安房直子コレクション4 まよいこんだ異界の話 [文学 日本 安房直子]
安房直子コレクションの購入しておいた全作品を読み終わった。
安房直子コレクション1、6、7に収録されている作品は、ほぼ文庫や単行本に収録されている。2,3,4,5には、手に入りづらい作品がそれなりに収録されているので購入しておいた。
この四巻は特に、彼女には珍しい中・長編作品が四篇収められている。
1.「ハンカチの上の花畑」
戦争により丸焼けになり、人もいなくなり、酒倉が一つ残っているだけの「きく屋」に、郵便が届く。それを届けにきた郵便屋。誰もいないはずのその酒倉に、郵便を届けに行くと、中からおばあさんが現れる。郵便屋は、そのおばあさんから、酒が勝手に出来るつぼを預かることに。そのつぼのおかげで、人生が好転した郵便屋さん。しかし、誠実で真面目だった郵便屋さんも色々な誘惑に負けて・・・。
日本の昔話と西洋のおとぎ話をミックスさせたような、不思議なちょっと怖い世界観を持った話。かなりドキドキしながら読みすすめた。
2.「ライラック通りの帽子屋」
この話は前に単行本を借りたかなんかして読んだ事があった。真面目に仕事をする帽子職人が、ある羊との出会いにより思いがけない世界へと誘われる。この世で真面目に働くことの意味、初心に変えることの大切さ、愛情の大切さなどを教えてくれる名品。
3.「丘の上の小さな家」
お裁縫が大好きな女の子の話。そんな女のコが、クモから素晴らしい編み物を教えてあげると言われて・・・。
こちらも日本の昔話「浦島太郎」を彷彿とさせる作品。しかし、安房直子さんが違うのが、遊びほうけているわけではなく、異界で一生懸命技を身に付けようと努力をするところ。色々な仕掛けがなされていて、読後も色々と考えています。まさにブレヒトの異化効果のようなものがある気がする。
4.「三日月村の黒猫」
「丘の上の小さな家」と似た世界観を持った話。しかし、修行を終えたあと元の世界に戻ると、そんなに時間は立っていないので、少し安心して読み終えられる。しかし、近代化に伴う様々な世の中の弊害を我々に示しているような作品。
どれも素晴らしい世界観を持った作品。やはり安房直子は天才だと思う。
2021-07-12 08:57
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