜日には結婚してしまう。結婚後海に出たCharlesはそのままおぼれてしまい帰ってこない。しかたなく火曜日の船に乗り家へ帰るBaptista。Charlesのことを伝えようとするが皆がMr.Heddgeganとの結婚を祝福してくるので言い出せない。このあたりのうじうじした葛藤が『テス』の中間部を思わせる。
 結局二人は結婚。1か月ほど経った頃、偶然BaptistaとCharlesが結婚していたことを知る男がBaptistaと出会い、彼女が別の男性と結婚していることを知り、金などをせびりに来る。2度は我慢したが段々エスカレートする要求に耐えられなくなり、BaptsitaはMr.Heddgeganに真実を告白する。彼は怒るどころか自分もかつて結婚しており、娘が四人いて全員読み書きができないので、彼女らを教育して欲しいと頼まれる。初めは嫌がっていたBaptistaだったが時が経つうちに楽しくなり、最終的には幸せな家族生活を営むようになる。

Hardyにしては珍しくとてもHappyなストーリー。
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Life's Little Ironies [文学 イギリス Thomas Hardy]


Life's Little Ironies (Wordsworth Classics)

Life's Little Ironies (Wordsworth Classics)

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/01/01
  • メディア: ペーパーバック



An Imaginative Woman
夫、子どもと共に田舎の宿に泊まりに来た女性が、普段そこに住んでいる詩人に興味を抱き、どんどん心酔していく。自分の家に帰った後、色々な伝手をたどり、その詩人を自宅に招き会えそうになるが、結局会えず。その後も会おうと努力を続けるが、最終的には詩人は自殺してしまい、その女性も後を追うように死んでしまう。
結末は悲しい話だが、全体的にユーモアにあふれ面白い話。

The Son’s Veto
あるお屋敷で働く女性が、そこの主人に物を運んでいた時に転んでしまい、足に障害を負ってしまう。そのことがきっかけになったのかは分からないが、その家の主人に結婚を申し込まれる。既に女性は気の良い幼馴染に結婚を申し込まれていたのだが、その家の主人と最終的には結婚し、子どもをもうける。しかし召使をしていたということもあり、妻になったその女性はあまり教養がない。一方の息子はかなりの教養を身につけ成長する。夫が死んだ後も、子どもの自分の教養の違いに苦しむ女性。そんなある日、昔自分に結婚を申し込んでいた幼馴染を見かける。再び仲良くなった二人は結婚を誓い合うが、女性は息子に認めてもらってから、と言って結婚を伸ばす。しかし、息子は母の再婚を認めず、最終的には女性は死んでしまう。

これも悲しい結末なのだが、そこまで悲壮感はない。



For Conscience’ Sake
ある男性がある女性と婚約し、子供までもうけるが、結婚しないままに彼女の元から逃げる。何十年もたち、彼女を置いて逃げたことに良心の呵責を感じ、彼女を探し出し結婚を申し込もうとする。一歩の彼女は娘と共になんとか頑張り、歌とダンスの教室を開き、地元ではそれなりに地位を確立していた。娘はある若者と結婚真近なのだが、母子家庭ということもあり若干反対されている。そんな中この男が女にプロポーズする。一度は断るが、娘の結婚がうまくいくかもしれないと説得され最終的には結婚する。しかし、娘の父親が実は再婚したこの男だ、ということが娘のフィアンセに知られてしまい、破談になりそうになる。この状態に心を痛めた男は、彼女たちに財産を残し、姿を消す。

何故初めに結婚せず、再び結婚しようとしたのかイマイチ細かく描写されていないのだが、あまり共感できないシチュエーションでもう一歩だった。


A Tragedy of Two Ambitions
息子二人に大学教育を受けさせたいと頑張っていた母親が死んでしまうが、母親の意志を何とか尊重しようと学問を続け、牧師と教師になった二人の息子。牧師となって初めて赴任した地に、初め慣れるまで身の回りのことを手伝おうとやってきた妹。

On The Western Circuit
叔母さんの家にやってきた女性が、その来る途中で知り合ったジェントルな男性と恋に落ちる話。注によるとwestern circuitとは弁護士(裁判官?)が、自分の区画以外の所を廻って裁判を行うことなのか?男性はその弁護士だか裁判官で、女性と知り合った場所にとどまっていることができず、再び帰ってくることを誓い、手紙を出し合うことを約束する。しかし女性は読み書きができず、手紙を叔母さんに書いてもらうことに。この叔母さんは結婚しているのだが、自分の結婚に満足いっていない。「結婚しないくらいなら悪い結婚をした方がよい」という親の信念のもと結婚してしまった女性でかなり後悔している。そしてこのジェントルな男性にほのかな恋心を抱いている。
結局女性は妊娠のため(?)、田舎に帰ることになり、叔母さんとは離れ離れに暮らすことになる。これによって、代わりに手紙が書けなくなってしまうのだが、叔母さんは自分の言葉をそのまま手紙に書いて、その男性と文通を続ける。
その男性は、手紙の中にあふれ出る教養と品格にどんどん惹かれていく。結局男性と女性は結婚するのだが、結婚後すぐ、手紙は叔母さんが代筆していたことがすぐにばれる。男性は叔母さんが手紙を書いていたことを知り、彼女と一瞬だけ顔を合わせ最初で最後のKissをする。階級差、教養といったテーマが書かれたほのかにさみしいこの作品。結構面白かった。

最後の男性のセリフが何とも悲しい。
p.95
‘Reading over all those sweet letters to me signed “Anna”,’ he replied with dreary resignation.

To please his wife
船乗りの男が、長い船旅を終えて自分の故郷に戻ってきて教会で感謝の祈りをささげる。協会からの帰り道、二人の女性を見つける。そのうちの一人Emilyと段々と良い関係になっていくが、段々ともう一方のJoannaと親しくなり婚約する。しかしJoannaは金持ちになりたくて、船乗りの男が結婚相手としてふさわしくないのでは、と考えEmilyに譲ろうとEmilyの家へ向かう。そこで、男とEmilyが話をしているのを耳にしてしまう。「Joannaは自分のことを本当には愛しておらず、実は結婚を望んでいない、自分が本当に愛しているのはEmilyだ」と男がEmilyに話しているのを聞き、逆に悔しくなってしまい、男が婚約解消の手紙を送るが、Joannaは拒否。結局男とJoannaは結婚する。二人は食料雑貨店を経営し、男の子が二人できるが暮らし向きは良くならない。一方Emilyは裕福な商人と結婚しどんどん暮らし向きは良くなる。貧乏で子供たちを大学にも行かせられないと嘆く妻を見て、男は海に出て金を手に入れることとする。金持ちになって男は帰ってくるが、それでも妻は満足しない。結局男は息子二人を連れて海に出る。しかし三人とも帰ってこない。Joannaは落ちぶれてしまう。

