海の雪 [文学 日本 安房直子 あ行]
ある雪の日、海沿いの道に停まったバスからある少年が傘もささずに降りてくる。
小さい時に別れた母親に会いにはるばるやってきたのだ。「海岸通り四丁目」「みなと屋」旅館という住所と旅館の名前だけを頼りに探すが、歩けど歩けど見つからない。雪も体にどんどん積もりうもれてしまいそうになったとき、ふと傘が差し出される。母親に似たその子の差してくれた傘の模様は、もくれんの花のようにも、美しい鳥のようにも見える。傘を差しながら母親の住むという旅館を訪ねると、海岸通りは三丁目までしかなく、みなと屋などという旅館も聞いたことがないという。次第に彼は眠くなってくる。そんな中、少女が傘を閉じると、傘がふわりと少年の頭を覆い、いつのまにか二人は白いテントの中に座っていた。そしてふたりは笑って語り合っていた・・・。
その日の夕暮れ、ある少年が海沿いで助け出される。彼が歩いた道には、鳥の足跡も残されていた。
アンデルセンの「マッチ売りの少女」を若干イメージさせる、悲しさと切なさと温かさの入り混じった素敵な作品。
2022-09-08 09:05
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