SSブログ

この人を見よ [哲学 ニーチェ]


ニーチェ全集〈15〉この人を見よ 自伝集 (ちくま学芸文庫)

ニーチェ全集〈15〉この人を見よ 自伝集 (ちくま学芸文庫)

  • 作者: フリードリッヒ ニーチェ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1994/06
  • メディア: 文庫



ニーチェ著『この人を見よ』を読み終わった。ちくま文庫から出ているニーチェ全集の最終巻。このニーチェ全集もかなり長い時間付き合ったがやっと完読。

この本を読むと、ニーチェが気が狂っていたことがわかるらしいが、私はまったく狂気性をこの本から感じなかった。確かに目次を読むとすごい言葉が並ぶ。
「なぜ私はこんなに賢明なのか」
「なぜ私はこんなに利口なのか」
「なぜ私はこんなに良い本を書くのか」
確かに自分をここまで賛美できるのは素晴らしい。しかし、書いてあることは間違っていない。ニーチェ自身はソクラテス思想をそんなに受け入れていなかったのかもしれないが、ソクラテスに近い感覚を持っていたのではないだろうか。

ソクラテスは自分が「無知」であることを知っていた。しかし神は自分のことを最も「知」がある人間だという。それを確かめるために様々な「知」的と呼ばれる人々と対話する。そこで気がついたことは皆「自分が「無知」であることに「無知」である」ということだった。

ニーチェも同じように感じていたのではないだろうか。彼は牧師の家に生まれ、キリスト教思想を十分に内面化して育った。その上で、様々なことを学び、いろいろ考える中で、周りの人間が物事を深く考えずに今あることをただ漫然と受け入れるだけ、という状態に疑問を持ったのではないだろうか。まわりの人間は「神、イエス・キリスト」を漫然と受け入れ、自分で思考し自分で行動し自分で道を切り開いていくことを放棄してしまっている。そのニーチェの立場からすれば、自分の周りにいる人間より、自分ははるかに賢明であり、利口であり、良い本を書いていると思ったのではないだろうか。

私はかなりキリスト教思想に共鳴している。しかし、ニーチェの考え方にも非常に共鳴するところがある。自分で考え行動できて初めて他人に対して心を向けられるのではないだろうか。(ちなみにこの考え方は現在読んでいる阿部次郎『三太郎の日記』に影響を受けている)

ニーチェの本は長く、かなり難しいが、いろいろ考えさせられる部分が多く、非常に面白かった。またゆっくりとした時間が取れるのであれば再読したい。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0