かなり教訓的な話で、日本昔話的。結構読みやすく面白かった。


The Fiddler of the Reels
Nedという男性に求婚されていたCar’lineという女性が、Mopという流し(?)のヴァイオリニストの音に心惹かれてしまい、そのままそのMopに心まで奪われてしまう。結局Nedは結婚を断られLondonに一人向かう。それから4年たち、Car‘lineから手紙が届き、自分と結婚して欲しいと請われる。まだCar’lineを愛していたNedは彼女がLondonまで出てきてくれるならという条件付きで結婚を承諾する。Car‘lineが電車に乗ってはるばるやってくるのを迎えるNed。感動の再開の後、ふと気が付くとCar’lineは小さな女の子を一人連れている。その子はMopの子供だった。Nedは悩むが結局Car’lineと結婚。二人はしばらく子供と共に仲良く暮らす。やはり地元で暮らした方が良いだろうということで、生まれ故郷に戻る。その途中に入ったMotelでMopを見かけるCar’line。彼がヴァイオリンの演奏を始めると一気に心が持っていかれてしまう。ヴァイオリンの音に合わせて踊り続けるCar’line。気が付くと、その場所にはMop, Car’line, 娘だけになっている。踊り疲れて倒れてしまったCar’line。気が付くとMopは娘をさらって逃げてしまっていた。そこにNedが登場する。彼は血のつながりはないが、娘に深い愛情を寄せており、必死に探すが見つからず・・・。

結構哀れで悲しい結末。


A Few Crusted Character
◎Tony Kytes, the Arch-Deceiver
Tonyというモテる男がいたが、かれはMillyと結婚することに決め婚約する。そんなある日、街から家への帰り道、昔の彼女Unityと出会い馬車に乗せてあげる。そこで彼女に再び心惹かれてしまう。そんなことをしているうちに婚約者のMillyに出会う。Unityと一緒にいるところを見られてはまずいと思い、Unityを場所の後ろに隠す。Millyを乗せはしっていると、初恋の人Hannaに出会う。何故かここでもMillyを前に隠し、Hannaを乗せる。話をしているうちにHannaに心惹かれ結婚を申し込んでしまう。そんなことをしていると、Tonyの父親が見える。Hannaに馬車をまかせ、父親と話をする。父親はMillyとちゃんと結婚するよう強く薦める。そんなことをしていると馬車がどんどん行ってしまう。中では三人の女性が喧嘩をしていた。何とか馬車に追いついたTonyは馬車に乗り込み、Hannaになぜか結婚を申し込む。断られる。次になぜかUnityに結婚を申し込み断られる。残ったMillyと気まずい雰囲気になりつつも結婚を申し込み了承され二人は結婚する。ドタバタ劇でくだらない話。

◎The History of the Hard comes
Tonyの結婚式での話。従妹同士のJamesとSteveは、それぞれEmilyとOliveと婚約している。JamesとEmilyはインドア派、SteveとOliveはアウトドア派。結婚真近だった二つのカップルだったが、Tonyの結婚式で、お互い別の相手と踊っていたところ気分が盛り上がってしまい、実際にはSteve&Emily, James&Oliveという組み合わせで結婚する。数年はうまくやっていたが、段々とインドア、アウトドア派の性格の違いで違和感を感じだす。そんなある日、海辺に4人で行く。船で漕ぎ出そうというSteveにOliveが賛成。JamesとEmilyは岸辺で待つことに。James達はお互いインドアでアウトドア派のパートナーに若干ついていけないことをお互い告白。そんなことをしているうちにあたりは暗くなっていく。それでもSteveたちは帰ってこない。結局二人は波にのまれ死んでしまっていることがわかる。JamesとEmilyは1年半後結婚。正直これもくだらない。

◎The Superstitious Man’s Story
幽霊話or幽体離脱の話? 正直もう一歩。

◎Andrey Satchel and the Parson and Clerk
Janeという女性とAndreyという男性が結婚することになっている。JaneはAndreyより年上で、彼が他の女に取られてしまうのではないかと気が気でなく、一刻も早く結婚してしまいたい。そんな結婚式当日、Andreyは酔っぱらって足元もおぼつかない状態で教会にやってくる。牧師はそんな状態では結婚させられないといい、一度帰るようにAndreyに言う。しかし一度帰ってしまうと二度と現れないのではと心配でならないJaneは自分たちは教会に残るから牧師が一度帰って酔いがさめるであろう2時間後にくらいに戻ってきて欲しいと願う。しかもその2時間の間にAndreyが逃げてしまうと困るので、自分たちを閉じ込めて欲しいとお願いする。二人を閉じ込めた事務員と牧師は一度帰る。そこで馬を散歩させてほしいとある人にお願いされ、二人は馬を散歩させているうちに時間を忘れどんどん奥まで行ってしまい帰れなくなってしまう。次の日、JaneとAndreyを閉じ込めておいたことを思い出した二人は急いで帰る。震えながら待っていた二人は最終的に無事結婚する。

◎Old Andrey’s Experience as a musician
前話に出てくるAndreyの父親の話。クリスマス週、聖歌隊(?)に誘われたのかよくわからないが、歳を取っているので参加は辞退したがその代わりにヴァイオリンで参加しようとした話?あまりよくわからない。短いし面白くなかった。

◎Absent-Mindedness in a Parish Choir
これも聖歌隊&音楽隊の話?よくわからないしつまらない。

◎The Winters and the Palmleys
若い美しい女性が二人いて、ふたりはお互いライバル的に競い合っている。一方の女性がつきあっていたWinterなる男性をもう一歩の女性が奪って結婚してしまう。二人の間には男の子ができる。数年後、奪われた方の女性もPalmleyという男性と結婚し息子を儲けるが、貧乏生活。Palmleyはその後死んでしまい、Palmley家の息子はWinter家の下働きのようなかたちで雇われる。ある日冬の寒い日お使いに出されそれが原因で死んでしまう。Palmleyは復讐を誓うができないまま数年が経つ。
そんなある日、Palmleyの元に都会育ちの美しい姪っ子がやってきて一緒に住む。Winter家の息子は彼女にひとめぼれし付き合い婚約する。しかし都会育ちの彼女に今のままの自分ではふさわしくないと思い一念発起し農家として独り立ちしようと地元を離れる。離れた土地から彼女に手紙を送り続ける。しかし学がない彼はスペルミスも多くまともな手紙が書けない。それに嫌気がさした彼女は他の男性と婚約してしまう。戻ってきた彼は、ふとしたことから彼女が婚約した男性の手紙を目にし「これはかなわない」とあきらめる。しかし自分が彼女に送ってしまった手紙が恥ずかしくてならず何とか返してもらおうとするが、彼女は返さない。しかたなく夜、彼女の家に入り込み盗み出す。しかしその手紙の入っていた箱にはお金も入っており、すぐに強盗犯として捕まり、何故か死刑判決を受け死ぬ。こうしてPalmleyの復讐は意図せず成し遂げられる。

