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山に生き、海に生き、土に生きた人びとの話 [文学 日本 松谷みよ子]


松谷みよ子の本 (第8巻) 昔話

松谷みよ子の本 (第8巻) 昔話

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



『松谷みよ子の本』の第9巻「伝説・神話」の中にある、長者・姫君などの話を読み終わった。。

姫君と自然の生き物の触れ合いを描いたものが多く短編が多かったが結構面白かった。

1.逃げ出したお姫様
これはとてもお城の中毎日暮らすことに飽き飽きし。自然の中でめいいっぱいあそびたいと願っているお姫様が、国に帰って自然の中で暮らしたいと願う若者の歌声を聞く。お姫様はそのものを呼び寄せ、話を聞き、自分を連れて自然豊かな自分の国に変えるよう若者に命ずる。その命令を一度は断るものの、姫のたっての願いで連れて行かざるを得なくなり、何とか武蔵の国まで帰り、自然豊かな中でふたりで幸せに暮らすという話。二人が暮らした屋敷跡が港区三田の済海寺らしい。こういう話が私はとても好きだ。

2.玉屋の椿
一生懸命働いてお金を設けたものの、そのお金のことが年がら年中頭から離れず精神的におかしくなってしまう長者さんのお話。自分も外貨預金や株を一時期やっていたことがあるのだが、いつも為替レートや株の動きが気になってしまい何となく日々心が落ち着かなくなった。人間の金というものに対する欲望は恐ろしい。こういう話も好きだ。

3.生れかわった赤ちゃん
不運なことで子どもをなくしてしまった長者夫婦が、死んでしまった子どもの手にその名前を書いておくと生れかわったこの世に誕生した際にわかる、という言い伝えを信じそのとおりにしたところ、何年かして名前が書かれた赤ちゃんを連れて夫婦が訪ねてくるという話。これも心が痛くなるような暖かくなるようななんとも言えない良作。

4.味噌買い橋
夢で「~に行くと良いことがある」と告げられそのとおりに行い実際良いことがあり金持ちになる話。西洋の伝説などでもよくあり、東西南北問わず夢というものは物語の題材として昔から取り上げられてきたんだなあと思う。

5.雪姫・紅葉姫
戦で命を落とすことになってしまった二人の姫達が魚に姿を変え人々の前に姿を現す話。普通。

6.黒姫と黒竜
人間の姫に、親切にされた黒龍が人間に姿を変え、姫に結婚して欲しいと求めに来る。姫は父親にお願いして欲しいといい、黒龍は実際父親に頼む。100日間も毎日お願いに来た末、ひどいことをされた仕返しに、嵐を起こす。これに心を痛めた姫は黒龍のところに赴く。姫は終始黒龍を愛しており最後もハッピーエンドでこういう話も私は好きだ。

7.丹鶴姫さんと黒い兎
これは結構恐ろしい人さらい姫の話・・・。

8.黄金の沼
金銀を自然の中から見つけて長者になった人の話。これもイマイチか。

9.三十三の百合の花
二人の女の子の座敷わらしの話。座敷わらしによって富んだり貧しくなったりする人々の話。座敷わらしのことがよくわかって面白い。

10. 姫淵の歌
戦で父親を失い、自らの命も危ない姫君が追っ手から逃げる話。色々な人に助けを求めるが誰もだすけてくれない。最後に姫と同じ年代で孫娘を失ったじいさまに匿われるが、追ってからは逃げきれず・・・。最後は身投げする話。これもかなり緊迫感があり美しい話。

11. 首切れ馬
これは欲深い人が一つのものを求めていろんなものを失ってしまう話。こういう教訓譚みたいなものも結構好きだ。

12. 湖山長者
これも欲深長者がすべてを失う話。結構面白い。

13. 榛名湖の主
こちらも自然を愛する姫が自然に汲み取られていく話。美しい話だ。

14. 炭焼き長者
黒いあざが全身にあることでお嫁に行けなかった姫が、神からのお告げで田舎の炭焼きのもとへ向かう。その炭焼きのおかげであざも消え、炭の中にたくさんある砂金のおかげで長者となり娘を設ける。その娘の美しさに心惹かれた皇子が姫の心を得て婚約することになる。父母は泣く泣く結婚を認め、姫は都へと向かうが、海で大嵐にある。神のお告げで、姫が命を捧げれば嵐を沈めると告げられ、彼女は命を捧げる。
ギリシア神話にも似た美しい物語。きらびやかな心の貧しい都ではなく、自然の中で心豊かに生きることの幸せを暗に教えてくれる作品。

15. 金のべココ
正直よくわからない・・・。

全体的に私好みの作品が多く、一途な心を持った人や、正直な人の話が多くとても気持ちよく読むことができた。
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