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新エロイーズ4 [哲学 ルソー]


新エロイーズ 4 (岩波文庫 青 622-7)

新エロイーズ 4 (岩波文庫 青 622-7)

  • 作者: ルソー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1961/06/05
  • メディア: 文庫



遂に『新エロイーズ』を全巻読み終わった。
マンガ『ベルサイユのばら』を読んで以来、ずっと読みたいと思っていた本だった。
貴族オスカルに対する叶わない恋に悩む平民アンドレの愛読書である。何故、彼がこの本を愛したのか、全巻を読み終えて分かった気がする。
貴族と平民の超えられない恋。愛し合っていながら、様々な障害があり、一緒にいながらも結ばれることの無い状態。お互いがお互い高潔を求めるがゆえに、もう一歩踏み込めない状態。まさに、『新エロイーズ』に描かれるジュリとサン=プルーは、『ベルサイユのばら』のオスカルとアンドレである。

サン=プルーと真剣に愛し合いながらも、身分や家柄の壁を越えられなかった令嬢ジュリは、従兄弟である、クレールと結婚するようサン=プルーに熱心に勧める。おそらく心のどこかで、クレールもサン=プルーもお互いのことを愛していたのであろうが、ジュリという存在の大きさのために、二人はジュリが死んだ後も結局結婚せずに終わる。
最終的には、肉体的な愛ではなく、精神的な愛を賛美した、まさにプラトニック・ラブ賛美小説と言えるこの作品。とても美しい作品であり、悪人は全く登場せず、すべての人の心があまりに美しい。

普段、私は美しい心をもった登場人物が出てくる小説を好む。フランスの自然主義小説のように、性的に乱れた肉体関係を結ぶ作品は読んでいて気分が悪くなる。

しかし、この作品はあまりのも道徳的に素晴らしい人物が多すぎて、常にふわふわした感覚をもったまま読まされた気がする。
ジュリ、クレール、サン=プルーがそれぞれの恋に悩み、その感情を吐露した書簡などはぐいぐい引き込まれるが、結局、それも道徳的な働きかけの書簡により、落ち着いた状態になってしまう。常に欲求不満状態にさせられていた気がするのだ。

この小説を読んであらためて思った。
人間世界というのは、「悪」があるからはじめて「善」が引き立つ。そして最高の『善』にいたることが出来ないからこそ、人間は生きていけるのだと。

小説の最後で、ジュリはサン=プルーと天国で再び会い一緒になれることを望む。このひたすら「善」を描いた小説において、結末は、最高『善』で終わらせるしかなかったのであろう。

とても美しく、素晴らしい小説であるのだが、何となく後味の悪さが残る小説であった。
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