正直後味の悪い作品。

◎Incident in the Life of Mr George Crookhill
みすぼらしい格好をしてみすぼらしい馬を連れたGerogeは自分の家に帰っている。そこで背の高いちゃんとした格好をした格好良い馬を連れた若い男に出会う。帰り道で仲良くなった二人は同じ宿に泊まる。朝起きたGeorgeは出来心から、若い男の服を着る。そこにお財布が入ったいたのだが、さすがにお財布を持っていくのは悪いと考え、机の上に置く。その格好のまま彼の馬に乗り去る。しかし実はこの若い男は強盗犯だった。彼と間違えられたGeorgeは捕まり連行される。このまま刑務所か、と思ったが誤解は解け解放される。

正直これもくだらない感じ。

◎Netty Sargent's Copyhold
相続の話?
もう一歩。

最後の連作短編集、A few Crusted Charactersはくだらない作品ばかりだったが、他の作品はそれなりに楽しめた。

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Wessex Tales [文学 イギリス Thomas Hardy]


Wessex Tales (Wordsworth Collection)

Wessex Tales (Wordsworth Collection)

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/04/01
  • メディア: ペーパーバック



久しぶりにThomas Hardy作品を読んだ。彼の代表的な長編はほぼ読んだので、結構定評のある短編にも手を出してみた。

1. The Three Strangers
大雨のなか、のどかな田舎町で行われている子供の誕生を祝うパーティーに、見知らぬ男が順番に三人訪れる。パーティーに参加している皆が知らぬ男ばかりなのだが、雨宿りという名目と、お祝いということもあり誰も追い出すことはない。勝手に酒を飲んだり、部屋の端っこで静かにしていたりと様々な行動をとっているのだが、そこに翌日死刑になる予定の男が脱走したという知らせが届く。パーティーに参加していて人間たちは大騒ぎとなり、皆でその犯人を探すが・・・。

話の展開が読めそうで読めず、結構面白かった。

2. A tradition of Eighteen Hundred and Four
フランスに近いある港町での話。ナポレオン時代の話で、実はナポレオンがこの町に偵察で小さな船に乗って来ていたという話。とっても短い短編。簡略化されたものを昔英語のテキストで読んだ気がする。

3. The Melancholy Husssar of the German Legion
結婚を約束したのに、結婚式前に「必ず帰る」と言い残し何処かへ行ってしまった婚約者はひたすら待つ女性の話。彼女の前に、何故かイギリスの軍隊に一員となっている、ドイツ人の男が現れる。二人は恋に落ち、駆け落ちをして、故郷ドイツに戻り穏やかに暮らそうと約束する。そして駆け落ちの日。女性が相手のドイツ人を待っていると、婚約者が現れる。婚約者は女に会いに来たと友人に語っているのが聞こえてくる。それを聞いた彼女は駆け落ち相手の男性に、「やっぱり一緒にドイツにはいけない」と告げ、自分の家に帰る。そこで婚約者と結婚しようとするのだが、告げられた言葉は「もうすでに結婚している」というもの。その後、脱走したドイツ人がつかまり死刑になったという知らせが・・・。
結構悲しいが読み応えのある作品。

4. The Withered Arm
けっこう有名な話らしい。ある農夫が美しい女性と結婚することになる。彼らは馬車に乗って田舎町に現れる。その若妻が美しいのかどうかということが非常に気になっている、息子を女でひとりで育てている一人の女性がいる。彼女は夢の中で、激しくその若妻の腕を握る。
次の日、その女性と若妻が出会う。その若妻の腕にはなんと自分の手形が残っている。若妻の腕はどんどんと萎えていき、夫にも疎まれるようになる。若妻は何とか治らないかと占い師に話を聞きに行ったところ、その女性が犯人であったことがわかり、その女性は村を出て行く。その後も彼女の腕は治らず悩んだ若妻は再び占い師のもとへ。
そこで、「死刑になった人間の体にすぐ触ると腕が治る」と言われる。苦労して死刑になった人間の体に触るとその人は・・・。これもかなり哀しい話だったが面白かった。

4. Fellow-Townsmen
金持ちだが妻とうまくいっていないBarnetとそんなに裕福ではないが温かい家族を持つDowneの話。ある日、Barnetに頼まれ、Downeの妻はBarnetの妻を海へ遊びに連れて行ってあげる。そこで水難にあい、二人は溺れる。Barnetの妻は死ぬが、Downeの妻は何とか助かる。しかしDowneの妻は結局家を出て行く。そんな中Barnetは昔好きだったLucyに会いにいく。昔結婚まで約束していたのだが、金を持っている今の妻を最終的に選んだBarnetをLucyは拒む。金の無いLucyは町を出て外国で働こうとするが、何とか自分のそばに置いておきたいBarnetは妻を失ったDowneの子供たちの世話役としてLucyを紹介する。
そんな中、家出をしていたBarnetの妻が死んだという連絡が届く。これでLucyとめだたく結婚できると思ったBarnetはLucyに求婚しに行こうとするが、DowneとLucyはいつの間にか恋仲になっておりまさにその日に結婚することに。
このことに絶望したBarnetは町を出て行く。
20数年後町に帰ってきたBarnetはLucyが独り身になっているのを知り、求婚。彼女は断るが、やっぱりBarnetを愛している自分の気持ちに気づきBarnetを探すが、見つからず・・・。

