あるジャム屋の話 [文学 日本 安房直子 あ行]
人付き合いの下手な、森野一郎は、大学を卒業して一流企業に就職するが、ほんの一年で辞めてしまう。
実家でブラブラしていると、親に家の庭でたくさん実ったあんずを見ながら、「このあんずみんな売ってこい」と言われる。そこでふと閃いて、ジャム屋を始めることにする。
森の中に小さな小屋を建て、ビンを買って、中古車を買って、ジャム屋をはじめるが、初めは全く相手にされない。そんなある日、営業から帰ってくると家のランプがついている。中に入ると牝鹿がジャムでお茶を飲んでいるところだった。
ジャムもらったお礼に、ジャムが売れるようになる方法を考えると帰っていく。次の日再びやってきた牝鹿は「レッテル」を変えると売れるといい、美しい「レッテル」を何枚も描いてくれる。
それを貼って町へ持っていったところどんどん売れる。店は繁盛し、さらに店を大きくするようジャムの種類を増やそうと、牝鹿に言われる。次の日、誰も踏み入れたことがないブルーベリーがたくさんなっている場所でブルーベリーを集めていたところ、牝鹿の父鹿が現れる。そして娘が人間になるまで待っていて欲しいと言われる。
レッテルを描いてくれる鹿がいなくなり困っていたところ、丁度印刷屋を営む弟が現れ、鹿が描いたレッテルを印刷してくれ、何とかそれで何年かを凌ぐ。
ひとりさみしくジャム屋を繁盛させていた彼のもとに、ある月夜の晩、誰かがドアを叩く。「どなたですか」と尋ねると、「あたし、あたし」とドアの外で答える。ドアを開けると人間の姿になった牝鹿がたっていた。こうして二人は結婚し、仲良くジャム屋を営む。
素晴らしすぎる作品。安房直子作品の中でも、かなり上位に来る物語。純愛、森の中の静かな生活、多くを望まない心、私の愛する様子がいっぱい詰まった作品だ。
2022-08-01 11:28
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