ブラフマンの埋葬 [文学 日本 小川洋子]
小川洋子作『ブラフマンの埋葬』を読み終わった。
私は小川洋子さんの作品が好きである。
日々の変わらない生活を描いているところ。普段普通に生活していたら目を向けないような部分に焦点を当てているところ。様々な物事に対するやさしい視点。などなど私の生き方に合っているのだ。
とはいえ、彼女の作品を余すところ無く読んでいるわけではない。あらすじなどを読み、面白そうと思えたものを読むようにしている。
この『ブラフマンの埋葬』はあらすじを読んでもそんなに惹かれなかったが、泉鏡花文学賞をとっているということで、他の本と一緒に買ったのだ。
200ページに満たない、中篇(短編?)作品なので、重い本を持っていきたくない日が一日あり、その日に持ち歩いて読んだ。
得体の知れない動物を、ふとしたことで拾い、名づけ、育てて行く過程で、主人公とこのブラフマンの間に愛情が芽生え、その愛情ゆえに悲劇を招く、というストーリー。
主人公の愛情が、ブラフマンから他の者に一瞬移ったときに、悲劇が訪れる、というところが非常にうまいなあ、と思った。しかも、ブラフマンの埋葬場面も非常に客観的で、淡々と描かれており、無駄な感傷を引き起こそうとしていないところが本当に素晴らしいと思った。
『やさしい訴え』『ミーナの行進』『猫を抱いて像と泳ぐ』程、圧倒された感は無いが、『いつも彼らはどこかに』や『人質の朗読会』のような、ふんわりとした気分にさせられる美しい作品だった。
2017-03-16 07:35
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