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波風 [文学 日本 藤岡陽子]


波風 (光文社文庫)

波風 (光文社文庫)

  • 作者: 陽子, 藤岡
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/06/12
  • メディア: 文庫



藤岡陽子さんの短編集。心や体に傷を持つ人々が必死にもがきながら生きる様子を描いた7篇が収められている。

1.波風
2.鬼灯
3.月夜のディナー
4.テンの手
5.結い言
6.真昼の月
7.デンジソウ

1は、男性関係で悩む二人の看護師の話。本のタイトルにもなっている作品で、悪くはないが、この7篇の中ではもう一歩か。読後感ももう一歩。

2は、美しい。自殺で夫をなくした女性が再婚をし、病気になってしまう話。その女性が再婚した男性を始め娘はあまりよく思っていないのだが、二人の馴れ初めを知り・・・。結構感動的な話。

3は、一番美しく素晴らしい。別の男性と再婚し捨てられてしまった姉・弟の話。育ての親と言えるおばさんとの心暖まる話。最後は涙が止まらなかった。

4は、才能豊かな「テン」という少年の話。藤岡陽子作品は常にそうだが、「天才=努力の人」というのがこの作品でも随所に現れている。

5は、奥さんのために着付けを習いに来たおじいさんの話。彼の一途な人柄が様々な人の心に与える影響をじんわりと描いている。

6は、アイドルの追っかけをするモテない男が美しい人に恋する話。思わぬ展開にちょっとびっくり。感動度合いは若干低いが面白い。

7は、医療の黒い部分を描いた作品。かなり極端に描かれているが、そこで紡がれる人間関係が暖かく読後感も爽やか。

彼女は長編も素晴らしいが、短編も美しい。かなり読みやすくオススメの作品だ。
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