山に生き、海に生き、土に生きた人びとの話 [文学 日本 松谷みよ子]
『松谷みよ子の本』の第9巻「伝説・神話」の中にある、色々な人びとの話を読み終わった。
自然と共生して生きる人々を描いた作品が多かった。前にも記したが、松谷みよこさんは、社会で行われている不正に対し、怒りを覚え、そのことをテーマに作品を書くことで社会改革を目指して来た人なのだと思う。その根っこには、「人は自然と共に生きている」というものがあるのだろう。それがヒシヒシと伝わってくる作品集だった。
力のある若者が自分の村のために、自然に立ち向かい自然に取り込まれて命をなくす「平之と与作」
一途な女性が恐ろしい魔物となり自然に取り込まれる「つつじの乙女」「椿の乙女」
自然にある動物を助けたことで恩返しを受ける「水の種」「浦島太郎」
人の欲望が自然に仕返しをうけることになる「米良の上漆」
短編の中では結構長く自然の中で様々な体験をする「猟師渋右衛門」
中でも恐ろしいのは、飢饉により食べるものがなくなり、人が人を食べるようになりその成れの果てを描いた「人、人を食う」
『鯨、小学校』にもあった「おしになった娘」などとにかく興味深い自然の恐ろしさ崇高さを感じられる作品が多かった。
物語一つ一つはそんなに素晴らしく面白いというものでもないのだが、何となく考えさせられる作品が多々あった。『鯨小学校』に出てきたような話(「木やりをうたう狐」)もあり面白かった。
2021-10-30 04:27
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