すれ違いの物語であり、悲恋物語。後期Hardyの雰囲気を漂わせる中編で結構面白かった。

6. Interlopers at the Knap
こちらも男女のすれ違いを描いた作品。結婚を約束した女性のもとに、立会人の友人と共に向かうDarton。こんなに素晴らしい女性はいないと友人と話しながら向かう。一方Dartonを待つSallyのもとに、家を出ていた兄が妻と子供を連れボロボロの姿が帰ってくる。兄はかなり衰弱しておりベッドに寝かせられる。馬小屋のようなところで待っている妻と子供のもとへ向かうSallyは、自分の夫となるはずのDartonが兄嫁のHelenaと微妙な雰囲気。実は昔二人は恋仲だったことが分かり、Sallyを捨てHelenaと結婚するDarton。
しかしふたりの結婚はうまく行かず、そのうちHelenaも死ぬ。やっぱりSallyと結婚すべきだったと思い返したDartonはSallyに求婚するがSallyは拒絶する。Dartonは絶望して終わる。

かなり悲しい話だが、Sallyの高潔さが気持ち良い話。

7. The Distracted preacher
期間限定でやってきた牧師が、泊まり先の未亡人に恋をし、結婚を約束する。しかしこの未亡人は酒の密売をやっていた。そのことを発見した牧師が、愛と犯罪の狭間で苦悩する話。

それなりに面白かった。

結構ストーリーも面白く、読みやすい作品たちだった。
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Jude the Obscure [文学 イギリス Thomas Hardy]


Jude the Obscure (Wordsworth Collection)

Jude the Obscure (Wordsworth Collection)

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/04/01
  • メディア: ペーパーバック



遂に、遂に、Thomas Hardyの長編主要作を全部読み終わった。
とても暗い作品と聞いていたが、そこまで暗い悲劇的な感じはしなかった。

テーマは、階級、教養、肉体と精神、エロスとアガペー、法的な結婚と実質的なパートナー、といった感じであろうか。

性的に誘惑され、あまり教養のない女性Arabellaと肉体関係を持ち、「子供が出来た」と騙され結婚させられてしまった、教養ある人間を目指す純粋な主人公Jude。しかし結婚後すぐ二人はうまくいかなくなり、Arabellaは父親とオーストラリアへ以上してしまう。

そんな時に出会った教養ある魅力的な従兄弟Sue。彼女にどんどん惹かれていくJude。いい感じになっていく二人だが、Judeに結婚歴があることをしったSueはJudeの先生であり、今はSueも面倒を見てもらっている、Phillostonと突然結婚してしまう。しかし、Sueは純潔主義者。結婚後も(明確には描かれていないが)肉体関係を持たず生活する。ある日肉体関係を迫られた末、窓から飛び降りてしまう。その事件がきっかけとなり、PhillostonはSueを手放すことを決意。SueはJudeの元へ行く。

二人は何度か正式に結婚しようとするが、法的な結婚をすることで、お互いの意志をしばり、乾いた関係になることを嫌うSueのためらいと反対により、二人は結婚せずに実質的なパートナーとして歩んでいく。

そのうちに、Arabellaがイギリスに帰ってきて、Judeは再び誘惑したり、かつてJudeとArabellaの間にできた子がやってきて、JudeとSueで面倒を見るようになったり、Sueが遂に肉体関係を持つことを受け容れ、二人の子供ができたりするが、周りの人間は法的な結婚をしていない、この家族を認めようとしない。

小さい子供がいることで、家を借りられないことを目の当たりにした子供達が、ある日それを苦に自殺してしまう。それによって自分たちの関係の不自然さを考えたSueはPhillostonの元へ行き、再婚。それを知ったArabellaはJudeを再度誘惑し再婚。しかし体調を崩していたJudeは再婚後、Sueとの関係に悩みながら死んでいく。

恐らく、現在であれば、こことで描かれているいろいろな男女の関係は普通なのだろうが、20世紀後半イギリスでは、かなり不道徳で異質なものであり、社会から迫害されるたぐいのものだったのだろう。SueとArabellaが何故、元の夫と再婚をすることを選んだのか全くわからない。Sueの様々な考え方や行動もよくわからない部分も多い。

Sueの異常なまでの肉体と形式への嫌悪は、若干度が過ぎているので、理解しがたい部分もあるのだが、若干大げさに描くことでその特質を目立たせたかったのだろうと思う。ちなみにSueは愛称で、本名はSusanna。注を読んで知ったのだが、この名前はヘブライ語から来ており、意味は花の「ユリ」。この花は聖母マリアと関連付けられる名前で、ハーディーが何故、女主人公にこの名前をつけたのかもわかる。

そして、今回も過去の告白がテーマとなっているのが面白い。『テス』ほと自分の過去の告白に思い悩んでいるわけではないが、歩んできた人生がそのまま今または未来に影響しているということをかなり入念に描いている。

非常に多種多様なテーマを持った作品で、うまく語りえないのだが、様々なテーマをもっている分、多くの観点から読める作品であり、かなり奥深い作品と言える。Hardyの最高傑作と言われるのもわかる作品であるが、私としては、中期の最終的にハッピーエンドで終わる作品のほうが好きかもしれない。

とにかく世間で言われているほど暗いテイストの作家でもなく、間違いなくストーリーは面白いし、扱っているテーマも現状の日本を反省するための鏡のようなものなので、もっと日本でも広まって読まれて欲しい。

全作品とても良かった。
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The Woodlanders [文学 イギリス Thomas Hardy]


Woodlanders (Wordsworth Collection)

Woodlanders (Wordsworth Collection)

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/04/01
  • メディア: ペーパーバック



Thomas HardyのWoodlandersを読み終わった。
Hardy作品の中では、マイナーな部類に入る作品だとは思う。が、玄人の中では評価の高い作品らしい。あまり期待せずに読んだのだが、確かに面白かった。「次はどうなるんだろう?」という気持ちに常にさせられ、他のHardy作品より、「ページをめくる手が止まらない」感が強かった。

テーマは色々あるのであろう。階級移動の問題、父権主義的問題、不倫、離婚、そして農民生活、とにかく、階級とセクシャリティがメインテーマであることは間違いない。

森林地帯で育ったGraceは、過去の父親の恋愛・結婚問題の流れで、小さいころから結婚相手がもう決められていた。これはこれで凄まじいのだが、この婚約者が、森林地帯で誠実にひたむきに生きる、Gilesであることが救いである。親に決められた婚約者とはいえ、GilesもGraceも、お互いのことをかなり気に入っており、結婚を心待ちにしている様子はうかがえる。

Graceの父親は、金持ちで娘を森林地帯の田舎娘として成長させたくなく、都会の全寮制の学校で教育を受けさせる。その教育を受けて戻ってきたところから物語は始まる。

都会から帰ってきたGraceとGilesは結婚寸前まで行くのだが、そこに都会人で専門職医者であるFitzpiersなるものが現れる。綺麗な格好をし、お金があり、文化的レベルも高く、洗練されているFitzpiersにGraceの父親が惹かれ、娘にGilesをあきらめさせ、Fitzpiersと結婚させるよう仕向ける。

