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レインツリーの国 [文学 日本 有川浩]


レインツリーの国 (角川文庫)

レインツリーの国 (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/09/24
  • メディア: 文庫



難聴者の女性と、健聴者の男性の、ネットを通してリアルにつながっていくお互いの心理を、e-mailのやり取りなどを通じて詳細にに描いた素晴らしい恋愛小説。

「図書館戦争」シリーズのスピンオフ的な作品で、私はそういう作品があまり好きではないので、そんなに期待せずに読んだが素晴らしかった。昔読んだ作品の結末に納得のいかない男女が、その納得のいかなさを通して知り合い、語り合い、その作品の結末と自分たちの未来を重ね合わせながら物語が終わるのも美しかった。

難聴の人の苦悩、健聴者側の無知と無知であることに後で気づいたことによる苦悩、そして誰もが持つであろう苦悩、そしてどんなに親しくなろうが、決してわかりえない個々人の苦悩、そういったものをごちゃまぜにして、乗り越えていこうとする、二人の誠実で真摯な人柄が全編にわたって描かれており、最初から最後まで嫌な思いを感じることなく読めた。本を通して二人が仲を深めていくというのも私好みだった。私が好きではない性描写もなく本当に美しい作品だった。



ただこの本を読んで思ったのだが、テレビドラマや映画、文学作品などでは、不幸を担うのは基本的に女性が多い気がする。「不幸を背負った、障害を持ったか弱い女性を、男性が守る」みたいな図式の方が確かに人々の共感を得やすいのであろう。そして自分もそうした関係性の方が読んでみたいと思う確率は高いであろう。ただこれを何となく考えた時、何とも言えないモヤモヤ感が残った。

何にしろ素晴らしい作品だった。
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