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むらさきのスカートの女 [文学 日本 今村夏子]


むらさきのスカートの女 (朝日文庫)

むらさきのスカートの女 (朝日文庫)

  • 作者: 今村 夏子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2022/06/07
  • メディア: Kindle版



目立たない少し汚い格好をした少しミステリアスな女性、通称「むらさきのスカートの女」が、自称「黄色いカーディガンの女」の裏からの手助けで、職を見つけ、そこで仕事に真面目に取り組むうちに、段々と悪いことをするようになり、不倫までして、最後は・・・。

という話。語り手がいったい誰なのか、何故こんなにむらさきのスカートの女のことを知っているのか、こんなに気になっているのか、などミステリーの要素も若干含んだ作品。

初めはほのぼのとした感じなのが、段々と緊張感を増していくあたりが、この作家らしい。

一応芥川賞受賞作だが、そこまで私は惹かれなかった。

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木になった亜沙 [文学 日本 今村夏子]


木になった亜沙 (文春文庫)

木になった亜沙 (文春文庫)

  • 作者: 今村 夏子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2023/04/05
  • メディア: 文庫




1.木になった亜沙
2.的になった七未
3.ある夜の思い出

どれも現実と空想(ファンタジー)が入り混じった作品。前も書いたが、そう言う意味では小川洋子作品と似ている。

1は、自分が食べ物を誰かにあげようとすると誰にももらってもらえない(それが給食当番であっても)亜沙という女の子の話。段々といじめに発展し、最後は木になってしまいそこから作られた割り箸になってようやく人に自分のあげた食べ物を食べてもらえるようになる話。最後は暖かく終わるのかと思いきや大どんでん返し。

2は、小さい頃からものを自分に向かって投げられても何故か当たらない話。結構ハチャメチャなストーリーでそんなことはないだろうの連続。そのうち自分が逃げているから当たらないのだと思うようになり、今度は当ててもらおうと望むようになる。自分で自分にものを当てるようになり、精神的に病んだ人と思われ医者のところに連れて行かれその医者に・・・。
結構暗く痛ましい話なのだがどこかユーモラス。

3は、いつもゴロゴロ寝そべってばかりいる女の子の話で、ある日父親に説教され家を飛び出し、町をさまよい歩いているところをある男性に見つけられ家へと誘われそこで結婚の約束をする話。一度父親に了解を得なきゃ、と帰る途中で事故に遭い・・・。
これも何が現実で何が夢なのかよくわからない話。

正直どれももう一歩だった。次は芥川賞受賞作『むらさきのスカートの女』を読む予定。
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父と私の桜尾通り商店街 [文学 日本 今村夏子]


父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)

父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)

  • 作者: 今村 夏子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/01/21
  • メディア: Kindle版



今村夏子さんの短編集。
結構パンチの効いているものが多く、相変わらず現実なのか語り手の妄想なのかわからないという、小川洋子的な作品が多い。

1.白いセーター
2.ルルちゃん
3.ひょうたんの精
4.せとのママの誕生日
5.冬の夜
6.モグラハウスの扉
7.父と私の桜尾通り商店街

1は婚約者とその家族とのいざこざを扱った作品。こどもの悪意がうまい具合に表現されており、主人公のなんとなくやるせない気持ちもすごく詳細に描かれている。
2は偶然知り合った人の家から持ってきてしまった人形の話。犯罪なのだがなぜか犯罪の匂いを感じさせないところがうまい。
3はチアリーディングの話。これも現実なのか妄想なのかイマイチわからない不思議な話。
4はかなり痛い。スナックで働いてきた女性たちが、高齢のママの誕生日をサプライズで祝いにいく話なのだが、かなりブッ飛んだ感じで、結局祝っていない・・・。
5も痛々しい話。子どもを生んだお母さんの話なのだが、全体像がつかめないままふんわり終わる。この作品だけ文庫本だけに収録されている。
6は工事現場のお兄さんと小学生たち、そして学童の先生の淡い恋を描いた話。
7も、不思議な話ではあるのだが、最後の最後で希望を持って終わるので、本全体の読後感は良い。

文庫本は著者本人による制作裏話などが書かれており結構面白い。

すごいオススメ、という本ではないが、結構楽しめる本。
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あひる [文学 日本 今村夏子]


あひる (角川文庫)

あひる (角川文庫)

  • 作者: 今村 夏子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/01/24
  • メディア: 文庫



