北風のわすれたハンカチ [文学 日本 安房直子 か行]
人間に、両親と弟妹をことごとく殺され、ひとりさみしく暮らす月輪熊。
彼はとびらにつぎのようなことばを貼っている。
「どなたか音楽をおしえてください。
お礼はたくさんします。
熊」
はじめにやってきたのは北風(のおとうさん)。
ちょっとやすみに立ち寄ったのだが、トランペットを持っていたので、自分で少し吹いた後、くまに少し吹かせてあげることに。
しかし、熊は前歯を楽器に当ててしまいうまく吹けない。結局直ぐにトランペットは取り上げられ、冷蔵庫にあったパイナップルのかんづめをお礼の代わりに持って行かれてしまう。
つぎにやってきたのは、北風のおかあさん。
彼女はヴァイオリンを持っていてメヌエットを弾いて聴かせてくれる。くまも少し触らせてもらうがうまく音が出ない。
結局北風のおかあさんは、冷蔵庫にあったやまぶどうを持って行ってしまう。
これで、冷蔵庫に残っていたものは全部なくなってしまう。
さいごにやってきたのは北風のおんなのこ。
外は雪世界。彼女が家に入ってくると、くまは「あいにく、お菓子がなんにもなくて」といいながらお茶を出す。すると少女は50数えて待っているよう伝える。
数え終わると、ハンカチの上にホットケーキの材料が!。
ホットケーキを少女は作ってくれて、二人で食べる。
その後二人で静かに外で降りしきる雪の音を聞く。
次に50数えるよう言われると、その間に少女は出て行ってしまう。
少女がいなくなってしまったのをさみしがっていると、彼女はあの魔法のハンカチを置いていったしまったことに気がつく。
自分で、ホットケーキの材料を出してみようと試すが、うまくいかない。
ハンカチを置いていったということは帰りにまた立ち寄るかもしれない、と希望を持ったくまは、自分の耳にハンカチをしまい、しずかにふゆごもりに入る。
さみしい雰囲気が全編をおおっているが、どこか希望のある美しい話。
2023-04-02 02:25
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