シュガータイム 長編② [文学 日本 小川洋子 長編]
再読
ある日突然過食症のような、食べても食べてもとまらない状態に陥ってしまった主人公の話。困ったことがあると必ず駆けつけてくれる優しい大親友真由子や、肉体関係がなくても上手く関係を築いていた恋人吉田さん、体が大きくならない病気にかかってしまった血の繋がっていない弟航平、バイト先のお局女上司など、それぞれ魅力的な人物に囲まれた主人公の多感な大学生活を描いている。一見普通の恋愛小説っぽく雰囲気はよしもとばななの小説に近い気がする。しかし一見普通な感じの中に、拒食症や大きくならない弟、肉体関係を持たない(持てないではない)恋人を置くことによって、正常な中にある異常性を静かに描いている面白い作品。
初めて読んだときはかなり読みづらい作品だと思ったが、一番はじめの作品から読みすすめてくると、かなり読みやすい作品だと思った。新潮社のオススメ文学作品というような企画の中で、作者の小川洋子さんは、ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』を薦めていたのだが、恐らく弟の航平はこの作品から影響を受けているように思われる。ブリキの太鼓の主人公は悪そのものといった感じだったが、この航平は善そのものといった感じ。
再読で結構楽しめた作品だった。恋愛を扱った軽い現代文学が好みの人にはオススメの小川洋子作品だと思う。
2022-03-30 04:33
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