初期短編 とかげのぼうや・王さまのぼうし [文学 日本 松谷みよ子]
松谷みよ子さんの、初期の作品、7作を読み終わった。
戦中・戦後に書かれた作品らしいが、とても瑞々しく、優しさに満ちている。
1.とかげのぼうや
2.じょうろになったお姫さま
3.おふろやさんへいく道
4.かきのはっぱのてがみ
5.黒いきんぎょと赤いそり
6.こじきのこけし
このあたりは、西洋のイソップ物語やアンデルセン童話集の影響がかなり感じられる。動物や物、自然が人間世界に違和感なく入ってきている。
7. 王さまのぼうし
これは、傑作だ。戦中の世界を、昆虫たちの世界に置き換えた話。王様に帽子を与えられることで、思考することなく、苦境を耐え忍び、何でも王さまのいいなりになってしまう大人たちの世界を、子供たちが新しい帽子を編むことで変えようとする物語。
王さま(国)のいいなりになってしまう大人たちをどうしたら変えられるのか、という子供たちの問いに対して、風が返した答え。
p54.
「そうだなあ、まずおとなみたいに、なにをやってもしょうがないんだ、なんて子どもまでがマネしないことだな。それからっと、うん、それからどうしたらいいか考える、ひとりじゃなくって、みんなで考えるんだな、そしていい考えが浮かんだら、勇気をだしてやってみるんだ、勇気をだして!」
素晴らしい答えだ。松谷みよ子の反戦思想、そしてどうやったら戦争に向かう道を止められるのかのすべてがこの答えにある。
国だけではなく、いろいろな非論理的・非合理的権力組織を、日本人はどうしても受け入れてしまい、諦めてしまう。いや諦めているというより、今ある状態に疑問すら感じていないのだ。考え、みなで議論し、行動していく。社会を変える、というより社会の中で人間が生きていく上で当たり前のことがここで語られている。私の卒論と同じこと言っている。
すべての国民が、思考し・議論し・行動していったら、世界は必ず良い方向へと向かうはずなのだが・・・。
2021-03-16 05:05
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