アンデルセン童話集 7 [文学 その他]
『アンデルセン童話集』を読み終わった。
最後の巻ということで、書かれた時代もかなり現代に近づいているようで、近代化へとひた走る世界に対して、懐疑的な目を向けた作品もちらほらみられる。自然や物といったものに温かい目を向け、物語を膨らませていったアンデルセンらしい視点といえる。
前巻の6よりは、読み応えのある作品があり、
「木の精ドリアーエデ」はパリの万国博覧会に批判的な目を向けたそれなりに読める物語
「アザミの経験」「運は一本の中にも」など、教訓めいた話などもそれなりに面白くはある。
純真な心を持った女性を描いた「ヨハンネ婆さんの話」なども読んでいてほっこりするし、「かたわもの」はシュピリの名作『ハイジ』をほうふつとさせる、本によって蒙を啓かれた子供の話だ。
とはいえ、やはり前期の輝きは全くない。この本にはアンデルセンの書いた「あとがき」集のようなものも載っており、そこで自分でもいみじくも言っている。
p.305
「最近になって個人的に言われることだが、私の童話の、ごく初期のものは意義があるが、のちのものをそれにおとる、という人がままある。これはもちろん事実ではない。」
当時から、私と同じように感じる人がいたんだなあと思う。本人に言う人がいるくらいだから、多くの人がそう思っていたのであろう。彼はそれを読者のせいにして次のように言う。
「子供のころわたくしの初期の童話を読んだ人たちは、年をとって、かつて作品を読んで感銘した新鮮なセンスを失ってしまっているのである。」
しかし私は、一年間で初めから最後まで読んだが、やはり初期のものは面白く、子供たちに読ませたい、つまり意義があると思うが、後期の作品は全く読ませたいとは思わない。
結論としては、アンデルセンは、やはり傑作選で十分な気がする。そしてその中に選ばれる作品はほぼ同じで、漏れはほとんどないのではないだろうか。
なんにしろ、長年読み切りたいと思っていたアンデルセン童話集を読み終えられてよかった。
2020-03-01 06:59
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