GraceはこのFitzpiersの若干魔術的な側面を怖れていたが、文化的で知的な面に若干惹かれるようになり、父親の勧めも強烈だったので、一度は結婚を承諾する。だが、結婚前夜、Fitzpiersが他の女性と関係を持っていると疑われるような現場を見てしまう。それを見て不安になったGraceは彼との結婚をやめて、約束通りGilesと結婚したいと父親に申し出る。しかし、Fitxpiersと父親に懐柔され、結婚することになる。

しかし、当然結婚生活はうまくいかない。森林生活になじめないFitxpiersはこの地域を去りたいと言い出す。さらに、洗練された都会の未亡人Mrs. Charmondと不倫をしはじめる。そしてGraceとの婚約期から、そして結婚前夜に関係を持ったSukeとも関係を続けている。

こうしたことが一気に明るみに出て、Graceの父親に襲われたFitzpiersは命からがら逃げだし、Mrs. Charmondの元に助けを求め、そのまま駆け落ちをしてヨーロッパに行く。

そんな中、新しい法律が出来て、Graceは離婚できるのではないか、という希望が生まれ、父親は、手続きのためにLondonに行き、その間にGilesとGraceが元の約束通り結婚できるように動く。GilesとGraceは不安がありながらも、結婚へ向けて気持ちを高める。だが、結局Graceの離婚は認められず、二人は結婚できない。

そんな中、Mrs. Charmondと別れたFitzpiersがGraceの元へ戻ってくる。彼と会いたくないGraceはGilesに遠くの友人の元まで送って行ってくれと頼み、二人で出かけようとするが、大嵐に合い、GraceはGilesの家に泊めてもらうことに。しかし同じ屋根の下にいることは出来ないと考えたGilesは外で寝る。その状態が一週間ほど続き、もともと病気であったGilesは死んでしまう。

結局、色々ありGraceとFitzpiersは新しい土地で二人で結婚生活を続けることを選ぶ。

すさまじい物語であり、最後結局そこなの???と思ってしまう。そしてこの物語の主人公はGraceであり彼女を中心に話は進むのだが、本当の主人公はMarty Southという、Gilesと同じく真摯にひたむきに森林生活を営み仕事に励む女性だ。

物語の始めは彼女の生活の描写から始まる。彼女の美しい髪の毛に目を付けた、のちにFitzpiersと駆け落ちするMrs. Charmondは、彼女の髪の毛を半ば強引に買い取る。その後も、GilesやGrace,さらにはFitzpiersが苦難にあるときは、常に現れ、神様のような救いを与える。Gilesが亡くなったのちも、Graceと共に彼の墓に定期的に通い、花を手向ける。GraceがFitzpiersと結婚生活を続けていくことを決めた日が、ちょうど墓に訪れる日で、二人は一緒に行く約束をしていたのだが、Graceはそんなことをすっかり忘れ現れない。そんなGraceをMartyは信じ続け、何時間も彼女を待ち続ける。

最終的には、彼女が一人でGilesに花を手向ける場面でこの物語は終わる。つまり、この物語はMartyで始まり、Martyで終わるのだ。題名もThe Woodlandersであり、物語を盛り上げるGrace, Fitzpiers, Mrs. Charmondは、いづれも真の意味でのWoodlandersとは言えない存在である。Hardyが描きたかったのは、表舞台で華やかに動く派手な人々の陰で、地道に誠実に真剣に生きる人がいるということではなかったのだろうか。

現在、コロナ禍で世の中は大変である。政治家の醜聞など新聞に取り上げられることが多い。しかし、人間は生活していかなければならない。その人々の普通の生活を支えているエッセンシャル・ワーカーの人々が大変な思いをしながら働いていることを忘れてはならないのではないか。この物語を読んでそう感じた。

最後の文章が心を打つ。

p304
'Now, my own, own love,' she(Marty) wispered, 'you are mine, and on'y mine; for she(Grace) has forgot 'ee(you) at last, although for her you died! But I - Whenever I get up I'll think of you, and whenever I lie down I'll think of 'ee. Whenever I plant the young larches I'll think that none can plant as you planted; and whenever I split a gad, and whenever I turn the cider wring, I'll say none could do it like you. If ever I forgot your name let me forget home and heaven!... But no, no my love, I never can forget 'ee; for you was a good man, and did good things!'

Marty South 聖女のような存在である。
素晴らしい作品だった。
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The Mayor of Casterbridge [文学 イギリス Thomas Hardy]


Mayor of Casterbridge (Wordsworth Collection)

Mayor of Casterbridge (Wordsworth Collection)

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/01/01
  • メディア: ペーパーバック



Thomas Hardyのそれなりにメイジャーな作品を読み終わった。

酒に酔って、些細な口げんかが元で、妻を他人に売ってしまった男の話。ここだけ読むとトンでもない感じだが、その後そのことを非常に後悔し、それ以来酒を断ち、一生懸命働き、Casterbridgeの街の市長にまでなるという話。しかし昔の出来事などがもとで、結局は転落人生を歩むことになる話。

ざっとあらすじを読むと、非常にヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』に似ている感じがした。が、ジャン・バルジャンはかなり性格的に良い人物として描かれるが、この物語の主人公Michael Henchardは、後悔はするものの、本質的な性格は変わらず、すぐかっとなって後先考えずに行動してしまう。途中、あまり似ていないかな、という気がしていたが、本質的に良い人間であることは間違いなく、そうした心の澄んだ人間の、ボタンの掛け違い、時代による、ある意味悲劇的な人生を描いているという点では似ている気がする。

主人公Henchardによって、才能を見出され、仕事を与えられ、昇進した男、Donald Farfraeという人物は、Scotland人で、悪い人間ではないのだが、Henchardが没落していく過程で悉く嫌な役回りをする。仕事を奪い、恋人を奪い、最後には主人公の娘と結婚する。彼のいろいろな行動は、「しょうがないかな」と思う面も多いのだが、物語の終盤ではとっても嫌な奴に見えてくる。

Henchardの義理の娘、Elizabeth-Janeは最後まで良い人間として描かれるのだが、彼女が一度犯してしまった、Henchardを一時精神的に赦さなかった瞬間が、Henchardを死へと導いてしまうあたりも非常に面白い。

