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語るボルヘス [文学 その他]


語るボルヘス――書物・不死性・時間ほか (岩波文庫)

語るボルヘス――書物・不死性・時間ほか (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/10/18
  • メディア: 文庫



ボルヘス作品の最終巻、『語るボルヘス』を読み終わった。
ボルヘス最晩年の講演集らしい。

テーマは、書物、不死性、エマヌエル・スヴェーデンボリ、探偵小説、時間。

どれも彼の終世のテーマである、永遠性、循環性、などが話題として取り上げられている。
彼の作品はやはり、小説より、こういった講演集や評論などの方が面白い。

p.25
「図書館とは魔法の書斎であり、そこには人類のもっともすぐれた精神が魔法にかけられて閉じ込められている。彼らは沈黙の世界から飛び出そうと、われわれが呪文を唱えるのを今か今かと待っている。まず、書物をひもとくこと、そうすれば彼らは目を覚ますだろう。~中略~われわれは人類が生み出した最高の人たちと友達になることができる。しかし、こちらから近づこうとしてはいけない。また、注解や批評は出来るだけ読まないことである。そんあんことをすれば、彼らの語りかける言葉を直接聞き取れなくなるだろう。」

p.51
「この二十年間アングロサクソン語の詩を研究してきたおかげで、私は多くの詩を暗記しています。ただ、作者の名前が分からないのです。ですが、それはどうでもいいことです。九世紀の詩を読み返して、その詩を作った誰かわからない人と同じ気持ちになれば、それでいいのです。その時、私の中に九世紀の名もしれない詩人が生きています。」

p.54
「最後に、私は不死を信じていると申し上げておきます。むろん個人のそれではなく、宇宙的な広がりを持つ広大無辺の不死です。われわれはこれからも不死であり続けるでしょう。肉体的な死を超えてわれわれの記憶は残り、われわれの記憶を超えて、われわれの行動、われわれの行為、われわれの態度物腰、世界史の驚くべき一片は残るでしょう。」

p.70
「知性、倫理、芸術の実践を通して人は救済されうるということです。」

p.85
「書物というのは、読者がそれをひもといてはじめて存在しはじめるのです。その時に芸術的現象と呼びうるものが生じます。つまり、読者が一冊の書物をひもといた瞬間に、本が誕生するのです。」

時も空間もすべては永遠であり、その永遠性の中に我々は存在している、ということなのだろう。
かなり彼の考え方には共感できる。
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