海の館のひらめ [文学 日本 安房直子 あ行]
島田しまおという、真面目で若い青年がレストランアカシヤという店で下働きとして働いている。もう5~6年働いているのに、下働きばかりやらされている。料理長や同僚から色々言われ、もうやめようと思っていたところ、流しの下の氷の上に寝ているひらめに「わたしが力になってあげますから、もすこし、ここで、しんぼうしなさい。」と言われる。
ひらめの骨を家に持ち帰り、塩水につけてあげるとひらめは色々とアドバイスをくれる。
まずは売りに出されていたレストランを借金をして買い、ひらめに様々な料理をならう。寝る間も惜しんで正直に頑張り、最後は教わった料理を習得する。最後はいい奥さんを見つけなさいと言われ、喫茶店でピアノを弾いていた「あい」という娘に、自家製の美味しいパイを持って行って仲良くなり、最終的には婚約する。
ここまで来るとひらめは「わたしの仕事も、これでおわりました」といい死んだ魚のようになってしまう。しまおとあいは、結婚式をあげ、ひらめの骨を海へと返してやる。
(安房直子 偕成社コレクション2巻)
p.225
「いつまでたっても下働きなのは、たぶん、〈料理学校の卒業証書〉を持っていなかったからでしょう。それから、ばか正直で、ゆうずうがきかなくて、人のきげんをとるのがとてもへただったからかもしれません。」
p.233
「わたしは、さっき、調理場の氷の上で、あなたの働きぶりを見ていましてね、すっかり気に入ったんです。正直で、まじめなところが、なによりです。そんな人間が、そんばかりしているのが、わたしには、がまんできませんでねえ・・・・・・。」
この二つの言葉にこの話のすべてが詰まっている。真面目に生きることの大切さ、まじめに生き、美しい心を持った相手と生活を築くことができるすばらしさを教えてくれるこの作品。素晴らしい。
2022-08-26 12:00
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