Hardyは、過去の過ちなど人に言えないことを、自分の大切な人に打ち明けようか打ち明けまいか、という精神的な葛藤を事細かに描くことが多い。
どんなに素晴らしい人物も、完璧な人間などおらず、必ず過去に人には言いづらい過ちを犯していたり、悪いことをしてしまったりする。そして良い人間であればあるほど、そうしたことを自分の愛する人に言わずに置くことに精神的な葛藤を抱く。ありえなそうで、誰にでも起こるような精神的な葛藤を描いているあたりが、この作家が今まで読み継がれている理由なのであろう。

非常に面白い読み応えのある、そして久しぶりにページをめくる手が、(洋書とは言え)、止まらないような作品だった。
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The Trumpet Major [文学 イギリス Thomas Hardy]


Trumpet Major (Wordsworth Collection)

Trumpet Major (Wordsworth Collection)

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/04/01
  • メディア: ペーパーバック



Hardyの中期作品The Trumpet Majorを読み終わった。代表作として紹介されることも少なく、映画化もされていないが、McMillan社のGraded Readerシリーズには何故か、入っていてかつて抄訳版というかRetold版を読んだ事があった。

Hardy唯一の歴史小説と言われるが、歴史小説とは言えない。ナポレオン戦争を題材にはしているが、ほとんど史実など出てこない。ナポレオン戦争時代に起こった、ある町の男女の出来事を扱った作品である。

簡単にあらすじを言えば、幼馴染の、粉屋の兄弟と家主の娘の三角関係、そこに金持ちの第三者の男が入ってくるから若干話がややこしい&面白くなっている。

Hardy小説を紹介しているyou tubeのチャンネルがあり、そこを少し見たら、その解説している女性が、The Trumpet majorのヒロインの名前はその性格同様非常に単純で、Anneと言う、と述べていた。確かにHardyの他の小説に比べ、女性の名前が非常にわかりやすい。男性は結構単純な名前がつけられることが多いのだが、今回も例にもれず、兄はJohn,弟はBobだ。召使もDavidと、単純すぎて却って初めは覚えられなかった。

最終的にはヒロインは弟を取るのだが、何故Anneがこの弟に惹かれるのかがわからない。とにかく、兄より見た目がいいのだろうが、性格はどうしようもない。

商船から久しぶりに帰ってきたBobは、どうしようもない浮気女性と、そうとは知らず婚約しているし、そのことを知る兄Johnが無理やり別れさせるとそれに逆恨みする。一度Anneと婚約のような状態になるものの、軍隊に行き、彼の帰りを待つAnneがいるにもかかわらず、他の女と結婚の約束はする。ようやく帰ってきて、ふたたびAnneに接近し、その軍隊生活中の女性のことをAnneに問われると逆ギレするし、と男として全く良いところがない。

しかし、主人公The Trumpet Majorの兄Johnは穏やかで、理性的で、常にAnneの幸せをのぞみ、自分のことを犠牲にしてもAnneの幸せのために行動し、Anneをひたむきに愛し続ける。最終的にJohnと結婚するのかと思いきや・・・。

Hardyの初期作品は、結構望んだハッピーエンドで終わることが多かったが、中期以降結構悲惨さを増していく。これからさらに重くなるようだが、残りの作品も楽しんで読みたい。
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The Return of the Native [文学 イギリス Thomas Hardy]


Return of the Native (Wordsworth Collection)

Return of the Native (Wordsworth Collection)

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/01/01
  • メディア: ペーパーバック



Thomas Hardyの5作目を読み終わった。
この作品も映画化されている。彼の作品は多くが映画化されている。

主人公は、パリへ留学し、そのままそこで働いていたが、都会生活に疲れてしまった心優しいClym。彼が、故郷に帰ってきた人物(The Return of the Native)として題名となっている。彼が故郷Egdon Heathに帰ってきたことによって、後に彼の妻Eustaciaが言うように5人の人物の人生を狂わせる。

登場人物は、
あまりにの美しさゆえに、村民たちから魔女と恐れられているEustacia。彼女も都会から父親の死によってこの田舎のDgdonに戻ってきた人。彼女は、主人公Clymと違い、都会生活に戻りたいと熱望している。
このEustaciaを熱愛しながらも、素性のしっかりした女性Thomasinと結婚することになっているWildeve。彼の優柔不断さ、Thomasinと結婚しながらEustaciaをひたすら追いかける未練がましさが、後に悲劇を生むことになる。
Wildeveの妻になる、心優しい、田舎を愛するThomasin。
そしてこのThomasinを一途に愛し、自分の愛を犠牲にしてもThomasinの幸せのためにひたすら暗躍するReddlemanことVenn。

このEustaciaとThomasinの人物像は、Gone With the Windのスカーレット・オーハラとメラニーの関係性を彷彿とさせる。彷彿と言うか、このThe Return of the Nativeのほうが、先に出た作品ではあるが・・・。

心はフラフラしながらも、基本一途なEustaciaは悪女的な扱いをされているが、スカーレットと同様どうしても憎みきれず、どうしても愛すべきキャラになっている。
そして、Wildeveの結婚しても煮え切らないで、昔の男を追う感じが、性別は違えど、スカーレット像とかぶる。『風と共に去りぬ』はこの作品をベースに構想されたのではないかと思えてしまう。

とにかく面白かった。それぞれの登場人物の性格が非常に立っており、最終的には心が優しく美しい人たちが結ばれるところが良い。

とはいえ、純愛のままふたりが結ばれるのではなく、一度間違った結婚をし、大きな事件を経て、本当の愛に気付く、というのが、何となく純愛・純潔な愛が好きな私としては、前作Far from the madding crowd同様、若干残念だった。

とにかくHardyは面白い。
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Far from the Madding Crowd [文学 イギリス Thomas Hardy]


Far from the Madding Crowd (Wordsworth Classics)

Far from the Madding Crowd (Wordsworth Classics)

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1997/08/01
  • メディア: ペーパーバック



Thomas Hardy 4作目Far from the Madding Crowdを読み終わった。

読み始めてまずびっくりしたのは、ヒロインの名前、Bathsheba。ネット上のあらすじなどを見ると「パスシーバ」などとなっており、おそらく日本語訳を読んでいたら、この名前に気が付かなかったであろう。Bathshebaはそのまま読むと「パテシバ」。旧約聖書に登場する女性で、かの有名なダヴィデ王の妻であり、かの有名なソロモンの母である。これだけの説明だとさぞかし素晴らしい女性のように思われるが、彼女は元々、ダヴィデ以外の男性の妻。水浴しているところをダヴィデに見られ、気に入られてしまい、夫を激しい戦地に送られ殺され、その後ダヴィデと結婚しソロモンを産むことになる。

