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松谷みよ子 短編2 [文学 日本 松谷みよ子]


茂吉のねこ (偕成社文庫 3016)

茂吉のねこ (偕成社文庫 3016)

  • 作者: 松谷 みよ子
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2021/09/12
  • メディア: 単行本



『松谷みよ子の本』第四巻に収録されている短編を読んだ。

1.灰色の国へ来た老人の話
2.カナリヤと雀
3.黒い蝶
4.夜
5.赤ちゃんのおへや
6.はと
7.かあちゃん
8.草原
9.朝鮮の子
10.指きり
11.いたずらっ子テレビにでる
12.火星のりんご/かっこう/とりかえっ子/おせんべちょうだいね/東京っ子

これらの作品は、初出一覧を見ると、1954年~1961年に発表された作品だとわかる。
やはり1950年代に書かれたものは戦争の影を色濃く残しているが、段々と明るくなっていき、最後のほうは宇宙に関する話も出てくる。

1はルーモとファーボが登場する幻想的な話。日の光を知らない国に来た老人が、そこに住む子どもたちに月の光や太陽の光の話をしてあげる。その老人を中心に、悪魔に取られてしまった光を取り戻しに生き、老人は命と引き換えに人々に光を授ける。結構感動的な話。

2は教訓譚のような話。「人間にとって一番大切なものは自由だ」という命題を寓話的に示す作品。
「自由」について語っていたふたりの若者が、巨人によって鳥に変えられてしまう話。
一人はカナリヤ、
一人は雀。
金の鳥かごを与えられて人に飼われるようになったカナリヤは、食うに困らない贅沢な暮らしをしている。一方雀にかえられた方は、自分で食を得なければならず大変だが、貧しくても自由を愛し誇り高く暮らしている。そんな二人の状況を見て、本当に人間らしく生きられるのは自由を愛している雀だ、ということで巨人は最終的に雀の方だけを人間に戻す。
短いが良い話。

3は貧しい家の子が、家計を助けようと考え、弾丸の来る山へ鉄を探しに行きそこで弾丸にやられ死んでしまう話。戦争の愚かさを描いた名作。

4は二人の貧しい男女がやっと手に入れた給料で、かき氷を食べているあいだにスリにあってしまう話。暗い話だが最後は何故か明るい気分になる。

5も戦争中の話。父親がいない母子家庭の女のコが、隣の家の赤ちゃんを羨み、お母さんに赤ちゃんをねだる話。これもしみじみとした良い話。

6は結構長く、「みどりのゆび」に近い世界観を持った作品。「はと」の絵を描くことで戦争をやめさせようとする少女と、戦争のせいで体を壊してしまった男性の心の交流を描いた作品。最後は希望に満ちている。

7は女性・母の強さを描いた小品。そんなに面白くない。

8もイマイチ。

9は、「みどりちゃん」という朝鮮人女性を描いた作品の主人公みどりちゃんの少女時代を描いた作品。差別に屈することなく、差別する周りの人間たちから助けてくれた人に対する感謝を忘れることなくひたむきに生きる少女を描いた作品。これも素晴らしい。

10もイマイチ、

11は結構長い作品で、恐らく自宅で塾か何かを開いている男性と子供たちの心の交流を描いた作品。
劇団をやっていた松谷みよ子の実体験がかなり生かされているだろう作品で結構読み応えがある。

12は新聞に載った小品群で宇宙に関することが織り込まれていて、この1960年前後恐らく月面着陸みたいなものが結構世を賑わせていたんだろうなあと予想される。
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