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立原えりか童話集Ⅰ 木馬がのった白い船 [文学 日本 立原えりか]


木馬がのった白い船―立原えりか童話集1 (角川文庫)

木馬がのった白い船―立原えりか童話集1 (角川文庫)

  • 作者: 立原 えりか
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/07/16
  • メディア: 文庫



どこで目にしたか忘れたが、「立原えりか」という児童文学作家がいるということを知り、色々と調べると私好みの作風らしいので、さらに色々調べると、彼女の作品はほぼ絶版状態だということを知った。

しょうがないのでとりあえず図書館で借りてみた。

1.人魚のくつ
彼女のデビュー作。ある女の子が落とした靴を、人魚の靴と勘違いしてしまう男の子の話。色々あって二人は出会わないまま、物語が完結するあたりがとても幸福感があり良い。

2.タムタムおばけとジムジムおばけ
松谷みよ子の「オバケちゃん」シリーズにも通じる、現代文明批判を孕んだ作品。一時流行ったネッシー騒動も彷彿とさせる。佳作。

3.お姫様をたべた大男
千夜一夜物語のような怖いようでいて、どこか哀愁漂う作品。

4.木馬にのった白い船
本の題名にもなっているだけあり、素晴らしい作品。公園で長いあいだ子供のために働いてきた木馬がみんなにお別れをする話。いつから人は、生身の人間としか話せなくなるのであろう、ということを感じさせる作品。

5.蝶を編む人
安房直子作品にも通じる、ひとつのことを一心不乱に行うことの大切さを我々に見せてくれる作品。

6.野原の食卓
サーカスで働いていたクマとそれを観ていた女の子との心の交流を描いた作品。サーカスでは使い物にならなくなり殺されそうとするところを必死で逃げるクマ。怖いようだが何故か暖かい気持ちになれる作品。

7.花園
これも安房直子作品に通じる、ある女の子によって皆が花にされてしまい、空間からいなくなってしまう作品。これもよく考えると非常に恐ろしいのだが、そこまで恐ろしさを感じさせない作者の腕が素晴らしい。

8.雪の夜のお客さま
こどもを亡くした女性と、子供たちの優しい心の交流を描いた作品。これも悲しい作品なのだが、こころがポッと温かくなる。

9.ぬいぐるみ
これも安房直子作品に通じる作品。犯罪を犯した男と子供の心の交流を描いた作品。これもとてもこころ穏やかで温かくなる佳作。

10.ユニコーン
幻想な中で生きるのと、現実の世界で生きるのと、どちらがより幸せなのか、考えさせられる作品。

11.ユキちゃん
戦争によって、ぬいぐるみをなくしてしまった女の子の心の痛みをテーマにした作品。少女がぬいぐるみによって心癒され、幸せになる姿は感動してしまう。

12.飛べない鳥
恐らく作者が持っていたであろう、飛ぶことに対するあこがれをカタチにした作品。どこまでの悲しくどこまでも愛おしい作品。

13.六本指の手ぶくろ
離れてしまった母親と娘の心の交流を描いた作品。心を失ってしまっていた母親が子供の手紙によって心を取り戻す場面が感動的。

14.幸福の家
幸せの「青い鳥」をモチーフにした素敵な作品。

15.花の時間割
これも現代文明批判を含んだ良品。

とにかくすべてが、小さなもの弱きものに視線を向けるとともに、その視線が限りなく暖かいので、恐ろしいもの、人から普通は敬遠されるものでも何故か愛情を持ち始めてしまう、そんな作品ばかり。

こんなに美しい作品集が、絶版なのは何故なのだろうか。ぜひ多くの人が再び手にできる状態なって欲しい作家だ。
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