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The Woodlanders [文学 イギリス Thomas Hardy]


Woodlanders (Wordsworth Collection)

Woodlanders (Wordsworth Collection)

  • 作者: Hardy, Thomas
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/04/01
  • メディア: ペーパーバック



Thomas HardyのWoodlandersを読み終わった。
Hardy作品の中では、マイナーな部類に入る作品だとは思う。が、玄人の中では評価の高い作品らしい。あまり期待せずに読んだのだが、確かに面白かった。「次はどうなるんだろう?」という気持ちに常にさせられ、他のHardy作品より、「ページをめくる手が止まらない」感が強かった。

テーマは色々あるのであろう。階級移動の問題、父権主義的問題、不倫、離婚、そして農民生活、とにかく、階級とセクシャリティがメインテーマであることは間違いない。

森林地帯で育ったGraceは、過去の父親の恋愛・結婚問題の流れで、小さいころから結婚相手がもう決められていた。これはこれで凄まじいのだが、この婚約者が、森林地帯で誠実にひたむきに生きる、Gilesであることが救いである。親に決められた婚約者とはいえ、GilesもGraceも、お互いのことをかなり気に入っており、結婚を心待ちにしている様子はうかがえる。

Graceの父親は、金持ちで娘を森林地帯の田舎娘として成長させたくなく、都会の全寮制の学校で教育を受けさせる。その教育を受けて戻ってきたところから物語は始まる。

都会から帰ってきたGraceとGilesは結婚寸前まで行くのだが、そこに都会人で専門職医者であるFitzpiersなるものが現れる。綺麗な格好をし、お金があり、文化的レベルも高く、洗練されているFitzpiersにGraceの父親が惹かれ、娘にGilesをあきらめさせ、Fitzpiersと結婚させるよう仕向ける。

GraceはこのFitzpiersの若干魔術的な側面を怖れていたが、文化的で知的な面に若干惹かれるようになり、父親の勧めも強烈だったので、一度は結婚を承諾する。だが、結婚前夜、Fitzpiersが他の女性と関係を持っていると疑われるような現場を見てしまう。それを見て不安になったGraceは彼との結婚をやめて、約束通りGilesと結婚したいと父親に申し出る。しかし、Fitxpiersと父親に懐柔され、結婚することになる。

しかし、当然結婚生活はうまくいかない。森林生活になじめないFitxpiersはこの地域を去りたいと言い出す。さらに、洗練された都会の未亡人Mrs. Charmondと不倫をしはじめる。そしてGraceとの婚約期から、そして結婚前夜に関係を持ったSukeとも関係を続けている。

こうしたことが一気に明るみに出て、Graceの父親に襲われたFitzpiersは命からがら逃げだし、Mrs. Charmondの元に助けを求め、そのまま駆け落ちをしてヨーロッパに行く。

そんな中、新しい法律が出来て、Graceは離婚できるのではないか、という希望が生まれ、父親は、手続きのためにLondonに行き、その間にGilesとGraceが元の約束通り結婚できるように動く。GilesとGraceは不安がありながらも、結婚へ向けて気持ちを高める。だが、結局Graceの離婚は認められず、二人は結婚できない。

そんな中、Mrs. Charmondと別れたFitzpiersがGraceの元へ戻ってくる。彼と会いたくないGraceはGilesに遠くの友人の元まで送って行ってくれと頼み、二人で出かけようとするが、大嵐に合い、GraceはGilesの家に泊めてもらうことに。しかし同じ屋根の下にいることは出来ないと考えたGilesは外で寝る。その状態が一週間ほど続き、もともと病気であったGilesは死んでしまう。

結局、色々ありGraceとFitzpiersは新しい土地で二人で結婚生活を続けることを選ぶ。

すさまじい物語であり、最後結局そこなの???と思ってしまう。そしてこの物語の主人公はGraceであり彼女を中心に話は進むのだが、本当の主人公はMarty Southという、Gilesと同じく真摯にひたむきに森林生活を営み仕事に励む女性だ。

物語の始めは彼女の生活の描写から始まる。彼女の美しい髪の毛に目を付けた、のちにFitzpiersと駆け落ちするMrs. Charmondは、彼女の髪の毛を半ば強引に買い取る。その後も、GilesやGrace,さらにはFitzpiersが苦難にあるときは、常に現れ、神様のような救いを与える。Gilesが亡くなったのちも、Graceと共に彼の墓に定期的に通い、花を手向ける。GraceがFitzpiersと結婚生活を続けていくことを決めた日が、ちょうど墓に訪れる日で、二人は一緒に行く約束をしていたのだが、Graceはそんなことをすっかり忘れ現れない。そんなGraceをMartyは信じ続け、何時間も彼女を待ち続ける。

最終的には、彼女が一人でGilesに花を手向ける場面でこの物語は終わる。つまり、この物語はMartyで始まり、Martyで終わるのだ。題名もThe Woodlandersであり、物語を盛り上げるGrace, Fitzpiers, Mrs. Charmondは、いづれも真の意味でのWoodlandersとは言えない存在である。Hardyが描きたかったのは、表舞台で華やかに動く派手な人々の陰で、地道に誠実に真剣に生きる人がいるということではなかったのだろうか。

現在、コロナ禍で世の中は大変である。政治家の醜聞など新聞に取り上げられることが多い。しかし、人間は生活していかなければならない。その人々の普通の生活を支えているエッセンシャル・ワーカーの人々が大変な思いをしながら働いていることを忘れてはならないのではないか。この物語を読んでそう感じた。

最後の文章が心を打つ。

p304
'Now, my own, own love,' she(Marty) wispered, 'you are mine, and on'y mine; for she(Grace) has forgot 'ee(you) at last, although for her you died! But I - Whenever I get up I'll think of you, and whenever I lie down I'll think of 'ee. Whenever I plant the young larches I'll think that none can plant as you planted; and whenever I split a gad, and whenever I turn the cider wring, I'll say none could do it like you. If ever I forgot your name let me forget home and heaven!... But no, no my love, I never can forget 'ee; for you was a good man, and did good things!'

Marty South 聖女のような存在である。
素晴らしい作品だった。
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