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いつも彼らはどこかに [文学 日本 小川洋子]


いつも彼らはどこかに

いつも彼らはどこかに

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/05/31
  • メディア: 単行本



 ひさしぶりに小川洋子作品を読んだ。数年前かなりはまって、10冊くらい一気に読んだが、それ以来まったく読んでいなかった。動物好きの妻に、結婚10周年のプレゼントとして送った本なのだが、彼女の文体が妻には合わないらしく、なかなか読み進められず、いつのまにか置き去りにされてしまっていたので、今回読んだ。

 かなり面白かった。彼女の作品全体に言えることだが、これといった大きな事件も起こらない。そして短編集ということもあるのだが、ドロドロした感情なども描かれない。しかし、ページをめくる手が止まらない。なぜなのかはわからないが、とにかく凄い作家だと思う。

 そしていつも感じることだが、彼女の作品は常に、社会の周縁を生きる、敏感で感じやすく、自分の居場所をなかなか見つけられない人々に対して優しい目を向けている。
 自分の与えられた仕事を毎日同じように行い、人を傷つけないよう最新の注意を払いながらひっそり生きる人びとを描いている。彼女の作品には固有名詞が登場しない場合が多い。これにより、逆に読者は登場人物たちの心に、行動に寄り添いやすくなっている気がする。
 お祭り事が大嫌いで、日々落ち着いた心穏やかな生活をしたい私には本当にぴったり来る作品集だった。
 本の帯に付けられた解説文とは結構印象が違い、動物はあくまでもモチーフであり、あくまで人間が主体の短編集。このようにひっそりと暮らす人はたしかにどこかにいるよなあ、そしていて欲しいよなあと感じた一冊だった。
 まだ未読の『ことり』『人質の朗読会』も読んでみたくなってしまった。

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