ひらいて [文学 日本 綿矢りさ]
三浦しをん『ののはな通信』、綿矢りさ『ひらいて』を続けて読んだ。『ひらいて』は簡単にあらすじを見て、面白そうだから読んだのだが、思いがけない展開だった。
この二つの作品の共通性みたいなものは全く意識せず続けて読んだのだが非常に似通ったテーマで作られている作品だと感じた。
同性愛、愛情のない性行為、自分でも把握しきれない自分の心の中のモヤモヤ、愛情から昇華した心のつながり、まさにプラトン・イックな愛。そして何よりも物語にかなり間接的に影響を与えているであろうキリスト教思想。『ののはな通信』ではののとはなはキリスト教中高の生徒、『ひらいて』では主人公愛は毎日のように聖書を読み、オスカー・ワイルドの『サロメ』なども引用される。どちらの小説も、本当の「愛」とは何なのか、ということを深く考えた作品なのではないだろうか。
途中まで、主人公愛のあまりにも破滅的な行動と、それにつき合わされる優しい心を持ったカップルの様子が、あまりにも痛すぎて読み進めるのが結構辛かった。フランスの自然主義文学を読まされているようなかなり厳しい感じであった。しかしどんどん読み進めるうちにそれぞれの登場人物たちの心的葛藤が明らかになり、彼らがお互いのかかわり合いの中で精神的に成長してく様子が感動的ですらあった。
何とも表現しづらい作品ではあるが、読後感は、内容にしては悪くはない。
綿矢りさの一つ一つに対する物事に対する感性の鋭さや言葉の選び方にはいつも素晴らしいと思わされるが、話のまとめ方もとてもうまいと思う。
けっこう面白い作品だった。
2021-08-16 17:20
nice!(0)
コメント(0)
コメント 0