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木の葉の魚 [文学 日本 安房直子 か行]


夢の果て: 安房直子十七の物語

夢の果て: 安房直子十七の物語

  • 出版社/メーカー: 瑞雲舎
  • 発売日: 2005/12/10
  • メディア: 単行本



アイは、貧しい漁師の娘。
10人兄弟の一番上のアイは、結婚適齢期となり、両親は結婚相手を探すが、あまりにも貧しいのでもらい手がなかなか見つからない。ところが遠い山から時々野菜を売りに来るばあさんが、自分の息子の嫁に欲しい、と言われる。

結婚前夜、アイは母親から嫁入り道具として鍋をもらう。山の葉を2~3枚入れて、ふたをしてちょっとゆすると木の葉が素晴らしい焼き魚になるという。しかし、これを使うたびに海の魚が死んでしまうので、めったなことで使ってはいけないと言われる。

いよいよ山の家に行き、姑と夫のために、葉っぱを三昧並べてふたをしてちょっとゆするとカレイが三匹こんがりと焼けていた。その後、アイは鍋を戸棚にしまいこんで、使おうとはしなかった。

こうして平和な日々を過ごしていが、夏になると何百年かに一度の飢饉に見舞われる。食べるものにも困ったアイは、鍋を出してきて魚をやく。その匂いにつられ町の人々も次々にやってくる。噂が噂を呼び、アイの家には魚を求めて多くの人が来るようになる。その人たちに魚を出すたびに、アイは両親の呵責に苛まれるが仕方なく出し続ける。

アイの家に魚を食べに来る人々がおいていく品を売ったりするうちにアイの家はどんどん豊かになっていく。ある日夫が、村からの帰り綺麗な着物を買って帰ってくる。アイは新しい着物を抱きしめて、母親が「このなべが、お前をしあわせるする」といった母親の言葉を自分なりに解釈し、そのうちアイは喜んで魚を焼くようになる。

かなりの年月が過ぎた時、激しい雨が3日降り続きドドーッという音がなる。気がつくと姑・夫・アイの三人は海の底に。そんな時、上の方からアイを呼ぶ母親の声。父ちゃんの船も来ていると母親はアイに告げる。こうしてアイは上へ上へと向かう・・・。

欲望により破滅する人間を描いた作品ではあるが、最後は悲劇的ではなく、どこかしら希望を残したエンディングが良い。
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