やさしい訴え 長編⑤ [文学 日本 小川洋子 長編]
再読
夫に不倫をされ別荘に逃れてきた主人公瑠璃子、人前でピアノを弾くことが出来なくなってしまったチェンバロ製作者の新田、結婚式直前に、夫が殺害された薫さん、この三者が軽井沢、小淵沢地域を思わせる涼し気な別荘地で静かに繰り広げる恋愛模様を描いた美しい作品、
ほとんど大した事件も起こらず結構この三者の心の触れ合いや嫉妬を中心のストーリーだと思っていたのだが、夫の不倫相手と直接話をしたり、新田氏が大けがをしたりと結構大きな事件も起こる。
肉体関係はなくとも(あるのかもしれないが)深い心のつながりを持つ、新田と薫
肉体関係は持ったとしても心の深い所でつながっていない、新田と瑠璃子
その心のつながりに嫉妬する瑠璃子、三者の間のバランスを保つように存在する老犬ドナ、
とにかく美しくて切ない雰囲気に支配された作品で、読み進めようにもゆっくりしか読み進められない作品でじっくり味わわざるを得ないストーリーになっている。
p225~p226の新田と薫の肉体関係を全く感じさせないが、二人の深い精神的なつながりを伝える静かな文章が逸品だ。
この箇所だけでも読む価値がある。
2022-05-17 06:54
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