ジェルミナール 上 [文学 フランス ゾラ]
今年の春、岩波文庫からゾラ作『ジェルミナール』が復刊された。正直、ゾラの作品は『居酒屋』で結構お腹いっぱいになったのでもういいや、と思っていたのだが、ネット等で色々調べてみると、炭鉱労働者のストライキを描いた作品らしく、かなり評判がいいので買っておいた。
そして上巻が読み終わった。
主人公はエティエンヌという若い青年。『居酒屋』の主人公の女性の息子。何となくエティエンヌという響きが女性っぽくはじめは結構混乱してしまった。彼は機械工だったのだが、前の職場の上司とトラブルになり、職と食がないままうろついて死にそうなところを、炭鉱に拾われ働き出す。
そこで出会ったカトリーヌという少女に恋心を抱くのだが、彼女は仲間のシャヴァルに奪われてしまう。
そのうち、ひょんなことから、エティエンヌはカトリーヌの家にお世話になり、同じ部屋で彼女と寝る事になるのだが、お互い愛し合っているにもかかわらず、行動に移すことが出来ない。
そんな中、世の中が不況になり、給料が減らされることに。共産主義思想に染まり、労働組合のようなものを組織し、そのリーダー格になっていくエティエンヌ。上巻はまさにストライキが始まらんとするところで終わる。
カトリーヌが簡単にシャヴァルのものになってしまったのが非常に残念であった。正直小説であればヒロインをもっと理想的女性として描くのであろうが、簡単に落ちてしまい、そのあと毎日のように肉体関係を持ち続けさせるあたり、自然主義文学なんだなあ、と思う。
お互い愛し合いながら、絶妙な距離を保ち続ける、カトリーヌとエティエンヌの描写はとても良かった。
エティエンヌが、理想主義に燃えて行動することに主眼がおかれているので、読んでいて苦しいだけだった『居酒屋』よりははるかに面白い。
2016-08-14 07:08
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