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岡倉天心コレクション [哲学書]


茶の本 日本の目覚め 東洋の理想―岡倉天心コレクション (ちくま学芸文庫)

茶の本 日本の目覚め 東洋の理想―岡倉天心コレクション (ちくま学芸文庫)

  • 作者: 岡倉 天心
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/06/01
  • メディア: 文庫



岡倉天心コレクションを読み終わった。
『茶の本』『日本の目覚め』『東洋の理想』という英語で書かれた本の翻訳本であり、岡倉天心が書いた作品はこれですべてらしい。
題名、内容からしてつまらなそうだったので、全く手に取ろうとも思わなかった本だが、仕事の関係でしょうがなく読んだが、『茶の本』は面白かった。『日本の目覚め』と『東洋の理想』は日本の歴史を宗教と芸術の観点から描いた作品で、東洋文化は西洋文化に劣るものではない、ということを主張したもので、内容は素晴らしいのであるが、日本史に興味のない私としては若干退屈だった。
福沢諭吉と並び、西洋文化を深く学び、それを内面化させて上で、東洋文化と西洋文化を客観的に考察し、西洋・東洋文化を冷静に批判的に論じたもので、本当に素晴らしい。この姿勢は見習いたいと思う。
以下、気になった箇所をいくつか紹介したい。

『茶の本』
p.9
「西洋人は日本が平和な文芸に耽っていた間は、野蛮国と考えていたものである。ところが日本が満州の戦場に大虐殺を行い始めてからは文明国と呼んでいる。~中略~もし文明ということが、血腥い戦争の栄誉に依存せねばならぬというならば、我々はあくまでも野蛮人に甘んじよう。我々は母国の芸術と理想に対して、当然の尊敬が払われる時期が来るのを喜んで待つとしよう。」
これは素晴らしい一節だ。『東洋の理想』で「アジアは一つ」と述べ、後の「八紘一宇」いわゆる日本の亜細亜侵略の一因となったなどとバカな主張をする輩がいるらしいが、彼の著作を少しでも読めば、彼の平和主義がいたるところからあふれ出ていることに気づくはずだ。

p.57
「人々は自己の感情には無頓着に、一般に最上と考えられているものを得ようと騒ぎ立てる。高価であれば優雅でなくともよく、流行品であれば美しいものでなくとも良い。一般大衆にとっては、彼ら自身の産業主義の貴い産物である絵入り定期刊行物を観照することの方が、彼らが感心しているふりをしている初期イタリアの作品や足利時代の名匠の作品よりも、美術鑑賞の糧としては一層消化しやすいのであろう。」
まさに今の日本人である。

『日本の目覚め』
p.123
「東方の賢者はいまなお手段と目的とを混合しない。西方の人間は進歩を信ずる。だが何を目途の進歩なのか。アジア人は尋ねるー物質的能率が達成されたならば、いったい、いかなる目的が果たされたというのだろうか。いうところの同胞感情が世界の協力を実現したあかつきには、それがいかなる目的にかなうというのだろうか。もしそれが単なる私利私欲に尽きるならば、自慢の進歩は果たしていずこにありやと言わねばなるまい。」
これも西洋文明の欺瞞性をあばいた名文である。
p.183
「いったい戦争というものはいつなくなるのであろうか。西欧では国際道徳が、個人道徳の高さにはとてもおよばぬところに残されたままである。侵略国には一片の良心もなく、弱小民族を迫害するためには騎士道もすて去られる。」
本当にいつになったら戦争のない世界が訪れるのだろう・・・
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