旧約聖書内ではかなり受動的な存在として描かれているが、文学や批評などでは、男性を誘惑する存在として描かれていたりもする。さらに言えば、自分では意識しないでも男性が引き寄せられる存在としても描かれたりもする。このハーディの作品内でも、そのような存在として描かれており、明らかに聖書のバテシバを意識して名付けられているのだと思う。

始めに、純真な主人公Gabrielを恋の虜にし、
若気の至りで、まじめで謹直なBaldwoodにちょっとしたいたずらをし、恋に狂わせ、
軽薄な美男子Troyにほだされ、結婚してしまう、
そんな、魅力的で、独立心が強いが、かなり軽薄なバテシバ。

結婚相手としてふさわしいGabrielとBaldwoodの求婚を即座に退けたくせに、明らかに軽薄なTroyの表面上の言葉に騙され結婚してしまうBathsheba。Hardyの描く1~4作目までの女性は、とても魅力的だが、常にどこか軽薄さが付きまとっている。

今回は、純真なGabrielと最後は結ばれるのでとっても読後感は良いのだが、そこに至るまでのどろどろした感じが凄まじい。何度も映画化、ドラマ化されるのがわかる気がする。昼ドラなどにもピッタリな作品といえるであろう。

彼の初期の傑作として評判の高い作品だが、確かに面白かった。
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A Pair of Blue Eyes [文学 イギリス Thomas Hardy]


A Pair of Blue Eyes Annotated

A Pair of Blue Eyes Annotated

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Independently published
  • 発売日: 2020/07/12
  • メディア: ペーパーバック



Thomas Hardyの三作目を読み終わった。
この作品はいわゆる男性二人、女性一人の三角関係。
ヒロインが、Elfrideという牧師の娘
彼女の最初の恋人が、純粋な心を持つ建築士、Stephen Smith
彼女の後の恋人が、そのStephenが尊敬する先輩で、批評家・エッセイストのHenry Knight

StephenとElfrideは若い頃に知り合い、お互いすぐに惹かれ合う。身分違いの恋ということで、彼女の父親に強く反対され、駆け落ちまがいのところまで行くが、思いとどまり、Stephenが立派な男になりお金をたくさん稼げるようになるまでお互い待とうということになる。そして彼はインドに言って一旗揚げる。そのあいだもStephenはElfrideに心のこもった手紙を出し続け、稼いだお金を彼女に振り込んだりもする。
そんな中、偶然、Stephenの先輩Henryが、Elfrideの住む街へ行く。実はElfrideの書いた小説をこっぴどく批評したこともあった。そんなこともあり、初めはお互い敬遠していたが、段々と惹かれ合い、Stephenの命をElfrideが助けた時に、感情は一気に高まり、ふたりは婚約まで行く。

Elfrideはかつて、Stephenと駆け落ちした過去を、婚約者Henryに打ち明けられない。しかも、彼女は元婚約者Stephenにもちゃんと説明しようとしない。この中途半端な状態が一気に明るみに出て、HenryはElfrideの元から去る。

後半様々な人の色々な感情が対話に出てくるようになり、非常に面白くなっていく。

読んでいる途中で、Elfrideのあまりの自分勝手さに腹が立った。婚約者がいるにも関わらず、その婚約者とちゃんと話をする前に、別の人と婚約し、その婚約者に対してもちゃんと説明することなく、その所為で婚約が破綻した時も、泣き崩れるばかりの彼女に読んでいて腹が立った。美しいのはわかるし、子どもにも慕われるくらい良い人間なのだろうが、あまりにも男性に対して誠実さがない。これは当時の女性観や社会状況とは関係のない、古今東西普遍の心の問題であり、彼女に対して全く同情心が湧いてこない。彼女の最後(最後)の悲劇的な結末も全く可哀想に思えず、逆に、常に誠実であったStephenがこれにより返って救われたように思い、とても心がスッキリした。

『テス』の主人公テスは、自分の意志とは関係ない運命のせいで苦しんだが、このElfrideは自分の心の軽さ、男性に対する誠実さのなさが生んだ苦しみだったので、すごく独りよがりな気がした。

色々と書いたが、主人公Elfrideに対する怒りであり、物語としては非常に面白かった。
次作はHardyの傑作と言われている作品で、映画化もされているらしいので、楽しみだ。
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Under the Greenwood Tree [文学 イギリス Thomas Hardy]


Under the Greenwood Tree (Wordsworth Collection)

Under the Greenwood Tree (Wordsworth Collection)

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/04/01
  • メディア: ペーパーバック



Thomas Hardyの2作目、Under the Greenwood Treeを読み終わった。
裏表紙を見ると、彼には珍しく、明るい作品という書いてあった。
本の構成も面白く、
Chapter1: Winter
Chapter2: Spring
Chapter3: Summer
Chapter4: Autumn
Chapter5: Conclusion
となっている。第一作目のDesperate Remediesの時も思ったが、彼のChapterのつくり方って非常に面白いと思う。

物語は、主人公Dick Dewyが街にやってきた美しい女性教師Fancy Dayに恋をし、アプローチし、結婚するまでの一年間が描かれている。19世紀後半イギリスの田園地帯を舞台にしているだけあり、すべての生活が教会を中心に動いている感じになっている。
Chapter1は、クリスマスを祝う街の人たちの楽しげな様子が描かれており、職人達も気軽に楽しく楽器を演奏し、コーラスを楽しんでいたのがわかる。だが、この描写はとても長く、この街中でクリスマスを祝う過程でDickとFancyが出会い、恋に落ちるので重要な場面であるのだろうが、正直読んでいて飽きてくる。職人の会話ということで、英語もくだけた感じで書かれており、内容が非常に把握しづらい。
基本、Fancyを熱狂的に愛するDickを、Fancyが徐々に受け入れていくのだが、その過程で、お金持ちの農夫Shinerの求愛にも若干惹かれ、街にやってきた新しい牧師Mayboldのプロポーズも、Dickと婚約しているにも関わらず一回は受け入れてしまう。正直、こうした恋愛ものの物語で、ここまで軽い女性もどうなのだろうと思ってしまうのだが、最終的には楽しく終わる。

喜劇的な作品があまり好きではないというのもあるのだが、正直あまり面白くなかった。
恐らく、「古い社会規範」vs「新しい生き方」という対立構造も描かれているらしいのだが、細かいとところが理解しきれなかったので、あまりよくわからなかった。

次作に期待したい。
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Desperate Remedies [文学 イギリス Thomas Hardy]


Desperate Remedies (Wordsworth Classics)