1.あひる
2.おばあちゃんの家
3.森の兄妹

表題作の1は、資格取得試験のため家で勉強をする女性の一人称語りの作品。
ある日父親が会社の同僚からあひるをもらってきて、庭で買う。そのあひるを学校帰りの小学生が良く見て帰るようになる。そうした小学生たちを、初めは庭の中、そのうち家にまで上げはじめ、挙げ句の果てに家の中で宿題までやらせ、お菓子まであげるようになる。さらに誕生会まで開いてあげるようになるが、その誕生日の日・・・。Harold Pinterに近い不条理さと恐ろしさとわけのわからなさがある。結局は一人称がたりであり、何が正しいのかは結局わからない。

2と3はつながっている。生き残った家族とは直接血の繋がっていない痴呆症になってしまったおばあちゃん。主人公の女の子とそのおばあちゃんの交流の話。3は親が働いているため二人で放課後の時間をつぶさなければならない兄と妹の話。びわがなる家に入ってびわを食べていた兄と妹はその家のおばあちゃんにその姿を見られてしまう・・・。結構恐ろしい話だが、最後は希望を持って終わる。

つかみどころのない感じでものすごく面白いという感じではないが文体がサラサラしているので結構すんなり読めることは読める作品。

そこまで一般受けしないのもわかる。
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こちらあみ子 [文学 日本 今村夏子]


こちらあみ子 (ちくま文庫)

こちらあみ子 (ちくま文庫)

  • 作者: 今村夏子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2017/07/07
  • メディア: Kindle版



1.こちらあみ子
2.ピクニック
3.チズさん

1は、太宰治賞・三島由紀夫賞をダブル受賞した作品。
今で言う発達障害の子どもの視点から見える世界を描いた作品。友達からの悪意やいじめ、家族から疎外されている感じ、様々な人から受ける暴力、こういったものを、鈍感に受け止める少女の視点で描いているので、なんとなくもやっとした感じだが、これを客観的もしくは、かなり繊細な心を持つ少女の視点から描写したらかなり読むのが苦しくなるのでは、とおもわせる物語。

2も面白い。作者の今村夏子さんは小川洋子さんを敬愛しているようだが、小川洋子作品を彷彿とさせる作品。七瀬さんという、ローラースケートを履きながら接客する飲み屋?で働く女性の話。彼女は有名なお笑い芸人と付き合っている。しかし読めば読むほどこれが本当の話なのか、彼女の頭の中での話なのかがわからなくなる。そしてそれは最後までわからない。これが小川洋子作品に似たところだ。嫌な感じの新人がかなり良い味をだしている。

3も不思議な話。おそらく痴呆症になってしまったチズさんを介護する人の視点で描かれた作品。正直イマイチよくわからない。

どれもメインから外れた世界で生きる人たちを扱っているという点では小川洋子作品に低通するものがある気がする。
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星の子 [文学 日本 今村夏子]


星の子 (朝日文庫)

星の子 (朝日文庫)

  • 作者: 今村 夏子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2020/01/31
  • メディア: Kindle版



東京新聞の昔の名作映画を紹介する欄で紹介されていた映画の原作。映画に詳しい同僚の先生と話をしたところ、「映画は観たことがないが原作は読んだことがある。作者の今村夏子さんはデビュー以来全作品読んでいる」という話だった。その同僚の先生はかなりの読書家で深い考えを持っている人なので、その人がデビュー以来追いかけている作家ならば、と興味を持ち、新聞に映画が紹介されていたこの作品から読み始めた。

小さい頃自分の病気がなかなか治らない中、父親が同僚に紹介された水を使用したところ一ヶ月程度で治ってしまい、それ以来その宗教に両親ともにはまってしまったという、ちひろという少女が主人公の物語。

一人称がたりの物語だが、結構淡々としていて三人称的語りに近い客観的な描写が多く結構読みやすい。巻末には私の好きな小川洋子さんとの対談も載っており、ちなみに著者の今村夏子さんは、小川洋子さんを敬愛しているらしい。

両親が宗教を信じることにより、結構困難な人生を歩んでいるはずのちひろ。しかし暗さや精神的葛藤はあまりなく、なんとなくその状態を受けて入れている、という展開もどことなく不気味さを醸し出している。

対談にもあるが、最後の流れ星を家族三人でいつまでも探す部分が、かなり余韻を残す展開で、この家族そしてちひろは今後どうなっていくんだろう、ということを考えさせられる。
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