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いつまでも白い羽根 [文学 日本 藤岡陽子]


いつまでも白い羽根 (光文社文庫)

いつまでも白い羽根 (光文社文庫)

  • 作者: 藤岡 陽子
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/02/13
  • メディア: 文庫



藤岡陽子さんのデビュー作であり、ドラマ化もされている作品を読み終わった。結構長く、文庫本で400ページ以上ある大作だった。

国公立大学しか受けられず、しかたなく滑り止めで受けた唯一の学校の看護学校へ行くことになった木崎瑠美の物語。

もともと友達が少なく、物静かな主人公が自分の信念を貫きながら生きていく。彼女が何故国公立以外の大学を受けられなかったのか、看護学校に入学してすぐ、何故心優しい千夏と友達になったのか、など、ひとりひとりの性格を細かく設定したり、背景をしっかりと構築していくことによって、説得力のある物語の展開にしているあたり、うまいなあと思う。

藤岡陽子作品の設定としてよくある、不遇な子供時代、両親の離婚などなどもうまく組み込まれていた。今回は、かなり読んでいて辛くなるような恋愛関係もあり、信念をそれぞれの登場人物が貫いたことによりそれぞれの未来がかなり辛いものになる、というエンディングで、彼女の作品にある、読み終わったあとの爽快感みたいなものが結構薄目の作品だったが、かなり重厚な作品で楽しめた。

人の良い友人の千夏に、普段真面目に授業を受けていない同級生が、テスト前に焦ってノートを借りにくる場面での言葉。
p145
「楽して乗り越えようなんて甘いのよ。正直者がばかをみるようなことを、少なくとも私は許さない」

p301
「自分を百パーセントさらけ出すことなんて不可能よ。肉親にも親友にも恋人にも夫にも、すべては見せられないわよ。だって自分自身でもわからない自分の感情や本質ってあるものでしょう」

p340
「私は瑠美さんみたいな人が、看護師になってほしいと思うから」
「私みたいって・・・・・・」
「感じた疑問を口にして、きちんと答えを求めるような人よ。おかしいことをおかしいと言える人。常識というのはその場にいる人間で作られるの。だから常識が正しいことだとは、限らない。その場の常識だとか雰囲気に流されないでいられる人は、とても貴重だと思う」

藤岡陽子さんの作品、読めば読むほど好きになる。決して明るい話ではないし面白おかしい話でもない。ストーリー的にとっても面白そうな感じではない。しかし何故か読むとかなりの満足感が得られ、またさらに読みたくなる。それは何故なのだろうと思っていたが、きっと彼女の中に上記のような信念があり、それが作品の中に投影されているからだろうと思うのだ。

私の信念と重なる部分が多い彼女の作品。もう少し色々と読んでみたいとこのデビュー作を読んで思った。
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