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The Mayor of Casterbridge [文学 イギリス Thomas Hardy]


Mayor of Casterbridge (Wordsworth Collection)

Mayor of Casterbridge (Wordsworth Collection)

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/01/01
  • メディア: ペーパーバック



Thomas Hardyのそれなりにメイジャーな作品を読み終わった。

酒に酔って、些細な口げんかが元で、妻を他人に売ってしまった男の話。ここだけ読むとトンでもない感じだが、その後そのことを非常に後悔し、それ以来酒を断ち、一生懸命働き、Casterbridgeの街の市長にまでなるという話。しかし昔の出来事などがもとで、結局は転落人生を歩むことになる話。

ざっとあらすじを読むと、非常にヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』に似ている感じがした。が、ジャン・バルジャンはかなり性格的に良い人物として描かれるが、この物語の主人公Michael Henchardは、後悔はするものの、本質的な性格は変わらず、すぐかっとなって後先考えずに行動してしまう。途中、あまり似ていないかな、という気がしていたが、本質的に良い人間であることは間違いなく、そうした心の澄んだ人間の、ボタンの掛け違い、時代による、ある意味悲劇的な人生を描いているという点では似ている気がする。

主人公Henchardによって、才能を見出され、仕事を与えられ、昇進した男、Donald Farfraeという人物は、Scotland人で、悪い人間ではないのだが、Henchardが没落していく過程で悉く嫌な役回りをする。仕事を奪い、恋人を奪い、最後には主人公の娘と結婚する。彼のいろいろな行動は、「しょうがないかな」と思う面も多いのだが、物語の終盤ではとっても嫌な奴に見えてくる。

Henchardの義理の娘、Elizabeth-Janeは最後まで良い人間として描かれるのだが、彼女が一度犯してしまった、Henchardを一時精神的に赦さなかった瞬間が、Henchardを死へと導いてしまうあたりも非常に面白い。

Hardyは、過去の過ちなど人に言えないことを、自分の大切な人に打ち明けようか打ち明けまいか、という精神的な葛藤を事細かに描くことが多い。
どんなに素晴らしい人物も、完璧な人間などおらず、必ず過去に人には言いづらい過ちを犯していたり、悪いことをしてしまったりする。そして良い人間であればあるほど、そうしたことを自分の愛する人に言わずに置くことに精神的な葛藤を抱く。ありえなそうで、誰にでも起こるような精神的な葛藤を描いているあたりが、この作家が今まで読み継がれている理由なのであろう。

非常に面白い読み応えのある、そして久しぶりにページをめくる手が、(洋書とは言え)、止まらないような作品だった。
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