手のひらの音符 [文学 日本 藤岡陽子]
すばらしい小説だった。
様々な要素が詰め込まれた、本当に本当に感動的な小説だった。
私は小川洋子の小説が好きだ。メインから外れた、人々から注目されることのない人やモノにスポットをあて、当たり前に繰り返される毎日の大切さを改めて実感させてくれるその小説が。彼女の作品は我々の日常と少しずれたところを舞台とすることが多い。そんな若干異次元空間に身をおくことで、今の我々の位置を客観的に見直す、というところがある。なので、小説を読んでいるとき、その小説世界にどっぷりつかることはあっても、登場人物たちに感情移入したり、自分を投影したりすることはない。
この藤岡陽子の『手のひらの音符』は小川洋子作品と通底するものがある。社会のメイン・ストリートに入っていけないけれど、自分の世界観があり、それを非常に大切にしていきながら生きていく人々に非常に非常に優しい目を向けている。
この小説が小川洋子作品と違うのが、自分の身の回りに登場人物達がいそうであり、もしかしたらそれはそのまま自分なのでは、と思わせるところだ。あまりに読んでいる途中感情移入してしまい、電車の中で何度も泣きそうになってしまった。
この本は、子どもにキュンタのしおりをあげるために、買った本だ。私は基本的に古典作品ばかり買う。現代小説はほぼ図書館ですませてしまう。なので、この本は本当に買うのを迷った本だ。しかし、買ってよかった。本当に読後すがすがしい気持ちにさせてくれ、今日からまた頑張ろうという気にさせてくれた。
この本で扱われているテーマはあまりに重層的で、簡単にはいえないし、挙げきれない。いじめ、貧困、夢、個性、障害、やりがい、努力、仕事とは、他にもいろいろある。しかし、登場人物達の言葉を通じて語られる、筆者藤岡陽子さんの思想があまりに自分と違いものがあり、本当に吸い込まれてしまった。
とにかく、今様々なことで思い悩み、何かに踏み切れない人は是非、読んでみて欲しい。きっと何かのヒント、きっかけを与えてくれると思う。
2018-07-27 07:30
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