Desperate Remedies (Wordsworth Classics)

  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions
  • 発売日: 2010/08/05
  • メディア: ペーパーバック




ジェラルド・フィンジというイギリスの作曲家がいる。
NHK FMで「きらクラ!」という、ふかわりょうと遠藤まりさんがやっている番組があり、そこで昔この作曲家の「エクローグ」という曲が取り上げられ、あまりにも素晴らしいのでこの作曲家を調べ始めた。

この作曲家、歌曲を多く書いており、Thomas Hardyの詩に曲をつけたものが多かった。そこでThomas Hardyの作品を色々読んでみようと思いたくさん購入し、ついにこの春から読み始めた。
Hardyは昔Tess of the d'Urbervillesという作品を読み、かなり面白かったのだが、他の作品のあらすじを読むと、そこまで興味惹かれるものではなかったので、ほかの作品は読まずにいた。

この作品は彼のデビュー作らしい。
本の裏表紙などにもあらすじらしきものがなく、どんな作品なのかほぼ何もわからない状態で読み始めた。読んでいる途中まで、主人公Cytherea Grayeとその恋の相手Edward Springrove、そしてそこに割り込んでくる、Manstonの三角関係を中心とした恋愛話なのかな、と思って読むすすめていた。

しかし、Cythereaに言い寄り、兄のOwenの病気につけ込み、遂に彼女と結婚したManstonに実は妻がいるということが明らかになり、その妻が泊まっていた宿屋が火事になる、という事件が起こったあたりから、物語は大きく動き出す。

非常に色々な人物が絡み合ったストーリーとなっており、その人とその人が実はそういう関係だったの!と最後はびっくりさせられる。恋愛小説とミステリー小説のどちらも楽しめる内容となっている。若干ディケンズの『大いなる遺産』を彷彿とさせる世界観を持っている壮大な物語となっている。

前に読んだ、Tess of the d'Urbervillesの主人公Tessもそうだし、このDeperate Remediesの主人公Cytheriaもそうなのだが、二人共本当に平凡で目立った特徴もないのであるが、非常に魅力的な女性で、読んでいるうちに確かに好きになってしまうよな、と思わせる。これは周りの人間が彼女たちをどのように思っているか、という描写を積み重ねることで読者に引き起こさせている感情であり、この辺が、Hardyの人物を構築する際のうまさなんだろうなと思う。

日本では全く注目されないが、もっと日本で売り出されても良い気がする。
まだまだたくさん彼の作品を買ったので、これから楽しみに読みすすめたい。
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Tess of the d'Urbervilles [文学 イギリス Thomas Hardy]


Tess of the D'Urbervilles (Wordsworth Classics)

Tess of the D'Urbervilles (Wordsworth Classics)

  • 作者: Thomas Hardy
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1997/08
  • メディア: ペーパーバック



Thomas Hardy作Tess of the d'Urbervillesを読み終わった。3週間弱で読み終えられた。DickensやAustenよりはるかに読みやすい英語であったとは言え、貧しい階級を描いた作品なので、会話表現などでわかりづらい部分もあり、初めのうちは若干読み進めるのに苦労したが、段々とスピード感をもって読めるようになった。

Tessという農家の貧しい美しい娘の悲惨な生涯を描いた作品。
彼女は親戚関係にあると言われるd'Urberville家に奉公に出され、そこの息子のAlecに言い寄られる。Alecは執拗にTessに性的なアプローチをしてくるが、彼女は相手にしない。しかし宴会があった夜、家に帰る途中の森で、Alecに犯される。
その後、ずるずると関係を続けるが、そんな関係が嫌になり、Tessは実家に帰る。
しかし実はTessは身篭っており、ひとりで子供を産む。が、その子も産まれてすぐに死んでしまう。正式な結婚で生まれた子ではないので教会ではお葬式もあげてもらえない。
その後、牧場で働き出したTessは金持ちの息子Angelと知り合いになる。彼はAlecと違い、誠実な若者でTessに交際・結婚を申し込み続ける。しかしTessはAlecとの忌まわしい過去があるのでどうしても受け入れられない。さらに何度もその過去をAngelに打ち上げようとするがなかなか最終的には言い出せない。
そんなTessもAngelの熱意に負け結婚することになる。
が、結婚前に過去を伝えておきたい彼女は手紙の形でAngelに伝えようとする。夜中、手紙を彼の部屋にそっと入れ朝を待つ。次の日の朝、態度の変わらぬAngel。自分の過去は受け入れられたのだと思い、気持ちが晴れやかになる。しかし、実はAngelは手紙を読んでいなかった。
結局打ち明けられないまま結婚してしまう。その日の夜、お互いの過去を告白し合う。
まずはAngelが若い頃、ある行きずりの女性と2日間愛し合うがすぐに嫌気がさし別れたことを告白する。
その行為をあっさりゆるしたTessは当然自分の罪も許されるものと思い告白するが、Angelは受け入れられずBrazilに去っていってしまう。
一人になったTessは父親の死などもあり、貧乏のどん底へ。そこに再びAlecが現れ、Tessが貧乏なのを良いことに再び言い寄り、一緒に暮らすようになる。
そこへ帰ってきたAngel。Angelと対面した後、TessはAlecを殺しAngelと逃亡。
最終的には捕まってしまう。

かなり簡単に書いたつもりが、長くなってしまった。
TessはAlecを殺したことで捕まってしまうが、個人的には女性を強姦した男性は皆死刑にしても良いのではないかと思う。とはいえ、性行為というものはどこまでが合意の上なのかなどというところの線引きが難しかったりするのだろうとは思うので、なかなか簡単にはいかないのはわかる。
しかし、このTessのように一度犯されたことにより、表面的にはなんにも変わらなく見えても、その女性の人生そのものは大きく変わっててしまっている。しかもその男性に生涯怯えてくらさなくてはならない。それなのに犯罪を犯したものはたとえ捕まったとしても数年間で出てきてしまう。
そんなことが許されて良いのだろうか。
しかし、これは強姦に限らず、殺人事件などあらゆる事件に関しても言えることなのかもしれないが・・・。
この物語の3分の1位は、Angelに自分の忌まわしい過去を打ち明けられないTessの内面の葛藤、日々の生活に当てられているのではないだろうか。読んでて若干「長いよ、つぎに話を進めようよ」と思う面はあったが、HardyはこのTessの心の葛藤を綿密に描きたかったのだろうと思う。

古い作品とは言え、現代にも通じる要素を多く含んでいる。是非多くの人に読んでもらいたい作品だ。

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