あざみ野 [文学 日本 安房直子 あ行]
父親と死に別れ、病弱の母と、おおぜいの弟妹をやしなうために、しかたなく従事している毛皮商人の男、清作。
山の猟師の元から街へ戻る帰り道、喉の乾いた清作は水を飲もうと井戸に立ち寄る。そこには一人の女の子。彼女は自分を、井戸の精、地下水の精と名乗る。水をあげる代わりに、毛皮を一枚渡せ、と言ってくる。無視していると、その日一番の高級品、銀ギツネの革をよこせ、と言う。断ると銀ギツネの革を本物の銀ギツネにして、自分のもとへ呼び寄せてしまう。
彼女は突然、「あんたには、この商売むかないから、もっとべつのことをするといい」と言ってくる。「革細工 (職人)」がいいと言われるが、「それでは、くらしていけない」と言う。
すると彼女は一輪のあざみ野を摘み、歌を歌うと、一面あざみ野の花畑に。しかしあざみ野は刺があり、彼女の足は傷だらけ。そこで清作に革で長靴を作ってくれるように頼む。早速作ってあげると、今日は一日、ここに泊まって長靴をできるだけたくさん作るよう言われる。
キツネと一緒に楽しそうに去っていった精を見送り、精作はその日帰るのを諦め、長靴をたくさん作る。朝起きると一面あざみ野だらけ。
どんどん進んでいくと、あざみ野の中から、背中に鉄砲の玉の跡があるたぬきが現れる。そのたぬきはかつて精作が殺し、その革を売ったたぬき。そのたぬきに長靴をあげると、つぎからつぎへとかつて革にして売った動物たちが現れ長靴を求める。結局自分の長靴以外は、すべての長靴がなくなり、最後は自分の家へたどり着く。
その後、精作は革商人の仕事をやめる。
かなり悲しい余韻が残る不思議な話。
2022-07-23 15:08
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