貝の火 [文学 日本 宮沢賢治 か行]
セロひきのゴーシュ-宮沢賢治童話集4-(新装版) (講談社青い鳥文庫)
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/03/14
- メディア: 新書
川辺で遊んでいた子うさぎのホモイは、川で溺れて流されていたひばりの子を助ける。そのお礼にひばりの王様から、「貝の火」という光る宝珠(宝の玉)をもらう。この珠はたいへん壊れやすく、毎日磨いてきもつけていないと光らなくなってしまうものらしい。
あくる日、ホモイが外で遊んでいると、馬やリスがホモイを見ると畏まった様子である。「貝の火」を手に入れたことにより、ホモイは森中の動物たちから敬われるようになる。そこでホモイは自分が大将になったと考え、色々な動物に命令を下すようになる。
ある日、意地悪な狐に出会う。狐を恐れていたホモイだが、おそるおそる「お前はずいぶんぼくをいじめたな。今度はぼくの家来だぞ」と言ってみると狐は卒倒しそうになって頭に手を上げて「許してください」という。こうしていい気になったホモイは、狐に唆されさらに偉そうに振舞うようになる。
こうした自分の息子の様子を両親は心配そうに眺め、父親は何度もホモイを諭すがホモイはあまり聞こうとしない。
狐に「動物園を作ろう」と言われ、いろいろな動物をホモイと狐は捕まえる。そのことを父親に報告すると、すぐに捕まえた動物たちを放してやるように言われ、狐のもとに行くが、「ホモイ、気をつけろ。その箱に手でもかけてみろ。食い殺すぞ」と言われてしまう。
狐に騙されていたことを知り、両親とホモイは狐に対決を挑みに行き、狐は逃げていく。残った箱を開けてみると、中からたくさんの鳥たちが出てくる。貝の火を見てみると、白く濁っており、おまけに壊れてしまうが、もう一度復活する。しかし、壊れた時の粉末がホモイの目に入り、彼は目が見えなくなってしまう。お父さんは、「泣くな。こんなことはどこにもあるのだ。それをよくわかったお前は、一番幸いなのだ。目はきっとよくなる。お父さんがよくしてやるから。な。泣くな。」と言われ終わる。
権力を持つと、周りにへつらう人間が集まり、横暴になり、腐敗し、遂には権力が崩壊する様子を描いた作品。どんな時代であろうと、人の欲望というのかいやらしさは変わらないことがわかる作品。結構重いテーマを軽やかに扱っている。
2022-08-02 04:28
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